宮本輝のレビュー一覧
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ネタバレ【「自伝に戻って来た?小説」、遂に完結!】
宮本輝「野の春(流転の海 第九部)」新潮文庫
宮本輝が34歳で書き始めた「自伝的小説」が、物語を進めるに従ってだんだん「自伝」を離れていった、と作者本人が振り返る作品である。2018年に発刊された単行本の文庫版が今月売り出されたのて、文庫しか読まない僕もようやく手にした。
最終巻にふさわしく主な登場人物が一通り現れ、主人公松坂熊吾はそれまでやって来た複数の事業を整理し、妻・房江はホテル・多幸クラブの食堂での仕事を軌道に載せる。ひとり息子・伸仁が二十歳を越え、五十で彼を持った熊吾なりに責任を果たしたという思いに浸るが、(僕にとっては)まさかの結末 -
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ネタバレ五十歳をすぎてようやく授かったわが子は非常に身体が弱かったので、大阪での事業を処分して、故郷愛媛の南宇和に戻った熊吾。
それから2年、伸仁は健康になり、妻の房江もまた田舎の生活になじんでいるようで、このまま南宇和で生涯を過ごしてもいいと思いはじめる熊吾。
しかし、そこに現われたのが、子ども時代の熊吾との相撲のせいで片足に一生残る障害を負った「わうどうの伊佐男」だ。
特別に残虐な極道となった伊佐男の執拗な嫌がらせに、不穏な空気が全編に渡って漂う今作は、しかしなかなか読みごたえのあるものだった。
一年の間に熊吾の周辺にいくつもの死が訪れる。
それは悪いことが起きる予兆のようでもあり、運命の動く -
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ネタバレ敗戦2年目の大阪を舞台に、戦前の事業や財産を取り戻そうとする松坂熊吾の物語。
とはいえシリーズの第一部であるのに、熊吾は既に50歳。
今後は徐々に息子の伸仁の話にシフトしていくのだろうけれど、とりあえず今はまだ赤んぼなので。
豪快で男気があって人を見る目に長けている熊吾だが、短気で嫉妬深く暴力に訴えるところが欠点。
身近にいるとちょっと厄介かもしれないけれど、読者としていうならばとても魅力的。
疎開していた故郷の宇和島から大阪に戻ってみれば、自社ビルには闇市が入り込み、勝手に商売をしている。
まずそれらを立ち退かせ、商売の糸口をつけなければならない。
昔世話をした人に裏切られたりしながらも -
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ネタバレ目次
・夢見通り
・燕の巣
・時計屋の息子
・肉の鏡
・十八回目の逃亡
・宝石箱の中
・帰り道
・白い垢
・波まくら
・洞窟の火
大阪の下町(っていうの?)にある、夢見通り商店街に住む人々が織りなす人間模様。
ちょっぴりビターが濃い目だけど、人々は鬱屈を抱えながらも強かに、あっけらかんと生きている。
子どものころから盗みグセがあり、一度も万引の現場を取り抑えられたことのない時計屋の息子。
貯めた金で駆け落ちをするが、妊婦の彼女を養う術は、高校生の彼にはなくて…。
性と暴力の衝動を抑えることができず、学生のころから問題行動ばかり起していた元ヤクザの肉屋の兄弟。
心を入れ替えて真面目に働いて -
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ただでさえ同居人(+犬)の多い城田家にハンガリー人のボラージュがやってきて…留学の3年間の出来事は、よくありそうな家族のエピソード。派手さは何にもない。でも心に染み渡るようなほろっとした感覚。
個人的には福造のセリフにくすっと笑わせられるものが多かった。おもろいじいちゃん。
どんなにゴールが近くても「よし、これからだ」と気を引き締める。これは大事にしていきたいと思った。それと、悪い気持ちを胸に石を掲げ叩きなくすという考え方。教訓めいたものもすんなり入ってきた。
家族写真、撮りたくなったなあ。
35年も前の話なんだけど、今読んでも面白かったよ。 -
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小説家、宮本輝が描くまだ戦後の色合いが大阪を舞台にした昭和40年代の学生を中心に描かれる人間模様。
フィクションではあるらしいが、父を失い大阪で学生時代を過ごした著者自身の体験と重なるところがあるとは思う。
登場人物は多岐にわたるが、共通する言葉のは「赦し」ではないかと個人的に解釈する。裏切られようとも、苦しい環境に置かれようともそれぞれがやさぐれずに生きていけるのは、過去を赦す心構えが根底にあるからではなかろうか。
登場人物の一人である喫茶店マスターが、自分の妻と駆け落ちされた易者に20年後に邂逅し、何も気付かない易者に「どんなことが、しあわせやと思いますか?」と聞かれ「辛い悲しいことが起こ