宮本輝のレビュー一覧

  • 長流の畔―流転の海 第八部―(新潮文庫)

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    いよいよ物語も佳境に入ってきた。ハッピーエンドではないのかもしれないけれど、完結が本当に楽しみ。どんな一文で締めくくるんだろう。

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    2019年06月30日
  • 私たちが好きだったこと

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    ネタバレ

    感想というか好きな部分。

    「個人のプライバシーに唾吐いて、言いたい放題、書きたい放題。それを読むやつも、なるほどそうなのかと、いとも簡単に信じ込む。どいつもこいつも、口舌の徒になる。俺は、そんなふうになりたくないんだ。逢ったこともなければ、話をしたこともない人を、誉めたり、けなしたりするのは犯罪だよ。

    コオロギもカブトムシも、鮭も鯨も、雀も鷲も、みんな子どもを産む。どうして人間だけ子供を産むことに不自由になってしまったのだろう。命、ばんざいだ。ばんざい、ばんざい、おめでとう。

    時間も偶然も金では買えない。でも、命も金では買えない。金で買えないもののために、金が必要なんだ。金ってやつは、金

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    2019年05月03日
  • 花の回廊―流転の海 第五部―(新潮文庫)

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    蘭月ビルが中心に展開する。伸仁の体験はすごい、としか言いようが無い。同じ年代の娘が私にもいるが、とても伸仁のような人生経験はさせられていない。

    この小説は大河だ。大きな流れの中で、読者はストーリーに迫ったり、離れたり。私自身も読み始めてから、相当な時間がかかってしまっている。

    一つには、何か悪いことがあると、切なくなり、しばらく読み進められなくなってしまうのだ。しかも前触れも無く、いきなり悪いことが起こるのが、この流転の海である。

    今回はモータープールの話が進む。少しずつ前に進み始めている熊吾たちの生活。すでに全10巻が完成している。次はすんなりと読み進められるだろうか。

    このような小

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    2019年01月15日
  • 血脈の火―流転の海 第三部―(新潮文庫)

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    カンタンな流れで言うと、大阪に戻ってきて、中華料理屋、雀荘。消防のホースの修繕。プロパンガス。きんつば屋。と仕事を変えていく。台風などいろんな事件があって、うまくいかないが、松坂熊吾のアイデアと実行力で次々と新規事業をモノにしていく。

    個人的には、松坂熊吾の糖尿病発覚が大きい。伸仁は7歳にしてヤクザと賭けマージャンをしたりストリップ嬢に花束を贈ったりしている。さらに義母の失踪、杉野信哉との確執、麻衣子が丸尾千代麿が愛人に産ませた子、伊佐男の子どもを産んだ浦辺ヨネとその子との同居生活などが描かれる。

    相変わらず松坂熊吾のキャラクターが抜群で、これまで読んだ小説の中でベストキャラクターはこの人

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    2019年01月09日
  • 地の星―流転の海 第二部―(新潮文庫)

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    後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』

    田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。

    松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる

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    2019年01月05日
  • 満月の道―流転の海 第七部―(新潮文庫)

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    読者としても、もはや引くに引けないお付き合いとなる長編。

    宮本輝は自身の生い立ちや経験をなんども作品化している。名前や設定は変えつつもこれまで他の作品で描かれてきた主題がじっくりと描かれている。これは「重複に対する批判」ではなく逆にファンとしては嬉しいことなのだ。筆者の、繰り返してきた年輪と成熟が大樹の中に流れる生命の音を静かに奏でる音に、旅人はただその傍らにたたずみ、時折耳をそばだててその流転する血潮に包まれるだけ。無事完結を祈る作品の一つ。

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    2018年12月15日
  • 森のなかの海(上)

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    この作家の作品はハズレがあまりない。阪神大震災で夫の不倫が義母も公認の仲で震災と夫の裏切りで精神的に追い詰められていくのかと思いきや、家族や昔からの付き合いがある老婆などの様々な出来事に流されながらも自分の意思を持ちながらも流されていく。
    不幸をバネに幸せとは思っていないかも知れないけどやりがいもある充実した日々を送っていく。

    お金の心配がないのは羨ましい限りだ。

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    2018年12月02日
  • 人間の幸福

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    著者の作品は、よく読んでいますが、殺人が絡む推理小説は珍しく読みました。読み終わって感じたことは、やはり今までの作品のように人間の罪深さ奥深さが、書かれていました。主人公が自分でも気づかなかった一面を知り愕然とする場面。自分では意図せずに異性を惑わせてしまう女性の恐ろしさ、男達の愚かさ。読みごたえありました。

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    2018年12月02日
  • 青が散る(下)

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    中盤でテニスの試合を長々と展開する場面は中だるみがあったけれど、見所と言うべきなのだろうか、場面場面で情景がみるみる浮かび心震わされた。それは全体にも言えたし、主人公の試合でのメンタルや日常の精神的な青さ、青春が散ると自覚ラストシーン。見事な物語だったと思う。
    そして残るなんとも言えない悲しさ。喪失感。

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    2018年10月11日
  • 三十光年の星たち(上)

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    今は廃れた修行という言葉だが、この本を読むとこの古い修行というものに憧れを感じる。自分には30年という時間は残されていないが、これからでも何かひとつ取り組んでみたいという気にさせられた。

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    2018年10月04日
  • 星宿海への道

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    久しぶりに凄い小説を読んだ気がする。
    実はスケールが非常にに大きくて深い。

    ウイグル族とのつながりが気になっていたが、なるほどなあ。

    尾道が好きで二度行ったが、やはり日帰りではなく、時間をかけて島まで渡ってみる必要があるなあ。

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    2018年08月27日
  • 田園発 港行き自転車 上

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    ネタバレ

    宮本輝の長編小説は、やはりいい‼️

    人間の性(サガ)とそれによるやるせない展開がありつつも、人の深いところでの良心を信じる人々の思いが詰まったストーリー。

    下巻を早く読みたい。

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    2018年05月06日
  • 愉楽の園

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    もう30年近く前に1年間過ごしたタイ。
    匂いや湿気、喧騒とか一気に蘇ってきて
    息苦しくなる様な小説だった。

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    2018年05月02日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    宮本さんの初期あたりの作品が好きで。その流れで以降の作品も主だったもの読んでると思うけどなんか気持ちがグッとくる回数が減ってたような、じぶん。そんなんやから今回もあまり期待せずに。3?4ブロックくらいの人物たちが同じタイミングに向かって話しが進む。そのスタイルが宮本さんには新鮮なような気がしたのもあったせいかな…で なんか宮本さん独自のものがじんわりじんわりと。人物に基本悪が存在してなかったからでしょうか。まぁ社長で父親の彼がゆるい男だったから始まったようなお話しなんだけど。でもそれも共感できたんすよね。読んでよかったです。

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    2018年04月23日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    優しい気持ちになった。
    心の綺麗な人の物語は、読む人の気持ちも清々しくさせてくれる。
    自転車が欲しくなった。

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    2018年04月15日
  • 星々の悲しみ

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     表題作を含む全7作品からなる短編小説集。物語の多くは若者を主人公とし、青春時代に関わった人たちとの微妙な心理・感情を描いています。
     子どもでも大人でもない、もしくは子どもから大人になろうとしている主人公たちの目線を通して、生と死から感じられる残酷さ、若者から見た大人の性事情、奇妙な癖や趣味を持った人に接したときの不気味さなどをとても丁寧な筆致で感じられました。ものすごく重たいわけでもなく、かといって空虚なわけでもない、なんとも感慨深い内容です。
     ここ10ヶ月ほどをかけて、この短編集をじっくり2回読みました。1回読み終わった時点ではなにかわかったような、それでいてなにもわかっていないような

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    2018年03月02日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    骸骨ビルと言う場所の意味、阿部轍正の存在、そして茂木泰造の思い。終わりに向けて動き出す…。

    パパちゃんに対し周囲からは邪推され陰口を叩かれる中、自己保身しか考えていなかった役所が子供たちを引き取りたいと言ってきた時に、彼が言った言葉。
    「人間としての誇りは捨てんが、小さな自尊心なんていつでも捨てるで」

    これもパパちゃん。
    「人間はその根本の部分に必ず何等かの癖を隠しているものだ。…つらい苦しいことからは逃げるという癖を持つ人間もいる。そのときどきの気分で表情や態度が変わるという癖を持つ人間もいる。…そのことをしっかりと自覚しろ。」
    私に言われているようだ。

    ヴィクトル・フラン

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    2017年12月23日
  • 骸骨ビルの庭(上)

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    四十七歳でサラリーマンをやめ、第二の人生に向けてある仕事に就いた八木沢省三郎。その仕事は土地開発会社で、大阪に戦前からあるビルに住んでいる人々を荒立てず、穏やかに転居をさせると言うものであった。

    そのビルは、妻のある男が建てその夫婦の死後、男の愛人の子・杉山轍正が相続したものであった。彼がフィリピン群島にて戦争を生き延び、ビルで住み始めた時、そこには戦争により孤児となった姉弟が入り込み、何とかその生を繋ぐように日々を生きていた。彼はパパちゃんと呼ばれながら、長短ありながらも四十人以上もの孤児を、病気で生家からでざるをえなかった茂木と共に育てていった。
    だが、一人の孤児の裏切りにより、世間

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    2017年12月23日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    とても面白かった。初めて読んだ宮本輝作品。十三を舞台にして戦後を描く。登場人物の置かれた状況は大変だが、それを不幸自慢にしないところがいい。事実と虚構を混ぜて効果的に伝えるということにこの作品は成功している。生臭くないがリアルに思える。そう感じることの出来る作品だったと思う。後半、物語世界が閉じてしまうのが残念に思えるくらい。どっちを先の読もうか迷った「道頓堀川」も楽しく読めそうだ。芥川賞選考委員の、これが解答例とでもいえるようなそういう感じがしたかな。

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    2017年12月18日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    ビルの住人の戦後の話は、まだまだ続く。そして、成人に達してからの住人の日頃の生活、性質などが少しずつ明らかになっていく。
    父親代わり、母親代わりの二人が住人の戦災孤児の精神構造構築に与えた影響のすごさが描かれている。
    そして、除却するための条件について、色んな思惑が語られる。
    濡れ衣を着せられた父親代わりの人間性も、少しずつ明らかにされ、また、母親代わりのもう一方の主人公の心の奥底のことも次第にわかってくる。
    最終段階に至るまでの関係者の行動・思いが作者のすばらしいタッチで描かれていた。
    関わった人間の99%は、納得いく形でこの物語は終わる。
    世の中で生じる様々な現象、100%すての人間が納得

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    2017年11月16日