宮本輝のレビュー一覧
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流転の海、全九部中第四部。
今回は富山編。
富山の中古車業者に懇願され、妻子ともども富山に引っ越すが、着いた日の大雪に始まり、一家には受け入れがたいことばかり。早々と富山に見切りをつけるのだった。
今も、富山では宮本輝は北日本文学賞の選者になっていたり、室井滋が館長をつとめる「高志の国文学館」でも大きな扱いを受けている。また、近年でも富山を舞台にした小説を何冊も書いているが、この『天の夜曲』を読むと、決して富山を手放しで賛美しているわけではない。
特に、母の房江など、これといった理由もないのに体調を崩したり、一日も早く大阪に帰りたいと思っている。
しかし、宮本輝がモデルの伸仁は、ここでも -
Posted by ブクログ
宮本輝さん、読んでないシリーズ。夏休みにゆっくり浸りたかったのですが、とっくに通勤電車に揺られながらの日常で対峙。
大作「流転の海」に通ずるものがありました。「泥の河」、「螢川」どちらも著者の過ごした土地、経験からくる感じがしたけどどうなのかな。
ある家族のお話しが、胸に迫る宮本輝作品がやっぱり大好きだ。
まだ読んでないシリーズを続けよう。
「螢の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞い上がっていた。」
見たこともないのに絵が浮かんでくるのだから、、、凄いなぁ -
Posted by ブクログ
宮本輝の自伝的長編小説流転の海の第六部。読み終わって、心に残ったのは、慈雨の音という題名。
いろんな場面でその題名を思わせるエピソードは絡んでくるが、私が感じたのは雨という存在そのものだ。世の中の水が遠い旅を経て、また、雨となって地上に落ちてくる。それは、動物でも植物でも命ある全てのものへの慈しみとして繰り返される。この小説の主人公熊吾は、幼い頃、伯父のところへ預けられ、四書五経から能に至るまでさまざまな教養を叩き込まれる。カッとなったら人を半殺しの目に合わせるような乱暴者でありながら、常に自分の行動や言説を省み、息子の伸仁にも人としての道を説く彼の髄には幼い頃に染み込んだ慈雨が巡り巡ってまた -
Posted by ブクログ
1982年から執筆を始めた宮本輝の自伝的大河小説の第五部。波乱万丈の一生を送った松坂熊吾やその息子の伸仁の成長がダイナミックな筆致で描かれており、めちゃくちゃ惹きつけられる。昨夜は夜中の3時までかかって一気読みしてしまった。
また、新しく出てくる登場人物のなんと魅力的なことか。ボロアパートの一室を茶室にしてそこで寝起きをする、真の侘び人。子供たちに創作のお話を聞かせる怪人二十面相。盲目の妹を支えながら前科者の父と暮らす秀才の兄と息を呑むほどの美形の妹。それぞれのキャラクターが立ちすぎて、スピンオフがいくつもできそう。また、昭和初期の街並みや社会情勢をそこに抱える問題を捉えながらリアルに表現して