宮本輝のレビュー一覧
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宮本輝さん、初読みです。
穏やかで良質な小説を読んだなという感じがした一冊でした。家族間で晩餐会を開くということに驚きましたが、他は衝撃的な出来事が特に起きないのが、かえって新鮮でした。
叔母夫婦が留守の間、中国の四合院作りの家のうちの一棟、倒座房に住むことになった綾乃。彼女の祖母を中心とした物語でした。
その祖母が90歳の記念に晩餐会を開くことになり、その準備を手伝うことで綾乃が祖母の教え子と出会い、祖母の教師としての一面を知ることになります。そして語られた過去で祖母の生きてきた歴史を知ります。
この祖母の徳子おばあちゃんが、凛として気遣いもぬかりなく、とてもすてきな人でした。戦争を経 -
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悲しみを振り返る往復書簡。愛しながら離れてしまった夫婦が、過去と現在を少しずつ知らせ合い、次第に傷が癒されていく。
男女の愛情というものは、人の形のようにお互いの想いの形は少しずつ違っている。すべて都合にいいように理解できるものではない。振り返ってみて避けようがなかったことと、後悔も人生の一部だと受け入れていく。そうしなければ時間は重すぎる。
離婚して10年後、錦秋の蔵王のゴンドラで偶然出会った。二人は言葉の用意もなく分かれた。
こうして先ず女(勝沼亜紀)から長い長い手紙を書く。
(有馬靖朗)は、今の生活を知られたくない。無職で金に追われている。
亜紀はもう分かれた理由は分かっている、それ -
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ネタバレとてもきれいな書簡小説だった…
文体はもちろんのこと、内容も高尚で美しく
読んでいて心がスゥーっと洗われていくような感じがした。
亜紀と靖明は10年前に、靖明の不貞・殺人事件が原因で離婚をした。そして、その10年後蔵王のゴンドラで奇跡的な再会を果たす。その再会ではお互い見つめ合い少しの挨拶で終わったが、亜紀には靖明に聞きたいことがたくさんあった。不貞の相手由加子と靖明の関係性とその真実、亜紀との離婚を踏みきった理由…それを切実に書簡で尋ねる亜紀。それに対しはじめは躊躇したものの、亜紀に嘘偽りもない事実を書き連ねて返信していく靖明。ふたりの計14通から見えてくるさまざまな真実に、胸が締め付けら -
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宮本輝の流転の海シリーズ第四部。
時は昭和20年年代末、大阪の事業に失敗した主人公は再起をかけて人づてに家族と北陸に移る。が、そこでも物事は順調とはいかず、妻子を置いて大阪へ戻る。慣れない土地に残された妻子は、水が合わない場所での生活に四苦八苦する。
「子供からおとなへと急速に移行していく際、人相や体型だけでなく、精神も型崩れを起こす。肉体は放っておいても成長するが、精神の型崩れには手当てが必要だ」
「おとなになるっちゅうのは、自分の胸に秘めちょくことが増えるっちゅうことでもあるんじゃ」
「ひとりの人間の心の領域というのは、じつに広大なものです。氷山の一角という言い方がありますが、海面 に出て -
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宮本輝さん著「錦繍」
宮本輝作品の中でも人気上位の未読の作品をと思いこの作品を選んでみた。
作品は離婚した元夫婦関係にあった男女の手紙のやり取りだけで構成されている。
携帯電話が主流の今の時代、「手紙」でのやり取りという作風がとてもノスタルジックに感じられ、言葉の気品の高さもあいまって妙に味わい深い雰囲気を感じさせられる。
人が口を揃えて「名作」と位置付ける理由がよくわかる作品だった。
手軽で利便性に富んだ携帯電話。
今の時代では当たり前に電話、メール、ライン等でメッセージを送受信できる。
誰の生活にも無くてはならない必需品であり、また個人の一部といってもいい位の重要ツールでもある。
そ -
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灯台は近づくよりも、ある程度距離を保って観る方が良い。それは家族など身近な人々も同様かもしれず、日常生活で見えなくなってしまっているそれぞれの想いや価値観など、実は非日常に身を置いて語り合うことで見えてくる部分があるものだ。
房総、伊勢志摩、青森、そして出雲と子どもたちや親友の隠し子といった相手と巡りながら、亡き妻の残した灯台に関する謎が解き明かされていく。灯台は海側を遠くまで照らすことが役割であり、足元や陸側は思いの外暗いものだ。実際に灯台に近づくプロセスで怪我をしたり、その距離感を測っていく流れが主人公の人間関係のメタファーとして機能している。
板橋区の仲宿商店街という馴染みある地元が -
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宮本輝の流転の海シリーズの第三部。
戦後の復興期の昭和20年代の大阪。愛媛の田舎を離れ事業を起こそうとする中年男性家族のフィクション。全てが順調な人などおらず、何かしらの負い目、十字架を背負っている登場人物たちが織りなす含蓄ある台詞の数々。
「人間というのは、つまるところ、矛盾だらけの奇っ怪な心にひきずり廻されるものなのだ」
「人間、転げ落ちだしたら、あっとういまや。俺らは、そんなやつらを食い物にする稼業なんや」
「俺は物事をいつでめ中途で投げ出すという性癖ぎある(中略)子供が、おもちゃに飽きるように、積み上げてきた積み木を崩して、別の物へと走って行く…」皆が貧しかった時代ながらも何とか前を向