あらすじ
板橋の商店街で、父の代から続く中華そば屋を営む康平は、一緒に店を切り盛りしてきた妻を急病で失って、長い間休業していた。ある日、分厚い本の間から、妻宛ての古いはがきを見つける。30年前の日付が記されたはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。差出人は大学生の小坂真砂雄。記憶をたどるうちに、当時30歳だった妻が「見知らぬ人からはがきが届いた」と言っていたことを思い出す。なぜ妻はこれを大事にとっていたのか、そしてなぜ康平の蔵書に挟んでおいたのか。妻の知られざる過去を探して、康平は旅に出る――。市井の人々の姿を通じて、人生の尊さを伝える傑作長編。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
小説の主人公は62歳。
亡くなった奥さんが残した謎を解くために、灯台めぐりをすることになる。年代が近いと、どうしても感情移入するなあ。
ただ主旨とは無関係な描写が多く、ストーリーの進み方がめちゃくちゃ遅い。最近の小説のジェットコースター的な展開に慣れた人には、ちょっともどかしいかも。だが、これが宮本輝の文章特徴なのかもしれない。
主人公が自分の生き方をこんな風に整理して、親友に話すシーンがある。
『威風堂々と生きたい。焦っても怖がっても逃げても、悩みは解決しない。コツコツと一つ一つ、焦らず怯えず難問を解決していく。そういう人間になるために努力をするんだ。』
何気ない言葉であり、誰もが一度は考えることだけど、『活字』として目に入るとインパクトがあるなあ。これには共感しました。
Posted by ブクログ
三十光年の星たちで久しぶりの宮本作品に触れた
宮本作品への想いが深まりこの作品を手に取った
やはり宮本作品は素晴らしい
この作品をを読んで、宮本輝という作家の読書量もすごいということがわかった
ミステリー、ブームの中華蕎麦の話題
読書量による知識の凄さも感じた作品だ
灯台、いくつか行ったことのある灯台が出てきた
また、行きたくなった
森鴎外の渋江抽斎も読んでみたい
Posted by ブクログ
いいなあ。牧野康平さん。いい人生だなあ。
主人公の牧野康平は東京の旧板橋宿商店街の中華そば屋の店主であったが、二年前に奥さんの蘭子さんが亡くなったのをきっかけに休業したままになっていた。
ある時、店の二階の自分の蔵書棚の前に寝転がり、長年の積読であった「神の歴史 ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史」という本を読んでいるとパラリと一枚の葉書が落ちてきた。それは、二十年以上前に妻に小坂真砂雄という男性から届いた葉書だった。それには
「大学生活最後の夏休みに灯台巡りをしました。見たかった灯台すべて見て満足しています…」という文章とどこかの岬らしいジグザグの線が書かれていて、妻の蘭子は「小坂真砂雄という人なんて全く知らない」と不思議そうに言って、「私はあなたのことは全く知りません」とわざわざ返書を送っていたのに、その葉書は捨てずにわざわざ康平がいつか読みそうな本の間に挟んでおいたのだ。
亡き妻の意図したことはなんだったのか?本当に蘭子は小坂真砂雄のことを知らなかったのか?彼は何者だっのか?
謎の解明に積極的というわけではなかったが、康平はその葉書を見ているうちに、ふと自分も「灯台巡り」がしたくなった。
各地の灯台巡りをするついでに離れて暮らしている息子たちに会う。末っ子で次男の賢索は京都で大学生をしているが、「橋梁工学の道に進みたいから、大学院に行きたい」と言い、その言葉は康平に「店を再開させる」きっかけとなる。
また、長男の雄太は就職して二年目で名古屋在住であったが、康平が会いたいというとテキパキとホテルを予約してくれたり、仕事の接待で使う料理屋を予約してくれたりとすっかり「使える若者」になっていた。康平自身は父親から受け継いだ中華そば屋でしか働いたことがないのに息子が社会に出て一年半の間に揉まれて立派になっていることに感心していると、息子も
「俺は昔、父さんと母さんのことを「カタツムリ」だと思っていたけど、自分が社会に出て、二人がどんなに大変だったか分かったよ」
と言ってくれた。
また、東京で一緒に暮らし、証券会社勤務の長女朱美は、康平が自分の中華そば屋のことを
「親父の代から全く変わらない、シンプルな中華そばしか出さない店」と言ったことに対し、
「お父さんの中華そばはピカソの一本の線と同じ。誰にも真似出来ない」と認めてくれている。
みんな本当にいい子たちなのだ。康平自身は高校時代に級友に言われたことに傷つき、高校を辞めて父の跡を継ぎ、中華そば屋一本できたことにコンプレックスを持っていたが、そんな親に大学まで出させてもらった子供たち三人はみんな両親の生き方をリスペクトしているのだ。
家族だけではなく、康平は他にもいい仲間に恵まれた。同じ商店街で八百屋の息子だったカンちゃんは、東京の大学を出て、大企業に就職した後も康平と親しく付き合ってくれ、「お前は中華そば屋の世界しか知らないから、面白くない。本を読め!」と辛口のアドバイスをくれた。それ以来、康平は本によって深みのある人間になった。
そして、もう一人。それはカンちゃんが急死したあと、突然九州からやってきた、カンちゃんの愛人との隠し子、新之助だった。父親に黙って母親が産み、会ったこともない父親の痕跡を少しでも見たいと遠くから突然やってきた新之助は高校を中退して、未成年なのに妻と二人の子供を伴っていた。悪い仲間と付き合っていたような彼だったが、父親の親友であった康平たちに親切にしてもらったことで、心を入れ替え、大学進学を目指して勉強することを決意し、康平の灯台巡りの運転手を買って出てくれた。旅館ではお風呂で康平の背中を流してくれたり、「小坂真砂雄に会ってみたい」康平の背中を押してくれたり。きっと、新之助は実の父親との親子の時間を持てなかった分、束の間康平と親子のように付き合いたかったんだな…といじらしい。
灯台は各地の岬の先端にあって、そしてリアス式海岸の多い日本では海岸がジグザグで近くまで行ってもそこから灯台までがとても時間がかかりそうだ。ある意味飛行機でニューヨークやパリなど世界の主要都市にひとっ飛びするより大変かも。そして、近くまで行かないと見えない景色や遠くからでないと見えない景色、苦労して高いところに上らないと見えない景色があることを実感するんだな。
康平は一枚の「灯台」について書かれた謎の小坂真砂雄からの葉書を通して始めた旅で、妻が亡くなるまで胸に秘めたままであったことを知った。夫婦は知らなくていいこともある。だけど、勇気を出して康平が訪ねた蘭子の秘密は知らなくても良かったが知ったことで、改めて亡くなった蘭子をリスペクトすることだった。苦労して近くまで行って初めて本当の美しさが分かる灯台を巡る旅と似ていると思った。
康平の「灯台巡り」。亡き妻の蘭子さんと一緒だったらどんなに良かっただろうと思った。だけど亡くなったからこそ、ずっと心の中でお伴して下さったし、旅の途中で会った息子や娘たちの中にも「蘭子」さんがいて、ずっと優しく康平を照らす道しるべでいてくれたと思う。
いつか、私も灯台巡りをしてみたい。
Posted by ブクログ
まきのの中華そば食べたくなったし、新ちゃんみたいな息子欲しくなった。
主人公の独り言の多さで説明を全方位カバー。
登場人物みんな素敵だなぁ。そして蘭子さんは愛され過ぎでしょ。旦那2年も腑抜けにさせちゃって。
どんな歳になっても初体験はあり得るし、ドキドキもする。過去ではなく未来に続いていくための毎日。出雲に行って灯台見たくなった。まずは近場の房総からかな。
Posted by ブクログ
板橋にある、本屋イトマイで購入。
その時は、旅行に出かけることが多くその移動中に読んでいました。灯台を目指す主人公と自分が重なり、一緒に旅している相棒のようでした。
旅のお供にぴったりの一冊です。
心も温まり、最後のシーンは感慨深いものがありました。
Posted by ブクログ
今回も寸胴出てきた!!今回は中華のスープだった。
それはさておき。ロードムービー風の展開でどの場面もワクワクし、灯台の情景を思い浮かべることができた。読み終わって清々しくなれる作品だった。
Posted by ブクログ
読後
宮本輝さんはやはりいいと思った。いつも人の中に忘れていることを考えさせられる。
相変わらず一気に読んだ。作品中に出てくる
灯台をネットで検索しながら読んだ。行けるところは行きたいなとも。
しかしながら、主人公の読んだ本には手がつけられないなと思った(笑)
Posted by ブクログ
妻を亡くして気力を失った中年男性が、ある日、本の隙間から、妻が隠した一冊の葉書を見つける。その謎解き、即ち妻の過去を知り、妻がそっと残していたメッセージを究明するために、灯台巡りの旅に出る。その過程で、3人の子どもや親友達との対話を重ね、生きる希望を取り戻して行く。最後のシーンは圧巻である。
毎年12月は、公私ともに忙しくなる。だからこそ、今年を振り返る時間を意図的に作りたい。ところが、振り返る度に、ネガティブな自分は、今年出来なかったことを思い出したり、目に見える他人の実績と比較して、卑屈な気持ちになる。
この本は、気持ちが萎えて落ち込んだ時、自信を取り戻したい時にオススメの一冊である。この小説には、誰であっても立派な人生を生きており、深い意義があるんだと、灯台の温かい光のようなメッセージが込められている。
風が吹きすさぶ寒い海辺に、ポツンと立つ孤高の灯台。それは、万人を分け隔てなく平等に照らす神様のような存在。灯台巡りに少し興味を持った。昔は「灯台守」という職業もあったらしく、その仕事や生活環境についても調べてみたくなった。
また、ラーメン職人としてのこだわり、阿吽の呼吸で成り立つ調理人の仕草や動線など、作者の緻密な取材記録を垣間見ることができた。
Posted by ブクログ
幸せは気づくもの。
何でもない日常、それとなく過ぎてゆく日々。そこに確かに存在する自分。現在の自分に至る人類の永きにわたる生の継承。それは宇宙の歴史におけるほんの僅かな一瞬。その永遠と瞬間の交わりの中に在ることを尊いと思える心の持ち様。それこそが幸せの本質ではないかと思います。
変わらぬ事こそが変わっている証。取り巻く環境の変化に添っているからこその変わらぬ様。灯台から多くの響きをいただきました。そして「まきの」の中華そばからも。
主人公康平と彼を取り巻く人々との何気ない会話は名言の宝庫。その会話に散りばめられた一つひとつのセンテンスが心に響きます。中でも康平と新之助のやり取りは何とも言えない不思議な魅力があります。龍飛岬での赤いボタンを巡る掛け合いなど思わず二度読みしました。そして人生を示唆するかの如く登場する『蟹江抽斎』、『夜明け前』、『神の歴史』の3書。
涙なしの心地良い感動に浸る、滋味あふれる物語でした。
Posted by ブクログ
何年ぶりの宮本輝作品になるのだろう、と思いながら手に取った。
物語、人物像、生活感、色々な土地の特徴がするりと入ってくる安定感。人と人とのつながりを感じる安心感。人間関係ってこんなに濃いものなのだろうか?とかなりうらやましさも感じながら読みました。
灯台めぐりもできたのは楽しかったです。森鴎外の『渋江抽斎』は読みたいと思いましたが、果たして読めるのでしょうか。
Posted by ブクログ
犬吠埼灯台にいったので気になった本。
久々の宮本輝作品。
主人公が灯台巡りに何かにむけていろいろ準備していくところが心地よい。旅に出る、旅の途上ってその面白さもあるとおもう1人。
まきのの中華そば食べたいなー。
あと転ぶのは気をつけないとね、ほんと。
Posted by ブクログ
スリリングで手に汗握るような展開ではないのに一気に最後まで読みたいと思わせてくれる、宮本輝さんの本にはそういったものが多いと思います。本書もその中の一つだと思います。
灯台めぐり、老後の楽しみに良いかもしれないですね。足元には気をつけたいと思います。
Posted by ブクログ
良かった。とても良かった。
板橋で中華麺屋を営んでいた康平は、妻を亡くして2年、店も閉め、本を読んで焼酎を飲むだけの生活をしている。近所には幼馴染みもいて、気楽に生活しているが、ある日『神の歴史』という本に挑んでいると(実に難解な本でなかなか読めなかった)、30年前に妻に届いた葉書が挟んであった。灯台めぐりをしたと書いてある差出人に覚えはなく、「あなたをまったく知りません」と書いた返信をしたはず。なぜ?
康平の日常にちょっとしたミステリーが入ってくる。
これを機に康平は灯台めぐりを始めるのだが、私だけではないと思うが、62歳の康平に、我が夫を重ね合わせてしまうw
私は生きてるけどねw でもきっと夫もこうなるw
一人旅なんかした事なくて、計画したり予約したり、勇気を出して人に話しかけたり、いろんな事を初めて経験する。今まで仕事だけを実直にやってきて、何もかも妻に任せていたのだろうと、妻蘭子さんを気の毒にも思い笑ってしまった箇所も何箇所もあった。
康平には3人の子供がいて、それぞれ社会人や大学生になっているが、このことがあって初めて向き合う。この3人とのやりとりも本当に良かった。
私には子供はいないけど、夫の事も、どれだけ知っているのだろうと思ってしまう。きっと知らない事の方が多い。
そんな康平が最終的に蘭子さんの秘密に辿り着き、お店を再開できるまでが語られるのだか、最後まで読むと、この『灯台からの響き』という題名が本当に本当によくできていることに感動する。いや、このストーリー自体が本当によくできていると感心した。“灯台”がダブルミーニングになっいるだけでなく、ストーリー全体を照らしているからだ。
あー、ほんとに、夫に読ませたい!
きっと読まないだろうけど。
私が先に逝ったあと、「そういえば、俺に読ませたがってたっけ•••」などと夫がこの本を手に取る瞬間を想像したりしてwすっかり宮本輝の世界に浸りきってしまったw
Posted by ブクログ
久しぶりに、宮本輝さんの文庫を購入。妻を亡くした料理人の灯台巡りに、訳あって若者が参入。老いて行く主人公を、若者が生きる欲求で引っ張って、前を向いて生きなければならないことを痛感する内容。
Posted by ブクログ
日本人に昔からある心の温かさが詰まった話だった。同じ商店街の幼なじみの、遠慮ない物言いなんだけど優しさ。生活にいっぱいいっぱいだった頃には出来なかった、子供達との触れ合い。ずっと底の方にある思いやりに感動した。
Posted by ブクログ
町のラーメン屋の主人が、亡き妻に送られてきた知らぬ名前からのハガキの謎について、探し妻への思いをより深める話。
派手さは全くないが、出てくる人物が皆等身大であったかい。
流石、宮本輝!
ほっこりしました。
Posted by ブクログ
久々の宮本輝作品。いつものことながら読み始めると、話の展開と人との繋がりが広がりどんどんと惹きつけられました。
なぜ「神の歴史」に挟んだのかは明かされず。
Posted by ブクログ
久しぶりの宮本輝。すごい事件が起こるわけでもなく、びっくりのどんでん返しがあるわけでもない。だけど、どんどん宮本輝ワールドに引き込まれていく。とてもリアルなようで、こんな会話を親子でする?て考えたら、リアルではない。でも、会話のひとつひとつが登場人物の一人ひとりが、現実味を帯びて迫ってくる。この物語の主人公は、妻を亡くした夫か?亡くなった妻か?
Posted by ブクログ
死者の声が灯台を通じて生者に届くようにリアルでありながらも幻想的。故人心情を慮る描写に胸を打たれた。起伏は無いながらも読後に静かな余韻が残る。
Posted by ブクログ
大分前に購入した本。そして大分前に読んだので色々うろ覚え…
奥さん、随分と秘密主義だな、という感想。彼女にとっては黒歴史だったということなのだろうか。でもそれだったら反対に葉書なんてもらっても嬉しくなかったかもしれない。
読んでいて、灯台巡りをしてみたくなりました。灯台のある景色というのも風情があって憧れるな。
Posted by ブクログ
亡き妻の隠された謎を求めて、残された夫が燈台を巡る旅へ。
謎と言っても男女の絡れとかそうではなく、優しく心温まる物語でした。
主要な登場人物は皆良い人で雄弁で悪い人がいない。
そこは作者のカラーなのかなあ。
Posted by ブクログ
亡くなった妻宛に届いた謎の葉書をきっかけに主人公の冒険がはじまる。謎の葉書をもとに旅してる過程で、妻の過去や新しい自分を発見していく物語。この本を読んだ中でとても印象に残ったのは「永遠のなかの一瞬なのではなく、一瞬のなかに永遠がある」という一文。どういう意味か今はわからないけど、きっと人生のヒントになることだろうなと思った。この文の意味が完全にわかるようになるのはいつかわからないけど、自分自身成長して、意味を理解できる時がくれば良いなと、楽しみに過ごしていこうと思った。
話の展開がすごいゆっくりで結末もスッキリ解決!って感じではなかったかな。でも、登場人物がみんな人情深くていいなーって思った。これは繰り返し読む本になりそう。
Posted by ブクログ
愛する妻が亡くなって、その妻が残した謎を追う展開で話しが進む。その謎は、自分的には全然たいした事に思わなかったけど、宮本さんのうまい文章と、それでいてテンポよく進む展開、そして所々に出てくる心に残る言葉に惹きつけられた。
「いまを生きる人間にとっては過去の歴史は手に負えない。史実など根拠がないのだ。過去にそれを記した人の意のままだ。自分に都合のいい改竄や捏造はやりたい放題だったかもしれない。」
この文章がすごく心に残った。
Posted by ブクログ
静かでゆっくりとした話の展開が、悲しみの重さをじんわりと感じさせる作品だなぁと。本に挟まれていた葉書の秘密を追いかける、ミステリーの要素もあり面白かったです。今まで灯台というものの存在を意識したことはなかったけれど、そんな旅もいいなぁ。と思わせてくれた。