宮本輝のレビュー一覧
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この本も上白石萌歌さんが教えてくれた。彼女は「うっとり」と語っていた。たしかに、たしかに。読むことについて構えることなく読むことができる本には、ときどき出会うことがある。まさに出会いましたね。ぼくには『錦繍』以来の宮本輝さん。
それにしても萌歌さん。
「うっとり」かあ。さすがの表現ですな。
いつも彼女は、ご自身の感情を素直な言葉で表現してくれます。ぼくは、そんな彼女の言葉にも「うっとり」しています。
それぞれの物語の濃度と短編ゆえの“短さ”に惚れぼれ。人々や物事に対する“ベタつき”のなさ、さりげなさ。優雅さ。たまりませんね。まさに「うっとり」です。
どっちにしろ割り切れないこと、でも向き合 -
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小さな牧場に誕生した良血馬、オラシオンをめぐる物語の後編
馬主である平八郎、病床に伏せる誠に自身の臓器を提供することに逃げ続け、葛藤しつつ、遂に会うことになったときには、和具工業も傾き、
トカイファームの千造、博正、騎手の奈良、秘書の多田、平八郎の娘久美子、調教師の砂田、トラックマンの佐木、それぞれが、オラシオンを巡って悩み、苦悩しながら、成長を祈る、ダービー制覇を夢見る、そんな内容でした
博正のオラシオンに対する従順な愛情も印象的でしたが、騎手同士のレース前、レース中の牽制し合う様、ドロドロした関係は、どこまで本当かわかりませんがとても意外で印象に残りました。40年以上前に書かれた話な -
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言葉の重みというものを感じることが出来る作品だと感じました。
本著は終始男女2人の手紙のやり取りの内容で進められていきますが、手紙を書いている両者が内省し絞り出しながら言葉を紡ぎ出しているのが有り様に見て取れる事が非常に素晴らしいと感じました。
時には心のどこかにある感情を言葉にしようとする苦しみを表現し、逆に言葉が溢れ出てくるという表現が適するほど言葉が走っているような感覚になる場面も見受けられます。
ただ、終盤にかけてお互いに覚悟を感じさせる雰囲気の言葉に変遷していく過程は見所の一つではないでしょうか。
これは著者がもつ言葉を紡ぎ出す力が秀でている証拠ではないかと思います。
最新作では時 -
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小さな牧場、トカイファームが夢を託して生産した一頭の競走馬「オラシオン」を巡る物語、なのかな?
「上」を読み終えた時点ではまだわかりませんが、途中まではオラシオン中心に、生産者であるトカイファームの主と息子(博正)、馬主になる社長(和具平八郎)、馬を譲り受けることになる娘の久美子、秘書、トラックマン、調教師、騎手…
さまざまな関係者が絡み合って物語が展開されます
かなりドロドロした思惑でいろんな出来事が展開していき、これが全て事実やったら競馬界もなかなかしんどい世界やなぁと思わされるような内容でした
生産者の息子(博正)だけは純朴な感じかな、サラブレッドに対する熱い気持ちを持った、トカ -
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「流転の海」全九部中八部目まで来た。
あと一巻しか残っていないのを寂しく感じるようになった。
熊吾は、またもや会社の金を横領されたり、女とずるずると関係を続けたり、妻や息子に愛想をつかされるのも当然という気がする。
しかし、こんな時にも、他人に仕事を探してやったり、免許を取らせてやるなどのおせっかいを焼くところが、大将、大将と慕われるゆえん。
また、資金繰りに非常に困っていても、とりたてて節約しているようには見えず、糖尿病であるのに、酒を飲んで美味しいものを食べている。そういう熊吾を見ても、読者である私ももう慣れっこになってしまっている。
とりあえず第九部に進みます。 -
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・泥の河
1977年、太宰治賞受賞作。
昭和30年、戦後。関西の川沿いのうどん屋の息子、信雄が、船で暮らす喜一と銀子と出会う。
50年も昔に書かれたのに、文体や表現に古さを感じない。何か大きな感動や衝撃があるわけではないが、わりとずっと世界に惹き込まれていた。
・螢川
1977年、芥川賞受賞作。
舞台は昭和37年。中学生の竜夫。元敏腕起業家の父、重竜と、母の千代。
友人の関根は、竜夫が想いを寄せる英子のことが好きだと言う。
衰える父。友人の事故。思春期の恋心。貧しさ。そういった当時ありふれていたであろう感情の機微が伝わってきて、好きだった。 -
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戦後の貧しい時代の、大人の振る舞いを、子供目線で語る。貧しいながらより貧しい友達を心配し、苦労する母親を悲しませない気遣い。子供は見ている。自分の記憶も絡んで感情移入をしてしまう。また少年が、友達の姉や母親、自分の母親や初恋相手の同級生が発する匂いから、何かわからない刺激を感じる。これもあったかもしれない。なんとも甘酸っぱい。そして泥の河はお化け鯉、蛍川は密集した蛍、それぞれ作者が描きたいクライマックスへの自然な盛り上がり方。こういう作品は気持ちよく読める。大切な人が何人も死に、生活は不安だらけだが不思議と暗くないのは、いまとあまりに違いすぎるからか。