宮本輝のレビュー一覧
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何と言っても装丁TAKORASU「植木街」
何かが届きました。
響きました。
落としどころもよかった。
ラスト皆が骸骨ビルに。
36枚の絵と80ページノートのコピー。
パパちゃん、テッちゃん=阿部轍正
亡くなってからの物語
茂木のおじちゃん=茂木泰造
骸骨ビルで育てられた戦災孤児の面々。
チャッピー
ヒデトくん
ナナちゃん
サクラちゃん
トシ坊
夏美
ヨネスケ
幸ちゃん
マコちゃん
峰ちゃん
ヤギショウ
比呂子ねえちゃんの『みなと食堂』
『エデンの仔猫』『和楽之湯』
料理、本、能
『史記』読みたくなり、漢詩についても。
宮本輝ミュージアムの『骸骨ビルの庭 登場人物紹介』
何度もみて、振り返りましたぁ。
いい大人になりたいと、思ってました。
どうしたら、なれるか⁉な、と。
いい大人と付き合わないと、って。
まんま、さらけださなきゃ。
って、教えてもらいまいした。 -
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ネタバレ老いらくの恋ではなかったのか。
一時の気の迷いで家族と距離を置かれてしまう、67歳松坂熊吾。
それはそれで切ないなあ。
仕事も、他人の世話を焼いているうちはいいのだが、自分の商売となるといつも足元をすくわれて左前になってしまう。
愚かだと言えば愚かだ。
毎度同じ過ちを繰り返す。
それが性分だとしても、学習しなさすぎる。
ただ、この時代の男として松坂熊吾が卓越しているのは、家族の危機には必ずその場に立ち会っていることだ。
身体が弱くて何故か怪我しがちな伸仁の、命にかかわるとき。
学校で伸仁が教師に理不尽な目にあわされていた時。
熊吾は頼れる父としてその場に居合わせた。
今回は房江。自らが蒔いた種とはいえ、房江が酔っ払って線路で動けなくなった顚末、城崎で死のうとした結果、自らの力で生きていこうと多幸ホテルで働き帰途に就く姿を、熊吾はしっかりと目を逸らさずに見届けた。
これができない男に限って「いざという時に出ていけばいい」なんてうそぶくけれども、常日頃を見ようとしない人が、一体いつ「いざ」がわかるの?
熊吾は仕事で忙しくしていても、女遊びをしていても、常に家族のことはちゃんと見ていた。
けれど、仕事は逆にいつも抜けてるんだなあ。
「こいつに任せておけばいい」と思うとチェックが甘くなる。
とすると、熊吾にとって一番大切なのはやっぱり家族であって、だとするとこの展開は切ないのぉ。
自業自得だけれど。 -
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ネタバレ何度同じ失敗をするのか、熊吾は。
太っ腹で人情家でもあるけれど、最後の詰めがいつも甘い。
若いうちはまだやり直しもできた。
だけどもう65歳。
体力も、残り時間も、そんなに残されていないのだ。
伸仁のために生きる、と決めていたんじゃないの?
なのに、糖尿病についても、すぐ油断する。
房江もそうだ。
通信教育でペン字を最後まで習いきったのはえらいと思うが、家族に隠れて飲む酒がどうしてもやめられない。
あんなに伸仁が嫌がって、酒をやめてほしがっているのを知っているのに。
だけど、房江は麻衣子と交流を深めることで、新しい道が開けていくような気がする。
心を開いて話ができる人がいるというのは、いいことだ。
この先房江は城崎で暮らすつもりなのだろうか?
伸仁が毎日練習していた柔道の目的が判明。
思春期で、母親に対してぶっきらぼうではあるものの、伸仁は母に優しいと思う。
森井博美は西条あけみだったころと別人のようである。
もっと毅然とした生き様を見せていたと思うのだけど、熊吾にすがるしかない今は情けない。
もし今の姿を伸仁に見られたら、ちゃんと挨拶できる?
熊吾は会社を、家庭を守り切ることができるのか? -
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ネタバレこの巻では松坂家の周囲で何人もの人が亡くなった。
また、蘭月ビルで伸仁と仲良くしていた敏夫と光子の兄妹が、母の再婚相手と一緒に北朝鮮へ行くことになった。
幾つもの別れがあったせいか、全体的に『静』な印象が強い。
熊吾自身は管理人生活は期間限定ということもあって、早く中古車販売の仕事にめどをつけたいのだが、住込みで駐車場の管理人をやっている以上、時間のやりくりが難しい。
いつも分不相応な規模の事業計画を立てる熊吾に対し、身の丈に合った事業からスタートすればいいと思う房江。
今回は房江の言うことを聞いて、小さな中古車販売店からスタートしたのだが、それでも2足のわらじは大変だ。
加えて、どうも熊吾の健康状態が、この先良くなる気がしない。
伸仁が乳幼児の頃から糖尿病だったのに、一日三度も酒を飲み、旨いものを食べ、運動しない。
伸仁が成人するまで、なんとしてでも生きるのではなかったのか?
逆に伸仁は、高価なビタミン注射のおかげですっかり健康体となり、反抗期に突入。
松坂家は、静かに崩壊…家族がバラバラな方向に向かっていきそうで、次の巻がちょっと怖い。
さて、北への帰還事業というのが、当時の一大イベントだったようで、北朝鮮派と韓国派の対立が血なまぐさいものだったらしい。
この辺の経緯は詳しくないけれども、結果についてはわかっているので、日本で暮らしたくて家出までしたのに、母の再婚相手に連れられて無理やり北朝鮮に渡ることにされた敏夫と光子の運命が悲しい。
大人になった時、伸仁は彼らのことをどう思うのだろうか。 -
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ネタバレ富山での生活に見切りをつけ、大阪に戻ってきた熊吾一家。
しかし、信頼していた部下に金を持ち逃げされた事実は、熊吾の信頼までも失うことになり、夫婦は水道も電気も通っていない空きビルに暮らし、伸仁は熊吾の妹の家で両親と離れて暮らすことになった。
この、伸仁が暮らす蘭月ビルという2階建ての集合住宅が、今回のメイン舞台と言っていい。
ひと癖もふた癖もあるような住民が暮らす貧乏長屋は、伸仁の格好の遊び場であり、そこの複雑な人間関係は、伸仁の心の成長になにがしかの影響を与えたと思う。
そこに南北にわかれた朝鮮の人たちの思惑があり、一言を言い間違えれば命の危機が訪れるような緊迫感がある。
資金のすべてを失った熊吾は、中古車販売の夢をいったんあきらめ、モータープール(駐車場)の経営を知人に持ち掛け、その準備を請け負い、住込みの管理人として生活する。
しかしこれで終わる男ではないだろうから、時間はまた新たな展開を迎えるのだろう。
伸仁は体が弱く、学校の成績もそれほど良くはないのに、小さなころから町の大人たちの中でうまく立ち回ることができる。
それは人をよく見ているから、なのだろうか。
作家というのはこんなに小さなころからその芽をそっと育んでいるのだとしたら、勝てないなあと思う。
伸仁が生き生きと描かれているので、シリーズの中では一番好きかも。 -
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ネタバレ大阪での仕事に行き詰まり、心機一転富山で出直そうとする熊吾。
しかし、実際に富山に行ってみると、共同経営者の優柔不断さが気に入らず、妻子を残したまま一人大阪に戻ってしまう。
確かに事業を興すにはある程度の思い切りの良さが必要なのだろうが、ここにきて熊吾は運から見放されたかのように、やることなすことが上手くいかない。
人と金とのタイミングがことごとくずれている。
占い師の態度といい、なんだかこのまま坂を転げ落ちていくような不安に襲われてしまう。
ただ、困窮しているとはいえ、寿司屋で寿司を食べ、タクシーを使い、困っている人には金を渡してしまう。
遂に房江は自分の着物と指輪を質に入れるまでになるのだけど、あまり悲壮感がないのが人徳ということなのか。
相変わらず伸仁は体が弱いようだけど、生命力というか、人の中で生き抜いていく力は強い。
そして、同年齢の子よりもいろいろ発達が遅いようだけど、そのことに対して熊吾がまるごと受け入れているところがよい。
無理に同級生レベルに押し上げようとするのではなく、この子はそういう子なんだ、と。
ただ、人として道を間違えず、心身が健康であればいい、と。
だから伸仁は実にのびのびとやんちゃ小僧に育っている。
どうか家族三人がまた一緒に暮らせるようになりますように。 -
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ネタバレ著者の初期を代表する「川三部作」の三作目。昭和42年、高度成長真っ只中の大阪道頓堀川が舞台。両親を亡くした大学生安岡邦彦は、喫茶店リバーで住み込みで働きながら大学に通っている。リバーのマスター武内鉄夫は、かつて玉突きに命を賭けていたが足を洗い、息子の政夫が玉突きにのめり込んでいるのを快く思っていない。玉突きで生計を立てていきたい政夫はかつて伝説の玉突き師だった父親に勝負を挑む。
「泥の河」では小学生、「螢川」では中学生の視点から世の中を見つめていたが、「道頓堀川」では主人公が大人で人生の悲喜こもごもの当事者になっている。
邦彦は大都市に暮らす人々をどこか覚めた目で見つめている。就職先を決める時期が近づいているものの現実には閉塞感が漂っている。全体的にモノトーンで淡々と日常の話は進行していくが、当時の時代や人々の息づかいが感じられるようにすっかり世界に引き込まれた。