宮本輝のレビュー一覧
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ネタバレ目次
・夢見通り
・燕の巣
・時計屋の息子
・肉の鏡
・十八回目の逃亡
・宝石箱の中
・帰り道
・白い垢
・波まくら
・洞窟の火
大阪の下町(っていうの?)にある、夢見通り商店街に住む人々が織りなす人間模様。
ちょっぴりビターが濃い目だけど、人々は鬱屈を抱えながらも強かに、あっけらかんと生きている。
子どものころから盗みグセがあり、一度も万引の現場を取り抑えられたことのない時計屋の息子。
貯めた金で駆け落ちをするが、妊婦の彼女を養う術は、高校生の彼にはなくて…。
性と暴力の衝動を抑えることができず、学生のころから問題行動ばかり起していた元ヤクザの肉屋の兄弟。
心を入れ替えて真面目に働いて -
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ただでさえ同居人(+犬)の多い城田家にハンガリー人のボラージュがやってきて…留学の3年間の出来事は、よくありそうな家族のエピソード。派手さは何にもない。でも心に染み渡るようなほろっとした感覚。
個人的には福造のセリフにくすっと笑わせられるものが多かった。おもろいじいちゃん。
どんなにゴールが近くても「よし、これからだ」と気を引き締める。これは大事にしていきたいと思った。それと、悪い気持ちを胸に石を掲げ叩きなくすという考え方。教訓めいたものもすんなり入ってきた。
家族写真、撮りたくなったなあ。
35年も前の話なんだけど、今読んでも面白かったよ。 -
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亡き叔母の莫大な遺産と秘められた謎。
アメリカに住んでいた叔母が修善寺で亡くなり、突如、4200万ドルもの莫大な遺産を相続することになった弦矢。ロサンゼルス郊外にある叔母の家に向かったが、そこで白血病で死んだはずの叔母の娘・レイラが行方不明だと知らされる…。
27年もの間、叔母が秘密にしていた事実。弦矢はレイラを探します。壮絶な内容なのに、なぜか穏やかに読める。宮本輝さんの小説は不思議です。
舞台になるランチョ・パロス・ヴァーデスはロス郊外の超高級住宅地で美しい紫色のジャカランダが咲き乱れる町。この背景にも惹かれます。
場所と花をググりました。行ってみたい!
美しい情景と繊細な人物描写 -
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小説家、宮本輝が描くまだ戦後の色合いが大阪を舞台にした昭和40年代の学生を中心に描かれる人間模様。
フィクションではあるらしいが、父を失い大阪で学生時代を過ごした著者自身の体験と重なるところがあるとは思う。
登場人物は多岐にわたるが、共通する言葉のは「赦し」ではないかと個人的に解釈する。裏切られようとも、苦しい環境に置かれようともそれぞれがやさぐれずに生きていけるのは、過去を赦す心構えが根底にあるからではなかろうか。
登場人物の一人である喫茶店マスターが、自分の妻と駆け落ちされた易者に20年後に邂逅し、何も気付かない易者に「どんなことが、しあわせやと思いますか?」と聞かれ「辛い悲しいことが起こ -
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50歳の主婦がたまたま古美術品を手に入れたことから、日常の生活が大きく変化していくさまを描いた長編小説。
宮本輝の作品を手に取ったのは、何年ぶりだろう。その昔、『泥の河』をはじめ『青が散る』『錦繍』など10冊ほど読んだ記憶があるが、最近はとんとご無沙汰していた。
友人の薦めで借りたのだが、まずは安定感のある品のいい文章が心地よい。複数の大きなエピソードも違和感なく収まり、力まかせの作家からは得られない良質な穏やかさがある。そういえば芥川賞の選考委員も務めていたのだったっけと、改めて作者の力量を思い知った。
夫と3人の子どもと暮らす女性の視点から、更年期やら五十肩やらの身近な話題も取り入れて