宮本輝のレビュー一覧
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志乃子は鼠志野の茶碗に出会うことで、人生が動き出した。物との出会い、人との出会い、その時々で大きな決断を迫られながら、彼女はごく自然に歩むべき方向を選んでいく。そこに無理はなく、水が山から湧き、滝になり、川に流れ込み海に注いでいくように、環境に合わせて形を変えても、水がその本質を失わないように、彼女もその素直さ、謙虚さ、礼儀正しさを失わない。
自分を、自分以上のものに見せようとはせず、自分以下のものに見せようともしない、50歳の平凡な主婦として描き出される志乃子、ただものじゃない。
小さな茶碗をきっかけに喫茶店兼骨董品店のオーナーへの道が開かれるのが、決して偶然ではなく必然のように思えてくる -
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夢中で一気に読める本を求めて、宮本輝を手に取った。カーテンで仕切られた病室で2.5日位で読んだ。夜の日本海側の村、古美術展、バーなど、薄暗い場面が多くシンクロしてぐんぐん読めた。
2人がそれぞれよねかを調べ、神視点の読者が全てを知る奇妙な面白さ。
杉井はよねかを一目も見られず、津田が作る美味しいクリーム・コロッケを知らない。
美須寿はよねかの女の子らしい一面や男との接し方は知らない。
それでいいんだと思う。
初恋の中学生の少女を買った中年の男なんかに会わない方がいいし、浮気相手の異性との話し方や交わり方は知らなくて良い。
自殺を乗り越えこのさき生きていくのに必要な情報が、2人にうまく行き -
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ネタバレ4人でドナウの先までついにたどり着いた!途中からもしや…と予感していた絹子の死がやはり起こってしまって切なかったが、やはり年齢差や借金や不倫?である2人が結ばれるにはこんな結末しかないのかもしれない。
それにしても人間のあらゆる感情を見ることができたし、物語は壮大でロマンチックで、読み応えがあった。共産主義圏や普段なかなか行けない国の更に田舎の村の人たち、なぜか皆温かく、人間は世界中同じ生き物なんだなぁなんて当たり前のことを思ったりした。ドナウ河に沿った旅をするなんて、どう考えても金銭面や時間や言葉や…ハードルが多くてなかなか現実にはできないことだけど、そんな美しい旅をいつかしてみたいものだと -
Posted by ブクログ
ネタバレ初の宮本輝
ゆったり、まったり時が流れていく感じ。
最初はこんなテンションで上下巻なんて最後まで読めるかなぁと思っていた。
ハラハラドキドキというのがほとんどなく、よくある日常というのでもなく、かと言って奇抜でもない。
それでいて、最後まで読ませてしまうのがすごい。
主人公は確かに運が良くて羨ましい。
そうそうガラクタのようなものの中から一攫千金の品に巡り合えるかな。
しまいにはハイセンスな喫茶店まで破格の賃料で貸してもらえて羨ましいけど、自分がその立場になっても、手に余すぎる。
その度量があるからこそ、それだけの幸運が舞い込むのかも。
主人公が人生を達観していく様を見ているようだった。