宮本輝のレビュー一覧
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キーワードは「貧しさ」でしょうか。
本書の舞台は大阪道頓堀川。鈍く光る川面で生活する登場人物は、その誰しもが何かしらの「貧しさ」を抱えています。もちろん「貧しさ」とは、金銭的なそれに限りません。離散する宿命を抱えた武内は金銭的には余裕があるのに、とても貧しくみえる人物ではないでしょうか。そんな「貧しさ」を抱えた道頓堀川の住人のなかで、ヌードダンサーのさとみが邦彦の前で一心不乱に踊る姿がやけに印象に残っています。「私なんか、毎日、頭が変になってるわ」というさとみの言葉。この「貧しさ」が小説内に留まるものではなく、普遍的なものとして、いたく心に染み入ります。
ところで、まったく悲哀に満ちた作品なの -
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じっくりじっくり読んだ。飛騨の森は温かな結界がはられ、すべてを包み込んでくれる「海」だったのだ。人には、地上で生きていくものには森はかけがえのないものなのだなぁとしみじみと思った。森がそばにない私は山を欲し、通勤途中にある自然公園にときめくのだな。地上で生きる多くのものに森はかけがえのないものだのだ。
希美子さんが「木にも心がある」というようなことを言っているけれど、そのとおりなのだろうと思う。我が家のベランダの小さな鉢につめこまれた2本の木は、我が家の前にアスファルトに囲まれながら並んでいる大きな木は何を思っているのだろう。
ぬくぬくした室内でまどろみながら、この物語にひたれる幸せ~! -
Posted by ブクログ
欲しかった本の隣りにあり、タイトルと装丁に一目ぼれして購入。
阪神大震災が起きた時、私は小学生だった。東日本大震災もそうだと思うが、大きな大きな震災を目の当たりにし、大きく人生が変わっていく人が想像を絶するほど大勢いたのだろう。この物語の主人公の希美子さんもその一人。家族の形が変わり、住まいも奥飛騨へと変わる。そんな簡単なことではないとは思いつつも、奥飛騨の森に囲まれた山荘が生活の拠点になるなんて、なんて羨ましいのだろう!!傷ついた人たちがゆっくりゆっくり再生していくことがこの物語の神髄なのだろうけど、私は奥飛騨という場所で生活していくこと、森の描写にうっとりしてしまった。森は、木々は、たく -
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カエルが やかましく泣いている中で
発酵している 酢の 蔵で 耳を澄ます。
宮本輝は 阪神大震災を経験することで
なぜか雰囲気が 変わったような気がする。
『森の中の海』をよみ 『にぎやかな天地』を読んで感じた。
勇気って どこから湧いてくるのだろう。
天から 降ってくるわけではない。
そして、勇気を 奮い起こして 自らの道をすすむ。
寡黙だった 祖母。
何も言わない 母親。
それが 聖司の なげかけた 言葉と行動で、
ひも解かれていく。
時間が 心の中のわだかまりと問題を解決してくれる。
いろんな想い 悩み 苦しみ そして 絶望さえもが、
時間という 発酵槽で かぐ -
Posted by ブクログ
1985年。
いろいろな事情があり13人と1匹の犬からなる大家族になった家が、共産主義下のハンガリーの留学生を迎えることになった。
留学生でいえば文化の問題、民族性の問題、また家族ひとりひとり問題を抱えながらもみんなの力で乗り越えていく。言えることは、犬が一番の力になって、すべての問題を解決していってくれたことだ。
言いたいことを言い合える、秘密にしていることだってある。家族のあり方は今も変わっていないと思う。
400ページを超えるものであったが、彗星のように留学生は現れ、彗星のように消えていって物語は終わる。
しかしここからが頑張りどきなのだ。数年後に控えるソ連の崩壊を彼はまだ知らないのだか