宮本輝のレビュー一覧
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宮本輝の自伝的長編小説流転の海の第六部。読み終わって、心に残ったのは、慈雨の音という題名。
いろんな場面でその題名を思わせるエピソードは絡んでくるが、私が感じたのは雨という存在そのものだ。世の中の水が遠い旅を経て、また、雨となって地上に落ちてくる。それは、動物でも植物でも命ある全てのものへの慈しみとして繰り返される。この小説の主人公熊吾は、幼い頃、伯父のところへ預けられ、四書五経から能に至るまでさまざまな教養を叩き込まれる。カッとなったら人を半殺しの目に合わせるような乱暴者でありながら、常に自分の行動や言説を省み、息子の伸仁にも人としての道を説く彼の髄には幼い頃に染み込んだ慈雨が巡り巡ってまた -
Posted by ブクログ
1982年から執筆を始めた宮本輝の自伝的大河小説の第五部。波乱万丈の一生を送った松坂熊吾やその息子の伸仁の成長がダイナミックな筆致で描かれており、めちゃくちゃ惹きつけられる。昨夜は夜中の3時までかかって一気読みしてしまった。
また、新しく出てくる登場人物のなんと魅力的なことか。ボロアパートの一室を茶室にしてそこで寝起きをする、真の侘び人。子供たちに創作のお話を聞かせる怪人二十面相。盲目の妹を支えながら前科者の父と暮らす秀才の兄と息を呑むほどの美形の妹。それぞれのキャラクターが立ちすぎて、スピンオフがいくつもできそう。また、昭和初期の街並みや社会情勢をそこに抱える問題を捉えながらリアルに表現して -
Posted by ブクログ
《蛍川》
私の好きな場面は、蛍の群れと遭遇するシーン。蛍が、先の見えない母と息子の不安な心を灯してくれているかのようだ。これからも、何度となく思い出される光景であろう。信じてこれからの人生を強く生き抜いてほしいと思った。
《泥の川》
登場人物の葛藤を想像しながら、読みすすめた。考察が必要であり、読者によって受け止め方は様々ではないか。私は感傷的な思いが残った。混沌としている世の中、時代に生きる少年の純粋さも印象的だった。それに向き合う思春期の葛藤、物悲しさがあった。人それぞれ、背景(貧しい家庭に生まれた等)をもっている。その中でも、その人が乗り越えられる試練が与えられ、生き抜いて行けるんだと信