宮本輝のレビュー一覧
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約束の冬(上) 宮本輝(著)
人と人の間で、コミュニケーションする。
その中で、約束 がある。
人は、生きている間に、どれだけの約束をするのだろう。
親との約束。
恋する人への約束。
愛する人との約束。
子供との約束。
物語の中に巡らされる約束。
留美子は、少年から、10年後に 結婚しようという
ラブレターをもらった。
その奇妙な申し出をした少年は 誰なのか
そのことが,10年の月日が流れることで 明らかになっていく。
留美子には、妻子あるオトコと 恋愛していた。
そして,そのオトコは 妻子と別れ
留美子と結婚すると言っていた。
そのオトコは言う「ボクは必ず約束を守る」と。
しかし,その約束は 妻の妊娠によって
あっけなく破られることとなった。
留美子は、幼友達の芦原小巻とも、約束していた。
小巻は、若いにもかかわらず、肝臓ガンに侵された。
それでも、留美子との約束が希望となって、生き延びた。
その希望とは。
留美子の弟は、アメリカの大学に行って、コンピュータの会社に
就職したが、木工の修行に転身。
それは、死んだ父親との約束だった。
若い時に時計を壊した俊国の父親の約束。
父親は俊国が 2歳の時に 事故で死んだ。
俊国は 上原桂二郎のもとに,連れ後として成長する。
父親の約束を実行しようとするおじいちゃん。
約束が錯綜し、それぞれが 互いに繋がって行く。
守られる約束。破られる約束。
約束に拘束されながら生きる 人間。 -
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甲斐典子は、若い夫をガンでなくした。
フランス料理屋 アヴィニオン をひきつぎ、
4年間 一生懸命働き 軌道に乗せ,売上も伸ばした。
典子は 白い家を書いた 青年画家に 恋するようになり
もう一つは アヴィニオンを のっとりしようとする人たちが
巧妙に 進めようとした。
画家が成功するのは 努力や実力も必要であるが
あわせて、運や巡り会いも必要である。
そんななかに、いらだつ 青年 雅道。
典子は その青年とどうつきあえばいいのか?
そして 夫が残した アヴィニオン をどうするのか?
30歳半ばを超えて 今後の身の振り方に悩む。
40歳までの目標を つくってみるが どうもしっくりこない。
たくましく,したたかだ,自分の領域をよく理解している典子は
恋をするが故に さらに美しくなっている。
生活が充実しているのだ。
最後の場面が コメディのように傑作にまとめた。
宮本輝はいう
『作者の気まぐれのお陰で,何人かの登場人物の幸福物語として幕を下ろします。善良な,一所懸命に生きている人々が幸福にならなければ、この世の中で、小説など読む値打ちは、きっとないでしょうから』
と実に明るく締めくくっている 物語でもある。 -
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なぜ、いまごろ 宮本輝をよむのか
いまの私の 感性に 一番あっているようだ。
どろどろとした 人間の感情の絡み付き合いが
とても、いいのだ。
政夫が 父親 武内鉄男 と 玉突きで 決闘する。
政夫は 夫を捨てた 鈴子 と一緒についていった息子。
鈴子は どうしようもない 占い師についていったのだ。
そのために 鉄男は なぜか許せないところがある。
戻って来た鈴子は ギヤマンのみどりの色に じっと見入った。
占い師が書く 海は いつもみどりだった。
鈴子が戻って来た時に 鉄男は鈴子を蹴った。
そのことで、鈴子は腎臓をいためたと思い込む。
鉄男は 息子の政夫が 玉突きで 生きようとすることに
理解を示せない ところもあるが、認めたい気持ちもある。
複雑な 父親の思い。
玉突きは あくまでも ばくちだと思っている鉄男。
息子の政夫は スポーツだと思っている。
世代の認識の違いで解決するのか。
邦彦は 母子家庭で 学費をかせぐために
武内鉄男の 喫茶店で バイトをする。
そこで,いろいろな人に であう。
就職活動するが 母子家庭ということで、うまく行かない。
鉄男は 邦彦には 喫茶店で 働いてもらいたいと考えている。
ユキのもつ たくましさ。
焼き肉屋で 自分の城を まもりはじめる。
オカマ、出前ストリッパー、老人の愛人。
道頓堀でうごめく 人々に 出会い
自分が どう生きるのかを なやむ 青年。
大阪の混沌とした 雰囲気が こつ然とする。
宮本輝の物語は 河が 一つのテーマとなるが、
占い師が 重要な 役割を果たす。
一家離散 という 占いが当たり、久しぶりにであう占い師が
次の占いをするが それを信じようとする。 -
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バンコクの熱くけだるく、
肌にねっとりとしてからみつく湿度、
人々の生活の猥雑な風景、
午後の昼寝のようなまどろみ。
人間のもつありとあらゆる感情。
こまごました 生きるための所作。
騒音。クルマの渋滞そして騒音。
甲高いニワトリの鳴き声。
沈んでいくような空気。
濃い緑の樹が 伸びきって 空間を占有する。
洗濯物がほしてある。
赤ん坊の泣き声,子どもたちの元気な声。
得体の知れない 混じり合ったにおい。
よるになると漂う エロティックな風。
じっとしているのが 嫌になるほどの空気。
妖しく,ほほみかけられる微笑。
何かに,誘われ 追い立てられるような ざわめき感。
すえた、酸っぱいマンゴーのにおい。
刺激的な ドリアンの香り。
発酵した こげた 料理の におい。
むせかえる 熱気。
カメムシのようなにおいを出す パクチー。
すべてが 混合され 融合され 混沌とする。
はっきりとしない 混然たる 様子。
それが すべてを包み込む。
自分の好きだった 人が こわれた。
それから 逃げて,バンコクまで来た 恵子。
多くのツバメが群れている木の下で,タクシーが
ぶつかって、往生していた時に
助けてくれた サンスーン。
彼は 王家の血筋で 政府の高官。
将来は大臣にもなるオトコだった。
そのオトコに ひかれて、愛人となり、
3年近く バンコクに滞在する。
チェップは ひよこ。コップは カエル。
その夫婦が お手伝いさんであり,自動車の運転手。
サンスーンは 恵子に 結婚してくれるように要望する。
恵子は 迷っていたが。
野口と言う おせっかいで正体不明、
放浪者である オトコが 恵子のまわりの空気を変えていく。
チラナンとスワンニー。兄妹。
チラナンは ヘビの化身のような身体がさずけられた。
小説を書いている。肺病の進行がひどい。
スワンニーは 大学をでて 小さな旅館を切り盛りする。
新聞記者である 小堀は スワンニーと結婚しようとする。
野口は 恵子と 友達になろうとする。
マイの部屋で 野口は少女のコニーを買う。
そして、サンスーンの秘密が 少しづつ明らかになっていく。
タイという国の雰囲気
チャオプラヤ河の周辺で 物語が 繰り広げられる。
宮本輝は 河の物語が すきなようだ。 -
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若い男と出奔した母親を追いかけて、ドナウへ向かった娘とその恋人4人の旅を追ったお話し。色々な出会いを経て、ドナウの果てへとたどりつく。人物描写がとてもよくて、母親の絹子の変化が特に興味深かった。娘の麻沙子は若干こんな人いるかしら?な日本語を話してたけど、知的な美人ぷりを発揮していて、私も真似して思わず声に出してせりふを読んでみた・・・。
話の筋はわりと予想ができる感じだった。ドナウ川ってなんでか常に死のイメージがつきまとっている気がする。日本人はドナウを舞台にした小説が好きなのは気のせいかな。そんなこと言ってる私も一度は行ってみたい気がする。 -
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内容紹介(上巻)
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように……。若者の祈りに応(こた)えて、北海道の小さな牧場に、一頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇(ドラマ)が、幕を開けた――。
内容紹介(下巻)
母の肉は子の肉、子の骨は母の骨なり……。いのちの哀しさ尊さに突き当りながらも、虚無と喧噪のなかで人間の業(ごう)から逃(のが)れられない男たち、女たち。だが、そういう彼らも、いつしかオラシオンの美しさ危うさに魅せられて一体化し、自らの愛と祈り、ついには運命そのものを賭けていった。やがて迎えるダービー決戦――。圧倒的な感動を呼ぶサラブレッド・ロマン。吉川英治文学賞受賞。 -
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城田家。晋太郎、敦子夫妻の子供幸一、真由美、紀代美、恭太、そして晋太郎の父福造、愛犬(ビーグル)のフック、それに夫と離婚した晋太郎の妹めぐみとその四人の子供、春雄、夏雄、秋雄、美紀、この大家族・・・合計12人と一匹。
そこにハンガリーからの留学生ポラーニ・ボラージュがやってくる。そのボラージュが城田家の家族の一員として迎えられ、ともに生活をする3年間のリアリティある喜怒哀楽の物語。
彗星物語の「彗星」とは、人生が彗星のようにあっという間に過ぎ去ってしまうというようなメッセージを含んでいるが、その彗星のような人生の中に様々なドラマが生まれる。その人間模様や、心の動きを絶妙に表現するのがこの著者の特徴であると思う。
登場するキャストは、フックも含め、平凡なようであって、なかなか魅力的な個性の持ち主ばかり。しかも素晴らしい欠点をそれぞれに持っている。
大家族に異文化の留学生を迎えるのだけれども、ごくごく日常の家族ドラマ。あたまでは想像できるのだが、実際にはほとんど体験できない世界だ。読んでいる間、自身も城田家の一員として、ほんとはありえない体験をリアルに体験できてしまう、そんな感じです。
最後は感動、そして涙のエンディングですかね。