宮本輝のレビュー一覧

  • 螢川・泥の河

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    『泥の河』では高度経済成長期間近の大阪の雰囲気を感じることができる。
    小学生や中校生といった多感な時期特有の葛藤を2作品では見事に表現されていると感じた。
    『泥の河』で出てきた巨大な鯉ってどんなものなのか想像しながら読むと少し面白かったです。
    廓舟で生活する母と2人の子どもが、次の場所では平和に過ごせることを祈るばかり。
    『螢川』は文句なしの面白さ、これこそ昭和の純文学という感じ。最後の螢が一面に飛んでいることを描写する文章が美しい。一昔前はこんなにも螢が多く綺麗だったのかと思いながら読み進めた。

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    2023年10月13日
  • 水のかたち 下

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    それぞれの人間模様と幸せの連鎖。それぞれバラバラなのが人の個性なのでそれがそのまま表現されていて安心します。

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    2023年10月09日
  • 水のかたち 上

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    小説の時間のスピードって読んでる側からすると合う合わないあると思うんですけど、宮本輝さんはその辺がすごいんですよね。人が人生で決断する瞬間に出会えます。最近のトレンドとは違うんだけど紫綬褒章取られてる方で私の青春時代の作者で50才って年齢をとても大切にしてることに個人的に共感してるし、熊吾も共に読んで生きてきた感じで是非読んで欲しいです。下巻読むまでもなく、心で読めます。

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    2023年10月08日
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)

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    何とまあ、あっさりと。。。
    最後まで、、最後の最後まで、人間は人間のまま、ちょっとしたことで過ちをする。
    熊吾の伸仁への言葉。何の意図から出てきたのか。よくわからん。
    房江も伸仁も、何故あんな親父を再び受け入れることができたのか。
    訳がわからぬ。

    ただ、この長い小説は、色んな局面の光(時代、人、天災、裏切、病気、色欲)に照らされて浮かび上がる様々な熊吾の反射を描くことで、熊吾という人間がどういう人なのかを知っていくものなのかも知れない。
    前巻で、女房を殴る根拠が明かされ、そしてこの巻では、人を助けることや実は頑固さがないことなどが描かれ。。
    今の自分にはそんなところしか、味わえない。
    何故青

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    2023年10月02日
  • 長流の畔―流転の海 第八部―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    何とも言えぬ。何をしてるのやら。
    時代のせいにして、運のせいにして。
    偶然のせいにして。

    何に出会うか、何が起こるかは、時代や偶然、周りの環境、出会う人々、自分の特質により大きく変わるが、最終的に何を選ぶのかは自分の意思。
    腋の甘さ。

    房江回復と自分の本質の出現。落ちていく熊吾。
    未だ許してもらえると思っていた熊吾のアホさ加減。
    最後のシーンで骨身に沁みたようだが、果たして次の最終巻ではどうなるのか。。

    伸仁はどうこの事態を捉えたのか。その内面の動きは読み取れず。

    どこに向かうのか、どこに辿り着くのか。今また、混沌に放り出された感覚。

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    2023年10月01日
  • 灯台からの響き

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    久しぶりの宮本輝。すごい事件が起こるわけでもなく、びっくりのどんでん返しがあるわけでもない。だけど、どんどん宮本輝ワールドに引き込まれていく。とてもリアルなようで、こんな会話を親子でする?て考えたら、リアルではない。でも、会話のひとつひとつが登場人物の一人ひとりが、現実味を帯びて迫ってくる。この物語の主人公は、妻を亡くした夫か?亡くなった妻か?

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    2023年09月25日
  • よき時を思う

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    読み終わったあと、なんとも豊かな幸福感に包まれました。
    とくに徳子さんと玉木シェフの関係。
    教師時代の教え子だった玉木少年は、幼くして両親が離婚し、母についたものの、その再婚相手から「お前はいらん」と目の前で言われ、祖父母に育てられる。
    さらに少年は重度の吃音で、どれほどの思いで生きてきたのだろうと思わせる。
    徳子さんは玉木少年はが中学を卒業すると、住み込みで仕事ができる京都のレストランへ世話をする。その際、法華経に登場する妙音菩薩が吃音でありながら、釈迦の教えを広めたことを紹介。それを御伽噺ではなく、身をもって読んだいきなさいと励ます。料理の世界で刻苦勉励し、やがてはフランス、エリゼ宮のスー

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    2023年09月24日
  • よき時を思う

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     あるインタビュー記事で、「いろんな人生が詰まったおもちゃ箱」と述べれています。

    法華経妙音菩薩品第二十四
    中国伝統の民家、四合院造り 
    来国俊の短刀
    端渓の硯
    竹細工の花入れ…など



    「見ていると幸福な気持ちになる。それはやがて『もの』ではなく幸福そのものになる。わたしはそういうものを探して集めてきた。綾乃もそうしなさい。探せば見つかる。探さない人には見つからない。」(p.93)より引用

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    2023年09月04日
  • よき時を思う

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    こんな教養があって、品のある人、
    未来の日本にいるのかな、と思ってしまう。
    徳子おばあちゃん絶滅危惧種。

    知ったような気になるのと、教養として身につける知識は全く違う。

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    2023年09月03日
  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    なんとも言えない。簡単な成長物語としてのビルドゥングスロマンではなし、時代小説のようなものでもなし、ましてやエンターテイメントでもなし。人間が剥き出しに描かれている様に感じるものの、良いとか悪いとか、主題が何か、今の自分には判然としない。

    紆余曲折、毀誉褒貶の人間模様。人間の多様面と厚さ、深さ、複雑怪奇さを感じる。人間の矛盾、弱さ、汚さ、儚さと、苛烈さ、酷薄さと、強さ優しさ、潔さと。美と醜が渾然一体となって、混沌のままに呈示される。どちらも人間の本質なのか。
    正に海。掴めない。

    ただ、その中でも、幼子を前にした父親を人間として見る感じる描写は、自身の父親もそうであったかもと思わせてくれて少

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    2023年09月03日
  • 真夏の犬

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    戦後間もない頃(高度成長期くらいか)の阪神地区(主に海側)の下町を舞台とする短編集。生まれ育った環境との「地縁」と、人間の「性(さが)」を強烈に描いた作品。
    その日暮らしが精一杯の少年時代・少女時代を過ごした登場人物たちが、大人になって昔を思い出したり、再会したりする話。当然、大人になるまでの間に、彼らは人生の辛苦を舐めているのだが、まだ10代前半くらいの段階で世の中のいろいろな場面を知ってしまうのである。
    彼らは子供の頃に、日雇い労働、イカサマ詐欺師、水商売、ギャンブルなどなど、さまざまな職業の大人たちを見て育つ。仕事内容だけならまだしも、お金の使い方、ドロドロした人間関係、窃盗・嘘・恐喝な

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    2023年08月30日
  • 水のかたち 下

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     ロダンはいう「石に一滴一滴と喰い込む水の遅い静かな力を持たなければならない」
    水には、そんな力強さがある。
     志乃子は、「私は水の流れに乗って、それに身を任せて今日まできたと思っていたが、そうではないのだ。流れとともにかたちを変え続ける水に沿って生きてきて、今日の自分というものを得たのだ。どんな尖った細い難所でも、水はそのかたちになってくぐり抜けていく。私も水のかたちと同化して、微笑みながら難所をくぐり抜ける」
     志乃子には、春のひだまりのような柔らかさがある。
    志乃子は、ヒビが入った古備前の壺を見て、5万円で購入する。それが、実際には300万円で売れたのだ。志乃子には、本物を見分けるセンス

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    2023年08月27日
  • 夢見通りの人々

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    ・何を隠そう自分は宮本輝のファンの一人なのだが、少し他の作品と比べるとカジュアルな文体で新鮮で好きな作品が一つ増えた。(おそらく30代後半くらいの作品で、比較的若い頃の作品?)
    ・今は昔となった商店街内での密な人間模様や、そしてノスタルジックな温かみのある生活感が主人公の里見春太を中心に展開される。
    この、一見平凡だけれどもなぜか皆から慕われ、愛される里見春太という男の魅力は、吉田修一の人気シリーズの「横道世之介」に通ずるところがある。
    ・最後のシャレードで行われたお別れパーティのカオス感、声を出して笑った。

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    2023年08月18日
  • 三十光年の星たち(下)

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    坪木と佐伯の関係性の変化が良かった。一方で説教くさく古臭いと感じてしまうのは、私が未熟なせいだろうか。数年後にまた読み返したいと思う本だった。

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    2023年08月03日
  • 幻の光

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    やっぱり宮本輝は天才だなあ…生きていくために必要な情念とか生命力についての言葉が重すぎる。これだけの結論を出すには、一体何人の人生と向き合ってきたのかね…

    唯一苦手な点があるとすれば、人が死にすぎる、失いすぎる点かも。でも宮本輝の悲劇って最終的には幸せな方を向いてる気がするので、嫌いにはならない。底なし沼ではない。ただ、その分逆に生々しくて残る傷が深いから、体力のある時に読みたい作家かも…

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    2023年07月26日
  • 血脈の火―流転の海 第三部―(新潮文庫)

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    熊吾の妹タネの行動に、イライラさせられた。しかし、この話しに出てくる登場人物は不倫してる人がやたらと多過ぎる。
    また、気になるのは、小学校低学年の伸仁に競馬させたりストリップを見せたりと、めちゃくちゃな父親であるところ。
    そんな感じで、はちゃめちゃな所もあるけど、ものすごく奥行きがあって、生き生きと人物が描かれているので、物語の世界にどんどん引き込まれていくよなぁ。

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    2023年07月21日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    血脈を物語にしたら宮本輝の右に出る人はいないですよね。もはや何のために生きてるかとか、そういの度外視にして人との出会いをひたすら大切にしたいです。

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    2023年07月10日
  • 地の星―流転の海 第二部―(新潮文庫)

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    なぜかわからないけど、すごく話しに引き込まれる。すごく奥行きがあり、人物がいきいきとえがかいるからかなぁ。
    ただ、前巻に引き続いて主人公が、妻に暴力をふるうシーンだけは嫌な気分になる。

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    2023年07月08日
  • 星々の悲しみ

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    自分の学生の頃から名前は知っていたけれど、宮本輝の本は初めて読んだ。
    大変読みやすい文体、内容であることに驚いた。


    大阪弁の会話のなんと心地いいこと。
    解説に書いてある通りになってしまうけれど、普段から村上春樹ら「都市生活者のための現代文学」みたいなのばかり読んでいるせいか、こういう少しじめっとした地味な小品がとても沁みる。
    物語に奇を衒ったようなところはなく、社会性や思想性もないけれど、心に沁み入る文章である。軽いタッチの文体でありながら、結核療養、精神病院等の描写が出てきて、生命の儚さ、人生の切なさを感じさせる。
    この、深い・難しい問題を考察するような小説でないのに、じっくり感じ入るよ

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    2023年07月08日
  • 避暑地の猫

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    エンタメ調で描くと上滑りしそうだけど人を描くので事実は小説より奇なり的なあり感がある。
    令和の今だとかなりおとぎ話的かもだけどね。
    昭和の感性があればリアリティあるかな。

    屋敷の主人と屋敷番家族の話。
    引き込まれて最後まで読み通した。
    宮本輝の描き出す世界恐るべし。
    また何か宮本作品読みたいなと思ったかな。

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    2023年07月04日