宮本輝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ作者あとがきより
「小説にしてしまうとあまりに小説になりすぎる」という思い出や経験を……「これ以上書くと創作の領域だというぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながら」書かれたそうだ。
書かれたもの総て「いのち」にかかわること。
「いのち」とは? 命でも生命でもなく。
前のエッセイ集は「命の器」
「どんな人と出会うかはその人の器次第」と書いてあった。
これはグサッと刺さる。
解説の行定勲監督は
「どの登場人物にも嘘がないのは、「どれだけの人生に触れ、そのどの急所に目を向けてきたか」にあると思う。」
「真実は一つではない。その出来事のどんな側面に何を感じるかで違ってくるという宮本さんのものの見方 -
Posted by ブクログ
ネタバレかつては夫婦であったが、壮絶な出来事により離婚した男女、有馬と亜紀。
秋の紅葉深まる蔵王で偶然再会し、手紙のやりとりが始まる。
最初は謎が多く、それぞれの性格を探りながら読む形となるが、次第に離婚の事情とその後辿ってきた厳しい人生が明かされていく。
生きていても虚無の中で生活していた亜紀。
「生きていることと、死んでいることとは、
もしかしたら同じことかもしれない。」
亜紀の苦しい心情に共感し、何とか立ち直って欲しいと願う一方で、破れかぶれに生きている有馬には、甘さを感じ怒りすら抱く。
手紙のやりとりを通じて、お互いの過去の事実を知り、今を見直し、未来を変えていく事になる。交わる事のない