宮本輝のレビュー一覧

  • にぎやかな天地(下)
    きれいな、ゆたかな世界。
    私には聴こえるだろうか。

    ○倦まず弛まず焦らず、ひとつずつ進めて完成させる。それが仕事というものなのだ(135頁)

    ○アクセルを踏みながらブレーキも一緒に踏むような生き方はあきまへんで
    ○勢いのあるときは、がんがん行きなはれ。それは年齢とは関係おまへん。若い人が伸びてく...続きを読む
  • にぎやかな天地(上)
    先日、「テマヒマ」展を観に行って、数日前には、能登でていねいにじっくり作られたいしりを使ったお料理を堪能して、輪島で漆塗りの奥深さに感銘を受けてきたばかりで、偶然手にした本。いろいろなものが私の中で繋がってきて、ドキドキわくわくしてきた。発酵食品のことももっと知りたいけれど、作り手が気になる。そんな...続きを読む
  • 約束の冬(上)
    れぞ宮本輝の世界!!
    あくまでも私の中での宮本輝さんのイメージですが。
    久々に大満足。
    特別哀しいできごとがある訳でもなく、ごく普通の日常(多少のゴタゴタはあるけど)が描かれてるだけなのに、なんだか泣けた。
    読み終わって幸せな気持ちになれた。

    もしも10年前に「10年後、地図の場所でお待ちしてい...続きを読む
  • 道頓堀川
    道頓堀川の淀んだ泥水から、乞食の絵描きは人間の深緑色を見る。その緑色に惹かれて身を滅ぼしていった女と、その男が喫茶店に飾る美しい翡翠の水差し。


    宮本輝の小説といえばまず一番に「業」だと思う。
    人間の、どうにも自分の力ではあがらえない行動や心情や関係をありありと書く。


    自分の範疇を超えた業は自...続きを読む
  • 夢見通りの人々
    夢見通りに生きるそれぞれ生き様が切実な重みをもって胸に迫ってくる。深く重い人生観を啓示する宮本先生の技量に心底酔わされる。
  • 天の夜曲―流転の海 第四部―
    シリーズを読破してしまいたくないためだけに先に引き伸ばしているのだけれど、ややもすれば明日にでも本屋に寄りかねない勢いにさせられてしまう中毒性の読み物。第4作は宮本さんが主人公の年齢により近づき、主人公の心理描写にリアリティが増しているように感じる。運命の岐路に立つ波乱万丈の主人公とその家族の行く末...続きを読む
  • 幻の光
    表紙の裸婦絵は高山辰雄でとても印象深い。
    表題作「幻の光」ほか短編3作を所収で、どれもしっとりとした雰囲気の中で人間の情念を丹念に描いた作品になっている。
    「幻の光」は前夫の自殺した理由をわからず空虚にさまよう心を抱えながら再婚し、奥能登曾々木で暮らす主人公が、前夫に語りかけることで自らと対話すると...続きを読む
  • 五千回の生死
    この本、確か三読目。9つの話からなる短編集。何れも短編の妙味を玩昧できる。とりわけ「眉墨」。年老いた母親が死の病の影に怯えながら、就寝前にせっせと眉墨をひく手を休めない様子を眺める息子。その描写は、あたかも一幅の淡墨画のような美しさをたたえ、生命の持つ逞しさと儚さが合わせ鏡のように映る。いずれの話も...続きを読む
  • 地の星―流転の海 第二部―
    読み終わった本は、貰ってくれる人に上げているが
    このシリーズは残している…。

    次作との間隔が長く待ち遠しいが、時々読み返したり…。
  • 夢見通りの人々
    もはや個性が強すぎるを通り越し、とてもクセのある人が何故か集まっている夢見通り。
    各章ごとに書かれる人々の日常は、それぞれ何らかの問題を抱えているが、夢や希望を持っている。
    しかし、結局思い通りの結果にはならず、とてももどかしい。
    だけど、その上手くいかない感じがやけに人間らしくて、しっくりく...続きを読む
  • 優駿(下)
    《いのち》を主題に、走るために生まれてきたサラブレット『オラシオン』に関わる人々の人間としての業を考えさせられる。馬、犬、人の出産のシーンから始まり、生きていく中で、幾つかの死も訪れる…
    それぞれの人生の中で、悩み、苦しみ、決断し夢を生きてゆく。
    勇気と夢が湧いてくる。
  • 血脈の火―流転の海 第三部―
    流転の海第三部。松坂親子の物語の折り返し地点にあたる本作では、両親の愛情を一身に受けながら健やかに成長し、自由闊達で多彩な側面を見せ始めている息子・伸仁の姿が印象的です。豪胆で情に厚い父親のもとで心の贅沢を思う存分味わってきた作者ならではの豊かな感性が第三部の壮大な人間ドラマの中にも息づいています。
  • 青が散る(上)
    大学生に「おすすめの本は」と聞かれたら私は迷わずこれを勧める。 20代、それより若いうちに必ず読んで欲しい
  • 幻の光
    宮本輝短編Weekだった。この文体、この視点、純文学なんだよな。。すごいな。たぶんこれ書いたとき、俺と同年代か年下、すごいな。。
  • 五千回の生死
    もう圧倒的に好き。二十歳の火影以降、宮本輝さんの短編集ははずれなし。こんな短い文章でなんでここまで、揺さぶられるのか。憧れ。
  • 睡蓮の長いまどろみ(下)
    長編上下巻もの。アッシジと北海道に行きたくなった。親子の絆って。。相変わらず心を揺さぶる安定感。ナイス。
  • 月光の東
    14年位前の作品で、ひとりの女性をめぐって
    その女性と一緒にいた後、自殺した夫の妻の日記と
    その女性と中学時代に同級生だった男の語りで、物語が進むのです
    米花という女性が、どのように生きてきたのか
    全てのことが明らかになることはないのですが、
    傷ついた妻の再生と、米花の壮絶で固い意思、女としての弱さ...続きを読む
  • 森のなかの海(下)
    宮本輝さんの作品はいつもそうだと思いますが、すごく流れやリズムが良くて一度読み始めるとやめられず、一気に読んでしまいました。

    下巻に出てくる「森は木を拒まず、海は川を拒まず」という言葉にとても惹かれました。
    他にも素敵な言葉がたくさん詰まっていて、何回も読み返したくなる作品です。
  • 青が散る(上)
     読んだのは、二十数年前になります。
     知人が廃品回収に出そうとしていた書物がもったいなく思い、それらを譲り受けた中にこの本がありました。
     私が読んだ本は上下巻に分かれてなく一冊の文庫本で、分厚く字も小さくて「読めるかな」と読み始めましたが、時代背景や大学の雰囲気そして登場人物などが私が在学してい...続きを読む
  • 骸骨ビルの庭(上)
    心に響くお話でした。
    すべての登場人物に奥行があって、引き込まれました。
    戦争によって、孤児とならざるを得なかった子供たち、
    戦地での体験に、心縛られる大人たち、
    誰もが必死で生きねばならなかった終戦直後の暮らし。
    ただ生きるのではなく、人として崇高に生きる事の大切さ。
    魂魄…魂は心だけではなく体に...続きを読む