宮本輝のレビュー一覧

  • 私たちが好きだったこと

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    ネタバレ

    若い頃にこの作品を読んでいたら、きっと「いかにも自分勝手な人々の、どこか華奢な物語だ」と感じていたように思う。

    けれど、少しだけ歳を重ね、友情も、恋愛も、そして性も、刹那的な出会いをそれなりに経験してきた今の自分と重ね合わせて読むと、登場人物たちが抱える胸の痛みが、不思議なほど身近に感じられた。他人の物語を読んでいるはずなのに、かつて自分が感じた胸騒ぎや、あの頃の感情がふいに蘇ってくる。

    とりわけ最後の、

    「思い起こせば、なにもきわだった派手な思い出があるというわけではないが、心根のきれいだった自分というものの〈気配〉とはそう簡単に訣別できないではないか」

    という一節には、心を強く揺さ

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    2026年08月16日
  • 螢川・泥の河

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    一言で表すなら「寂寥感」
    現代的な本のように、特に大事件が起きるわけでもない。が、読んでいる間は時を忘れ、作中の世界観に引き込まれる。文章ひとつひとつが精査され、熟考の末編まれたものだということがよくわかる。非常に味わい深く、読むのに時間がかかるが、その分自分の思考が研ぎ澄まされるような感覚がある。癒えない戦争の傷跡、格差社会、生の儚さ、死のあっけなさ、思春期の戸惑い、などなど。思い返せばあらゆるテーマをこの物語は描き出している。しかし、あえてこの本から得られるものを言語化するべきではないように思われる。単純に言葉にできないものを、宮本氏がこの180ページの小説でもって描き出したのだと思う。だ

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    2026年08月14日
  • 潮音 第一巻

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    越中富山の薬売りの端緒からのストーリー
    幕末の時代を奔走した彼らの物語は興味深い時代でもあり、楽しませてもらいました。

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    2026年08月12日
  • 灯台からの響き

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     以前、「◯◯強調月間」「勝手に◯◯特集」等テーマを設定し選書したことがありました。今回はあまり続ける意図のない「灯台」絡み…それも海外文学連続3作でしたが、国内編の本作で最後です。

     本作とも関係しますが、GPS等の進歩で灯台の役割が縮小し、廃止が進んでいるようです。が、機器トラブルの際の命綱、またその地域のシンボル(観光資源等)として、存在し続けてほしいです。

     中華そば屋を夫婦で営んでいた康平(62歳)は、2年前に妻を亡くして以来、店を閉め家にこもっています。子ども3人も皆成人(3番目が大学生)し、同じ商店街にそれなりに親友もいて、好きな本を読んで過ごし、仕事への切迫感はありません。

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    2026年08月04日
  • 螢川・泥の河

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    『錦繍』を勧められ読んで、何とも言えない面白さがあったので今回この作品を読んだのですが…
    むずかしい…?私にはむずかしいのか…?
    33歳で読んで難しかったら一生難しいじゃないの…!教養が足りないの…?

    このなんとも不気味で生々しい空気感、人間の感情のどうしようもなさや描写のグロテスクさが宮本輝の世界なのですか?
    次は『青が散る』を読んで宮本輝をもっと知りたいと思います。

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    2026年08月02日
  • 湾

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    ネタバレ



    著者:宮本輝
    発行:2026年5月25日
    新潮社
    初出:「新潮」2024年6月号~2025年4月号、6~12月号

    湾とは、舞鶴湾(京都府)のこと。
    同じ舞鶴市にあっても、「人」の形をした湾に面した、西舞鶴と東舞鶴とでは世界が違うし、離れていて交流も少ない。東は産業の中心地、西は漁村集合体。物語は、西舞鶴にあるいくつかの集落が舞台。そこに入ってくる人、去っていく人、戻ってくる人、行き来をする人を描く長い物語。1959年から2023年に至るまでの話。

    主人公は1949(昭和24)年生まれの光太。3歳、2学年上の姉である皐月とは父親が違う。父親は生後3ヶ月の時に死亡。母親が再婚し、光太が生

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    2026年08月02日
  • 優駿(下)

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    ネタバレ

    オラシオンがケガをして、二度とレースに出られなくなる…という展開ではなくて本当によかった(やりかねないと思ってたので)

    ※上巻を読み終わったときは、ミラクルバードのくだりがショックで、下巻に手を伸ばすのは3日間ほど置いてしまった。

    1頭の馬をめぐって関わる人たちの運命も変わっていく。その馬が偉大であればあるほど、連れてくる福も禍も大きくなっていく。現実の歴々の名馬たちもそうだったのだろうか。

    ダービーの後は描かれないけど、久美子と博正は結婚して意外と上手くやっていくんじゃないかなぁ。あと、多田さんも何やかやあって、最終的には和具さんの事業を手伝うことになる気がする。なってほしい。

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    2026年07月27日
  • 灯台からの響き

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    起伏は少なく淡々と、わりと都合良く話はすすむものの、余韻も残り味わい深いなと感じた。

    妻、夫、パートナー…なんでも知っているつもりの、いることが当たり前になっている人の知らない過去。確かに気になる。

    人生の折り返しは過ぎた私にも響く。
    老年期を迎えた主人公の、哀愁と再生を描いた優しく胸を打つ大人のための旅情物語。

    都会の商店街、旅先の灯台に足を運びたくなる。

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    2026年07月25日
  • 錦繍

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    義母が宮本輝さん好きらしく、私も読んでみた。
    往復書簡で綴られる静謐な文章。
    「今」に対する受け止め方が変わっていく場面が印象に残った。自分の不幸を他人のせいにしたりなどしたが、そうではない、これは私の業でもあるという気付き。
    もう少し大人になってから再読したいと感じた。

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    2026年07月24日
  • よき時を思う

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    2026年ナツイチフェアで「宮本輝」という懐かしい名前を見かけて購入。
    宮本輝といえば「ドナウの旅人」を繰り返し読んだ日々を思い出す。

    タイトルの「よき時を思う」にはいろんな意味があるように思う。
    物語の始まりは東小金井にある三沢平馬の四合院造りの家から始まる。平馬の話はそこそこに、すぐにそこに住む綾乃の話になり、小説の大部分は綾乃とその家族、祖母の話となる。
    90歳になる祖母が計画した豪華絢爛な本格的晩餐会。
    そこに至るまでの、家族の話。
    何か大きな事件が起こるわけでもなく、ただ日常が描かれているのだけど、その日常がそれぞれが生きてきた物語なのだと気付かされる。

    小説の最後に、再び三沢平

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    2026年07月15日
  • 錦繍

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    昔の本だから読みにくいかなと思いきやつらつら読めます。読みやすい。読後はなんだか郷愁というか子供時代の事や田舎のこととか色々蘇ってきてめっちゃセンチメンタルになります。でも良かった。

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    2026年07月15日
  • ドナウの旅人(上)

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    西ドイツが存在し、まだ、東欧が共産圏であった頃なので、物言いとかもちょっと違うし、今あるような便利なものがない時代なので、旅の進め方もちょっと懐かしかさを感じながら読み進められました。突然失踪した母親を追って、ドナウ川へ、、そして、それぞれ難しさや思いをかかえた人々が登場し、、下巻が楽しみです。霧が丘

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    2026年07月04日
  • 湾

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    美しい場所から生まれる美しい家族の話。

    大きな事件が起きるわけではない。舞鶴という場所で生まれ育った主に姉弟の物語。
    ここで生まれ育ったわけではないけどそんな幼少期があったような、あるいはそこに憧れを抱くような美しい記憶。
    振って湧いた僥倖はシンプルに羨ましい。
    これほど伸びやかに生きられたら、と思う。

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    2026年06月23日
  • 湾

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    美しい舞鶴湾のお話。最近行ってないな。よくドライブしたな。五老ケ岳よく行ったな。

    かなり近くて風景が目に浮かぶのでつい買ってしまったやん、

    昭和高度成長期、五粒の種を託され舞鶴に向かう少年光太の語りで物語は進む。腹違いの姉皐月と、祖父のタワシじいちゃん。その従兄弟のマジ—、そのお嫁さんであり姉妹のツルカメばあちゃん、レーダーの会社の社長である父と母…

    高度経済成長の真っただ中に美しい田舎の漁村で成長していく光太と皐月。血縁家族の共同生活がまた楽しい。朝鮮特需や高度成長期の昭和時代に長閑な漁村で生活を営む人々のその時代時代の人情味溢れたエピソードの数々は昭和の時代のおおらかさとか、平成の時

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    2026年06月19日
  • 潮音 第四巻

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    時代背景と越中富山の薬売りから話が大きく広がりを見せ楽しませてもらった。つくづく大変な時代だったと感じた。
    太一郎の自死がわからないまま終わったのは何故なんだとしか思えない。私見では、偉大な父親の将来構想を聞いて一瞬の気の迷いが、自分を行き詰まらせてしまったのだろうか?いずれにしても、なにやら腑に落ちない事件だった。著者の考えを聞きたいものだ。

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    2026年06月16日
  • 螢川・泥の河

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    泥の河は1955年頃の大阪を舞台にした小説で、川沿いに住む少年たちの交流を余情感たっぷりに描いている。うどん屋の息子の信雄、対岸の船の家に住む喜一と銀子、そして母親。物語は信雄と喜一の出会いから始まる。二人は川で遊ぶうちに親しくなり、信雄は船の家に通い、喜一の姉の銀子、さらに母親とも知り合いになる。その中で信雄は喜一と銀子の母親は娼婦であること、そのことで近隣住民から疎外されていることを知る。しかし信雄の両親は喜一と銀子を差別せず、愛情を持って接する。その態度は信雄にも伝わったと思う。ところが地域の神社の祭りの日の出来事で信雄と喜一の絆には距離ができてしまう。そして最後は会うこともかなわず、別

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    2026年06月07日
  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    次から次へとテンポよく展開していき面白かったです 登場人物も魅力的で引き込まれました 第二章も読みたいです

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    2026年06月06日
  • 錦繍

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    会社の先輩から純文学が読めるなら、これを読んでほしいと半ば強引に読むことになりました。
    正直なところかつての文豪の作品でも、いわゆる純文学と括られる作品はなかなかハードル高めのものが多いイメージがありますよね。
    錦繍は元夫婦と言う関係性の2人が偶然の再会をしたことから始まり、手紙と言う手段で過去を精算していく物語。
    手紙だけのやり取りがここまで奥行きを出し引き込ませるのかと、正直驚きました。
    素直に面白かったです、新しい作品ばかり読もうとしてましたがもっと色々な作品に触れてみたいと思わせられました。

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    2026年06月01日
  • 灯台からの響き

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    ネタバレ

    久々の宮本輝、青が散る、川3部作など若いころからよく読んでいた作家。母も読んでいたような気がする。2020年の作ではあるがやっぱり宮本輝だ、テンポは遅く、60代の私をうならせる文がある。設定がラーメン屋の親父だけど本を山ほど読んでいるというのが昭和らしい、森鴎外の渋谷抽斎も読んでいる、子供3人と心を通じ合い妻蘭子が2年前に死んで締めていたラーメン屋を再開業するまでのお話し。たまにはいい・

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    2026年05月31日
  • 青が散る(下)

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    大学の四年を終えて、燎平や仲間たちはそれぞれの人生を歩きはじめるところで、完。
    「青が散る」とは「青春の終幕」の意であったか。

    でもって非リアな青春を送ってしまった私には、その感傷が今一つピンとこないのだった。
    学生時代の私が読んでいたらどう感じたかはわからない。
    でも、ドラマを見なかったということからも、当時からこういう世界とは距離を置いていたような気がするな。

    親目線でみると、親の金で大学に行っているのに、勉強をするわけでもバイトするわけでもない。
    恋愛はまあいいだろう。
    部活もまあいい。
    でも、勉強はしろよ。
    家業が倒産するのしないのという時ですらバイトもしないで、デートの時は小遣い

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    2026年05月23日