あらすじ
その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟……。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
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もはや個性が強すぎるを通り越し、とてもクセのある人が何故か集まっている夢見通り。
各章ごとに書かれる人々の日常は、それぞれ何らかの問題を抱えているが、夢や希望を持っている。
しかし、結局思い通りの結果にはならず、とてももどかしい。
だけど、その上手くいかない感じがやけに人間らしくて、しっくりくる感じもする。
ある意味、人間クサイお話です^^
いつも他人の問題に巻き込まれるけど、なんだかんだ言って仲介役を引き受けてしまう里見春太の人柄が好きですね
彼はそういう運命なんだろう・・・
宮本輝さんは天才ですね^^
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大坂の夢見通りという商店街の1軒に下宿する
里見春太とその商店街の一癖も二癖もある人々のお話
少しにがくって、生々しくって、おかしくて、悲しい
読んでいてすごく思ったのは、宮本輝さんの小説って
ストーリーも長短編かもテーマも時代も色々と違うけど
芯はずっとぶれていないんだなぁということ
やはりこの本も読み終わって元気が、勇気がもらえました
もう20年以上も前の小説、今読んでも輝いています
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今村夏子が小説って面白いんだなぁと知った本と聞いて読んだ。里見春太がたばこ屋のおばあちゃんの入れ歯を洗ってあげて、おばあちゃんがあんな汚らしいものを洗ってくれるなんてと心の中で感動してる場面が好きだった。里見春太の人間性に惹かれた。時計屋の息子がいくら若いからといっても無責任すぎて嫌だった。肉屋のヤクザ上がり兄弟や、凄まじい喧嘩をした中華料理屋の夫婦などクセが強い人たちばかりで面白かった。
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タイトルから、ほのぼのした作品なのかと思いきや、「夢なんてそうそう叶うわけはない」という現実を突きつける、手厳しい短編集でした。
難波の少し南に位置する「夢見通り」。その名称とは裏腹に、通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人・森雅久。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ・奈津。性欲を持て余している肉屋の辰巳竜一・竜二兄弟…。そんな彼らに詩人志望の里見春太と彼が思いを寄せる美容師の野口光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス短編集。
夢見通りの住人たちは、個性派すぎて正直あまり近づきたくはないほど。けれども、不器用な彼らが時折チラつかせる「業」とでもいうべき悲哀を見るにつけ、遣る瀬ない気持ちになります。泣くに泣けず、笑うに笑えない、隘路に立つ彼ら。否、われら?
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・何を隠そう自分は宮本輝のファンの一人なのだが、少し他の作品と比べるとカジュアルな文体で新鮮で好きな作品が一つ増えた。(おそらく30代後半くらいの作品で、比較的若い頃の作品?)
・今は昔となった商店街内での密な人間模様や、そしてノスタルジックな温かみのある生活感が主人公の里見春太を中心に展開される。
この、一見平凡だけれどもなぜか皆から慕われ、愛される里見春太という男の魅力は、吉田修一の人気シリーズの「横道世之介」に通ずるところがある。
・最後のシャレードで行われたお別れパーティのカオス感、声を出して笑った。
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夢見通りに住む個性的な人たちを描いた短編集であり、大きくみると1つの物語となっている。
幸せなことがあれば悲しいことや報われないことがあって、それがリアルな人生模様だなぁと納得してしまう。日常は白黒つけられないこともたくさんあるけれど、絶妙なバランスを保っているんだなと思う。
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人間はロボットじゃなくて、血が通っていて、いろいろ不具合があって、それぞれこだわりがあって、、、。みんな「きれい」じゃないよ。ということがよく分かる。
現実は生々しい。
第九章、春太がテープを光子に渡した後の春太の気持ちの描写。(p237)
中でも「前進しなければならない。自分は人間なのだから、前進しなければならないのだ」が、心に響く。
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10話の連作。商店街に住む人々は個性があり、皆知り合いで心置きなく声をかける。愛憎あり、涙あり。いろいろな人がいるが、心の底では通じ合える共同体。昭和感あふれる大阪みなみの一角。2021.5.16
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目次
・夢見通り
・燕の巣
・時計屋の息子
・肉の鏡
・十八回目の逃亡
・宝石箱の中
・帰り道
・白い垢
・波まくら
・洞窟の火
大阪の下町(っていうの?)にある、夢見通り商店街に住む人々が織りなす人間模様。
ちょっぴりビターが濃い目だけど、人々は鬱屈を抱えながらも強かに、あっけらかんと生きている。
子どものころから盗みグセがあり、一度も万引の現場を取り抑えられたことのない時計屋の息子。
貯めた金で駆け落ちをするが、妊婦の彼女を養う術は、高校生の彼にはなくて…。
性と暴力の衝動を抑えることができず、学生のころから問題行動ばかり起していた元ヤクザの肉屋の兄弟。
心を入れ替えて真面目に働いていても、近所の人たちの見る目は変わらない。
刺青を消そうと決心した理由は…。
特に秀逸なのが、かまぼこ屋の2階に住んでいる里見春太。
通信教育の営業をしながら、詩集を出版することを夢見ている。
誰から褒められることもない詩だけれど、平易な言葉にどれだけ心を込められるかを考え続ける。
真面目で、不器用で、間が悪くて、いつも報われない。
だけど彼を見ていると、どういうわけか人生それほど悪いものじゃないなあと思えてくる。
幸せなんて簡単な言葉では言い表せない、何とも言えないぬくもりがこの町にはある。
ヒリヒリとした痛みももれなくついてくるけれど。
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宮本輝さんもこんな話を書くんだ、という感想。
感受性が高いが詩が「幼稚園児」と言われてしまう春太、元ヤクザの肉屋の兄弟、息子が盗癖のある時計屋、ホモのカメラ屋…
絶対に「良い人々との心温まるお話」ではなく、孕ませただの刺青があるだの強烈な劣等感があるだの、喧嘩の連続でモヤモヤした割り切れなさを持ちつつも、どうにか一日が終わる、そんな感じ。振り回される春太にほっこりする。あと誰にも理解してもらえない、元ヤクザの黒牛こと竜一が印象に残る。
読後感は良かった。
Posted by ブクログ
「夢見通り」という商店街に暮らすアクの強い人物を描いた群像劇仕立ての連作短編です。
第1章は、30歳で通信教育の仕事をしながら詩人になることを夢見る里見春太の物語です。彼は、美容師の光子にひそかな恋心をいだいているものの、歳のわりに純情な彼は、自分の想いを伝えることができません。その光子は、ヤクザあがりで女好きの噂のある肉屋の辰巳竜一に、拾ってしまった宝石箱の処分を依頼したことがきっかけで、少しずつ竜一に魅かれていくことになります。古川文房具店の一角でタバコ屋を営む、身寄りのない77歳の伊関トミは、立ち退きを求められて孤独をかみしめながらも、春太のやさしさに触れて、最後は死んでいきます。
時計店を営む村田英介は、息子の哲太郎の手癖の悪さに手を焼いていました。哲太郎は、商店会の組合長を務める吉武権二の娘の理恵と駆け落ちします。しかし、理恵が子どもを身ごもったことに哲太郎は戸惑い、春太が仲裁役として、北海道まで二人を迎えにいくことになります。
スナック「シャレード」の女主人の奈津は、生まれたときから顔に痣があることに、コンプレックスをいだいていました。そんな彼女に魅かれた客の「げえやん」は、痣をかくそうとして苦しむ彼女の心を開こうとします。
中華料理屋「太楼軒」を営むワンさんの娘の美鈴は、アメリカン・スクールに通い、外交官になることを夢見る才女です。彼女の依頼で、春太はホモのカメラ店主の森雅久のもとを訪れ、美鈴の友人のレスリーというアメリカ人と親密な仲にならないようにいいますが、森のひとを見る目の深さになすすべなく、引き返すことになります。
登場人物たちの泥臭さのなかで、春太の純朴さがどうしても浮いてしまっているように感じます。光子と竜一とのやりとりも、いかにも朴訥です。そんな彼が、多くの章で舞台回しの役割を務めることで、他の登場人物たちのアクの強さがいよいよ引き立っているようにも感じるのも事実ですが、ややバランスの危うさも含んでいるように思います。
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長期に渡って読んでいたこともあり、もはや夢見通りにすんでいる気分。うまいなぁーみんなくどいくらいに特徴的なんだけど、それに見合うだけの悲哀を抱えているから、親身で読めるのかな。うん宮本輝は悲哀がうまいと思う。あと女心。第九章白い垢すんごい好きよ。第三章時計屋の息子も面白かった。うーんひさびさに小説っぽい小説読んだ!
Posted by ブクログ
発刊当時は映画化もされた宮本輝氏の名作。連作短編作品です。
里見春太という主人公の、素直で優しく真面目で、でも不器用で孤独な部分と、彼を取り巻く夢見通りの人々の心模様や生き方が、表も裏も含めてリアルに描かれています。
宮本輝氏の作品には「人物」がしっかりと描かれていて、切なさや愛を感じさせてくれます。前を向いて生きる、ということの大事さを考えさせてくれます。
自分は、肉屋の竜一の印象が読み始めと終わりでガラッと変わったことに驚き、少し愛着が湧きましたね。
こんな風に自分のお気に入りの人物を見つけて読むのも面白いかも。といっても、ひと癖もふた癖もある人物ばかりで感情移入はできないかもしれませんがw
昭和後期くらいの時代背景も、この作品の良さを引き出しているんだと思います。
合理化が進み、人の心が希薄になってきている今の時代からは考えられないですが、あの頃は、まだ近所付き合いもあったんだなあとしみじみ・・・。
Posted by ブクログ
すっごい久しぶりの宮本輝さんの本だよ~~。
やっぱりいいな~~~。
私としては、『昭和』という時代がこの本のイメージだったんだけど、初版は平成なのね~。
いろんな個性の持ち主が集まる商店街のお話。
各章で、いろんな人に的を絞って書かれてるんだけど、その繋ぎに里美春太という人が絡んでくるの。
なんか、各章に登場してくる人物それぞれ曰くつきなんだけど、でもみんな良いキャラしてるんだなぁ。
また、関西弁がこの話にとっても合ってて温かさを醸し出してくれる。
宮本輝さんって、ほんと良い本を書く作家さんだと思う。
読んでて、すぐその世界に入り込めたし、もっともっと読みたかったって思わせてくれる。
自分も、その中の一人になった感覚にもさせてくれる。
これからも、すすんで宮本輝さんの本を読んでいこうと思います。
Posted by ブクログ
大阪の商店街、夢見通りで起こる10個の出来事。
まるで、昭和のホームドラマをテレビで観てるような感覚。
一応、主人公は詩人を目指す春太。良い人なんだけど、なんとも頼りない。そしてウジウジ悩む。
とにかく、個性派揃いの中にあって、私が一番心惹かれたのは肉屋の竜一。並外れた性欲を持て余していた男。けれども、一番情の深い男に思えてなりません♪
ハッピーエンドの結末を求めがちですが、たとえそうじゃなくても、前進する強さを人は皆持っている事を教えられました。
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あたたかい小説。実際の生活でそばにいたら嫌な人物でもどこかそれを感じさせず描写している。そこにこの小説の、というより宮本輝のあたたかさが出ているのだろう。
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面白い!いかにも若い頃の作品。エネルギーと勢いにあふれている。全ての作品を、あえてハッピーエンドにはしないところとか、若さゆえ、という感じがしました。でも、「骸骨ビル…」のような穏やかな作品もいいですが、若いころの作品も好きです。今の自分に合っているのかも、と思います。本は、時を違えて読むと、感じ方が違ったりするし。本はその時々の自分を映す鏡でもあるのだな。
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大阪のとある商店街。
場末の感じのする所でも、人情味豊かです。
里見さんの視点だけでなく、住んでる皆さんの悲喜交々が手に取るようにわかる内容。住んでるみんなの心が伝わります。
宮本輝さんの優しい、心地よい表現方法。じんわり。
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タイトルから判断して、人情あふれる商店街の人たちの心温まる短編集なのだろうと予想していたが、中身は全く違っていた。
夢見通りとは名ばかりで「その名称にそぐわない人間たちばかり」の黒い人間模様が展開される。
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夢見通り商店街に住む一癖も二癖もある人々の悲喜こもごもの物語を集めたオムニバス形式の短編集です。
夢見通りは戦後の闇市から発展した商店街。そこに暮らす住人はよく言えば人間味がある、悪く言えば癖が強い、腹に一物どころではない物を抱えた人ばかり。オムニバス形式で少しずつ進んでいく物語は、話によって主人公が変わるものの、ちょくちょく里美という男性が登場する。お人好しで、巻き込まれ体質の独身会社員。周りの住民たちに振り回されつつ、今日も彼は彼ら彼女らと世知辛く生き辛い世の中を泳いでいる。
今作を手に取ったのは、この著者宮本輝さんの文章が読みたくなったためです。この方の文章は独特の魅力があるように感じています。
今作も、何とも複雑で入り混じった人間模様を淡々と書き綴っているようで、人の感情や背負ったもの、ある種の業のようなものを感じさせるお話がたくさんありました。登場するキャラクターの個性が強く、現実にいたら嫌厭してしまいそうなレベルで決してお友達になりたい類ではない彼らなのですが、彼らなりにそれぞれの人生を生きてきたことを感じさせられます。
他人事と笑うことも、共感して泣くこともできませんが、上手くいくことも報われないことも含めて、こういうものが人生なのかもしれないな、としみじみ感じました。
つい癖になるような書き手様なので、またどこかでこの作者の作品を読んでいると思います。
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商店街の笑いあり、涙ありのほのぼのストーリー?
そんなのはよくあるけれど、
いやいや、そうもありえるわけじゃないけど全然ありえんわけじゃない絶妙さがリアルなお話。
冷たいようでもあるし温かいようでもある。
そのリアルさがお気に入り。
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再読完了。
あまりこの作家のこと、知っている訳ではないのですが、上手いけれども、少なくとも突拍子もないこと、あるいは深淵を除くような感じではない。良い意味で平易な内容で安心感あります。
本作も適度に暗いオチで好感持てます、はい。
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その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟…。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
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人の機微に触れることに、こんなに疲れたのは久しぶりだ。
奥田英朗さんのように、人の嫌なところや弱いところに触れているのに、こうも後味が悪いのはなぜだろう。
自分の、本質的に夢見がちな性格には辛い。
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荒れかけた商店街の住人達の話。
登場人物がみんなどこか薄暗い部分があって近くにいたら嫌な感じなんだけど、読むにつれてみんななんだかんだで繋がっててあたたかくできあがっているのがいい。
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「夢見通りの人々」は、十章の短編からなるオムニバス小説である。
登場人物は詩人志望の里見春太と彼が思いを寄せている美容師見習いの光子。 そして、競馬狂いで夫婦ゲンカの絶えない太棲軒の親父・ライオンズクラブのメンバーになりたくて幾つかの役職に名を連ねているパチンコ屋の経営者。金儲けが人生のすべてとおもっている村田時計店。
ホモと噂されているカメラ屋の若主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。もとやくざの組員だった肉屋の兄弟──。
これら、ひと癖もふた癖もある夢見通りの人々がある章では主役になり、ある章では脇役で登場する。
例えば、ある章では、淫乱で自分の店に雇ったバーテンをいつのまにかものにすると描かれていたスナックのママが、第8章で主役で登場した時は、実は顔に痣があるためにつぎつぎと男から逃げられていて、その痣のためいかに深い傷をおいそれを隠しながら生きてきたかを。
また、乱暴者の肉屋の兄弟がいかに母親の愛情に渇望しているか。ホモの若主人が外観とはうらはらにインテリであり、微細で傷つきやすい神経であること。が、わかってくる。
だから、他の章で悪く描かれていた人が主役として登場し、一人一人の胸の奥に隠されている感情を知るにしたがってそれらの人々を観る見方も変化してくる。
それぞれの者が劣等感を持ちながら、ある者はその劣等感をバネとし、ある者は心に深く傷をつけている。
春太の場合はどうか。彼の劣等感は、自分が平凡で臆病者であるということだった。
彼は自分らしい気宇壮大な目的を持ちたいと考えていた。
彼が思う自分らしい気宇壮大な目的とは他者の幸福に、自分が何らかの形で役立つことである。
ところが、自分の生活を固めていくという基本と、それを他者の幸福に役立たせるという応用は、どうしても、彼の中では矛盾してしまうのだ。自分が生活に勝つとき、そこでは誰か敗者が生まれるに違いないからである。
春太はかって理想共産主義に強くひかれた時期があったが、「プラハの春」のソ連軍の行為に理想共産主義への失望を深くしていた。
だから、いまのところ矛盾でしかない自分の幸福と夢との共存は、春太の知らない深い深い場所でみつけるしかなく、それゆえに彼は詩を捨てることが出来ないのであった。
短編の中には、ハッピイエンドではなく、彼等の夢を無残にたたきこわして終わって
いるものもある。
行間から「人生とはそんなに甘いものではない」という、宮本輝の声が聞こえてきそうだ。
今年の8月に公開された映画は森崎東監督。里見春太に小倉久寛、美容師見習いの光子に南果歩、肉屋の竜一に大地康雄。
夢見通りの人々に関西の芸能人が出演して、ぼくとしては、おもしろい映画だったと思っている。
映画を観てこの作品を読んで感じたのは、小説での台詞がそのまま映画のせりふとなっていたことだ。小説そのものが、生き生きと描かれていたともいえる。
作者は、作品の最初に名称にそぐわない人が住む街だと書いているが、読み終わってみるともっとも似つかわしい人が住む街だと思うようになった。
夢をみつづける人々が住む街が夢見通りなのだ。そして、夢見通りの人々がみる夢は、
人間として暖かみのある夢でもある。
このような人に出会うからぽくもまた文学を捨て切れないのだ。