宮本輝のレビュー一覧
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カエルが やかましく泣いている中で
発酵している 酢の 蔵で 耳を澄ます。
宮本輝は 阪神大震災を経験することで
なぜか雰囲気が 変わったような気がする。
『森の中の海』をよみ 『にぎやかな天地』を読んで感じた。
勇気って どこから湧いてくるのだろう。
天から 降ってくるわけではない。
そして、勇気を 奮い起こして 自らの道をすすむ。
寡黙だった 祖母。
何も言わない 母親。
それが 聖司の なげかけた 言葉と行動で、
ひも解かれていく。
時間が 心の中のわだかまりと問題を解決してくれる。
いろんな想い 悩み 苦しみ そして 絶望さえもが、
時間という 発酵槽で かぐ -
Posted by ブクログ
1985年。
いろいろな事情があり13人と1匹の犬からなる大家族になった家が、共産主義下のハンガリーの留学生を迎えることになった。
留学生でいえば文化の問題、民族性の問題、また家族ひとりひとり問題を抱えながらもみんなの力で乗り越えていく。言えることは、犬が一番の力になって、すべての問題を解決していってくれたことだ。
言いたいことを言い合える、秘密にしていることだってある。家族のあり方は今も変わっていないと思う。
400ページを超えるものであったが、彗星のように留学生は現れ、彗星のように消えていって物語は終わる。
しかしここからが頑張りどきなのだ。数年後に控えるソ連の崩壊を彼はまだ知らないのだか -
Posted by ブクログ
何年振り、いや何十年ぶりかも。
それぐらい久しぶりに2大関西弁作家の宮本作品(もう一人は当然、田辺 聖子さん)
人間の業とか性(サガ)を軸にした、いい作品は沢山あるけど、やっぱり関西弁で書かれてると説得力あるし感情移入しやすいから読んでない時も何となく切ない気持ちで過ごしてました。
美味しそうな料理とお酒が色んな場面で登場して、それもまた関西の食べ物やったりするから情景が浮かぶし今回は読みながら、よぉ呑みました。
結末は…まぁいいんやけど、それにしても男の人って嫁も子供も(孫も)いて女に疲れたから男に走る…って人、そんなに居てるもんなんかなー。
まぁ作品の中では元々そっちの素質があるかど -
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発刊当時は映画化もされた宮本輝氏の名作。連作短編作品です。
里見春太という主人公の、素直で優しく真面目で、でも不器用で孤独な部分と、彼を取り巻く夢見通りの人々の心模様や生き方が、表も裏も含めてリアルに描かれています。
宮本輝氏の作品には「人物」がしっかりと描かれていて、切なさや愛を感じさせてくれます。前を向いて生きる、ということの大事さを考えさせてくれます。
自分は、肉屋の竜一の印象が読み始めと終わりでガラッと変わったことに驚き、少し愛着が湧きましたね。
こんな風に自分のお気に入りの人物を見つけて読むのも面白いかも。といっても、ひと癖もふた癖もある人物ばかりで感情移入はできないかもしれま -
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読み飛ばしたかと思った。
翠英と桂二郎の朝の別れ とか、
いつの間にか留実子と俊国が愛称で
呼び合う仲になってた とことか。
それぞれの章の裏側で、
話は少しずつ進展していた。
ひとつひとつ 細かく書かなくても、
読者に委ねるのもありなんだね。
桂二郎が、なんともまぁ、正直に、
若い女を抱きたい、若ければ若いほどいいって のたまうこと。笑えた。
若い女の企みに、騙されたと思うか、
少しの間、夢を見たと思うか。
幼い企みが気の毒に思えるほど、
おとなの余裕を感じる。
豪快な北海道も、閑静な総社市も、
まるでその場にいるかのような気分。
心落ち着く いい本だった。 -
Posted by ブクログ
この作品を読みながら、自分自身、今まで何回くらい約束をしただろうかと思い浮かべてみた。
人と人との関係が繋がって、約束を交わすことが、この作品の中ではとても素敵に描かれていた。
魅力的な登場人物たち、 飛行蜘蛛のエピソード、樹木や葉巻の薀蓄にゆったりと浸りながらも先が気になってあっという間に読み進めた。
それで、結局、留美子と俊国はどうなったの?
緑には打ち明けたの?
この2点がはっきり判らなかったのが、ちょっと残念。
留美子に関しては、きっと新しい恋が芽生えたのだろうなという話の流れだったけど。
12月5日、留美子と俊国一緒に飛行蜘蛛を見に行く場面も読みたかったなあ。