あらすじ
母の肉は子の肉、子の骨は母の骨なり……。いのちの哀しさ尊さに突き当りながらも、虚無と喧噪のなかで人間の業(ごう)から逃(のが)れられない男たち、女たち。だが、そういう彼らも、いつしかオラシオンの美しさ危うさに魅せられて一体化し、自らの愛と祈り、ついには運命そのものを賭けていった。やがて迎えるダービー決戦――。圧倒的な感動を呼ぶサラブレッド・ロマン。吉川英治文学賞受賞。
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Posted by ブクログ
感想
読み進めていくうちにどんどん続きが気になる展開だった。オラシオンという馬にかけた様々な人々の夢を見た。最後の最後まで分からない展開にシビれた。
ノーザンダンサー、プリンスリーギフト、ボールドルーラー、ダビスタ思い出す。種付けの方法が原始的なのにびっくりした。また、種付けが不発に終わるとお金がパァになるギャンブル性を含んでいることから、生産者の方もヒヤヒヤと、期待が入り混じった思いがある。人工的だが、自然も相手にする難しい競技だ。
あらすじ
オラシオン号は3歳になり、吉永ファームで育ったことにより、立派な馬体になっていた。吉永会長は博正に、馬に良い環境を整えることで馬が強くなると教える。オラシオンを買い付ける時に、増矢が一芝居打って、懐を温めたことが和具にバレ、和具は厩舎を増矢から砂田に変える。
博正はトカイファームを大きくするべく、藤川老人が目をかけている牝馬を譲ってもらい、吉永ファーム門外不出の牡馬を500万円で掛け合わせてもらえる約束を取り付ける。
博正は一世一代の勝負をしたイェローマトロンおを受胎させたが、ハナカゲを病気で失う。和具も息子の誠を腎不全で亡くす。オラシオンがデビューした頃に和具工業は大手からの圧迫を受けて業績不振に陥る。
和具工業は結局、三栄電機に吸収合併され、和具は社長を退任する。その原因となったのが佃社長がオラシオンをどうしても欲しいという理由だった。オラシオンは順調に4連勝して皐月賞へと駒を進める。和具の秘書だった多田は自分が和具社長を裏切って、合併に加担したとして引け目を感じていた。
一方、オラシオンの騎手の奈良は、オラシオンをどう乗りこなせば良いのか悩んでいた。オラシオンのゴール前の異様な負けん気にも畏怖していた。
オラシオンは皐月賞、NHK杯を制していよいよダービーへ。和具はオラシオンがダービーを勝てば、トカイファームと一緒に牧場をやろうと決めていた。果たしてオラシオンはダービーを制することが出来るのか。
Posted by ブクログ
額に白い星印を捺された漆黒の仔馬、オラシオン、祈り。
オラシオンの誕生、育成から宿命のダービー戦までの三年間。
二分何十秒かで決まる勝負の世界。
和具平八郎の私生児として15年間生きた誠は「お父さんの腎臓をください。お願いですから」と言いながら亡くなっていきました。
平八郎は「俺は生涯、俺を許さん」と言うほかありませんでした。
平八郎の秘書の多田は久美子と一線を越えようとして、手前で逃げられ、そして平八郎をも裏切ります。
そして騎手仲間の寺尾を殺したと思い込んでいる騎手の奈良がオラシオンに乗ります。
トカイファームの渡海千造は亡くなりますが、息子の博正と平八郎、久美子には共通の夢が生まれます。
オラシオンがスタンドに姿を見せたときのスタンドからの喚声と拍手。
オラシオン。何十年に一度の馬。
博正と久美子の夢は叶うのか。
最後のダービーの文章は、大変勢いがあり競技場の雰囲気が伝わってきて上手いです。
圧倒されました。
さすが!と思いました。
吉川英治文学賞受賞作。
Posted by ブクログ
オラシオンはさぞかっこいい馬なんだろうな、、と想像するとワクワク。皐月賞、NHK、そしてダービー。馬の仕上げの大変さなど改めて分かる。和具社長、馬主の久美子、ファームの博正、ジョッキー奈良。死神元秘書の多田。そして、誠。みな一生懸命生きている。すごくいい小説だった。
Posted by ブクログ
最後のダービー戦は燃えました!!!
オラシオンがスタートボックスに入った時、奈良はいつもとようすが違うことを察知しましたが、読んでいる私まで、大丈夫か?ここでダメになってしまうのか?とハラハラしました。
オラシオンの内側に入る癖がこんな重要な場面で出てくるなんてと思いましたが、最後は運よく優勝を勝ち取れてほっとしています。
輝さん、こんなところに種をまきよって・・・!笑
博正、久美子、平八郎、多田、奈良、そして読者の誰もが、このダービー戦ではオラシオンの勝利を心から<祈った>のではないでしょうか。
奇跡としか言えないこのサラブレットが、千造という小さな産馬者の夢から生まれ、様々な人の手によって育てられていく。
そして、オラシオンに関わる人々のヒューマンドラマが幾重も重なり合いながらダービー戦での勝利へと祈りが一つになった。
輝さんは複数の人のドラマを一つの物語に描くのが上手ですが、優駿ではその構成が秀逸です。
氏の作品の中でも、久々に興奮する小説に出会ったような気がします。
唯一、トカイファームの今後や博正と久美子の将来について書かれていないのがの心残りです。
ですが、きっと博正は平八郎と事業を発足し、手元に多田を置いて新しいスタートを切ったのではなかろうか、と勝手に想像しております。
また、博正と久美子の関係も相変わらず縮まりそうにないが、いずれ時を経て共にトカイファームを大きな牧場にしていくのではないだろうかと、そんな空想を広げ、私の中で優駿を終わらせたいと思います。