宮本輝のレビュー一覧
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《蛍川》
私の好きな場面は、蛍の群れと遭遇するシーン。蛍が、先の見えない母と息子の不安な心を灯してくれているかのようだ。これからも、何度となく思い出される光景であろう。信じてこれからの人生を強く生き抜いてほしいと思った。
《泥の川》
登場人物の葛藤を想像しながら、読みすすめた。考察が必要であり、読者によって受け止め方は様々ではないか。私は感傷的な思いが残った。混沌としている世の中、時代に生きる少年の純粋さも印象的だった。それに向き合う思春期の葛藤、物悲しさがあった。人それぞれ、背景(貧しい家庭に生まれた等)をもっている。その中でも、その人が乗り越えられる試練が与えられ、生き抜いて行けるんだと信 -
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富山の薬売り・川上弥一さんの語りの文章が優しく心に沁みました。黒船来航や天璋院篤姫、西郷隆盛など、お馴染みの歴史事実の中に、富山の薬売りと薩摩との関係など今まで知らなかった事が書かれていて、新しい発見が楽しいです。第2巻も楽しみです。
途中、上縮(うわしまり)、二才(にせ)など、読み方が難しい用語や地名が出てきました。初出でルビをメモしておかないと、次にルビ無しで出てくるたび記憶のキャパが小さい私は「何だったかなぁ」と忘れてしまい、その都度メモを見返しながら読みました。時間がかかってしまいましたが、2巻ではもう少しスラスラ読めるように頑張りたいです。 -
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富山の薬売りで薩摩藩と切っても切れない仲にある川上弥一の姿を通して、幕末の日本をドラマチックに描く歴史巨編。
第2巻は、京の町が拠点となり、伏見寺田屋事件、池田屋事件の騒動から大規模な市街戦となった蛤御門の変までを描く。
弥一は、戦場と化していく京で、旧知の薩摩藩士・園田矢之助らと連絡を密にしながら、薩摩藩のために命を張って情報の入手や伝達に奔走する。
弥一には、北前船で蝦夷地の干し昆布を薩摩へ運び、坊津の沖合で大量の唐薬種を得るということで富山の民は薩摩藩に恩義を感じるべきであり、薩摩藩を守らなければならないという強い意識があった。
幕末の動乱期の日本について物語を通して再度、学び直せる素晴 -
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宮本輝(というか父親)の自伝的小説なのだが、環境悪すぎだろう。
身体は虚弱な伸仁(宮本輝がモデル)だが、小学校低学年にして、様々な大阪の悪所にいりびたり、ヤクザ者と雀荘で賭け麻雀をしたり、ガラの悪い労働者たちと花札をしたり、母親がびっくりするほど町の情報通になっている。
熊吾(父親)は熊吾で、幼稚園の先生の胸ぐらをつかんでどなったり、小学校に怒鳴り込んだり、現代なら即アウトだろう。小学校低学年の息子を競馬場や、ストリップ劇場など連れ回したり、夜中の2時まで息子と飲み歩いたり。
他の登場人物もみな、一癖も二癖もあるものばかり。しかし、どの人物にも、熊吾は愛情を持って接しているのがすごい。
とりあ -
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ネタバレ今年(2025)、1月の末から配本が始まり、この4月までの三か月、楽しませてもらいました。
80前の著者が、初の歴史小説に挑むというその心意気たるや。ファンとして期待もあるが、心配も相半ばではあったが、なんとか完走したな、という印象だ。
いろんなメディアのインタビュー記事や、四巻あとがきにもあるように、著者が、幕末の頃の薩摩と富山の薬売りの密約の存在を知り、清国との密貿易での荒稼ぎが、その後の倒幕の資金源となったという話を膨らませたのが本書。
かつてない視点と、その壮大な仕掛けに胸躍らせながら読むことができた。
今さら感も、正直あった。幕末ものということや、宮本輝が歴史小説という