宮本輝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦後間もない頃の昭和、大阪という土地柄を色濃く感じました。
道頓堀川の濁りのように、一人一人の人生にも何かしらの濁りがある。道頓堀川界隈に暮らす人たちの人生の営みが描かれていました。
歓楽街の猥雑でがちゃがちゃした感じは、うるさいのになぜかホッとする部分もあり、読みながら一人一人が抱える“苦難”や“人生の営み”みたいなのものを感じて、しんみりした気分になりました。
個人的に、ちょっと性的な描写が多いなぁという気がしたけど、それも含めてこの作品の味わいになっている。
喫茶店店主の武内、武内の息子・政夫、住み込みで働く邦彦。また、彼らに関わりのある人たち。
他作品でも感じたけど、宮本輝さんの作品で描かれている“人間臭さ”がいい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ宮本輝さんは最近気に入りつつある、丁寧語で統一された文体、丁寧で細やかな人たち
舞台はまた裏日本、暗い怪しい影のあるような雰囲気
ある女を追いかけてという筋だが、結局出会えないままに話が終わる。真相が明かされるのも探偵の結果ではなく1人の人間にたどり着いたためという。中々ない幕切ではなかろうか、その方がロマンチックでもありまたリアルでもある、切符1枚が記憶の拠り所なんて夢のある話
また話の途中でそれとはわからぬままに何度もすれ違っているという点も僕には新鮮でその不確かさなどにリアルな魅力を感じる
再読する
かしわぎでの最後の夜はないままの終焉でも良かったのではという印象もすこし。月光の東が朧げなように米花も掴みきれない存在のままでも良かった。最後の解説のような怒涛の文章はやや負担
糸魚川
信濃大町
親不知駅前のヒマワリ
門別 -
Posted by ブクログ
平成元年以来の20数年ぶりの再読です。
あることをきっかけに2005年以降、宮本輝さんを遠ざけていました。しかし元々は好きな作家の一人だったのです。私のHPで宮本輝を検索すると感想付きが数冊と感想無しが大量に出て来ます。感想付きは2000年以降に読んだ本、感想無しはそれ以前の所有本ですから、2000円年以前はかなり嵌って読んでいた作家さんだったことが判ります。
映画化されているのでご存知の方が多いはずですが競走馬の物語。
賭け事には興味がなく競馬を知らない私でも引き込まれるのは、これが愛憎とか宿命とかが絡む人間の物語だからでしょう。良くある優しいばかり、登場人物が全て善人の物語ではありません。悪人も多いし、善人側にも善だけでなく悪が混ざり混む。主人公の一人の馬生産者の息子だけが真っ直ぐなくらい。ただ気になるのは「善人は悪をなしても善」的な書き方で胡麻化されてるような気もします。
最初は調子が出なかったけど、途中からページが止まらず。さすがの力量という気がします。ただ、どことなく古さを感じました。それは作品のせいか作者のせいか?宮本さんの最新作でも読んでみますかね。 -
Posted by ブクログ
読書力養成読書、11冊目。
なんだろう、この、読むにつれて少しずつ少しずつ、じわじわと心に染み込んでくる、コクとうまみ。
始めはあまり好みじゃないかもと思いながら読んでいたのが、いつの間にか抜け出せなくなっていて、気がつけば懸命に生きる主人公に喝采を送っていた……。こういうのって、もしかしたら、これこそが、優れた文学作品というものなのではないかと思いました。
主人公の井領哲之は大学留年中。死んだ父が残した借金のために、母と別れて大阪の大東市にあるアパートに住んでいます。この物語は、このアパートで過ごした哲之の1年間を描いています。
哲之は、やくざの取り立てに怯えながら、恋人陽子との幸せなひとときに安らぎを感じ、多くの人たちとの交流により人生経験を積んでいきます。アルバイト先の、〈梅田にある大きなホテル〉で出会った上司やボーイ・キャプテンの磯貝晃一、ドイツ人のラング夫妻と沢村千代乃、さらには高校時代からの友人中沢雅見など。
この作品、想像以上に濃く、深かった。そしてけっこうスピリチュアル。要所要所でそう感じさせるのですが、その最たる要素は、部屋の柱に釘づけにされても生きている蜥蜴キンちゃんでしょう。この子が哲之や読者にいろいろなことを考えさせ、本書のタイトルへとつながっていきます。
人間てこんなにも心が揺らぐものなんだなぁと思うと同時に、自分も確かにこういうときあるなぁと気づきます。でもこれこそが生きている証拠。喜怒哀楽を味わい尽くしてこその人生、人間こうでなくちゃと、哲之を見ている神様が「いいね!」と満足げに笑っているような気がしました。〈キンちゃんも俺も、どいつもこいつも、自分の身の中に地獄と浄土を持ってるんや。そのぎりぎりの紙一重の境界線を、あっちへ踏み外したり、こっちへ踏み外したりして生きてるんや〉
この小説は、1980年代に書かれ出版されたものなので、哲之がバイト先のホテルで宿泊客からチップとして500円札をもらったり、誰かと連絡を取りたいときは公衆電話を探したりします。でもこの2点以外ではそんなに時代の古さは感じませんでした。
宮本輝さんの作品を読むのは、数十年前に『ドナウの旅人』を読んで以来だったのですが、今回、改めてもっと他の作品もじっくり読んでみたくなりました。『読書力』の中で目にしなければ、本書は読んでいなかったかもしれません。この出会いに感謝、読んでよかった。