Posted by ブクログ
2009年10月04日
「因果倶時」原因が生じた瞬間には結果もそこに生じているという意味。それがテーマとなっている一冊。人の境遇と言うのは因果倶時の凝縮であり、つまりそのような境遇になる原因は自分自身が作っているのだと言う。宮本作品には宿命だとか運命だとかを背負っている登場人物が多いのだけど、本書の中では苦しみや悲しみを背...続きを読む負って生きてきた主人公の母親が「みずから因を作れば、その果はそのとき瞬時に私の中に宿るのだ」「幸福のために新しい因を作りたい」と言っている。宿命というのは本当にあるのかもしれないけれど、新しい因を作ることはできる。そう思えば希望が持てる気がする。宮本作品の深さを知った一冊。苦戦したけど、最後まで読んでよかった。