宮本輝のレビュー一覧
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主人公の聖司が日本の伝統発酵食品をまとめる本を作る中で色々な人や物や考えに出会う話。
話の中で、その時は最悪だなと思う事が後々いい事に繋がるという場面がいくつかあった。今の自分の立場はどちらかと言うと悪いと思うが、それが後々プラスになったらいいなあと思った。
物語の中に登場する発酵食品は、どれも作り出すのに年単位の時間がかかる物だった。いい物を作り出すのには、とても時間がかかる物だと実感したし、それは人間も同じじゃないかと思った。効率的にやる事は重要だが、コツコツ時間をかけて発酵食品のようにじっくり仕上げて行くのも同じく大事だと思う。
最後に、今回も登場人物や土地の描写がとても良かった -
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ネタバレ未読だと思って久しぶりに宮本輝作品を手に取ったら、2015年に既に読んでいたようだ。
軽井沢の別荘番の息子として生まれた久保修平は、別荘の持主である布施家に対する羨望と憎悪から、その心の裡に次第に狂気を育てていく。“姉妹の麦わら帽子は、卑下と憎悪のふたつの感情をぼくにもたらせてきた。(p.56)” 布施金次郎と、自らの母・姉との間の淫靡な関係を知った彼は遂に、布施金次郎を殺すことを決心する…
まさに愛憎劇と呼びたくなる、官能的で、怪しい物語。17歳の修平の、視野狭窄さ、自分の思い込みに徐々に囚われていく様が恐ろしい。軽井沢に立ち込める「霧」も、舞台装置として非常に効果的に働いているよう -
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「善き人たちのつながり」
あとがきにあるこの言葉につきる物語でした。
余りにも良いことばかり?なので、どこかに落とし穴が?とうがった読み方をしていた自分を反省…
少しも後ろめたいことをしたくないという気持ち、その思いに正しく生きていきたいという気持ちは、自分が生きる上で大切にしたい事と一緒だなと思った。
とはいえ、実際にそこまで正しく真っ直ぐにはできていないから、ついついうがった読み方をしてしまったのだろうな。
更年期、今までの自分、これからの自分を考える主人公には共感できる部分もありつつ、やはり、男性が描く女性という気も。可愛らしすぎて、嫉妬を感じてしまっただけかなぁ…いや、実際、幸運に -
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ネタバレなんでしょう、これは。
読者アンケートの結果が悪くて、連載を打ち切りになったのでしょうか。
上巻は、ちょっと上手くいきすぎな感はあったけれども、震災から立ち直るための居場所づくり(主人公である希美子や、彼女が引き取った少女たちの)は地に足がついたものだった。
親の愛情に恵まれなくて、自分勝手だったり、気が短くて飽きっぽかったりした少女たちを、仕事を与えることで生活習慣や一般常識を多少とはいえ身につけさせた。
しかし下巻にきてその流れは失速。
希美子に山荘を遺した老女の人生の謎を追う方が主眼になっていて、10人もの少女を預かっているのに、その書き分けもほとんどできていない。
実の息子二人はも -
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恥ずかしながら、私は社会人になるまで生活で苦労することは一度もなかった。
哲之の母が、幸せだと思いながら眠りたいと願う場面で思い出すが、私は実家で両親家族に守られて幸せだと感じて眠る毎日を送っていた。
私はたった4年間だが、親元を離れ海外で働き、守ってくれる者などいない生活を送った。
住んでいた家は天井がぼろぼろと剥がれてヒビが入り穴が開き、湯船はなくトイレとシャワーが一緒になった浴室があり、お湯が出ないことも多々あり真冬も水を浴びていたこともあった。
ベッドも古く中の骨が折れており、寝心地がいいとは言えない。南国だったが冷房は古過ぎて効かず、電気代が高いため稼働は1時間のみ。職場は違法労 -
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ネタバレ流転の海シリーズを読んだあとなので、どうにもリアリティのなさが気になる。
いきなり酔った勢いで初対面の女性たちと同居を決めるかね。
新築のマンションに。
さっさと荷物を搬入するなんて、怪しさしかない。
そして、借金をしてまで行う善行というのは、どこか違うと思う。
そりゃあ医者になれればいいだろうけれど、本人は無職で勉強だけして、生活費や学費のすべてを同居の3人が借金してまかなうというのは、いかにも無理。
結局いろいろ破綻するし。
親の生命保険を解約してまでお金を要してもらった挙句、彼女からお金を返してもらおうとは思わないって、バカなの?
彼女だって大人なんだから、借りた金はきちんと返してこ -
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映画を見終わったような読後感の一冊です。
アメリカに住んでいた叔母・菊枝が日本旅行中に亡くなり、突如莫大な遺産を相続することになった小畑弦矢。
諸々の手続の為、ロサンゼルスにある叔母の家に向かいますが、そこで27年前に死んだと聞かされていた叔母の娘・レイラが行方不明だと知らされます。
レイラは生きているのでしょうか?そして生きているとしたら何処に?そもそも何故、死んだとされていたのでしょうか・・?弦矢は探偵のニコと共に謎の解明に乗り出します。
・・と、あらすじだけ見るとミステリのようで勿論その要素もあるのですが(“探偵”も登場しますしね)、描かれているのが宮本さんだけに、やはり“ヒューマンド