あらすじ
昭和34年、中学生になったものの、あいかわらず病弱な伸仁の身を案じていた松坂熊吾だが、駐車場の管理人を続けながら、勝負の機会を窺っていた。ヨネの散骨、香根の死、雛鳩の伝染病、北への帰還事業、そして海老原の死。幾つもの別離が一家に押し寄せる。翌夏、伸仁は変声期に入り、熊吾は中古車販売店の開業をついに果たすが──。「生」への厳粛な祈りに満ちた感動の第六部。
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Posted by ブクログ
この巻では松坂家の周囲で何人もの人が亡くなった。
また、蘭月ビルで伸仁と仲良くしていた敏夫と光子の兄妹が、母の再婚相手と一緒に北朝鮮へ行くことになった。
幾つもの別れがあったせいか、全体的に『静』な印象が強い。
熊吾自身は管理人生活は期間限定ということもあって、早く中古車販売の仕事にめどをつけたいのだが、住込みで駐車場の管理人をやっている以上、時間のやりくりが難しい。
いつも分不相応な規模の事業計画を立てる熊吾に対し、身の丈に合った事業からスタートすればいいと思う房江。
今回は房江の言うことを聞いて、小さな中古車販売店からスタートしたのだが、それでも2足のわらじは大変だ。
加えて、どうも熊吾の健康状態が、この先良くなる気がしない。
伸仁が乳幼児の頃から糖尿病だったのに、一日三度も酒を飲み、旨いものを食べ、運動しない。
伸仁が成人するまで、なんとしてでも生きるのではなかったのか?
逆に伸仁は、高価なビタミン注射のおかげですっかり健康体となり、反抗期に突入。
松坂家は、静かに崩壊…家族がバラバラな方向に向かっていきそうで、次の巻がちょっと怖い。
さて、北への帰還事業というのが、当時の一大イベントだったようで、北朝鮮派と韓国派の対立が血なまぐさいものだったらしい。
この辺の経緯は詳しくないけれども、結果についてはわかっているので、日本で暮らしたくて家出までしたのに、母の再婚相手に連れられて無理やり北朝鮮に渡ることにされた敏夫と光子の運命が悲しい。
大人になった時、伸仁は彼らのことをどう思うのだろうか。
Posted by ブクログ
流転の海第六部。息子も中学生になり主人公一家も、高度経済成長期の波にのっていきます。第六部で、全巻からのつながりももちろんあるけど、ここから読んでも十分面白い。比較的、一家の生活が裕福に落ち着いているので、安心して読めた一巻。あと二巻で終了らしいが、こっからどのように展開していくのかなー。