宮本輝のレビュー一覧

  • 田園発 港行き自転車 下

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    一気に読ませる構成がはっきりしている。予定調和的と言ってしまえそうだが、でもそれでやっと落ちつける。きっとこの話の続編が予定されているんだろうなと期待できる。

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    2018年02月25日
  • いのちの姿 完全版

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    ネタバレ

     未収録だった五篇を収録した完全版。京都の料亭・和久傳発行「桑兪」というエッセイ誌に10年にわたり連載されたもの。
     かつての仕事の出会いが縁で小説「水のかたち」に挿入されるきっかけとなった経緯。人との出会いの大切さを感じた。
     小学校四年生、トンネル長屋と呼ばれる長屋で一年間過ごしたエピソードなどは、まさに事実は小説より奇なり。
     また、映画監督・行定勲氏の巻末に寄せられた解説も素晴らしい!

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    2017年11月01日
  • 私たちが好きだったこと

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    久しぶりに読んだ宮本輝。良かったです。
    柔らかく、自然な文体で、物語に引き込んでいきます。読み終えてしばらくすれば”そんな馬鹿な”と思う展開なのですが、読んでる最中には何の疑念も無く、物語の中に没頭できます。
    やや軽め、テレビドラマにしたらちょうど合いそうな雰囲気は、宮本作品の特徴でしょう。この作品も映画化されたようです(流行らなかったみたいですが)。

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    2017年10月30日
  • 森のなかの海(上)

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    ドンドンと読み進めてしまわせる作者の筆力は相変わらずだと思います。ただ、登場人物が多すぎて、ボヤけた感じがします。それと、震災以降、少し説教臭さが鼻につきます。下巻にどのように続いていくのか楽しみです。

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    2017年10月07日
  • 花の降る午後

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    おそらく25年ぶりくらいに読み返している。
    談話室の質問で店を持っている女性がレストランに絵の代わりにカレンダーを飾っているというところで、コレが頭に浮かんだ。

    時代がかなり昔のもので、携帯どころか、公衆電話や電話の切り替えやらが出てきて、当然インターネットなんてないし、そんなところも新鮮に驚きつつ、これを買った時はどういう理由だったのかなぁなんてことも思ったりして。(消費税さえついていない)

    33歳でマダムになっていたり、42歳のシェフの貫禄といい、現代のお子ちゃまぶりにまたまた衝撃を受けたりして。
    主人公の周りの人がいい人でありがたい。いろんな修羅場もくぐり抜け、だけど、愛を見殺しにし

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    2017年10月01日
  • 胸の香り

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    若干、起承転結が崩れている箇所もあったけれど独特の物寂しさが全体に染み渡っていてとても良かった。やるせなさに襲われるがそれがまたいい。

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    2017年09月24日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    ヤギショウはんとその家族に不幸な事故や事件が起きるでなく、夏美が骸骨ビルに来るでなく、それでも5月31日に一つの区切りがついてしまった。茂木は諦められたのか? 「子どもたち」は、それを受け入れられたのかが今一つ感じられなかった。戦後、様々な理由で親を失った子どもたちを育んだ骸骨ビルの幕引きが、ひっそりと行われた感じ。重箱の隅的に言わせてもらうと、日記として綴られた本文だが、骸骨ビルに関わる人々の発言をあんなに事細かく書けるのか? その部分にはリアリティを感じず、違和感があった。

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    2017年09月06日
  • 月光の東

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    塔屋米花という一人の女性をめぐって、現在から過去、北海道、糸魚川、東京、カラチと辿る足取りが交錯する。その根源の謎が解けぬままエピソードやつながりが見えてくるのが面白く感じた。
    会う男性全てを惹きつける謎めいた美貌の女。誠実で努力を続ける経歴を知るにつれ、彼女が破滅の運命の女だったのだなと思う。

    艶を持つ少女、転校、謎の浮気と死、『錦繍』とモチーフがよく似てる。
    加古の「あの日」が明かされなかったのが残念。
    ずいぶん皆様お上品な言葉を使っている。

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    2017年11月11日
  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    熊吾という主人公に対して序盤はあまり
    ただの乱暴ものでいい印象ではなかったが
    読み進むにつれ房江との出会いや
    運送屋、部下たちとのやり取りから
    熊吾の人間臭いキャラクターが
    興味深くなっていった。
    今どきこんな人そうそうおらん
    そりゃ、惚れるよなぁ。

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    2017年05月20日
  • 森のなかの海(上)

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    内容の紹介文を読んだ時点でワクワクしながら読み始めて前半はページはめくる手が止まらず読書の世界に浸りきりました。後半、7人の娘が森に転がりこんだあたりからちょっと中だるみのような気がして…展開が早いのでラストまで下巻もこのまま読みすすめたい!

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    2017年05月15日
  • 五千回の生死

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    スガシカオさんが薦めていたので読んでみた。いつもの習慣で寝る前に読み始めたら、冒頭の「トマトの話」にすっかりやられた。はっきり言えば、最初からオチは見えていた。なのに打ち抜かれてしまった。おかげで午前3時まで眠れなくなってしまい、いま寝不足です。

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    2017年03月31日
  • 約束の冬(上)

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    なんだろう、どこがどうでこの作品が良かったというのは言いにくいのだけど、全体的に柔らかく透き通った印象の本で、読んでいて心地良かった。
    留美子と俊国の話がメインになるのかと思えば、圭一郎にも恋の兆しがあり、面白い。
    でも圭一郎のお相手の中国人女性は、ちょっと受け入れにくい。

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    2017年03月31日
  • 新装版 二十歳の火影

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    「途中下車」が一番好き。
    電車で出会った彼女と、友人との間で揺れ動く、恋心や嫉妬心など…。電話を待つシーンなどはメールや携帯が発達している現代では考えられない場面だが、それがまた心情を表していてジーンとくる。
    スマホ世代の若い人にもおすすめのエッセイ集。

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    2017年03月21日
  • 青が散る(下)

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    ネタバレ

    「きょ年の十一月に、六甲の駅で、燎平私に訊いたでしょう? 夏子は男の人を知ってるのかって。私、正真正銘の処女よって答えたの覚えてる?」
     燎平は桟橋に坐って、海に足をひたしたまま、傍らに立っている夏子を見あげた。
    「でも、いまは違う。もう何遍も何遍も、田岡さんに抱かれたわ。真っ裸にされて、何遍も何遍も田岡さんに」
     燎平は、自分の顔が紅潮しているのか青ざめているのかわからなかった。白くふやけたように見える海水の中の足を見つめて黙っていたが、それきり夏子が口を閉ざしてしまったので、そっと顔をあげた。夏子は瞬きひとつもせず燎平を見下ろしていた。

    「夏子が泣くとは思えへんかったな。なんで泣くんや。

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    2017年02月19日
  • 青が散る(上)

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    ネタバレ

    「一流になるには、変則的なテニスでは限界があるけど、オーソドックスな素直なテニスでは逆に三流の壁がなかなか越えられへん。見てくれはええけど、そんなテニスは怖いことも何ともない。筋金の入った、年季の入ったテニスにかかったら、勝負になれへんのや」

    「俺は、実に真剣に、祐子に惚れとったな」
     顔が赤かった。ビールのせいだけではなさそうな目元の紅潮だった。
    「こないだ、学生食堂の窓から何気なく坂道を見ていたら、祐子がおんなじクラスの女の子四、五人とのぼって来た。なかなか美人揃いの一団で、他の連中と比べると、祐子が一番と目立てへんかった。祐子よりも美人で華やかな女の子に挟まれてたんや。祐子は、そやけど

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    2017年02月19日
  • 骸骨ビルの庭(下)

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    ものすごく余韻のある物語。
    ラスト近くの静かなシーンは、祈りたくなるくらいの厳かな気持ちになった。
    もう亡くなった人を、こんなに立体的に思い浮かべられるだろうか。

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    2017年02月18日
  • 骸骨ビルの庭(上)

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    なんだか哲学的な内容やら、ひやひやする内容やらありつつも、魅力的な人達ばっかり出てくる。
    それと美味しそうな食べ物が沢山出てきてお腹空く。

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    2017年02月18日
  • 星々の悲しみ

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    宮本輝さんの小説を、今までちゃんと読んでこなかった。勿体なかった。
    成熟した大人の世界だったが、若々しく苦々しく湿って美しいものを感じた。
    表題作ほか、「蝶」も良かった。

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    2017年01月09日
  • 水のかたち 下

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    題名の「水のかたち」を見たときの印象は、水に形があるの?っていう小さな違和感であった。が、読み進めてゆくと作者がその題名に込めた前向きで、その環境に適応する柔軟な生き方が見えてくる。ジャズやコーヒーなどの小物も年代相応のスパイスとなっている。

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    2016年12月07日
  • 血脈の火―流転の海 第三部―(新潮文庫)

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    はたして人の運命というのは生まれ持った天命なのか、はたまた人が手繰り寄せる人命なのか。破天荒ながら義理人情に厚い松坂熊吾を中心に、様々な人間臭いドラマが次々に巻き起こる。重厚な人間ドラマを描いた超大作。いや、何が大作って、1990年に第一部が出版されて以来、いまだに完結されてないっていうね。ちゃんと完結される日が来るのだろうか。

    とりあえず4卷まで読み終えて印象に残ったフレーズ。はちゃめちゃな熊吾さんだが、こう生きて行く上でとても重要な「核」になるような発言が散りばめられてて、ハッとすることが多いのがまたこのシリーズの魅力。
    ・子供ってのは、血がつながったかけがえのない存在だが、それでもやは

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    2016年12月04日