あらすじ
その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟……。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。
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Posted by ブクログ
大坂の夢見通りという商店街の1軒に下宿する
里見春太とその商店街の一癖も二癖もある人々のお話
少しにがくって、生々しくって、おかしくて、悲しい
読んでいてすごく思ったのは、宮本輝さんの小説って
ストーリーも長短編かもテーマも時代も色々と違うけど
芯はずっとぶれていないんだなぁということ
やはりこの本も読み終わって元気が、勇気がもらえました
もう20年以上も前の小説、今読んでも輝いています
Posted by ブクログ
タイトルから、ほのぼのした作品なのかと思いきや、「夢なんてそうそう叶うわけはない」という現実を突きつける、手厳しい短編集でした。
難波の少し南に位置する「夢見通り」。その名称とは裏腹に、通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人・森雅久。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ・奈津。性欲を持て余している肉屋の辰巳竜一・竜二兄弟…。そんな彼らに詩人志望の里見春太と彼が思いを寄せる美容師の野口光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス短編集。
夢見通りの住人たちは、個性派すぎて正直あまり近づきたくはないほど。けれども、不器用な彼らが時折チラつかせる「業」とでもいうべき悲哀を見るにつけ、遣る瀬ない気持ちになります。泣くに泣けず、笑うに笑えない、隘路に立つ彼ら。否、われら?
Posted by ブクログ
目次
・夢見通り
・燕の巣
・時計屋の息子
・肉の鏡
・十八回目の逃亡
・宝石箱の中
・帰り道
・白い垢
・波まくら
・洞窟の火
大阪の下町(っていうの?)にある、夢見通り商店街に住む人々が織りなす人間模様。
ちょっぴりビターが濃い目だけど、人々は鬱屈を抱えながらも強かに、あっけらかんと生きている。
子どものころから盗みグセがあり、一度も万引の現場を取り抑えられたことのない時計屋の息子。
貯めた金で駆け落ちをするが、妊婦の彼女を養う術は、高校生の彼にはなくて…。
性と暴力の衝動を抑えることができず、学生のころから問題行動ばかり起していた元ヤクザの肉屋の兄弟。
心を入れ替えて真面目に働いていても、近所の人たちの見る目は変わらない。
刺青を消そうと決心した理由は…。
特に秀逸なのが、かまぼこ屋の2階に住んでいる里見春太。
通信教育の営業をしながら、詩集を出版することを夢見ている。
誰から褒められることもない詩だけれど、平易な言葉にどれだけ心を込められるかを考え続ける。
真面目で、不器用で、間が悪くて、いつも報われない。
だけど彼を見ていると、どういうわけか人生それほど悪いものじゃないなあと思えてくる。
幸せなんて簡単な言葉では言い表せない、何とも言えないぬくもりがこの町にはある。
ヒリヒリとした痛みももれなくついてくるけれど。