宮本輝のレビュー一覧
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『ぼくは見ました。蜘蛛が空を飛んでいくのです。十年後の誕生日にぼくは26歳になります。12月5日です。その日の朝,地図に示したところでお待ちしています。お天気がよければ、ここでたくさんの小さな蜘蛛が飛び立つのが見られるはずです。ぼくはそのとき、あなたに結婚を申し込むつもりです。こんな変な手紙を読んでくださってありがとうございました。須藤俊国』
16歳の少年が 書く手紙とおもえないような せつじつさと 青い想いがつたわる。
なぜ、向かい側にひっこした留美子と結婚したいと思ったのか。
その理由もなく,多分突然啓示のように、雷に討たれたように、そう思ったのだろう。
この手紙をうけとった 留美子は -
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久々の宮本輝氏の作品。10年くらい前まではよく読んでいたけど、最近は上巻の途中で中断してしまうようなことが多くて。これは久々に貪るように読み、マーカー片手に線をひきまくりました。宮本氏の作品には得てして佐伯さんのような人物が出てくることが多いような。何もかも見透かしたような感じ、人生の指針を与えてくれるような。実際には自分はそんな人物には出会えないので、主人公にかけられた言葉を咀嚼して自分に当てはめて、未来を見据えようと感じさせてくれる。私が今、このタイミングでこの本を読んだ。これもまた必然なのだろう。人生を変えるかもしれない、もしかしたら変わらないかもしれない、決意を迫られている今。
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伸仁が 小学生高学年になる。
それにしても、熊吾、房江の生活がすごい。
電気のないビルで生活する。
外の水道水でシャワーをする。
撤退を潔くする熊吾が残ったものはわずかだった。
60歳をむかえている。
タネをまいたものが少しづつ返されるのであるが。
大きな事業をするには、たりない。
伸仁は、蘭月ビルに住む 妹のタネと寺田が住む家庭に預ける。
蘭月ビルの住人は 朝鮮人を初めてとして、貧乏な人が多い。
そして、訳ありの人である。
ゴーリキーの「どん底」を思い出させる。
関西の特徴がよくでている。
戦後の混乱期から、ある意味では 朝鮮人というのが
独特の意味を持っていた。差別と言う言葉の対象でもあ