【感想・ネタバレ】優駿(下)のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年09月08日

最後の最後まで、どうなるかわからない小説だった。
様々な人の細かい心の揺れ動きが積み重なり、最後のオラシオンのダービーで集大成を迎えるという構成で、自分も物語の一員になったかのような読後感だった。
佐木がミステリアスなままだったが、彼には幸せになって欲しいと思う。

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Posted by ブクログ 2023年08月17日

 人が生きていくには、重要な決断がいる時がある。和具平八郎は、最初の会社のピンチで、資金が足りない時に、手元にある金を競馬に注ぎ込んで、勝つことで会社のピンチを切り抜けた。運を天に任せる野蛮な勇気がある。その競馬で負ければ、会社も倒産していた。そして、会社の規模は大きくなり、今度は大きな会社に吸収合...続きを読む併される事態を迎える。思い切ってリストラするのか?倒産するのか?吸収合併されるのか?悩み続ける。日本の中小企業の経営者は、そんな悩みを常に持っているものだ。なるべく職員を残して、自らが退任する道を選ぶ。
 和具平八郎は、オラシオンの馬主である。そのオラシオンを手に入れたいがために、平八郎の会社を乗っ取ろうとする奴がいた。しかし、あくまでもオラシオンは個人所有だった。手持ちの馬を売っても、オラシオンは売らなかった。なぜなら、オラシオンは娘久美子に譲り、また久美子は腹違いの弟誠に譲ったのだ。誠は、腎臓移植しなければ生きていけないという状況にあった。その希望がオラシオンだった。それぞれの祈りを抱えて、オラシオンはダービーを目指して走り続ける。
 オラシオンの騎手の奈良は、苦しい記憶を抱えて、オラシオンに乗る。奈良は、ミラクルバードという馬に乗っていた。ミラクルバードは馬に蹴られて顔が歪んだ馬だったが、滅法強い馬だった。奈良はミラクルバードから、レースの運び方を教えてもらった。クラシックレースの皐月賞に、奈良は寺尾にかえさせられた。そして寺尾に「前にいてる馬の後ろに、ピタッとつけさすんや。行くに行かれへんから落ち着きよる。そうさしといてから外に出すんや」とアドバイスした。それを実行した寺尾は、レースで接触事故を起こして、馬も寺尾も死んでしまう。ミラクルバードは、顔を蹴られた経験から後ろにつくことでパニックに陥るのだ。奈良は、寺尾を殺したのは俺だと思った。そこから、奈良は立ち直って、死を恐れぬ騎手に一回り大きくなったのだ。オラシオンの心が読める奈良のリードは、走ることで死にいたることもあるという覚悟が必要だった。オラシオンの妙なくせ、それを常に心配した。
 騎手の持つ独特の雰囲気や仕草、そして騎手仲間のさまざまな噂がなんとも言えない世界でもある。結局は、名誉、お金が絡むことによって、足を引っ張る醜い社会でもあるのだ。
 そして、オラシオンは連勝して、ダービーに臨むのだった。
オラシオンを生み出したトカイファームの博正は、もっと牧場を広げ名馬を作りたいと思っている。そして、淡い恋心を馬主の久美子に抱く。久美子は、博雅をジャガイモと呼んでいた。その素朴な性質と優しい目に久美子も惹かれていく。ジャガ男とジャジャ馬の久美子の行方は。そして、和具平八郎はどう再起するのか?誠はどうなるのか?
 牧草には、ケンタッキーブルーグラスがいいのか。いい馬を作るにはいい草がいる。いい草を作るにはいい土地がいるという指摘が重要だ。チモシー、オーチャード、レッドクローバー、ホワイトクローバーなど、みんな必要だ。

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Posted by ブクログ 2023年05月14日

サラブレッドに関わる人々の思いを感じる事ができる作品。生産者の、願い(祈り)や血統への期待、未来への想いが伝わり、読後はより深く「競馬」というブラッドスポーツを楽しめるようになること必須。上下巻に渡る長編だが、中弛みする事なく最後にピークを持ってくる内容は圧巻。ダービー前のこの季節にぜひ!

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月17日

額に白い星印を捺された漆黒の仔馬、オラシオン、祈り。

オラシオンの誕生、育成から宿命のダービー戦までの三年間。
二分何十秒かで決まる勝負の世界。

和具平八郎の私生児として15年間生きた誠は「お父さんの腎臓をください。お願いですから」と言いながら亡くなっていきました。
平八郎は「俺は生涯、俺を許さ...続きを読むん」と言うほかありませんでした。

平八郎の秘書の多田は久美子と一線を越えようとして、手前で逃げられ、そして平八郎をも裏切ります。

そして騎手仲間の寺尾を殺したと思い込んでいる騎手の奈良がオラシオンに乗ります。

トカイファームの渡海千造は亡くなりますが、息子の博正と平八郎、久美子には共通の夢が生まれます。

オラシオンがスタンドに姿を見せたときのスタンドからの喚声と拍手。
オラシオン。何十年に一度の馬。
博正と久美子の夢は叶うのか。

最後のダービーの文章は、大変勢いがあり競技場の雰囲気が伝わってきて上手いです。
圧倒されました。
さすが!と思いました。

吉川英治文学賞受賞作。

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Posted by ブクログ 2021年05月22日

映画版のラストしか知らなかったけど、非常に満足した作品だった。競馬に対する見方が劇的に変わった。おすすめの本を聞かれたときに紹介したい一冊になった。

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購入済み

優駿

2021年02月17日

一頭の馬をめぐり、馬主、生産者、騎手、厩務員、予想屋まで全て網羅。
あとがきにあった、よくわからず・・・いえ、わかりすぎです。
競馬好きは一度は読んだほうがいいですね。
ただ、ただ素晴らしい。

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Posted by ブクログ 2020年05月07日

再読完了、やはり当方が読んだ古今東西のhorse racingものでNo.1。
古き良き時代から社台、もっといえばノーザン1強への競馬シーンとしてはあまり面白くないともいえる流れが背景に見え隠れするなど、リアリティという意味でも出色。
また、そんな知識無くとも人間ドラマとして結構重厚だし、ちょっとし...続きを読むた推理的要素も兼ね備えている。
東京優駿が無観客で施行されることとなった今こそ読みたいMasterpieceであること、当方レベルでは何ですが保証します。

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Posted by ブクログ 2019年08月11日

メモりたくなるような指南がたくさん出てきました。宮本輝の小説はそんなことがたくさんあります。ストーリーも楽しく読ませて頂きました。

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Posted by ブクログ 2016年11月27日

”生まれる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように早く、嵐のように烈しく名馬の天命をたずさえて生まれますように。”北海道の小さな牧場で生を受けた一頭のサラブレッドオラシオン。北海道の大自然が育む緑と光の原野の中で育ち、順調に競走馬への道を歩み始める。そして生産者、馬主、騎手、調教師等の命をモチ...続きを読むーフにしたそれぞれの物語が、最終章のダービーに向かって一気に駆け抜ける。。特徴は、北海道の雄大な自然から、レース展開や騎手の駆け引きまでをきめ細やかな筆致にて描く。そして各章毎に、登場人物の視点を小気味よく切り替えて、それぞれが抱える人生の悲哀がダービーを駆け抜けるオラシオンの一点に集約されるよう伏線を絶妙にばらまいている事。文字を追う毎に、映像がくっきりと浮かんでくるリズム感の良さは圧巻です。 凛々しさと清冽さを感じる唯一無二の5★作品ですよ〜。

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Posted by ブクログ 2016年08月05日

物語は、牧場、騎手、馬主、社長、秘書と様々なシーンの主人公が、それぞれの想いを胸に精一杯生きた生き様が交錯する展開にグイグイ惹かれた。
また話の流れも色々人が死んだり予想外の展開に驚きの連続で一気読みでした。

余談だけど、若い頃、競馬に没頭して、北海道にわたり馬に乗っていた頃を思い出した。物語の時...続きを読む代は物心ついてないけれど、メチャメチャ勉強したので、色んなワードに心踊りました。単枠指定、阪神3歳S、数え年、ノーザンダンサー系が席巻とか、、、

牧場に行きたくなってきたなぁー

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Posted by ブクログ 2014年12月13日

宿命の血を引いて生まれた一頭のサラブレッドが、関わったすべての人間たちをその苛烈な運命の渦に巻き込みつつ、最後には生きることへとふたたび駆り立ててゆく。レースシーンの、胸が圧迫されるかのような緊迫した描写が見事。ちなみに、映画版では多田時夫を演じた石橋凌がはまり役だった。

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Posted by ブクログ 2013年09月11日

オラシオンという、一頭のものすごく強い馬を取り巻く人たちの壮大なるドラマ。ほぼフィクションであるが、実在する人物(大牧場の父と息子たち)も描かれており、楽しめる。最後は共同馬主制度の創成期についても書かれ、馬主として今後どうしていくかということを考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2013年01月14日

競馬のことを知らなくても、競走馬とそれに関わる人たちの運命や、かすかな心の動き、息づかいを十分に楽しむことができる。

専門用語もふんだんに使われていて、かつそれを説明するような表現も全くないため、意味が分からないまま読み進めて行くことになるが、それでもここまで入り込むことができるのは、作者の巧みな...続きを読む表現力があってのことだろう。いちいち興ざめな解説をされると、流れがつかめず、客観的に読んでしまうことがある。

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Posted by ブクログ 2012年10月01日

優駿「オラシオン」を巡る人々の群像劇。
読み終わった後に残る、あの爽やかな読後感はなんとも言えません。

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Posted by ブクログ 2012年09月17日

馬主の電機メーカーはついに吸収合併。しかもその遠因はオラシオンの獲得にあった。また、馬主の娘が事実上の馬主となる。その娘も父の隠し子について気づく。さらに父の秘書も。動揺する娘と秘書の危険な逢引、そして寸前での娘の祈り。また、オラシオンの生産者のガンによる他界。オラシオンを追い、新聞記者を辞めて、競...続きを読む馬情報の世界で一山当てようとしている男とその愛人。そして、「オラシオン」に祈りを込めた青年。かれらの「祈り」を込めて、オラシオンは日本ダービーに臨む。しかし、体調は万全ではない。疲れが残っているようだ。その異常に、馬主の娘が気付く。そして、「ゲートオープン」・・・・騎手の不安な気持ち、そして、予想外のレース展開、果たしてオラシオンは、日本ダービーを獲得できるのか? 調教師にとっても、日本ダービー獲得は初めての経験だ。人気馬で倍率が1.1倍。関係者の「思い・祈り」をパワーにオラシオンはターフを走る。「電光掲示板の結果は如何に!!」
 夢を描く青年の「オラシオンがダービーに勝ったら」という決意。そして、その青年を見守る老ばくろうの「何かやるぞ、と決意した時には、必ずそれを『止めよう』とする力が働くんだ。でもそれを、なにくそっ、って撥ね退けてやる時、物はうまく行くんだ。」という、太平洋戦争も生き抜いた老人の何気ない、でも重い言葉。
 「オラシオン」のレース結果は?そして青年の夢は?最後の日本ダービーの結末に集約される。
 読後も、競馬場の歓声が聞こえて来る様なさわやかな本。長い様で、「上・下」巻、一気に読めます。
 また、馬主の娘と秘書が一線を越えようとする時に、「オラシオン」と言う名の意味が分かる。その謎解きも面白い。また対抗馬の名前、その騎手と娘との、嫌な関係。全部、オラシオンを中心とした人間関係に集約される。
 「あとがき」に評されている様に、読後とても「さわやかな」本です。夏の北海道の緑の草原を吹きぬける風を感じる本。そして、乗馬した時の疾走感を感じる本です。

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Posted by ブクログ 2012年05月19日

《いのち》を主題に、走るために生まれてきたサラブレット『オラシオン』に関わる人々の人間としての業を考えさせられる。馬、犬、人の出産のシーンから始まり、生きていく中で、幾つかの死も訪れる…
それぞれの人生の中で、悩み、苦しみ、決断し夢を生きてゆく。
勇気と夢が湧いてくる。

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Posted by ブクログ 2011年10月07日

宮本輝さん作品は大好きですが、とくに圧倒されました。絶対先にオチやネタばれを見ないよう心がけて読んでました(笑)。
とくにラスト20頁は、本物のレースを見てるくらい興奮しました~。
登場人物たちの生き様が、生々しいです。

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Posted by ブクログ 2011年09月19日

北海道・静内の小さな牧場、トカイファームで主人が一世一代の博打に出て産まれた青毛の馬。

クロと呼ばれたその馬はやがてスペイン語で「祈り」という意味の『オラシオン』と名付けられる。

生産者の愛情、厩舎の思惑、馬主の過去未来、ジョッキーの恐怖等々。あらゆる感情がその馬に乗せられながらオラシオンは恐ろ...続きを読むしく強い馬に成長していく…。


競馬は一度もやったことないが、この馬を取り巻く人間ドラマが幾重にも重なり描かれていることに感動。

もちろんレースシーンも息を呑むほどリアルに描かれていて感動。

こんなに夢中になれる小説は久し振りに読んだ。


本当にこれは凄い小説ですよ。あっぱれだ。

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Posted by ブクログ 2011年09月13日

展開がある程度予定調和なのは否めないけれど、上巻での丁寧な人物描写を土台に描かれてるので全然白けることもなく。

祈りとは、誰かを思い、どこまでも信じることと知る

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Posted by ブクログ 2021年12月17日

競馬を一度もやった事なかったけどやってみたくなる。久美子が牧場仕事やれるか?なんて野暮は言うまい^ ^

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Posted by ブクログ 2021年01月02日

血統だけでは勝てない。運も必要。人も頑張りだけで成功するわけではない。そこに軋轢、敵意、無力感が生じる。1頭の駿馬の誕生からの3年間は登場人物それぞれの生活、気持ちにどんな変化が起ころうと一途で清らかだった。久々に爽やかな読後感が得られた小説だった。2021.1.2

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Posted by ブクログ 2019年03月05日

オラシオンとセントホウヤ、砂田厩舎と増矢厩舎、そしてトカイファームと社だ……吉永ファームの、ライバル関係が出来上がっていく過程に説得力があり、プロットが巧い。いけ好かない登場人物の中でキラリと光るツンデレおじさま、砂田のテキが本作最大の萌えどころだと思う。ただ皐月賞が読ませるだけに、最後のダービーの...続きを読む描写は尻すぼみ感が否めない。

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Posted by ブクログ 2016年10月19日

幾つかの死が存在し、それと対比して生が語られる
人は苦悩の中で生きて死ぬ。 だがオラシオンに挫折は無く
全てがハッピーエンド、そこは拍子抜け。余生も種牡馬入りが保証され 大金持ち万歳
ダービーでの敗北を予想していた。ハズレ

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Posted by ブクログ 2013年04月14日

一頭の馬、競馬にかかわる人々の人間模様が絶妙に描かれている。
下巻になるとより読み進めたくなり、一気に読破した。

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Posted by ブクログ 2013年04月07日

吉川英治文学賞。
北海道のトカイファームという小さな牧場で生まれた「額に白い星印を捺された漆黒の仔馬」。「オラシオン(祈り)」と名付けられた競走馬が、周囲の人々から様々な想いを託され日本ダービーに出走する。
単に馬の出世物語ではなく、馬の血統・遺伝と人を対比し、それを取り巻く人の命の繋がり、尊厳を描...続きを読むく。
「母の肉は子の肉、子の骨は母の骨なり」

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年07月28日

最後のダービー戦は燃えました!!!
オラシオンがスタートボックスに入った時、奈良はいつもとようすが違うことを察知しましたが、読んでいる私まで、大丈夫か?ここでダメになってしまうのか?とハラハラしました。
オラシオンの内側に入る癖がこんな重要な場面で出てくるなんてと思いましたが、最後は運よく優勝を勝ち...続きを読む取れてほっとしています。
輝さん、こんなところに種をまきよって・・・!笑

博正、久美子、平八郎、多田、奈良、そして読者の誰もが、このダービー戦ではオラシオンの勝利を心から<祈った>のではないでしょうか。
奇跡としか言えないこのサラブレットが、千造という小さな産馬者の夢から生まれ、様々な人の手によって育てられていく。
そして、オラシオンに関わる人々のヒューマンドラマが幾重も重なり合いながらダービー戦での勝利へと祈りが一つになった。

輝さんは複数の人のドラマを一つの物語に描くのが上手ですが、優駿ではその構成が秀逸です。
氏の作品の中でも、久々に興奮する小説に出会ったような気がします。

唯一、トカイファームの今後や博正と久美子の将来について書かれていないのがの心残りです。
ですが、きっと博正は平八郎と事業を発足し、手元に多田を置いて新しいスタートを切ったのではなかろうか、と勝手に想像しております。
また、博正と久美子の関係も相変わらず縮まりそうにないが、いずれ時を経て共にトカイファームを大きな牧場にしていくのではないだろうかと、そんな空想を広げ、私の中で優駿を終わらせたいと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年10月25日

やはり競馬に疎いので、感情移入できず。
最後のダービーのシーンはもっと盛り上げてくれればよかったのに。

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Posted by ブクログ 2014年07月06日

馬の本なんてとっつきにくいなーと思って読んだけど、おもしろかった!上下一気に読める。
そして、競馬場に行って本物の馬を見たくなった。今見たら、みんなオラシオンに見えてしまうかも。
登場人物や物語の筋は、流転の海シリーズに似ている気がした。熊吾と平八郎とか。。。

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Posted by ブクログ 2014年01月22日

登場人物一人一人の人生がそれぞれに描かれていて、人の様々な思いが読み取れた。感動するほどではなかったが、後から余韻がじんわりとくる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年09月26日

下巻に来て、出ました。怪物オラシオンの「馬じゃない」ほどの俊足。
まさかこのまま・・・勝ち続けました。
「馬はロマンだ」って言っても、なかなか手に取る様にみえるものではないので、こうやって御伽草子の屏風みたいに見せてくれたことに驚き。

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Posted by ブクログ 2011年12月12日

マキバオー的なストーリーを想像してたが、サラブレッドの成長物語というよりは競馬を軸にした人間ドラマといったかんじだった。

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