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Posted by ブクログ
富山編
伸仁9歳(小4)
大阪での不本意な出来事が重なり、親子で富山に移り住むことになったところから、第4部は展開していきます。
富山の稲穂に囲まれた道を、熊吾と伸仁がサイクリングをする場面があります。折にふれて熊吾は伸仁に色んな話をします。
熊吾が伸仁に語る言葉をノートに書き写しながら読みました。心にすっと入っていく言葉の数々は、私自身の生きる糧になっていると言っても過言ではないと思えます。
「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」(p64)
「自分ができることは、ケチな料簡を起こさずに、親身になってしてあげにゃあいけん。見返りを求めちゃあいけんぞ。自分がしてあげたことに対して、何等かの見返りを求めるっちゅうのが、父さんはいちばん嫌いじゃ。こっちがしてあげたことに対して、相手が裏切りみたいなやり方で応じても、知らん振りをしちょれ。それが、いつかお前という人間に福徳のようなものを運んでくる。…」(p138)
「そういう意味では、お前のお母さんは、古里を持たん人じゃ。赤ん坊のときに、父親も母親もおらんようになった。…」→伸仁への二人の愛情が深く深く伝わるセリフが続いています。(p147)
「少々変わった人間ちゅうのは、ぎょうさんおるもんじゃ。…」→世の中の常識について語っています。(p296)
まだまだ書ききれないです。
後に発行された「田園発港行き自転車」は、富山が舞台になっていて、この第4部に通じるものがあります。そちらもまた再読したいです。
Posted by ブクログ
我が人生のバイブル(笑)
「流転の海」第四部
気の遠くなるような長旅を経て富山へと辿り着いた松坂一家を出迎えたのは、想像を絶する豪雪と先行きの不安を暗示する高瀬夫婦の応対だった。
程なく、
高瀬勇次の人間を見誤っていた事に愕然とする熊吾の元に、河内善助の急死の知らせが届く。
河内の告別式の為に帰阪した熊吾は、千代麿から自動車ブローカー・久保敏松と引き合わされ、観音寺のケンとも再会する。
そして、観音寺のケンから房江と二人で自分の子を身籠った女・百合を預かって欲しいと頼まれる。
やがて、高瀬との事業に見切りをつけた熊吾は、高瀬にゴム付きの手袋の事業を薦め、自身は単身大阪への帰還を決意する。
久保敏松と中古車販売会社を起こす元手作りの為、名刀・関の孫六を手放す決意をするが、その道すがら再会したストリッパー西城あけみの顔に大火傷を合わせ、新たな柵を産んでしまう。
過去に大怪我を負わせた海老原太一を頼り、関の孫六を買い取って貰い資金を得るが、その日の食べ物にも窮する房江らの窮状を知りながら、森井博美(西条あけみ)との肉欲に溺れる熊吾。
一方、富山での暮らしに言いようのない行き苦しさを感じる房江は喘息を発症してしまう。
そして、房江に約束した期日を過ぎても事業の進展が遅々として進まない中、今度はなんと久保敏松によって新事業に参加した業者の預り金を含む全財産を持ち逃げされてしまうのだった。
万事窮した熊吾は、森井博美の手術に用立てた金を返して貰い、博美との関係に終止符が打たれる。
やがて、
富山に戻った熊吾は、伸仁を富山に残し房江を大阪に伴う決意をするのだった。
Posted by ブクログ
宮本輝の流転の海シリーズ第四部。
時は昭和20年年代末、大阪の事業に失敗した主人公は再起をかけて人づてに家族と北陸に移る。が、そこでも物事は順調とはいかず、妻子を置いて大阪へ戻る。慣れない土地に残された妻子は、水が合わない場所での生活に四苦八苦する。
「子供からおとなへと急速に移行していく際、人相や体型だけでなく、精神も型崩れを起こす。肉体は放っておいても成長するが、精神の型崩れには手当てが必要だ」
「おとなになるっちゅうのは、自分の胸に秘めちょくことが増えるっちゅうことでもあるんじゃ」
「ひとりの人間の心の領域というのは、じつに広大なものです。氷山の一角という言い方がありますが、海面 に出ている氷山は、海底に沈んでいる氷山の数百分の一に過ぎないのと同じように、自分なり他人なりが見える心の部分はその氷山の一角よりもさらに何倍も小さいのです。隠されている部分がいかに大きいかを人間は自分で知ることさえできません」
子どもを持つ身と、こころに深く刺さるセリフが多い。
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