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Posted by ブクログ
「慈雨の雨」とは、高度経済成長下で、松坂熊吾一家の周りに、慈しみの雨が降っていたという意味らしい。
城崎温泉に住むヨネや、蘭月ビルの盲目の少女香根、海老原の死。また、北朝鮮に還る人びととの別れ(北朝鮮に帰らせまいとする、大韓民国系の人びととの間で争いが多発していたのは初めて知った)など、幾つもの別離が一家に押し寄せるが、松坂熊吾は、新しい事業に乗り出していく。
相変わらず、濃いエピソード満載で、飽きさせない。
熊吾も、時々癇癪を起こすが、年齢を重ねて温厚になっている。
そして、伸仁が、いよいよ思春期に差し掛かるところまでが描かれる。
とりあえず第七部に進みます。
Posted by ブクログ
大阪福島・シンエー・モータープール編(伸仁12歳から13歳、中1から中2)
大阪、城崎で、様々な人たちの運命が絡み合うように物語が展開していきます。これから第7部、第8部と、城崎は注目すべき場所となっていきます。
「流転の海読本」(堀井憲一郎著)で第6部の人物関係図を見ながら、一つ一つの場面を思い起こしながら、あらためて「流転の海」の面白さを実感します。
中学生になった伸仁は、房江さんに対する言動も「思春期だなあ」と感じられる場面が見られます。一方で、モータープールに勤めている気難しい佐古田とも仲良く接するなど、伸ちゃんの人柄に温かなものを感じます。
色々書きたいことが頭の中に充満してしまい、上手く表現できません。とにかく面白いです。
第6部も、たくさんの人たちが登場します。また、ムクとジンベエ(犬)や、クレオ(鳩)も、心に残ります。
Posted by ブクログ
柳田元雄の元で、3〜4年の期限付き経営者となった熊吾。
房江は忙しさに追われながらも更年期の症状から解き放たれる。
伸仁は私立中学に合格し中学生となるが、その成長の遅さに不安を感じた熊吾は伸仁の身体の全てを小谷医師に託す事に。
一方、熊吾の新事業の援助を約束した亀井周一郎は、社長の後任に据えるはずの義弟の不正が発覚し窮地に。
そして、末期の癌に罹患している事が判明する。
援助の当てが外れた熊吾は、
房江に内緒で自らが忌み嫌っていたエアブローカーに手を染め伸仁の治療費を捻出していたが、やがて大久保五郎という老人から伸仁を保証人として金を借り、小さいながらも中古車販売店・ハゴロモをスタートさせる。
城崎では、
ヨネの死によって美恵が大阪へと去り、続いて正澄も千代麿夫婦が引き取り、正澄の祖母・ムメも亡くなる。
一人になった麻衣子は実の母親と「ちよ熊」を引き継ぐが、やがて連絡が取れなくなる。
また一方では、
井草の妻のもたらした、
海老原太一の詐欺教唆と借金の証拠となる名刺は、熊吾によって観音寺のケンの手に渡るが、海老原太一が衆議院選挙への出馬を決めて程なく、その自死が報道される。
やがて、一通の郵便が届く。
中にはたった一枚の名刺が…
Posted by ブクログ
宮本輝の自伝的長編小説流転の海の第六部。読み終わって、心に残ったのは、慈雨の音という題名。
いろんな場面でその題名を思わせるエピソードは絡んでくるが、私が感じたのは雨という存在そのものだ。世の中の水が遠い旅を経て、また、雨となって地上に落ちてくる。それは、動物でも植物でも命ある全てのものへの慈しみとして繰り返される。この小説の主人公熊吾は、幼い頃、伯父のところへ預けられ、四書五経から能に至るまでさまざまな教養を叩き込まれる。カッとなったら人を半殺しの目に合わせるような乱暴者でありながら、常に自分の行動や言説を省み、息子の伸仁にも人としての道を説く彼の髄には幼い頃に染み込んだ慈雨が巡り巡ってまた、彼を慈しんでいるからではないだろうか。また、熊吾は、人情に厚い。いろいろな人との関わりの中で、その人の立場に立って最善の方法で心を砕くので、それがまた、巡り巡って自分へと降り注ぐ。まさに、慈雨の雨。
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