宮本輝のレビュー一覧

  • 満月の道―流転の海 第七部―
    読者としても、もはや引くに引けないお付き合いとなる長編。

    宮本輝は自身の生い立ちや経験をなんども作品化している。名前や設定は変えつつもこれまで他の作品で描かれてきた主題がじっくりと描かれている。これは「重複に対する批判」ではなく逆にファンとしては嬉しいことなのだ。筆者の、繰り返してきた年輪と成熟が...続きを読む
  • 森のなかの海(上)
    この作家の作品はハズレがあまりない。阪神大震災で夫の不倫が義母も公認の仲で震災と夫の裏切りで精神的に追い詰められていくのかと思いきや、家族や昔からの付き合いがある老婆などの様々な出来事に流されながらも自分の意思を持ちながらも流されていく。
    不幸をバネに幸せとは思っていないかも知れないけどやりがいもあ...続きを読む
  • 人間の幸福
    著者の作品は、よく読んでいますが、殺人が絡む推理小説は珍しく読みました。読み終わって感じたことは、やはり今までの作品のように人間の罪深さ奥深さが、書かれていました。主人公が自分でも気づかなかった一面を知り愕然とする場面。自分では意図せずに異性を惑わせてしまう女性の恐ろしさ、男達の愚かさ。読みごたえあ...続きを読む
  • 青が散る(下)
    中盤でテニスの試合を長々と展開する場面は中だるみがあったけれど、見所と言うべきなのだろうか、場面場面で情景がみるみる浮かび心震わされた。それは全体にも言えたし、主人公の試合でのメンタルや日常の精神的な青さ、青春が散ると自覚ラストシーン。見事な物語だったと思う。
    そして残るなんとも言えない悲しさ。喪失...続きを読む
  • 三十光年の星たち(上)
    今は廃れた修行という言葉だが、この本を読むとこの古い修行というものに憧れを感じる。自分には30年という時間は残されていないが、これからでも何かひとつ取り組んでみたいという気にさせられた。
  • 星宿海への道
    久しぶりに凄い小説を読んだ気がする。
    実はスケールが非常にに大きくて深い。

    ウイグル族とのつながりが気になっていたが、なるほどなあ。

    尾道が好きで二度行ったが、やはり日帰りではなく、時間をかけて島まで渡ってみる必要があるなあ。
  • 田園発 港行き自転車 上
    宮本輝の長編小説は、やはりいい‼️

    人間の性(サガ)とそれによるやるせない展開がありつつも、人の深いところでの良心を信じる人々の思いが詰まったストーリー。

    下巻を早く読みたい。
  • 愉楽の園
    もう30年近く前に1年間過ごしたタイ。
    匂いや湿気、喧騒とか一気に蘇ってきて
    息苦しくなる様な小説だった。
  • 田園発 港行き自転車 下
    宮本さんの初期あたりの作品が好きで。その流れで以降の作品も主だったもの読んでると思うけどなんか気持ちがグッとくる回数が減ってたような、じぶん。そんなんやから今回もあまり期待せずに。3?4ブロックくらいの人物たちが同じタイミングに向かって話しが進む。そのスタイルが宮本さんには新鮮なような気がしたのもあ...続きを読む
  • 田園発 港行き自転車 下
    優しい気持ちになった。
    心の綺麗な人の物語は、読む人の気持ちも清々しくさせてくれる。
    自転車が欲しくなった。
  • 星々の悲しみ
     表題作を含む全7作品からなる短編小説集。物語の多くは若者を主人公とし、青春時代に関わった人たちとの微妙な心理・感情を描いています。
     子どもでも大人でもない、もしくは子どもから大人になろうとしている主人公たちの目線を通して、生と死から感じられる残酷さ、若者から見た大人の性事情、奇妙な癖や趣味を持っ...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(上)
    四十七歳でサラリーマンをやめ、第二の人生に向けてある仕事に就いた八木沢省三郎。その仕事は土地開発会社で、大阪に戦前からあるビルに住んでいる人々を荒立てず、穏やかに転居をさせると言うものであった。

    そのビルは、妻のある男が建てその夫婦の死後、男の愛人の子・杉山轍正が相続したものであった。彼がフィリ...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(下)
    骸骨ビルと言う場所の意味、阿部轍正の存在、そして茂木泰造の思い。終わりに向けて動き出す…。

    パパちゃんに対し周囲からは邪推され陰口を叩かれる中、自己保身しか考えていなかった役所が子供たちを引き取りたいと言ってきた時に、彼が言った言葉。
    「人間としての誇りは捨てんが、小さな自尊心なんていつでも捨...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(下)
    とても面白かった。初めて読んだ宮本輝作品。十三を舞台にして戦後を描く。登場人物の置かれた状況は大変だが、それを不幸自慢にしないところがいい。事実と虚構を混ぜて効果的に伝えるということにこの作品は成功している。生臭くないがリアルに思える。そう感じることの出来る作品だったと思う。後半、物語世界が閉じてし...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(下)
    ビルの住人の戦後の話は、まだまだ続く。そして、成人に達してからの住人の日頃の生活、性質などが少しずつ明らかになっていく。
    父親代わり、母親代わりの二人が住人の戦災孤児の精神構造構築に与えた影響のすごさが描かれている。
    そして、除却するための条件について、色んな思惑が語られる。
    濡れ衣を着せられた父親...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(上)
    大阪の十三というところに戦前から建っていた堅牢でイワクありげな建物「骸骨ビル」の除却という業務に、ひょんなことから関わった主人公が、様々な人間模様、それも戦前戦後のどさくさで、好むと好まざるに関わらず、悲壮的な宿命を負った戦災孤児の人間模様を絡めながら、話は、読者を引き込んでしまいます。
    人間置かれ...続きを読む
  • いのちの姿 完全版
    「小説は書き出し、随筆は最後の一行」と言われる。作家生活43年、著作も100冊を超える作家ともなると、この要諦を縦横に使い、随筆の形を借りた小説、あるいは小説の器の中に随筆を盛り込むといった芸当ができるんだなぁと陶然としながら読み了えた。あとがきにこんな文章を寄せている。「『これ以上書くと創作の領域...続きを読む
  • 彗星物語
    クスッ(笑)とウルッ(涙)が交互にやって来る忙しい(いい意味で☆)物語。素晴らしい本に出会えました。
  • 人生の道しるべ
    内容ですが
    まえがき 宮本輝
    第1章 作家の資質
    第2章 人間の成長とは
    第3章 人生の達人
    第4章 父として、母として
    第5章 心と体を健やかに
    第6章 「死」はいつも身近にある
    第7章 生きること、書くこと
    あとがき 吉本ばばば
    ということです。
    読み終わって、とっても爽やかさが残る対談集です。...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(上)
    広い意味での戦災孤児と、それを育てた二人の男を巻き込んだ事件を、平成の世にヤギショウの聞き語りで進む物語は、初っ端から怪しい雰囲気を醸し出しながら進んでいく。ヤギショウは標準語、骸骨ビルの住人は大阪弁。彼らの語りを慣れない関西弁のイントネーションで読み進めるのは大変だ(笑)さて、ヤギショウと彼の親族...続きを読む