宮本輝のレビュー一覧

  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    自分と同世代の熊吾。息子が二十歳まで生きる、って、全く同じ決意には共感。豪快ながら不安を抱え生きていく様、家族や周りの人物像。時代背景があるにしろ、心地よい引き込まれ感。

    さあ、男、家族、親子の行く末はどうなるのか。
    宮本氏の「生死観」の描き方にも注目かな。

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    2021年04月08日
  • 夢見通りの人々

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    ネタバレ

    目次
    ・夢見通り
    ・燕の巣
    ・時計屋の息子
    ・肉の鏡
    ・十八回目の逃亡
    ・宝石箱の中
    ・帰り道
    ・白い垢
    ・波まくら
    ・洞窟の火

    大阪の下町(っていうの?)にある、夢見通り商店街に住む人々が織りなす人間模様。
    ちょっぴりビターが濃い目だけど、人々は鬱屈を抱えながらも強かに、あっけらかんと生きている。

    子どものころから盗みグセがあり、一度も万引の現場を取り抑えられたことのない時計屋の息子。
    貯めた金で駆け落ちをするが、妊婦の彼女を養う術は、高校生の彼にはなくて…。

    性と暴力の衝動を抑えることができず、学生のころから問題行動ばかり起していた元ヤクザの肉屋の兄弟。
    心を入れ替えて真面目に働いて

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    2021年03月24日
  • 彗星物語

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    ただでさえ同居人(+犬)の多い城田家にハンガリー人のボラージュがやってきて…留学の3年間の出来事は、よくありそうな家族のエピソード。派手さは何にもない。でも心に染み渡るようなほろっとした感覚。


    個人的には福造のセリフにくすっと笑わせられるものが多かった。おもろいじいちゃん。

    どんなにゴールが近くても「よし、これからだ」と気を引き締める。これは大事にしていきたいと思った。それと、悪い気持ちを胸に石を掲げ叩きなくすという考え方。教訓めいたものもすんなり入ってきた。

    家族写真、撮りたくなったなあ。
    35年も前の話なんだけど、今読んでも面白かったよ。

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    2021年03月24日
  • 草花たちの静かな誓い

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    亡き叔母の莫大な遺産と秘められた謎。

    アメリカに住んでいた叔母が修善寺で亡くなり、突如、4200万ドルもの莫大な遺産を相続することになった弦矢。ロサンゼルス郊外にある叔母の家に向かったが、そこで白血病で死んだはずの叔母の娘・レイラが行方不明だと知らされる…。
    27年もの間、叔母が秘密にしていた事実。弦矢はレイラを探します。壮絶な内容なのに、なぜか穏やかに読める。宮本輝さんの小説は不思議です。


    舞台になるランチョ・パロス・ヴァーデスはロス郊外の超高級住宅地で美しい紫色のジャカランダが咲き乱れる町。この背景にも惹かれます。
    場所と花をググりました。行ってみたい!

    美しい情景と繊細な人物描写

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    2021年03月11日
  • ここに地終わり 海始まる(下)

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    テンポや空気感が心地よい。生きていることの奇蹟、人間の無常さを穏やかに、押し付けがましくなく感じられる。人の心が変わっていくのは自然なことだし、その時その時で自分を深く見つめて、何をやりたいかを見極める、それが幸福なのかなと感じた。

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    2021年02月13日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    日々生きていて、過去に見たり聴いたりしたものが急に線になり、繋がるような瞬間があるが、この小説においても記憶の染み込んだ風景、絵画、街並を通じて、記憶の中の人たちが結びつく様が至極丁寧に描かれている。(故に少々回りくどい部分もあり、星は4つ。上巻の半分過ぎるあたりまでは辛抱が必要)
    個人的に、好きな人たちとの想い出の詰まった京都・南座界隈が出てきて急に惹き込まれたところもあり、登場人物たちの夫々の土地での想い出が紐解かれていくような進行に何故か「懐かしい」という気持ちにさせられた。富山も是非訪れてみたい。

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    2021年01月11日
  • 道頓堀川

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    小説家、宮本輝が描くまだ戦後の色合いが大阪を舞台にした昭和40年代の学生を中心に描かれる人間模様。
    フィクションではあるらしいが、父を失い大阪で学生時代を過ごした著者自身の体験と重なるところがあるとは思う。
    登場人物は多岐にわたるが、共通する言葉のは「赦し」ではないかと個人的に解釈する。裏切られようとも、苦しい環境に置かれようともそれぞれがやさぐれずに生きていけるのは、過去を赦す心構えが根底にあるからではなかろうか。
    登場人物の一人である喫茶店マスターが、自分の妻と駆け落ちされた易者に20年後に邂逅し、何も気付かない易者に「どんなことが、しあわせやと思いますか?」と聞かれ「辛い悲しいことが起こ

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    2021年01月04日
  • 優駿(下)

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    血統だけでは勝てない。運も必要。人も頑張りだけで成功するわけではない。そこに軋轢、敵意、無力感が生じる。1頭の駿馬の誕生からの3年間は登場人物それぞれの生活、気持ちにどんな変化が起ころうと一途で清らかだった。久々に爽やかな読後感が得られた小説だった。2021.1.2

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    2021年01月02日
  • 避暑地の猫

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    螢川的な物語を期待して、以前先輩に勧められたこの本を手に取ってみた。
    螢川全然違うやん・・
    古き悪き昭和の香り。サスペンスを追う気持ちで読み進めていくうちに、徐々に宮本輝さんらしい筆致にのめりこんでいった。弱者を描く鋭さと薄暗い虚無感。
    そして全然直接的でないのに(ないから?)、めちゃめちゃ艶かしい姉。こういうのも書く人だったんだ、知らなかった。
    後味が良いものではなかったが、読書にのめり込む気持ち良さを久々に味わった。
    私は無邪気な後輩にオススメする気持ちにはなれないが、気持ちに余裕がある時にどうぞ。

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    2020年12月30日
  • 優駿(上)

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    競走馬に纏わる物語。主人公は馬でなく、競馬に関わる人たちの愛憎、触れあいが主題。泥々した人間関係とは対照的に馬の眼は澄んで美しい。2020.12.21

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    2020年12月21日
  • にぎやかな天地(下)

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    「倦まず弛まず焦ず」
    「わかりにくいものをわかりにくく言うのは所詮偽物。ゼロから物を産む人は具体的で普遍的なことを知ってる」
    「巧言令色鮮なし仁」
    「学べば則ち固ならず」

    上下で心に残った言葉です。
    (正確に書けているかわかりません)
    多分、受け止めきれていない言葉がたくさんあるんだろうなと思います。
    また読み返すことになるんだろうなと思います。

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    2020年12月06日
  • 青が散る(上)

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    宮本輝の錦繍を読んで、文章が好きだったことと、
    主人公が大学生だった大学生のうちに読んでおこうと思い、手に取った。

    登場人物一人一人が個性があって、人間らしい面を持ち合わせているので共感できて面白かった。
    大学4年間なにに使うのか、このままでいいのか、恋愛も含めて焦りの気持ちとかも今の自分に通じるものがある。
    話の方向がどうなるのかまだわからないけれど、下巻も楽しみに読みたい。

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    2020年12月04日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    人間の愛を読めました。苦労は自分のことを考えるから苦労と感じると、気づきました。自分が、今後、どうやって生きていくのか指針になるような本です。まだ、そのように生きられるのかはわかりませんが、そのように生きられれば幸せになれるのかもしれません。

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    2020年09月23日
  • 水のかたち 下

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    50歳の主婦がたまたま古美術品を手に入れたことから、日常の生活が大きく変化していくさまを描いた長編小説。

    宮本輝の作品を手に取ったのは、何年ぶりだろう。その昔、『泥の河』をはじめ『青が散る』『錦繍』など10冊ほど読んだ記憶があるが、最近はとんとご無沙汰していた。
    友人の薦めで借りたのだが、まずは安定感のある品のいい文章が心地よい。複数の大きなエピソードも違和感なく収まり、力まかせの作家からは得られない良質な穏やかさがある。そういえば芥川賞の選考委員も務めていたのだったっけと、改めて作者の力量を思い知った。

    夫と3人の子どもと暮らす女性の視点から、更年期やら五十肩やらの身近な話題も取り入れて

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    2020年09月21日
  • 春の夢

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    こういう小説は読後感が気持ち良い。
    青春時代の屈折と解放、自分が同年輩だった時の事を思い出して重ねてみました。
    主人公哲之の恋人、陽子が居なかったら暗い幕切れになっていたんだろうと想像します。

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    2020年09月20日
  • 春の夢

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    内臓を貫かれたまま柱に釘づけにされ、一年間生き続ける蜥蜴と、父親の借金を背負った苦学生がシンクロする話。
    身動きと取れない蜥蜴と哲之がゆっくりと重なっていくのが新鮮で自然に引き込まれた。

    それにしても、彼女の陽子が素直で一途でかわいい。

    哲之の母の言葉に、実家の母の顔が浮かんだ。
    「夜、寝るとき、ああ、しあわせ、と思いながら蒲団に入れるようになりたいなァ…」

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    2020年09月05日
  • 幻の光

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    普段あまり読まない純文学も読んでみようと手にした一冊。
    幻の光もよかったが、夜桜、寝台車も、好きな感じ。

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    2020年08月12日
  • 真夏の犬

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    関東の地方都市にまだスーパーアリーナなんてなかった頃、町には普通に野犬がいた。
    あの頃のムッとした暑い夏の匂いとか、雑然とした商店街とかを思い出す小説。

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    2020年07月22日
  • 森のなかの海(上)

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    宮本輝の長編小説。
    阪神淡路大震災で奇跡的に無事だった希美子が、離婚し、息子と震災孤児たちと森の中で生活を始める。
    人の縁と、その人が本来持っている人間性といったことを考えさせられる。
    下巻が気になる。

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    2020年05月27日
  • 春の夢

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    読み進めていくうちにとても引き込まれる。また哲之という人物に対しても、最初ろくでもない人間やんという感情からだんだん人間味のある愛すべき人間だなぁと変わっていく事に気づく。とても良い作品だと思う。ハッピーな終わり方で良かった。

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    2020年05月10日