宮本輝のレビュー一覧
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祖父が秘めていた秘密をなぜ佐和子にだけしか糸口を開かなかったのか、彼女の生き様や性格を見ていれば納得できるような気がする。
彼女は情に生き、祖父が犯した罪をすべて溶かしてくれるような人物だと思う。すべてを許し、人のためを思う考えを持つ彼女だからこそ祖父は秘密をあかしたのではないだろうか。
マリーのその後、佐和子と滝井、ドイツ人娼婦、なぞはたくさんあるが著書がそれを読者に投げかけている終わり方。マリーやアントセンに会わずじまいだったが、それが彼女が考える今一番いい終わり方だったんだろうと思う。思い出したくない過去としてマリーたちをそっとしておくことも彼女としての気遣いだったのだろう。 -
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エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私もパニック障害(と併発していたうつ病)に苦しんだ時期があり、共感したとともになにか救われたような気がしました。宮本輝さんが出会ったお医者さんがおっしゃっていたという「天才は、ほとんどこの病気を持っています」という言葉を鵜呑みにしようかなと思います。できる限りストレスを少なく、もっとシンプルに生きてい -
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誠実でまっすぐで聡明な主人公の典子。
亡き夫への想いを胸にしまいながら、神戸の老舗レストランを切り盛りしていく姿、周りの人を大切に愛していく姿は誰もが幸せを願いたくなります。
偶然にも私と同い年の主人公。この年の女性が感じる正直な思い、若くもなく年寄りでもない自分。恋でも仕事でも何かを新しく始めるには遅いような、でもこの歳になっても1人の女性であることは変わらない気持ちを持っているということに自分自身も戸惑ったり罪悪感を感じたり自制をかけている姿は歯がゆくもあり共感できることでもあります。
たくさんのストーリーが折り重なっており結末が分からない箇所もあります。それでもこの物語を読んでいると -
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中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。
物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。
雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。
それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。
母の死をきっかけに、紀代志の両親が雅人を養子にしたのだ。
進学を勧められながらも、中学を卒業してタツタ玩具に就職して30年以上。結婚もせず、地道に、地味なおもちゃを売って生き抜いきた雅人。
雅人が少年の頃から憧れていた「星宿海」。
そこから遠く離れた場所で、彼は突然に姿を消した。
「もし子供が女の子だったら『せつ』と -
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ネタバレ感想というか好きな部分。
「個人のプライバシーに唾吐いて、言いたい放題、書きたい放題。それを読むやつも、なるほどそうなのかと、いとも簡単に信じ込む。どいつもこいつも、口舌の徒になる。俺は、そんなふうになりたくないんだ。逢ったこともなければ、話をしたこともない人を、誉めたり、けなしたりするのは犯罪だよ。
コオロギもカブトムシも、鮭も鯨も、雀も鷲も、みんな子どもを産む。どうして人間だけ子供を産むことに不自由になってしまったのだろう。命、ばんざいだ。ばんざい、ばんざい、おめでとう。
時間も偶然も金では買えない。でも、命も金では買えない。金で買えないもののために、金が必要なんだ。金ってやつは、金 -
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蘭月ビルが中心に展開する。伸仁の体験はすごい、としか言いようが無い。同じ年代の娘が私にもいるが、とても伸仁のような人生経験はさせられていない。
この小説は大河だ。大きな流れの中で、読者はストーリーに迫ったり、離れたり。私自身も読み始めてから、相当な時間がかかってしまっている。
一つには、何か悪いことがあると、切なくなり、しばらく読み進められなくなってしまうのだ。しかも前触れも無く、いきなり悪いことが起こるのが、この流転の海である。
今回はモータープールの話が進む。少しずつ前に進み始めている熊吾たちの生活。すでに全10巻が完成している。次はすんなりと読み進められるだろうか。
このような小 -
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カンタンな流れで言うと、大阪に戻ってきて、中華料理屋、雀荘。消防のホースの修繕。プロパンガス。きんつば屋。と仕事を変えていく。台風などいろんな事件があって、うまくいかないが、松坂熊吾のアイデアと実行力で次々と新規事業をモノにしていく。
個人的には、松坂熊吾の糖尿病発覚が大きい。伸仁は7歳にしてヤクザと賭けマージャンをしたりストリップ嬢に花束を贈ったりしている。さらに義母の失踪、杉野信哉との確執、麻衣子が丸尾千代麿が愛人に産ませた子、伊佐男の子どもを産んだ浦辺ヨネとその子との同居生活などが描かれる。
相変わらず松坂熊吾のキャラクターが抜群で、これまで読んだ小説の中でベストキャラクターはこの人 -
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後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』
田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。
松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる