宮本輝のレビュー一覧
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ネタバレ関西中古車事業連合会を再興し板金塗装会社を東尾に売り渡して大阪中古車センターの商売に専念しようとしたが、東尾の商売の失敗による失踪でまたもや窮地に立たされる熊吾。
さらに森井博美との愛人関係を断ち切れぬまま房子にばれてしまい、自暴自棄になった房子は自殺未遂を図る。
これまで幾多の幸不幸、喜び悲しみが繰り広げられてきたが第八巻にして最悪の展開に。しかしそんな中でも伸仁はしっかり自我を確立したくましく成長し、房江は本来の自分を取り戻す。熊吾は反省しながらも相変わらず自分の生き方を貫く。
いよいよ最終巻を迎える物語。明るい結末を願いたい。 -
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ネタバレ第三部に入っても、面白さの勢いは止まらない。
なんでだろうなあ。
松坂熊吾の波瀾万丈の人生は確かにおもしろいけれど、ではジェットコースター小説なのかというと、そういうわけでもない。
プロットに落とし込まれた伏線が…というのでもない。
松坂熊吾という人物は確かにおもしろい人物だけれど、キャラクター小説ではない。
短気ゆえの失敗ばかり繰り返すから、成長物語というわけでもない。
だけど、一度読み始めると、読み止めるのが本当に難しい。
なににそんなに引きつけられるのだろうなあ。
大きなストーリーのうねりに身をまかせながら、熊吾の生き様を眺めているのが心地よい。
第一部や第二部に比べて、熊吾の暴力が -
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第9巻が発刊され全編完結と聞き数年ぶりに再読し始めたが、複雑な人間関係がわからないのであらためて最初から読み直すことにした。
終戦後、裸一貫になり自動車部品販売で再起を図る松坂熊吾。五十歳にして子供の伸仁を授かり、妻の房江と共に家族を守り抜いていこうとする長い長い物語。
熊後は、最初は粗暴で野卑な人物という印象であったが、読み進むにつれ人情熱く懐の深い男として魅力あふれる人間となり、また不幸な生い立ちを持つ妻の房江も芯の強い女性ということがわかる。
第1巻は熊吾が闇市から立ち上がり、辻堂という青年を右腕にして進駐軍物資の横流しで事業の再興を図り動き始める。知人や部下に裏切られたりするなかで -
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ネタバレ【「自伝に戻って来た?小説」、遂に完結!】
宮本輝「野の春(流転の海 第九部)」新潮文庫
宮本輝が34歳で書き始めた「自伝的小説」が、物語を進めるに従ってだんだん「自伝」を離れていった、と作者本人が振り返る作品である。2018年に発刊された単行本の文庫版が今月売り出されたのて、文庫しか読まない僕もようやく手にした。
最終巻にふさわしく主な登場人物が一通り現れ、主人公松坂熊吾はそれまでやって来た複数の事業を整理し、妻・房江はホテル・多幸クラブの食堂での仕事を軌道に載せる。ひとり息子・伸仁が二十歳を越え、五十で彼を持った熊吾なりに責任を果たしたという思いに浸るが、(僕にとっては)まさかの結末 -
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ネタバレ五十歳をすぎてようやく授かったわが子は非常に身体が弱かったので、大阪での事業を処分して、故郷愛媛の南宇和に戻った熊吾。
それから2年、伸仁は健康になり、妻の房江もまた田舎の生活になじんでいるようで、このまま南宇和で生涯を過ごしてもいいと思いはじめる熊吾。
しかし、そこに現われたのが、子ども時代の熊吾との相撲のせいで片足に一生残る障害を負った「わうどうの伊佐男」だ。
特別に残虐な極道となった伊佐男の執拗な嫌がらせに、不穏な空気が全編に渡って漂う今作は、しかしなかなか読みごたえのあるものだった。
一年の間に熊吾の周辺にいくつもの死が訪れる。
それは悪いことが起きる予兆のようでもあり、運命の動く -
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ネタバレ敗戦2年目の大阪を舞台に、戦前の事業や財産を取り戻そうとする松坂熊吾の物語。
とはいえシリーズの第一部であるのに、熊吾は既に50歳。
今後は徐々に息子の伸仁の話にシフトしていくのだろうけれど、とりあえず今はまだ赤んぼなので。
豪快で男気があって人を見る目に長けている熊吾だが、短気で嫉妬深く暴力に訴えるところが欠点。
身近にいるとちょっと厄介かもしれないけれど、読者としていうならばとても魅力的。
疎開していた故郷の宇和島から大阪に戻ってみれば、自社ビルには闇市が入り込み、勝手に商売をしている。
まずそれらを立ち退かせ、商売の糸口をつけなければならない。
昔世話をした人に裏切られたりしながらも