【感想・ネタバレ】地の星―流転の海 第二部―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

人間の縁の不思議、父祖の地のもたらす血の騒ぎ……。妻子の健康のため、郷里に引きこもった松坂熊吾の雌伏の三年。戦後史を背景に自らの“父と子”を描く連作長編。

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何故、田舎暮らしを決意した男とその家族の話がこんなにも面白いのだろう。流転の海で出会った人達とのドラマの続きも、故郷での昔馴染みとのあれこれも、それぞれの生き方を見事に描いており、読み応えがある。悲しいところや辛いところもあるにはあるが、熊吾の人柄と才覚で一つは一つ乗り越えていく様には勇気をもらえる。この続き、熊吾がいかに大阪でまた花を咲かせるのかが楽しみである。

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2025年08月19日

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第2部の舞台は、熊吾の故郷・愛媛の南宇和です。(伸仁が4歳から5歳まで)。
病弱な妻子の健康を思って、事業の志半ばで郷里にひきこもり、伸びやかな自然の恵みのなかで、我が子の成長を見守ります。
その郷里でも、増田伊佐男など、強烈な人たちが登場します。様々な人たちが関連しあって、目が離せない展開ですが、第2部でも熊吾の言葉に注目しながら、まとめたいと思います。
(p46から)
「世の中というものは、この天と地が、いっしょくたになっちょるようなもんじゃ。お前はまだチビ助やが、そんなお前の中にも、この空よりもでっかい宇宙がある。お前の中に、お天道さまも、お月さまも、ぎっしりつまっちょる」
(p420から)
「心根は、きれいでなきゃあいけんぞ」
五歳の子に、〈心根〉という言葉が理解できないことは承知していたが、熊吾は、いま伸仁にわからなくてもいいのだと思った。
「だんだんおとなになっていくと、いろんな悪さをするもんじゃ。しかし、人間として根本のところで心根がきれいじゃと、神様が助けて下さる。お前にどんな困ったことが起こっても、お前の心根がきれいじゃったら、いろんな神さまが集まってきて、お前を護って下さるんじゃ」

折にふれて伸仁に語りかける熊吾の言葉は、心に深く沁みてきます。物語の展開もドキドキの連続ですが、熊吾の珠玉の言葉も注目しながら読むと、楽しみが倍増します。

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2025年06月02日

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第一部に引き続き、一気に読んでしまった。
主題がありすぎるんだけど、ごちゃごちゃしてない感じがすごい。次も楽しみ。

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2023年12月14日

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人間の複雑さ、極まれり。ゴタゴタとした中で、徐々に熊吾が、房江の人物が立ち上がってくる。

感動的な場面があったかと思うと、裏切る様に短絡的に動く熊吾。支離滅裂で、非常に賢いところと、非常に愚かなところと。様々な感情と側面が同じ人間の中に同居しており、そんな人間が集まって、すったもんだしている。

いっ時の言動は、大事だが、それらは表層的なものであり、それらを生み出す性分、変えられない業が人間にはあるということか。

作中で、宿命、環境、自分の中の姿を見せない核という、三つの敵について熊吾が考察するところが秀逸。人間の言動は、意識的なものだけでなく、これらによって影響制限を受けていることを、自覚することも、大切なのかもしれない。

二巻に入り、ようやく読み慣れてきて、小説世界に段々と没入し始めている。様々な、教訓めいたエピソードが随所にでてくる。

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2023年09月10日

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この物語は愛媛県南宇和、城辺の熊吾の
故郷での物語。伊佐男と言うならず者が
小さい頃に怪我をさせられたらことを
根に持ち嫌がらせをしたりする。
所々熊吾の行動が可笑しくて笑ったり
しました。この人の本は3冊目、
面白かった

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2023年08月06日

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第二部
舞台は南宇和郡一本松村。
愛息・伸二の五歳までの成長を軸に熊吾が己の人生の意味を模索する。

異常な執念で熊吾への恨みをぶつける地元のヤクザ・増田伊佐男との再会。

伊佐男の画策した闘牛をキッカケに出会った深浦港の網元・和田茂十の、県議選出馬に伴う選挙参謀としての活動。

茂十の罹患…そしてその死。

妹・タネとその情夫・政夫の為にお膳立てしたダンスホール。
政夫の転落死。

ついに、長きに渡って絡み続けた伊佐男の自死を経て大阪へ戻る決意を固める。

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2022年07月15日

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後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』

田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。

松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる人物、事件、風景とも魅力的で細かく小説家見てきたような嘘をつきの嘘のクオリティがとにかく高い。なんというリアリティ。

『いなかというところは、保守性とか閉鎖性などという言葉でひとくくりにしてしまえない底意地の悪さがうごめいている。思いも寄らぬ陰湿な噂話はたちまちひろまるが、耳に痛い真実は頑固に拒否し、つねに数の多いほうに味方し、体制におもねり、権威に平伏し、人々の顔と腹はいつも異なる。熊吾は、四国の辺鄙な地にある己の郷里を決して愛していなかった。それどころか、ほとんど憎悪していたと言ってもよかった。』

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2019年01月05日

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ネタバレ

戦後の大阪で財を成したが 病弱だった子供を育てるために故郷愛媛の田舎に帰って ここでも熊吾流に大活躍する
自然豊か そして人間も彩り豊かで 命を狙う極悪人から 地味豊かに包み込んでくれる善人まで 味わいが濃い そんな中で人が死に生まれる 
次巻活躍するだろうと思うとその幼子からも目が離せない

年の田舎暮らしの後 新しく家を買った場所は大阪梅田の西の方 といえば二つの川が流れる輝さんが昔々暮らした場所ではないか 
三巻も楽しみ

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2017年02月09日

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主人公のまわりではいろんな事が起こり、ストーリーはどんどん進んで行く。人間の内面を深い考察でえぐって行くところは興味深い。また、ストーリー展開が早く目まぐるしいため、感想というより次の展開が気になる。一つ上げれば、伊佐男からの恨みがどんな風に熊吾に襲いかかり、熊吾はどう対応するのどろうか?と重いながら読み進めたが、以外な結末を迎えた。

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2021年04月14日

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この本を読みながら、読んでいるとずいぶんと疲れる本だ。
と感じることだ。

宮本輝の父親を モデルにして
戦後の波乱期のなかで 50歳になって 子供を授かって
子供と妻のために 郷里に戻り
そこで、自然と健康を取り戻させようとする 松坂熊吾の
父親として 生きていく姿 がある。

伸仁は まだ4歳で 不確かな自己の中に
閉じた人生をおくっている。
房江も 鮎を手で捕まえるという 妙技があるなかで
田舎伝説ができて、噂になるほどの美人であるが。
イメージとして 樋口可南子を思い出した。

宮本輝は この本を通して 日本の昔からある 道徳と躾を
克明に刻んでおこうとしているんだなと思った。

その本を読むには 体力のいる 作業である。
多分 日本という国の流れている 精神は 疲れさす何かが
あるのだと思う。

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2013年08月18日

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ネタバレ

2巻も1巻に引けを取らず面白かったです!
エネルギッシュ、骨太、なんと表現したらいいのか・・・とにかくとても深く、強い作品です。
表現力も豊かでね、
牛殺しのシーンは、夢にも出そうなくらいインパクトが強かった・・・
読みながら怖すぎて手が震えました。

人間は50歳を過ぎても日々成長です!DVの熊吾も少しづつまるくなりました。。

すごくいい本だったけど、子供がいない夫婦についての音吉との会話には私、ちょっと傷つきました。

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2012年12月03日

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読み終わった本は、貰ってくれる人に上げているが
このシリーズは残している…。

次作との間隔が長く待ち遠しいが、時々読み返したり…。

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2012年05月28日

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流転の海、第二部「地の星」。面白かった。
主人公の熊吾が大阪から、故郷の愛媛県の南宇部でのお話。ダンスホールを作ったりとクソダメに息子が落ちたり、鮎を掴んだり。色々あった。

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2025年07月03日

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『流転の海』第二部。
五十歳にして授かった病弱な息子(宮本輝がモデル)と妻の健康のため、事業をすべて引き払い、郷里の愛媛県南宇和に引きこもった松坂熊吾。

昭和の田舎の色濃い空気が漂っている。
現代ではめったにお目にかからない、暴力や、色恋や(婚外子が非常に多い)、ヤクザ者や、戦争帰りの人や、四国の闘牛、選挙、うわさ話などなど、エピソードがいちいち濃いなあ。
戦争で家族を失った人も数多く、また、医療や衛生状況が発達していないからか、病死する人もあまたいる。

『流転の海 読本』なる本も購入し、索引ですぐ人物がわかる優れものなのだが、まだ読んでいない行く末もわかったりするのが玉にきず。
とりあえず、第三部に進みます。

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2025年04月13日

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前作を読んで1年以上経ってしまったんだなー印象深い作品だったから忘れられないけれど細かい部分は忘れているな。読本を片手に復習しながら読んだ。相変わらずの破天荒な熊吾の人生の一部をのぞき見した気分になれた。このシリーズは順番に読むつもりでいるけれどどこから読んでも楽しめるようになっているようだ。振り返りや過去の事柄の説明もあるから読んでるうちに思い出せた。この物語を完結する時はどんな感動があるのか楽しみだ。次は1年以内に読むつもりでいる。

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2025年01月11日

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この長編第2部をあっという間に読み終えた
そのぐらい夢中にさせる作家宮本
第3部も読む前から楽しみだ
人生悩むことも多いが、たいしたことないか

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2024年12月29日

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感想
熊吾のパワフルでむちゃなところは眉をひそめるところがあるが、なぜか目が離せない。

熊吾や音吉などの人物評や人間こうあるべしみたいなやり取りはそのまま納得するものではないが、その人物のこれまでの体験や人生を通して知ったことを聞いているようで面白い。


あらすじ
流転の海、第二弾。

熊吾は宇和島に帰り、2年が経った。

田舎では幼い頃に喧嘩した増田というヤクザに出会い、因縁をつけられたり、妹の不倫相手のどうしようもないヒモ男の世話や、網元の和田を議員にする相談など、忙しい日々を過ごしていた。

そんな中、辻堂が裏切った井草が金沢で結核を患い、死にかけている。親友の中国人の周の愛人であった節子を囲っていると聞き、金沢へ駆けつける。

南宇和に帰り、和田茂十の選挙参謀として奮起するが、茂十がガンであることが分かり、選挙を諦める。

その後、隣りの復員した音吉の案でダンスホールを始めるが、妹の夫の政夫が、ホールの窓から転落して亡くなる。最初は盛況だったホールも伊佐男の嫌がらせで客足が遠のく。

その後、伊佐男は部下に裏切られて命を狙われる。部下に殺される前に拳銃自殺を図る。熊吾はこの1年で多くの人の死を目の当たりにして、故郷を去り、大阪に戻る決意をする。

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2024年08月27日

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松坂と伊佐男の確執を軸に郷里での生活がテンポよく綴られている。
全体的な感想としては第一部とさほど変わらず、松坂の人間性の魅力が感じられる作品だった。改めて、松坂の人生哲学には倣うべきところが多くあると感じた。

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2024年08月25日

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男と女みんなスケベ。スケベに始まりスケベで終わる。スケベが人生を狂わせる、そんなスケベ劇場に心震えます。人類が誕生してから何一つ変わってないんでしょうね。正に不◯倫は文化と言う世界。石田純一さんお元気でしょうか、神田正輝さんも心配です。

正に課長島耕作ワールド。

因みに昭和30年ごろの金沢大学が舞台になったシーン、もちろん城内キャンパス、学生時代の風景が目に浮かびました。

まだまだ続きまっせ!(オモロー!

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2023年12月20日

Posted by ブクログ

なぜかわからないけど、すごく話しに引き込まれる。すごく奥行きがあり、人物がいきいきとえがかいるからかなぁ。
ただ、前巻に引き続いて主人公が、妻に暴力をふるうシーンだけは嫌な気分になる。

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2023年07月08日

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宮本輝氏のご一家がモデルの大河小説第2部。妻子の健康のため、一度郷里に戻った松坂熊吾らを描く。第1部から続いている、戦争を弾劾する姿勢は胸を打つ。

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2022年10月31日

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病弱な息子のために大阪の事業を畳み、故郷の伊予に帰った松坂熊吾。
彼と妻の房江、彼らを取り巻く人々。
そして40年前の熊吾への恨みを晴らすために現れたやくざ者の伊佐男。
熊吾は彼とどう対峙していくのか。
圧倒的なキャラクターの熊吾が、美しい伊予の景色の中で描かれる。

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2021年04月29日

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ネタバレ

五十歳をすぎてようやく授かったわが子は非常に身体が弱かったので、大阪での事業を処分して、故郷愛媛の南宇和に戻った熊吾。
それから2年、伸仁は健康になり、妻の房江もまた田舎の生活になじんでいるようで、このまま南宇和で生涯を過ごしてもいいと思いはじめる熊吾。

しかし、そこに現われたのが、子ども時代の熊吾との相撲のせいで片足に一生残る障害を負った「わうどうの伊佐男」だ。
特別に残虐な極道となった伊佐男の執拗な嫌がらせに、不穏な空気が全編に渡って漂う今作は、しかしなかなか読みごたえのあるものだった。

一年の間に熊吾の周辺にいくつもの死が訪れる。
それは悪いことが起きる予兆のようでもあり、運命の動く転換点のようでもある。

主人公である熊吾は、器が大きく、先見の明があり、情に篤い人間であるが、反面、短気で暴力的な面もあり、一言では言えない複雑な人物造形はとても魅力的である。
第一部で、学のないのがコンプレックスと言っていたが、その割には古典や漢文の造詣も深い。
今は、一人息子の伸仁を無事に成人させることが生きる目標となっている。

南宇和では人々は貧しく、狭い人間社会の中で、息苦しかったり足を引っ張りあったりもするが、最終的には助け合わねば生きて行けないのだ。
熊吾はそれを踏まえながら、故郷の人々に金を貸し、力を貸し、知恵を貸す。
そのことがまた、新たな物語を創り出していく。

いろんなことにけじめをつけて、時間は熊吾がまた大阪に戻ってくる。
波瀾万丈な物語はまだ続く。

仏教では法華経以外の経では、二乗とと女人も成仏を説かなかったのだそうだ。
女人はさておき、二乗とはインテリのこと。
なぜ二条は成仏できないのかについての熊吾の見解。

”インテリは、他人のことに無関心なやつが多い。他人のために自分の心を傾けたり、他人の苦労を思いやって、何かを行動するっちゅうことがない。いっつも傍観者で、そのくせ屁理屈を並べて、自分よりも知識のない人間を腹の底では見下しちょる。まあ、つまりエゴの塊みたいで、そういう手合いは成仏できんちゅうんじゃ。”

最近はインテリじゃなくてもそういう手合いはいるなあ、と思った次第。

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2021年04月23日

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「何がどうなろうと、たいしたことはありゃあせん」

大好きな女房をぶん殴るのだけはやめれば良いのに、とは思っていたが、はたまた。

退屈なページがない不思議な物語。

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2021年04月14日

Posted by ブクログ

はたして人の運命というのは生まれ持った天命なのか、はたまた人が手繰り寄せる人命なのか。破天荒ながら義理人情に厚い松坂熊吾を中心に、様々な人間臭いドラマが次々に巻き起こる。重厚な人間ドラマを描いた超大作。いや、何が大作って、1990年に第一部が出版されて以来、いまだに完結されてないっていうね。ちゃんと完結される日が来るのだろうか。

とりあえず4卷まで読み終えて印象に残ったフレーズ。はちゃめちゃな熊吾さんだが、こう生きて行く上でとても重要な「核」になるような発言が散りばめられてて、ハッとすることが多いのがまたこのシリーズの魅力。
・子供ってのは、血がつながったかけがえのない存在だが、それでもやはり理解が及ばない他人でもある。だからこそ、心を砕きに砕いて分かろうとする。この他人だけども真剣に分かろうとする相手が子供。子供がが居ないとこの経験が出来ない。その結果、やはり他人に対してどうこか機微を知らん奴が多いように思う。
・自尊心より大切なことがあることを知らにゃいかん
・この子が将来どんな素敵な子に育ち親を喜ばせるかわからん、草の根を食ってでも育てにゃいけん。

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2016年12月04日

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病弱な息子の健康のために熊吾は郷里の南宇和に居を移す。野放図だが人情に厚い熊吾をめぐり起こる事件の数々。五木寛之の「青春の門」を思いだした。13.11.6

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2013年11月06日

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松坂熊吾が愛媛の郷里に引き上げてからの話。やっぱりこのおじさん、田舎へ引きこもってもただではいない。
彼をめぐる人々の人間模様、様々な事件。
伊佐男という人間も最後まで憎めなかった。本当に嫌なやつは出てこないと思った。

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2013年04月04日

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熊吾の故郷南宇和に舞台を移し、田舎の風土因習のなかでの人間関係や愛憎、家族の繋がり、血脈がもたらす運命など読み応え満載。宮本輝すごい。

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2021年05月02日

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 体の弱い妻と息子のために大阪での商売をやめ、神戸御影の家も売り払って、故郷愛媛の南宇和へ帰ってきた熊吾。ここでも存在感あるキャラを発揮する。暴れ牛ややくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら、涙もろく人情深い。裏切ったやつでも、あの野郎と思いながらも手をさしのべずにはいられない。会社の金を猫ばばして逃げた男が見つかった。しかもそいつは仲間の女にも手を出していたと聞き、怒りに震えながら会いに行ったはずなのに、不治の病で臥せっているそいつの顔を見るや情がわいて、高額な薬を送ってやるとか、恋人を裏切ってそいつの愛人になった女にも援助の手を差し伸べるとか、なんせ助けが必要な人をそのままにはしておくことができない、困った人だ。
 しかし、このおっさんの長ーい話にあと7話分もつき合うかどうか……それほどワクワクするような話でもないしなぁ。3話めからはまた大阪に戻って新しい商売を始める。うーん、もうどうでもいいなぁ。

 でも南宇和の昭和の情景はとっても良かった。海、川、畑、山、豊富な自然の中で、熊吾が怒りに燃えながら自転車をこいだり、息子とのんびり歩いたりしている光景が映画のように目に浮かぶ。5歳の息子が肥溜めに落ちてフンまみれになった。嫁の房江は素手で鮎をつかみ取りできる。そんなちょっとしたエピソードも心に残る。とりわけ、親子3人で星空を眺めに夜風吹く野原を歩くシーン。熊吾は5歳の息子を肩車し房江と手をつないで歩く。暗い中、花の香りが漂ってくる。その後は息子ひとり家に帰らせ、夜空の下でコトに至るわけだが……。もう故郷に戻ることはないだろうと決心した後の田舎の風景はキラキラ輝いている。


 熊吾は時々哲学的になる。例えばこうだ。
子は親を選べないのではなく、子は親を選んで生まれてくるのだ。ならば、その二人の男と女を両親にしなければならなかった理由とは何だろう。…とかね。


 もうひとつこの話に入り込めない理由のひとつは、作者の女性蔑視的な視点が垣間見えること。熊吾が狙った女は必ず落とせると自信を持ってることもそうだが、例えば第二部では「釈迦は、生涯にぎょうさんの経を説いたが、法華経以外の経では、二乗(インテリ)と女人の成仏を説かんかったそうじゃ。どんな女も本質的に嫉妬深くて、愚痴っぽくてどろどろの欲望につつまれとるそうな。しかし、もっと掘り下げて女の特徴を見ると、どうも女っちゅうもんは、非はいつも相手にあり、何か事が起こると相手のせいにし、自己反省っちゅうことをせん。」などと言わせてる。えらい言いようだ。釈迦の説法でそういう言葉があるのかもしれないが、解釈はまったく作者のねじ曲がった考え方だと思う。

 

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2019年06月26日

Posted by ブクログ

地元に帰るっていう人が、聞いてもないのに何故帰らなければいけないのかを説明するパターン、そんな理由で自分自身も納得してないのに、子供や親の健康を言い訳にして帰郷する…が、やっぱり納得できずに大阪に帰る…という話。

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2014年05月16日

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