宮本輝のレビュー一覧
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おそらく25年ぶりくらいに読み返している。
談話室の質問で店を持っている女性がレストランに絵の代わりにカレンダーを飾っているというところで、コレが頭に浮かんだ。
時代がかなり昔のもので、携帯どころか、公衆電話や電話の切り替えやらが出てきて、当然インターネットなんてないし、そんなところも新鮮に驚きつつ、これを買った時はどういう理由だったのかなぁなんてことも思ったりして。(消費税さえついていない)
33歳でマダムになっていたり、42歳のシェフの貫禄といい、現代のお子ちゃまぶりにまたまた衝撃を受けたりして。
主人公の周りの人がいい人でありがたい。いろんな修羅場もくぐり抜け、だけど、愛を見殺しにし -
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ネタバレ「きょ年の十一月に、六甲の駅で、燎平私に訊いたでしょう? 夏子は男の人を知ってるのかって。私、正真正銘の処女よって答えたの覚えてる?」
燎平は桟橋に坐って、海に足をひたしたまま、傍らに立っている夏子を見あげた。
「でも、いまは違う。もう何遍も何遍も、田岡さんに抱かれたわ。真っ裸にされて、何遍も何遍も田岡さんに」
燎平は、自分の顔が紅潮しているのか青ざめているのかわからなかった。白くふやけたように見える海水の中の足を見つめて黙っていたが、それきり夏子が口を閉ざしてしまったので、そっと顔をあげた。夏子は瞬きひとつもせず燎平を見下ろしていた。
「夏子が泣くとは思えへんかったな。なんで泣くんや。 -
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ネタバレ「一流になるには、変則的なテニスでは限界があるけど、オーソドックスな素直なテニスでは逆に三流の壁がなかなか越えられへん。見てくれはええけど、そんなテニスは怖いことも何ともない。筋金の入った、年季の入ったテニスにかかったら、勝負になれへんのや」
「俺は、実に真剣に、祐子に惚れとったな」
顔が赤かった。ビールのせいだけではなさそうな目元の紅潮だった。
「こないだ、学生食堂の窓から何気なく坂道を見ていたら、祐子がおんなじクラスの女の子四、五人とのぼって来た。なかなか美人揃いの一団で、他の連中と比べると、祐子が一番と目立てへんかった。祐子よりも美人で華やかな女の子に挟まれてたんや。祐子は、そやけど -
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はたして人の運命というのは生まれ持った天命なのか、はたまた人が手繰り寄せる人命なのか。破天荒ながら義理人情に厚い松坂熊吾を中心に、様々な人間臭いドラマが次々に巻き起こる。重厚な人間ドラマを描いた超大作。いや、何が大作って、1990年に第一部が出版されて以来、いまだに完結されてないっていうね。ちゃんと完結される日が来るのだろうか。
とりあえず4卷まで読み終えて印象に残ったフレーズ。はちゃめちゃな熊吾さんだが、こう生きて行く上でとても重要な「核」になるような発言が散りばめられてて、ハッとすることが多いのがまたこのシリーズの魅力。
・子供ってのは、血がつながったかけがえのない存在だが、それでもやは