宮本輝のレビュー一覧
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この作品に登場する人物は、作者が「このような人が自分の近くにいてくれればと思える人物だけをばらまいて…」とあとがきで書いているように、大人で、優しく、人生に対して真摯だ。そう、作者の意図するように、大人が幼稚化した現代において、若い人たちの規範となりうる大人の姿なのだ。そのため、平成の作品であるにも関わらず、まるで古き良き昭和の小説を読んでいるかのような錯覚に陥る。
留美子をはじめ、上原さん、須藤潤介、新川秀道、芦原小巻、料亭の女将鮎子…登場人物が皆いい!中でも上原氏は本当に魅力的で、私が留美子だったら、ラブレターをくれた息子より父親である上原氏の方に惹かれると思う。
難をいえば、留美子と俊国 -
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大震災、不倫-離婚など大物のラインに加え、時代的な恋と家同志の結婚など大柄な話題を進めつつ、震災孤児を預かったり、お屋敷を受け継いだり、伏線としてはこれまたしっかりとしたラインを組み合わせて進む物語。物語を通じて、時代背景から大震災時に発揮される国家観、教育観、男女の仲や若者の将来や家族のあり方など多方面に渡るテーマを丁寧に語らせている。中でも希美子の父の考え方がおおらかかつしっかりとしていて共感が持てる。こうやるには財政面や社会的な立場もあるとは思うが。
また忘れてはならないのが、森のあり方や描写である。様々な樹木や植物に加え、森のあり方について羨ましい環境が描写されている。 -
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キーワードは「貧しさ」でしょうか。
本書の舞台は大阪道頓堀川。鈍く光る川面で生活する登場人物は、その誰しもが何かしらの「貧しさ」を抱えています。もちろん「貧しさ」とは、金銭的なそれに限りません。離散する宿命を抱えた武内は金銭的には余裕があるのに、とても貧しくみえる人物ではないでしょうか。そんな「貧しさ」を抱えた道頓堀川の住人のなかで、ヌードダンサーのさとみが邦彦の前で一心不乱に踊る姿がやけに印象に残っています。「私なんか、毎日、頭が変になってるわ」というさとみの言葉。この「貧しさ」が小説内に留まるものではなく、普遍的なものとして、いたく心に染み入ります。
ところで、まったく悲哀に満ちた作品なの