宮本輝のレビュー一覧
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登場人物たちが次から次へとつながり、複雑さを増すにつれ、人物相関図を思わず作りたくなってしまう。
章ごとに主役は変わるが、その他登場する人物誰もが魅力あふれるキャラクターの持ち主となっている。
読後もなお、彼ら彼女たちを見守っていたい、そんな気持ちにさせられるのが、著者の作品の魅力だろうか。
さらにこの小説では、富山の風景が豊かに美しく描かれ、旅心を誘う。
この作品で重要な役割を果たす、ゴッホの「星月夜」に似た風景が見える愛本橋。
主人公たちが歩いた旧北陸街道。
夕日に染まる黒部川扇状地。
黒部川の堤から田園を通って入善漁港へ到るサイクリングコース。
郷愁と安らぎが感じられる富山は、何かの調査 -
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主役が章ごとに代わって行く。
第一章で脇役だった人物が、第二章では主役となり、第二章で脇役だった人物が第三章では主役となる。さらに、第四章でもそれは続く。
連作短編とは違い、チェーンストーリーというものだろうか。それぞれの人物が微妙に関連を持ち、繋がり合っている。
書中の言葉を借りれば「人間の世界には、こんな奇跡に似たことがあちこちでしょっちゅう起こっているのかもしれない」そうだ。
人と人とのつながりが壮大な広がりを見せ、それだけで気持ちが豊かになりそうで、しかも富山や京都の描写の美しさを読むほどに、小説世界に耽溺さえしてしまう。
それぞれの人物が、今後どのような運命をたどり、どんな出会いに遭 -
Posted by ブクログ
表題作の「星々の悲しみ」は個人的に特別な作品で、高校生の頃、小説というものを本格的に読み始めるキッカケになった物語の一つで、それから数年が経ち文庫本で改めて読むことにした。
読み終わって思った事は、やはり自分の中では「星々の悲しみ」が個人的に衝撃だった作品という事を再確認出来た事だった。他にも収録順に「西瓜トラック」「北病棟」「火」「小旗」「蝶」「不良馬場」とあり、どれもアイテムや印象となる姿がタイトルとなっている。しかし、どれを取ってもタイトルから物語を思い出せるくらいのもので、逆に衝撃的読書だった「星々の悲しみ」は冒頭からこうなり、途中でこうなって、最後にこうだからこうなのだ――と揚々な -
Posted by ブクログ
ネタバレ宮本輝の初期の小説にはいるも”死”の影があったのはこういう訳だったのかとちょっと納得した。
なにせ幼い頃から事件の末の死、災害による死、トンネル長屋での死、著者の父が”お前には行くところ行く所で厄介ごとに遭遇するちゅう星まわりみたいなのがあるのかもしれん”と言わしめたように。
でも、それは言い換えれば作家になるべく星まわりとも言えよう。
さまざまな経験、体験(家庭環境、結核、パニック障害、阪神大震災、シルクロードの旅、)をその繊細な感受性でとらえ骨太の純文学へと昇華させていったんだなとこのエッセイを読んで改めて感じた。
父親違いの兄がいてひと目顔だけでも見たいと思ってその家のまわりを何度も行き