Posted by ブクログ
2018年03月02日
表題作を含む全7作品からなる短編小説集。物語の多くは若者を主人公とし、青春時代に関わった人たちとの微妙な心理・感情を描いています。
子どもでも大人でもない、もしくは子どもから大人になろうとしている主人公たちの目線を通して、生と死から感じられる残酷さ、若者から見た大人の性事情、奇妙な癖や趣味を持っ...続きを読むた人に接したときの不気味さなどをとても丁寧な筆致で感じられました。ものすごく重たいわけでもなく、かといって空虚なわけでもない、なんとも感慨深い内容です。
ここ10ヶ月ほどをかけて、この短編集をじっくり2回読みました。1回読み終わった時点ではなにかわかったような、それでいてなにもわかっていないような、不思議な感覚でした。巻末の解説を読んで「ああ、そういうことだったのか」と納得したところもありましたが、2回目を読み終わったときには再び頭の中でさ迷っていました。簡単に理解してはいけないようにも思えましたし、それでも軽く受け止めないとこちらの心が壊されそうにもなりました。それくらい私にとっては衝撃的な一冊です。
純文学とはなにかとか、この短編小説集を完全に理解したのかと聞かれるとうまく答えられませんが、少し時間を置いてからまた読み直したいと思えました。