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Posted by ブクログ
憧れることを諦めた人がこの作品を読むと、胸がちくちくすると思う。少なくとも私はそうだった。
若さとは愚かであることではなく、愚かしいほど純粋であることをわからされた。私は少なくとも、今はそのような歳ではないし、そのような人との出会いもない。主人公をあえてアラフォーの成年を選んだのは、宮本輝本人が苦労した歳であったからだと、作者のあとがきに記されていた。
陰鬱な変わらない日々を変えてくれた一人の老人。
「君の三十年後を見たい」と言われた成年。
その時になったら、あなたはここにはいないのに、と思う成年。それも分かった上で「つべこべ考えずに進め」と言う老人。
いずれ、分かる。
その言葉に期待を膨らませられるか、不安を抱くか、はたまた両方か。読む人によって変わるのはそこだけだし、作者も読者に伝えたいのはそこだと感じた。
今の世の中、何でもかんでも理由づけをしたがる。その上でお互いを尊重し、分かり合えと言う。そんなことが可能なのだろうか。
「余計なことは考えず、何の意味があるのかもどうでもいい。ただひたすらに働け。いずれ分かる。」
この時代にそんなことを言えばパワハラと思われるかもしれないが、結局こじれている人の多くは、この事実を受け入れたくない人だと思う。早く結果が欲しい、早く結論を知りたい。三十代という年齢の人たちが抱えるコンプレックスを一刀両断する作品だったと思う。
人の人生を否定して、自分の生き方を押し付ける老害。そう言えばそれ切りなのだけれど、その目線になった瞬間、あなたは主人公と同じように、純粋に憧れを抱いてしまうかもしれない。
Posted by ブクログ
無理だと思える難題が、次々と仁志に任せられるようになる。しかし、仁志は段々と師匠・佐伯からの薫陶や一つ一つの言葉の意味を自分で考えて、成長していく。師匠に応えたい、師匠の夢を実現したい、その想いで不可能を可能にしていく姿は、師弟関係の美しさを見事に表していたように思えた。
現代では、さとり世代と言われてるように、ググれば答えに出会える。何なら人生の悩みのアドバイスも、無責任にネットに書いてある時代となった。その一方で、仁志や虎雄のように、師匠からの一見意味のわからない言葉について、真剣に考えて、ああでもない、こうでもないと愚直に努力する人はどれくらいいるのだろうか。自分はそのような人になりたいと思わされた大切な本となった。
Posted by ブクログ
面白かった。
読み終わった後、すがすがしい風を感じるような小説だった。
うまくいかないことを、自分には向かないといって逃げ出すことは簡単。ただ、そのあとには、たぶん何も残らない。
躓いても、ゆっくりでも
一生懸命に、ひたすらに、楽をせずに働き続けた先に
本当に人生が始まるのかも。
60歳までをどう生きるかで、その後の人生も決まってくるのかもしれない。
もっと楽な道を選ぼうとしている30代の弱い自分に、目の前だけを見て仕事を選ぶなと、言われている気がした。
失敗してもいいんだ。
失敗し続けて、最後にどうにかカタチにできるまで続ければいいんだ。
まだやっと階段の前に立ったばかりなのかもしれない。
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