【感想・ネタバレ】天の夜曲―流転の海 第四部―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

昭和31年、熊吾は大阪の中華料理店を食中毒事件の濡れ衣で畳むことになり、事業の再起を期して妻房江、息子伸仁を引き連れ富山へ移り住む。が、煮え切らない共同経営者の態度に、妻子を残して再び大阪へ戻った。踊り子西条あけみと再会した夜、彼に生気が蘇る。そして新しい仕事も順調にみえたが……。苦闘する一家のドラマを高度経済成長期に入った日本を背景に描く、ライフワーク第四部。

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富山編
伸仁9歳(小4)
大阪での不本意な出来事が重なり、親子で富山に移り住むことになったところから、第4部は展開していきます。
富山の稲穂に囲まれた道を、熊吾と伸仁がサイクリングをする場面があります。折にふれて熊吾は伸仁に色んな話をします。
熊吾が伸仁に語る言葉をノートに書き写しながら読みました。心にすっと入っていく言葉の数々は、私自身の生きる糧になっていると言っても過言ではないと思えます。
「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」(p64)
「自分ができることは、ケチな料簡を起こさずに、親身になってしてあげにゃあいけん。見返りを求めちゃあいけんぞ。自分がしてあげたことに対して、何等かの見返りを求めるっちゅうのが、父さんはいちばん嫌いじゃ。こっちがしてあげたことに対して、相手が裏切りみたいなやり方で応じても、知らん振りをしちょれ。それが、いつかお前という人間に福徳のようなものを運んでくる。…」(p138)
「そういう意味では、お前のお母さんは、古里を持たん人じゃ。赤ん坊のときに、父親も母親もおらんようになった。…」→伸仁への二人の愛情が深く深く伝わるセリフが続いています。(p147)
「少々変わった人間ちゅうのは、ぎょうさんおるもんじゃ。…」→世の中の常識について語っています。(p296)
まだまだ書ききれないです。
後に発行された「田園発港行き自転車」は、富山が舞台になっていて、この第4部に通じるものがあります。そちらもまた再読したいです。

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2025年06月06日

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自尊心より大切なものを見つける。
自分で実際に見聞きしたものだけを信じる。
心根の腐るような言動はしない。
何が起きても、大したことはない。
主人公から我が子へ送る言葉が、心に響く。
些事にとらわれず、我が道をひたすらに突き進む主人公の生き方が、かっこいい。
妻が喘息にかかっている情報を得ても、すぐに連絡をせずに、目の前の雑事をさらっと片付ける姿がなんだか心に残った。

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2024年02月29日

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自尊心より大事なものを持たねばならない。

富山へ移った松坂一家。
様々な苦難が降り注ぐ。
その中で、地味溢れる言葉に溢れている。

徐々に苦しくなる熊吾と家族。追い詰められて来ているが、その中でどう生きていくのか。。

熊吾のパワーが落ちて来ている感じもある。
そして、人間の悪意や行動も、善悪ではなく、一つの自然現象なのかも知れない、という印象が浮かぶ。

後書きで、今後の描かれる内容にも期待が高まる。どの様なことが生じるのか。早く次が読みたくなった。

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2023年09月17日

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我が人生のバイブル(笑)
「流転の海」第四部

気の遠くなるような長旅を経て富山へと辿り着いた松坂一家を出迎えたのは、想像を絶する豪雪と先行きの不安を暗示する高瀬夫婦の応対だった。

程なく、
高瀬勇次の人間を見誤っていた事に愕然とする熊吾の元に、河内善助の急死の知らせが届く。

河内の告別式の為に帰阪した熊吾は、千代麿から自動車ブローカー・久保敏松と引き合わされ、観音寺のケンとも再会する。
そして、観音寺のケンから房江と二人で自分の子を身籠った女・百合を預かって欲しいと頼まれる。

やがて、高瀬との事業に見切りをつけた熊吾は、高瀬にゴム付きの手袋の事業を薦め、自身は単身大阪への帰還を決意する。

久保敏松と中古車販売会社を起こす元手作りの為、名刀・関の孫六を手放す決意をするが、その道すがら再会したストリッパー西城あけみの顔に大火傷を合わせ、新たな柵を産んでしまう。

過去に大怪我を負わせた海老原太一を頼り、関の孫六を買い取って貰い資金を得るが、その日の食べ物にも窮する房江らの窮状を知りながら、森井博美(西条あけみ)との肉欲に溺れる熊吾。

一方、富山での暮らしに言いようのない行き苦しさを感じる房江は喘息を発症してしまう。

そして、房江に約束した期日を過ぎても事業の進展が遅々として進まない中、今度はなんと久保敏松によって新事業に参加した業者の預り金を含む全財産を持ち逃げされてしまうのだった。

万事窮した熊吾は、森井博美の手術に用立てた金を返して貰い、博美との関係に終止符が打たれる。
やがて、
富山に戻った熊吾は、伸仁を富山に残し房江を大阪に伴う決意をするのだった。

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2023年04月13日

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精力的に事業を興しては成功させていた熊吾にも暗雲立ち込めてきて読み進める事が中々つらくなってきた。
宮本輝氏の作品で描写される「生と死」「明と暗」「幸と不幸」「貧と富」等々、この第4部は暗の部分が強くのし掛かってきたような感じがした。第5部は生の象徴でもある伸仁の活躍に期待している。

メモ 古今亭志ん生「二階ぞめき」
提婆達多

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2022年04月19日

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昭和31年中華店食中毒大阪から富山へ。共同経営者煮え切らなく単身大阪へ。踊り子西条あけみと関係。中古車販売順調に見えたが部下が資金持ち逃げ。息子伸人仁を富山に残し大阪へ。高度成長期

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2016年02月04日

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主人公の熊悟はとにかくいろんな事にチャレンジしたり、世話を焼いたり、裏切られたり、感謝されたり、心配させたり、次々に事に対峙して行く様は常にアクティブだ。年を重ね若干強引さやパワフルさが影を潜めたが、生命力に溢れている。また、子煩悩であり、なんだかんだやっても妻を愛している。今後の展開が楽しみだ。

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2014年03月08日

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シリーズを読破してしまいたくないためだけに先に引き伸ばしているのだけれど、ややもすれば明日にでも本屋に寄りかねない勢いにさせられてしまう中毒性の読み物。第4作は宮本さんが主人公の年齢により近づき、主人公の心理描写にリアリティが増しているように感じる。運命の岐路に立つ波乱万丈の主人公とその家族の行く末がまるで自分のことのように案じられるまでにただただどっぷりと作品に浸かっている自分を発見するのみである。

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2012年07月12日

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新しい土地で再出発したのに、次から次へと失敗。離れ離れになった家族はそれぞれに苦労しながらなんとか一年を過ごす。特に主人高の妻の孤独さの表現はなかなかで、今まで激動だった前作より心の深い描写が際立っていたと思う。

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2011年08月12日

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今までの3巻とは違った雰囲気。
初めから幸先の良いスタートではない。
富山の美しい自然はあれど、慣れない土地で家族が離れ、寂しい生活をする。
この巻ではずいぶん房江に感情移入をした。
最後は少し希望がもてるようになっている。次の巻に期待したい。

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2025年11月08日

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流転の海、全九部中第四部。

今回は富山編。
富山の中古車業者に懇願され、妻子ともども富山に引っ越すが、着いた日の大雪に始まり、一家には受け入れがたいことばかり。早々と富山に見切りをつけるのだった。

今も、富山では宮本輝は北日本文学賞の選者になっていたり、室井滋が館長をつとめる「高志の国文学館」でも大きな扱いを受けている。また、近年でも富山を舞台にした小説を何冊も書いているが、この『天の夜曲』を読むと、決して富山を手放しで賛美しているわけではない。

特に、母の房江など、これといった理由もないのに体調を崩したり、一日も早く大阪に帰りたいと思っている。
しかし、宮本輝がモデルの伸仁は、ここでもうまい具合に仲間を作って、世渡り上手さを発揮しているのだった。

細かいことを言えば、文中の富山弁が少々怪しいことだろうか。それを言えば、熊吾の伊予弁も地元の人が読むと違和感があるのかも。ドラマや小説あるあるなのかもしれない。

とりあえず第五部に進みます。

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2025年09月19日

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ネタバレ

大阪での仕事に行き詰まり、心機一転富山で出直そうとする熊吾。
しかし、実際に富山に行ってみると、共同経営者の優柔不断さが気に入らず、妻子を残したまま一人大阪に戻ってしまう。

確かに事業を興すにはある程度の思い切りの良さが必要なのだろうが、ここにきて熊吾は運から見放されたかのように、やることなすことが上手くいかない。
人と金とのタイミングがことごとくずれている。
占い師の態度といい、なんだかこのまま坂を転げ落ちていくような不安に襲われてしまう。

ただ、困窮しているとはいえ、寿司屋で寿司を食べ、タクシーを使い、困っている人には金を渡してしまう。
遂に房江は自分の着物と指輪を質に入れるまでになるのだけど、あまり悲壮感がないのが人徳ということなのか。

相変わらず伸仁は体が弱いようだけど、生命力というか、人の中で生き抜いていく力は強い。
そして、同年齢の子よりもいろいろ発達が遅いようだけど、そのことに対して熊吾がまるごと受け入れているところがよい。
無理に同級生レベルに押し上げようとするのではなく、この子はそういう子なんだ、と。
ただ、人として道を間違えず、心身が健康であればいい、と。
だから伸仁は実にのびのびとやんちゃ小僧に育っている。

どうか家族三人がまた一緒に暮らせるようになりますように。

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2021年07月23日

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妻と子を富山に残し、大阪で再起を図る熊吾。
そんな彼に色々な試練がかかる。
伸仁と同じように幼い頃に富山で暮らした筆者にとって、富山の風景は心に刻まれているのであろう。
富山の田園風景の描写は瑞々しい。
顔面に大火傷を負った、西条あけみの描写が痛々しい。

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2021年06月01日

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冒頭よりまさかの富山への転居。

「運」が下降線をたどっていく感じを、歯を食いしばって好転させようともがく日々。相変わらずのテンポは心地よいが、スカッ、とできない内容ですね。

「自分の生命力を信じることが強い運というものの流れに乗るのだ」

離ればなれになる伸仁は大丈夫かな?親の立場としては耐えられないなぁ。

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2021年04月29日

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第4部のあとがきを読んで、第1部からこの4部迄執筆に20年を要した事が分った。
今既刊になっているシリーズを読んでいて良かったと思う。
多分4巻までに20年は自分にとっては耐えられないかも知れない、これは自分が置かれていた環境、人生観の辺か迄含めて考えると、同じイメージを持ち続けれる事が出来なかったんじゃないかと思う。

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2019年07月01日

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はたして人の運命というのは生まれ持った天命なのか、はたまた人が手繰り寄せる人命なのか。破天荒ながら義理人情に厚い松坂熊吾を中心に、様々な人間臭いドラマが次々に巻き起こる。重厚な人間ドラマを描いた超大作。いや、何が大作って、1990年に第一部が出版されて以来、いまだに完結されてないっていうね。ちゃんと完結される日が来るのだろうか。

とりあえず4卷まで読み終えて印象に残ったフレーズ。はちゃめちゃな熊吾さんだが、こう生きて行く上でとても重要な「核」になるような発言が散りばめられてて、ハッとすることが多いのがまたこのシリーズの魅力。
・子供ってのは、血がつながったかけがえのない存在だが、それでもやはり理解が及ばない他人でもある。だからこそ、心を砕きに砕いて分かろうとする。この他人だけども真剣に分かろうとする相手が子供。子供がが居ないとこの経験が出来ない。その結果、やはり他人に対してどうこか機微を知らん奴が多いように思う。
・自尊心より大切なことがあることを知らにゃいかん
・この子が将来どんな素敵な子に育ち親を喜ばせるかわからん、草の根を食ってでも育てにゃいけん。

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2016年12月04日

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熊吾大阪に戻る。
房江とノブちゃんは富山に残る。
私的にあけみさんはけばいお姉さまだと思ってたけど意外とヤンキーっぽいところがあった。後2作で完結。

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2014年10月11日

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熊吾は、家族を連れて富山に移り住む。接する人たちは全て良い人たちばかりではない。運命は降りかかってくるものではなく、自分が選んでいったもの。13.12.10

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2013年12月10日

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熊吾が、家族を連れて、富山に行く。
高瀬勇二、桃子の家に身を寄せることにするが、
高瀬の小さな器量に改めて、ビックリする。熊吾は、人を見る目がないという。
観音寺のケンから,妊娠した百合を預かることに。
それで、熊吾は、結局は、大阪で一旗あげるべく、画策を始める。
資金もないので、関孫六を因縁のある エビハラに売りつける。
房子は、富山で、不安となり、更年期障害がひどくなり心因性喘息にかかってしまう。
一方、熊吾は、西条あけみの災難が降りかかる。
逆に、そのことで、深い関係となる。金の切れ目が、運の切れ目。
新しく旗揚げした 中古車の販売の仕事は、スタートしたが、
久保に、会社の持ち金をすべて、盗まれる。
そこでも、人を見る目がないと嘆く。
熊吾は、転がり落ちて行く。運が悪いと片付けられなくなる。

そういう中で、伸仁は、すくすくと育って行く。
読みながら、熊吾の苦しい思いが伝わってくる。

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2013年08月06日

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流転の海の第4部作目。熊吾がこの苦しい状況を、この先どうやって乗り越えていくのか、続きも楽しみです。

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2013年07月20日

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富山で再興を期しながら、再び大阪での事業再開を目指して妻の房子と息子の伸仁を残し帰阪。西条あけみとの関係も危うく断ち切り新たな復活を予感させる一巻。続編が気になる。

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2013年01月09日

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ネタバレ

ついに4部まで読んでしまいました・・・あ~もったいない。
4部までに20年の月日がかかってるので、一気に読むのが申し訳ない気持ちです。

自尊心より大切なものを持って生きないといけない、と言う熊吾。
4部では転落の予感を感じつつも、またひとまわり器が大きくなった感じでかっこいいです。
心根をしっかり持って乗り切って欲しい!

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2012年12月11日

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流転の海シリーズ 第四部。毎回熊吾の言葉、特に伸仁に対して語られる言葉に胸を打たれます。読むべき本。

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2012年08月04日

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久し振りに流転の海シリーズを読みました。
第四部目ですが、やはり素晴らしい!!
非常に面白く、人生の奥深さをさり気なく触れさせる。
イイです!

作者、20年の歳月をかけての第四部目と
これも凄すぎる。次の花の回廊も楽しみだなぁ。

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2012年03月03日

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父・熊吾と息子・伸仁の会話が好きです。子供には分からないような難しい話を聞かせる父。でも、息子には何かが伝承されていく。自分に子供がいたら、こんな風に堂々と接することが出来るのか、自信がありません。
過去の羽振りの良さから一転して、金に困り・人に欺され・生活にも困窮するこの章。人としての弱さを実感してから、逆に包容力が深くなった熊吾。人生の奥深さを教えてくれる、一冊です。

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2011年11月23日

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完結編まで一気に購入したので、久しぶりに再読。宮本輝の小説には人生哲学が満載。キャラクターの骨組みがしっかりしているので、人は何を核に生きているのかが手に取るようにわかる。気持ちと違う行動をとっていても、その心根まで見透せる。現実世界でもそんな感情のぶつかり合いで人と人が暮らしているんだけど、そのことに気づかせてくれる、宮本ワールド。これからの完結までの道のりが楽しみで仕方がない。

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2025年08月30日

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人生は流転
第4部は人生においては陰を描かれたものかな
どんな人生にも陰と陽、影と日向があるというのを読み終わって考えた
陰の時どうするかかな

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2025年01月03日

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富山編。松坂熊吾さんやらかして、と言うか、相変わらず人の見る目が無さすぎてあえなく全財産盗まれるの巻。
でも、スケベ55歳は元気にスケベしてます。中年の星がんばれ!
って、この第4部は第1部から20年目の作品なんですねー、ゴイゴイスー。今どっぷり松坂熊吾さんにハマっている50歳の私です。あゝ50台は素晴らしい。
ワテもやったるでー!

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2024年01月02日

Posted by ブクログ

熊吾は、人に偉そうに身の振り方を指図したり文句言ったりするのに、自分のやっている事はめちゃくちゃ。自分の娘ぐらいのストリッパーに親切にしていると思ったら、体目当てでねんごろになるとは閉口した。妻と子供を何のゆかりもない、富山の田舎に放っておいて、やる事がひどすぎる。
4部まで読み進めたが、話しに少し疲れて来たから続きは間を空けよう。

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2023年07月31日

Posted by ブクログ

人間はかくあるべしとやたら説教がましく道徳的。右翼の教科書にはもってこい。日教組だ共産党だとかは子供をダメにするとか・・・・熊吾の博識ぶりには恐れ入る。
沖縄の密貿易の女王「ナツコ」とはウマが合うだろか?
同じ時代を生きた男と女同士で。

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2017年05月10日

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