あらすじ
昭和34年、中学生になったものの、あいかわらず病弱な伸仁の身を案じていた松坂熊吾だが、駐車場の管理人を続けながら、勝負の機会を窺っていた。ヨネの散骨、香根の死、雛鳩の伝染病、北への帰還事業、そして海老原の死。幾つもの別離が一家に押し寄せる。翌夏、伸仁は変声期に入り、熊吾は中古車販売店の開業をついに果たすが──。「生」への厳粛な祈りに満ちた感動の第六部。
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「慈雨の雨」とは、高度経済成長下で、松坂熊吾一家の周りに、慈しみの雨が降っていたという意味らしい。
城崎温泉に住むヨネや、蘭月ビルの盲目の少女香根、海老原の死。また、北朝鮮に還る人びととの別れ(北朝鮮に帰らせまいとする、大韓民国系の人びととの間で争いが多発していたのは初めて知った)など、幾つもの別離が一家に押し寄せるが、松坂熊吾は、新しい事業に乗り出していく。
相変わらず、濃いエピソード満載で、飽きさせない。
熊吾も、時々癇癪を起こすが、年齢を重ねて温厚になっている。
そして、伸仁が、いよいよ思春期に差し掛かるところまでが描かれる。
とりあえず第七部に進みます。
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大阪福島・シンエー・モータープール編(伸仁12歳から13歳、中1から中2)
大阪、城崎で、様々な人たちの運命が絡み合うように物語が展開していきます。これから第7部、第8部と、城崎は注目すべき場所となっていきます。
「流転の海読本」(堀井憲一郎著)で第6部の人物関係図を見ながら、一つ一つの場面を思い起こしながら、あらためて「流転の海」の面白さを実感します。
中学生になった伸仁は、房江さんに対する言動も「思春期だなあ」と感じられる場面が見られます。一方で、モータープールに勤めている気難しい佐古田とも仲良く接するなど、伸ちゃんの人柄に温かなものを感じます。
色々書きたいことが頭の中に充満してしまい、上手く表現できません。とにかく面白いです。
第6部も、たくさんの人たちが登場します。また、ムクとジンベエ(犬)や、クレオ(鳩)も、心に残ります。
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北朝鮮へ日本人が自ら行くような時代があったのかと、驚いた。市井に根付いた歴史観を学べるのも本書の魅力ではないだろうか。ついに6巻。毎度、面白い。
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時代の息吹を感じられる。
歴史的な経緯を庶民のその時大阪にいた人間として追体験できる。
生半可な現代史よりもリアル。学問では、知ることのできないもの、知覚できないものを、表現している。文学というフォーマットで表現できるものがあることの実例かも。
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柳田元雄の元で、3〜4年の期限付き経営者となった熊吾。
房江は忙しさに追われながらも更年期の症状から解き放たれる。
伸仁は私立中学に合格し中学生となるが、その成長の遅さに不安を感じた熊吾は伸仁の身体の全てを小谷医師に託す事に。
一方、熊吾の新事業の援助を約束した亀井周一郎は、社長の後任に据えるはずの義弟の不正が発覚し窮地に。
そして、末期の癌に罹患している事が判明する。
援助の当てが外れた熊吾は、
房江に内緒で自らが忌み嫌っていたエアブローカーに手を染め伸仁の治療費を捻出していたが、やがて大久保五郎という老人から伸仁を保証人として金を借り、小さいながらも中古車販売店・ハゴロモをスタートさせる。
城崎では、
ヨネの死によって美恵が大阪へと去り、続いて正澄も千代麿夫婦が引き取り、正澄の祖母・ムメも亡くなる。
一人になった麻衣子は実の母親と「ちよ熊」を引き継ぐが、やがて連絡が取れなくなる。
また一方では、
井草の妻のもたらした、
海老原太一の詐欺教唆と借金の証拠となる名刺は、熊吾によって観音寺のケンの手に渡るが、海老原太一が衆議院選挙への出馬を決めて程なく、その自死が報道される。
やがて、一通の郵便が届く。
中にはたった一枚の名刺が…
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過去の行いが今現在に返ってくる。子や孫に戻ってくる。良い事も悪い事も。
自分も自分や家族、関係する人々に誠実にありたいと思う。
全編やはり雨の印象が残る回でした。
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すごく楽しみにしていました。伸仁が中学生か…なんだか感慨深く思いました。これからの展開が、楽しみではありますが、一家にとってはつらいことが続くであろうことを思うと複雑な気持ちです。でも、その中で何を見せてくれるのか…やっぱり楽しみですね。
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宮本輝の自伝的長編小説流転の海の第六部。読み終わって、心に残ったのは、慈雨の音という題名。
いろんな場面でその題名を思わせるエピソードは絡んでくるが、私が感じたのは雨という存在そのものだ。世の中の水が遠い旅を経て、また、雨となって地上に落ちてくる。それは、動物でも植物でも命ある全てのものへの慈しみとして繰り返される。この小説の主人公熊吾は、幼い頃、伯父のところへ預けられ、四書五経から能に至るまでさまざまな教養を叩き込まれる。カッとなったら人を半殺しの目に合わせるような乱暴者でありながら、常に自分の行動や言説を省み、息子の伸仁にも人としての道を説く彼の髄には幼い頃に染み込んだ慈雨が巡り巡ってまた、彼を慈しんでいるからではないだろうか。また、熊吾は、人情に厚い。いろいろな人との関わりの中で、その人の立場に立って最善の方法で心を砕くので、それがまた、巡り巡って自分へと降り注ぐ。まさに、慈雨の雨。
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この巻では松坂家の周囲で何人もの人が亡くなった。
また、蘭月ビルで伸仁と仲良くしていた敏夫と光子の兄妹が、母の再婚相手と一緒に北朝鮮へ行くことになった。
幾つもの別れがあったせいか、全体的に『静』な印象が強い。
熊吾自身は管理人生活は期間限定ということもあって、早く中古車販売の仕事にめどをつけたいのだが、住込みで駐車場の管理人をやっている以上、時間のやりくりが難しい。
いつも分不相応な規模の事業計画を立てる熊吾に対し、身の丈に合った事業からスタートすればいいと思う房江。
今回は房江の言うことを聞いて、小さな中古車販売店からスタートしたのだが、それでも2足のわらじは大変だ。
加えて、どうも熊吾の健康状態が、この先良くなる気がしない。
伸仁が乳幼児の頃から糖尿病だったのに、一日三度も酒を飲み、旨いものを食べ、運動しない。
伸仁が成人するまで、なんとしてでも生きるのではなかったのか?
逆に伸仁は、高価なビタミン注射のおかげですっかり健康体となり、反抗期に突入。
松坂家は、静かに崩壊…家族がバラバラな方向に向かっていきそうで、次の巻がちょっと怖い。
さて、北への帰還事業というのが、当時の一大イベントだったようで、北朝鮮派と韓国派の対立が血なまぐさいものだったらしい。
この辺の経緯は詳しくないけれども、結果についてはわかっているので、日本で暮らしたくて家出までしたのに、母の再婚相手に連れられて無理やり北朝鮮に渡ることにされた敏夫と光子の運命が悲しい。
大人になった時、伸仁は彼らのことをどう思うのだろうか。
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中学生になった伸仁。
そして中古車店を立ち上げた熊吾。
熊吾一家も変わろうとしている。
ひ弱だった伸仁も逞しさを見せ、熊吾も相変わらず情が濃い。
北朝鮮に旅立つ兄妹を鯉のぼりを振って見送るシーンが心に残る。
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相変わらずの読みやすさ。第1部から30年以上をかけてかかれていると考えると、リアルタイムで追いかけていたら次の展開が待ちきれなくなっていただろう。
伸仁青年は優しさのなかに思春期がちらほらし出し、お母さんにも口答えするように。少しずつ家族3人が大人の会話になってきたのが微笑ましい。
お父さんまだまだ稼がないと(自分に言い聞かせてます)。
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漸く私の幼少期から、自我が芽生えてきた時代の描写が多く語られる様になってきた。熊吾、伸仁の表情は闊達だけれど、房江の気持ちは落ち込んでいる様に感じる。
1~6巻迄、わき目も振らず読んできた、次にどういう展開があるのか楽しみ半分怖さ半分。
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流転の海第六部。息子も中学生になり主人公一家も、高度経済成長期の波にのっていきます。第六部で、全巻からのつながりももちろんあるけど、ここから読んでも十分面白い。比較的、一家の生活が裕福に落ち着いているので、安心して読めた一巻。あと二巻で終了らしいが、こっからどのように展開していくのかなー。
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今回のタイトル『慈雨の音』、筆者あとがきによりますと、”この時代の松坂熊吾一家を取り巻く物語の周辺と細部に、人間への慈しみと言うしかないものが、横溢していたと感じるからである”と、納得。
いくつもの別離をこの優しい雨が洗い流してくれる、そんな、しっとりとした第6部。
熊吾一家も何とか再スタートするわけで、ついつい応援してしまうのですよ、脳内で。偶にやらかすと(ノ∀`)アチャーと脳内でAAが浮き出てくるのですよ、ホンマに。こう毎日この世界に入っていますと、俺が松坂熊吾で松坂熊吾が俺で状態で、生き方に影響が出てきそうで怖いです。妻を殴ってはいけませんよ(熊吾さんDV野郎なんで)
さあ、今夜から第7部。熊吾さんの新しいビジネスの成功をお祈りいたします。
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久方ぶりに続き、読んだ。
忘れてたこともたくさんあって、
読んだけど思い出せてない。笑
熊吾もおじいになったなあ〜
糖尿で死ぬなよ。借金、伸に残すなよ。
でも60来ても、向こう気の強さ、憧れるわ。
欲しいわ、それ。ください。
房江も年をとって図太くなって。
熊吾にもっも思いやりや温かい言葉があれば、まだ救われるのに、開き直りの危うさが感じられて怖い。
伸は頼もしい〜。
伸のシーンだけはほっこりする。
もう怪我しませんように‥。可愛い。
結構、読むのに時間を要した。
流転の海は揃えてから読むことをお勧めします。
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全巻完結と聞き何年ぶりかで復活再読。大阪に戻りモータープールの管理人として働く松坂熊五一家。
余部鉄橋からのヨネの散骨、飼犬ムクの出産と仔犬ジンベイの世話、伝染病にかかった飼鳩の世話、再び余部鉄橋からの解放。日々成長する伸仁の言動に心震わせられる。
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この頃から自分の父が子供の頃の話を聞いた時代背景がちょくちょく出てきて想像を掻き立てられました。松坂家がこれからどうなっていくのかが楽しみです。