宮本輝のレビュー一覧
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人間の複雑さ、極まれり。ゴタゴタとした中で、徐々に熊吾が、房江の人物が立ち上がってくる。
感動的な場面があったかと思うと、裏切る様に短絡的に動く熊吾。支離滅裂で、非常に賢いところと、非常に愚かなところと。様々な感情と側面が同じ人間の中に同居しており、そんな人間が集まって、すったもんだしている。
いっ時の言動は、大事だが、それらは表層的なものであり、それらを生み出す性分、変えられない業が人間にはあるということか。
作中で、宿命、環境、自分の中の姿を見せない核という、三つの敵について熊吾が考察するところが秀逸。人間の言動は、意識的なものだけでなく、これらによって影響制限を受けていることを、自 -
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人が生きていくには、重要な決断がいる時がある。和具平八郎は、最初の会社のピンチで、資金が足りない時に、手元にある金を競馬に注ぎ込んで、勝つことで会社のピンチを切り抜けた。運を天に任せる野蛮な勇気がある。その競馬で負ければ、会社も倒産していた。そして、会社の規模は大きくなり、今度は大きな会社に吸収合併される事態を迎える。思い切ってリストラするのか?倒産するのか?吸収合併されるのか?悩み続ける。日本の中小企業の経営者は、そんな悩みを常に持っているものだ。なるべく職員を残して、自らが退任する道を選ぶ。
和具平八郎は、オラシオンの馬主である。そのオラシオンを手に入れたいがために、平八郎の会社を乗っ -
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戦災孤児について全く知識が無かったので、この本を読むことにより生きることがどれだけ大変だったろうかと思いを巡らせることができた。
一人一人インタビューしたものを日記ふうにしたためてあるのでグイグイと読めた。
話の端々に心に沁み入る箇所があった。
うまくまとめられなかったので再読してピックアップしようと思う。
宮本輝氏の小説は毎回、事業を起こそうと思わせるものがある。今回は食堂。
錦繍では今で言うタウン誌を作ったエピソードがあった。
流転の海を読んで、事業を起こす事が描かれるのは宮本輝氏のお父さまの影響であることがわかる。
また今回も能を見に行くという箇所があり、たまたま能を見るチャンスに -
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宮本輝の初期代表作、太宰治賞『泥の河』と芥川賞『螢川』を収録している。全てが代表作である純文学の権化のような作家だが、その中でもデビュー作と実質デビュー作はこの人を語るには欠かせないものだろう。
戦後経済成長期で、発展を遂げようとしている大阪府の2つの家族を描いた『泥の河』。
同じく戦後経済成長期で、衰退しつつある富山に住む少年と周辺を描いた『螢川』。
全く正反対の舞台であるが、方や田舎に移ろうとし、方や都会に移ろうとする。ほぼ同じ時代に暮らしていても、2つの物語が目指す生活は異なっていた。
しかし、彼らとて、自ら進んで計画したわけではない。運命とも、悲劇ともいえる状況に身を置かれ、やむ -
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満月の道
熊吾が、柳田のモータプールの管理人と並行して始めた中古車販売の「ハゴロモ」は、予想以上に繁盛しスタッフの増員を余儀なくされ四十五歳の玉木則之と二十二歳の佐田雄二郎を新たに雇い入れる。
一家は、ゴルフ場建設に意欲を燃やす柳田の要請で、もう一年モータープールの管理人を続ける事となるが、房江の負担軽減の為柳田商会から高卒の田岡勝己を派遣してもらう。
さらに、またも国立大学の受験に失敗したシンエータクシーの神田を、合格した私大の夜間に通わせる為ハゴロモに雇い入れる。
意に反して事業拡大するハゴロモは、房江の心配をよそに板金塗装会社「松坂板金塗装」を立ち上げる。
そしてその資金繰りの為、 -
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柳田元雄の元で、3〜4年の期限付き経営者となった熊吾。
房江は忙しさに追われながらも更年期の症状から解き放たれる。
伸仁は私立中学に合格し中学生となるが、その成長の遅さに不安を感じた熊吾は伸仁の身体の全てを小谷医師に託す事に。
一方、熊吾の新事業の援助を約束した亀井周一郎は、社長の後任に据えるはずの義弟の不正が発覚し窮地に。
そして、末期の癌に罹患している事が判明する。
援助の当てが外れた熊吾は、
房江に内緒で自らが忌み嫌っていたエアブローカーに手を染め伸仁の治療費を捻出していたが、やがて大久保五郎という老人から伸仁を保証人として金を借り、小さいながらも中古車販売店・ハゴロモをスタートさせ -
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この物語は、
なぜこんなにも惹きつけて止まないのか…
一部・二部の頃の、房江に向けたクソのような暴力には、嫌悪感しか覚えなかったけれど…。
陰と陽。
正と負。
相反する両極の性質を内包する、
人間というもの…
主人公・熊吾の卓越した洞察力。
そして、年齢・性別・国籍・身分を問わず自分間違いは素直に認める公平性(feirness)。
その底に棲む禍々しい暴力性。
房江の優しさと慈愛、
次々に襲いかかる災厄に負けない強さと時折のぞくお茶目な一面。
一方で、彼女の人生に、べったりと張り付て離れない不安(不幸)の陰。
伸仁の脆弱な身体に宿る、
しなやかな強さを持つ心。
そんな、大きな