宮本輝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
家族から重要なピースが欠けてしまったことで幾許かの喪失感を抱えながら健気にそして懸命に生きる登場人物達の人生が交錯し、人間模様が織りなされていく。物語は、青年と、青年が10年前に若気の至りで突発的にラブレターを手渡してしまった女性との間で静かに進行する恋愛を軸に描かれる。
「うまくできるようになってから、人前に出て仕事をしようと思うのは間違いなんじゃないかなァ。失敗したら恥ずかしいとか、間違えたら安く見られるとか考えて、それが礼儀だとか、おくゆかしいなんて自分に言い聞かせる人は、つまりは見栄っぱりで、勇気がないから、せっかく才があってもそれが育たない・・・。」 -
Posted by ブクログ
登場人物たちが次から次へとつながり、複雑さを増すにつれ、人物相関図を思わず作りたくなってしまう。
章ごとに主役は変わるが、その他登場する人物誰もが魅力あふれるキャラクターの持ち主となっている。
読後もなお、彼ら彼女たちを見守っていたい、そんな気持ちにさせられるのが、著者の作品の魅力だろうか。
さらにこの小説では、富山の風景が豊かに美しく描かれ、旅心を誘う。
この作品で重要な役割を果たす、ゴッホの「星月夜」に似た風景が見える愛本橋。
主人公たちが歩いた旧北陸街道。
夕日に染まる黒部川扇状地。
黒部川の堤から田園を通って入善漁港へ到るサイクリングコース。
郷愁と安らぎが感じられる富山は、何かの調査 -
Posted by ブクログ
主役が章ごとに代わって行く。
第一章で脇役だった人物が、第二章では主役となり、第二章で脇役だった人物が第三章では主役となる。さらに、第四章でもそれは続く。
連作短編とは違い、チェーンストーリーというものだろうか。それぞれの人物が微妙に関連を持ち、繋がり合っている。
書中の言葉を借りれば「人間の世界には、こんな奇跡に似たことがあちこちでしょっちゅう起こっているのかもしれない」そうだ。
人と人とのつながりが壮大な広がりを見せ、それだけで気持ちが豊かになりそうで、しかも富山や京都の描写の美しさを読むほどに、小説世界に耽溺さえしてしまう。
それぞれの人物が、今後どのような運命をたどり、どんな出会いに遭