【感想・ネタバレ】螢川・泥の河のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年11月07日

どんよりした川。鈍い空から降る雪。
くすんだような色のトーンで、静かに染み込んでくる。
友、異性、死、情。親の事情。
ときめきやわびしさや哀しさも体で受け止めてゆく。
そっと見守る人々の目があたたかい。
主役の子どもたちのみならず、大人たちにも思いは飛んでゆく。
大切にしたい世界だった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年02月08日

泥の河
戦後の大阪、澱んだ川。埃が舞い、汗が滴る。無垢な主人公が、社会、人生の不条理に触れる。淡々とした展開、平易な文章であるが、風景、心情の描写力、無駄のない、研ぎ澄まされた表現力、紡がれた言葉の奥で漂う言葉にできない感触は、宮本輝作品にしか出せない魅力だと思う。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2018年01月27日

子は二十歳になるまでは生きていたいと願う親と早くに親を亡くした子。風景と心情がていねいに描かれているいい小説。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2018年01月15日

うまく言葉にできないのですが、宮本輝という人は「生きてきた」人なんだなと、すごく思いました。人間って、幼い頃は世界と未分化で、それこそ河とか虫とか田畑とかと同じような「世界の一部分」なのだけれど、生きながら独りになっていくのですよね。そのひたむきな哀しさ美しさが見事に紙の上にかきとめられている。胸を...続きを読む打たれました。他に一作品しか読んだことがないのですが、もっと読みたいと思いました。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2016年09月03日

お金、愛情、生活、差別などが複雑に絡み合う日常を送る主人公ときっちゃんの目を通して人間の本質が描かれている作品。

自分が主人公と同じ頃に大阪で過ごし、まさにここに書かれていると同じような経験をしているという所為かもしれないが、是非とも皆にオススメしたい。

「蛍川」も、基本的には同じテーマ。決して...続きを読む豊かではないけれど、両親、同級生、父の元妻や友人等からの愛情を受けながら思春期を通過する主人公の物語。時差ぼけで眠れない夜、ベッドの中で何度も涙を流しながら読み進めていった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2016年06月13日

私の親も戦争の傷跡が残る時代、貧しく苦しい生活がきっとあったんだろうな。「上を向いて歩こうよ、涙がこぼれないように」今も同じだ。さまざまな人生を3・11以降痛切に感じる。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2016年03月18日

「泥の河」
大阪湾につながる河の底で、泥に隠れた巨大な魚の存在
それは大人たちがけして信じようとしない、子供だけの真実であるが
誰もがやがて真実を忘れ、大人になっていかざるをえない
怒り、悲しみ、寂しさ、恥ずかしさ
そういったものが渾然一体となってわけがわからないままに
蟹を燃やしてみたりする
そん...続きを読むな真実なら忘れたほうがいいような気もするけれど
腐っても鯛、忘れたって真実は真実だ
そいつはつねにあなたの隣にあるのですよ
非常に完成度の高い作品で、全体に詰め込みすぎの印象はあるものの
それがまた大阪の下町らしさになっている

「蛍川」
過去への執着を断たねば前へは進めまい
死と新生が必ずしもつながっているわけではないが
蛍の大群が交尾するさまを見に行くという約束を果たすことで
とにかく、子供の時代にひとまずはケリをつけて
大人へと生まれ変わる少年少女の話
もちろん保護者同伴だ!

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年12月28日

何でもない日常の中で突如起きた知り合いの死から始まる『泥の河』。
子供の視点で書かれる理不尽な現実、無邪気な残酷さ、非力ゆえの抗えない境遇、大人の読者である自分からすると悲惨な生活に思える。
戦後間もない貧しく混乱した時代の話だということもある。けれど翻ってわが身を考えた時、ここまで極端じゃないけれ...続きを読むど、現実に対して理不尽さ、非情さ、非力さを感じた記憶がある。
今だと折れてしまったり、立ち直れそうにない酷なこともあったけれど、子供ならではの柔軟さで切り抜けたような。
舞台と時代は違うのに強く過去を思い起こさせられた。
『螢川』は北陸の冬から夏にかけての物語。
卒中で半身不随になった父を持つ少年が主人公。
豪胆で情が深い父と、従順で笑顔のさびしい母、父の先妻や長年の友達、幼馴染の女の子や、彼女に恋をしている同級生、その彼の父親や、螢が乱舞する時期とその場所を知るお爺さん等々、短編なのに登場人物が盛りだくさん。
断片的な出来事が連ねられ、広げられた話が、何万、何十万の螢に包まれた最終場面で一つに収斂する。
初読の時と同じく、その描写の美しさは見事というより、怖かった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年11月12日

雑誌で著者の対談記事を読んで興味を持ち書店で購入しました。
こういう芥川賞っぽい小説、好きです。
自分では経験していない戦後の空気感を感じれるっていうのはやはり、著者の実力なんでしょうね。
登場人物のそれぞれが一生懸命生きている感じにも引き込まれました。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月16日

宮本輝の著作を読むのは実質初めて。むかーし映画化された優駿は映画館で観た記憶。
泥の河、螢川ともに、方言と自然描写が巧みで、その生活が活き活きと伝わってくる。大変美しい。
両作品とも、大人とのやりとりを通じた思春期ごろの子供の成長、過去を背負って前を向きつつも、わだかまりを持った大人たちの葛藤が描か...続きを読むれている。人間って、やっぱり簡単に割り切りシンプルに生きることは難しい。心は揺れる。そういう普通の人間の、どこにでもあるだろう話を、優れた方言表現と自然描写を背景に、深みをもって読ませる作品。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年02月29日

馬と蠅と魚と蟹を描く情景が、登場人物の心情を暗喩していて、しみた。例えるなら、涙をこらえうつ伏せになってるとき、愛犬に濡れた鼻を押しつけて欲しい感じ。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年02月09日

ものすごく昔に映画を見たけれど,そのままになっていた。大阪に住んで原作を読んでみると,すごく身近に感じる。そして,すごく切なく,美しい。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2019年10月23日

小説と言うと、人物の言動が物語のために作られすぎていて記号的で無機的に感じることがあるけど、この作者の紡ぐ言葉は一つ一つが自分の生活と非常に近い線にあって、普段当たり前すぎて気に留めないような言葉や空気が、小説の中にぽっと浮かんで来たりする。それは、断片的に自分の覚えている思い出のワンシーンに似てい...続きを読むるように思う。 そうした表現の群れが生む生々しさと、扱われることの多い死、貧困、愛憎と言ったテーマとが相まって、人間の体臭とか空間のすえた臭いが本から漂ってくる。生を持った有機的な文、と言う印象がとても強い。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2019年03月15日

方言のセリフが胸に染み入ってくる。情景描写の中に、しみじみとした死生観が宿っている。理解を超えたもの、訳のわからないものを現実として受け止め、物語として構成し直した端整な作品。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2018年09月22日

戦後の日本を描く小説は性に対してダイレクトだし、その表現も遠慮がない感じがする。
戦時中、いつ死んでもおかしくない状況、無数の弾から奇跡的に逃れて生き残ったのに、戦争が終わってなんでもない事で死んでしまう悲しい性がよくある戦後の日本。貧しい泥の河のほとりに住む少年と、船の上で売春して生活をする母と姉...続きを読む弟の交流を描く。弟はそんな曲がった環境の中でやはり心が荒むのか、残虐性を持つ一面があり、少年は慄く。
4月なのに雪が降る年は、川に無数のホタルがやってくる。父はかつての名士だか病に倒れた。母は、そんな父の愛人だった女。金銭的に苦しくなっていく家で、父の前妻がこれまた素晴らしい人物であることがよくわかる。かつての幼馴染で、今は淡い恋心を抱いている英子に対する、赤い実弾けた的な、心がズキズキする様子がよく表現されている。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2017年06月26日

タイトルから勝手に下町のほんわかした話かと思っていたら、いい意味で『泥の河』冒頭で裏切られ、嚙みつくように読み終えた。
川に付きまとうどぶ臭さが染み付いた、焼きつくような死の情景と、その傍らで生きる人々の生活。
できることなら、夏に読みたかった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2017年05月05日

尊敬する人に勧められて買った。

家族、恋、友情。
子どものころに感じはじめた「だいじなもの」が丁寧に、大切に書いてある気がする。

ラストシーンの描写がものすごく印象的。
主人公と周りの人たちを慰め、そして応援するような蛍のひかり。
わたしの実家の近くでは今でも蛍をみることができるけど、近年みられ...続きを読むるのは数匹だけになってしまった。
たくさんの蛍の光が集まった風景は、平成生まれのわたしには想像することしかできない。

作品から、昭和という時代がもつ暖かさも感じとることができた。



「運というもんこそが、人間を馬鹿にも賢こうにもするがやちゃ」

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2017年02月27日

泥の河が良かった。
生死なんて小さなもの。小動物の生死が簡単にコントロールできるように、人間の生死ももっと大きな力に簡単にコントロールされている。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2017年02月12日

初めて読んだけど、好きな作家になった。情景描写とキャラクターの肉付けが上手。まずは前者だが、授業や小説でもあまり触れる事のなかった戦後、高度経済成長期直前の混沌とした世界をまるで臭気まで漂ってくるかと思う程リアルに描いている。次に後者、どの人物もまるで一度会って話した事があるかのような現実感と説得力...続きを読む。あと、主要人物が全員人柄が良いのが好きだった。特に「泥の河」の信雄と喜一が可愛すぎる…。ただ、そんなキャラクターにも容赦なく苦難を与える作者は真性のドSなんじゃないかと思えてきた。この作者の世界の登場人物には決してなりたくないなぁ。「泥の河」も「蛍川」も、美しい作品だった。老いた時にもう一度読みたい。

このレビューは参考になりましたか?
ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年12月06日

『泥の河』は大阪、『蛍川』は富山と場所は違えど、どちらも戦後から高度成長期にかけてのまだ日本が貧しかった昭和の時代を、2人の少年の視点を通して描かれています。貧しい家庭や、儚い人の命、淡い性の目覚め、自分ではどうしようもない情況の中、もどかしさや、理由の判らない衝動を抱えながら、こうやって人は川に流...続きを読むされるみたいにゆるやかに成長していくのだと感じました。

このレビューは参考になりましたか?