宮本輝のレビュー一覧
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ネタバレ短編集。表題作は映画になったらしい。
子連れで再婚し特に生活に不足はないが、不意に鉄道自殺で亡くした前夫のことや、出奔して生死不明の祖母のことが想いだされる中年女の話「幻の光」。
息子を亡くし、離婚した夫と再会した豪邸に住む女が、得体の知れない若者に一夜の宿を提供する「夜桜」など、過去に親しい人を喪失した体験を現代から照射する、しかも事件とは関わりにない第三者の介在によって、というかたちがとられている。
この著者の女性は男性に都合がいいと言えばそれまでなのだが、たくましく勤勉な人が多く好感がもてる。情緒を追うたくみな文体もよい。
ただし再読したくはない。 -
Posted by ブクログ
知人に勧められて読んだ本、
『青が散る(上)』、
おもしろいです。
宮本輝らしい世界が表現されているように思います。
生きるって何なのか、自分の命って何なのか。
新設大学の一期生の燎平。
そこで知り合った学生の夏子とつきあいたいからテニスを始めて、
テニス中心の生活へ。
高校まで全国大会などで活躍していたが病を理由にテニスを離れていた安斎とであったり、
お手本からはほど遠いようなテニスをするけれども妙な強さがある貝谷とであったり。
勝利への貪欲さへの、「王道」と「覇道」と。
人間くさく、変わった奴らの、はいつくばるような生き様。
爽やかなスポーツとしてのテニスではなく、
どろどろとした人間くささを含んで描かれているのが、なんだかよい。
“王道とは何であろうかと燎平は考えた。そして、貝谷の言う覇道とは何であろうか。すると燎平の心に、社会の中で、あるいは力弱く悄然と生きているかも知れない数年後、数十年後の自分の姿がふいに浮かんできた。” -
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わりとミステリ色が濃くなりました。自分の気持ちを追いかける留美子は先を見ていて、周りとの繋がりが広がる中で過去を振り返る桂次郎、これが歳の差なのかなと思います。やっぱり立場的に近い留美子の章の方が読みやすいかったです。
留美子と俊国の関係にしても、少年時代からずっと年上の女性を思い続けているような良い男がいるわけないんだけど、それがするりと当たり前のように今の2人として成り立つんだからこの作品はすごいと思います。上品ってわけじゃなくて、しっとりとした品のある作品という感じ。
俊国のおじいちゃんが味のある人物だったので最後にもう一度お目にかかりたかったなと思いました。 -
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九つの短編
トマトの話
トマトをほしがったけれども そのトマトは食べられることなく
吐いた血の海に 転がっていた。
映像的に 鮮やかな赤が 思い浮かぶ。
死んだオトコに 手紙を託されたが なくしてしまった。
そのオトコの手がかりになるはずだったが。
みとるものや 親戚もなく 知り合いもなく 死んだオトコ。
眉墨
ガンであることがわかった 老いた母親が
熱心に 眉墨をひく。
オンナとしての矜持を まばゆく見つめる息子。
流転の海の 母親 の姿が だぶる。
力
小学校に通学するのに 心配する母と父。
ハラハラしながら 尾行する 母親。
流転の海では 父親が 尾行したはず。
五千回の死
死にたいと 1日に5千回も 想う。
大切な ダンヒルのライターは コートの中に 忘れてしまった。
奇妙な夜の 体験。
アルコール兄弟
場末のバーでの話。
復讐
3人の悪ガキが 高校時代にいじめた先生を
どう懲らしめるか を考え実行した話。
3人のうち 二人は 退学処分。
自分は 高校を無事卒業し、大学もでて 就職している。
バケツの底
土砂降りの雨の中 パイルがあけた穴を 塞ぐ。
紫頭巾
北朝鮮に帰るひとの 周辺で起こる物語。
流転の海に つながる。
昆明 円通寺街
円通寺に住んでいたことがあるので,描写の中から あの辺りかな
と想ったりした。
中国の猥雑な雰囲気が醸し出される。
うなぎを売る場面があるが その頃のうなぎは 田鰻かどじょうだと想う。
流転の海につながる 短編が 3作あり,
それが 核となって 長編の流転の海となった。 -
Posted by ブクログ
「青春をテーマにした」と言ってしまうとかなり薄っぺらい感じがするが、こうとしか言いようがないだろう。大学時代を懐かしく思わせる、非常に良い小説だった。
振り返ると大学には自分とは違う、色々な人たちがいた。全てを部活に捧げる人、見ててイライラするくらいちゃらんぽらんな奴、将来に向けて資格試験に取り組む人、大学には全く来ず気付いたら会社を興していた社長…
自分は18歳から22歳の間、何をして今に至っただろうか。違う大学に行っていたら、違う言語を勉強していたら、何か熱中するものがあったら、今はどういう人間になっていただろうか。
はっきりした考えは無いが、何かすべきことをしてこなかったような感覚に包まれている。それが何か分からないから、しなかったのだろうけど。
ただ誰もがこういう心のモヤモヤを抱えていると思うと気が楽になるし、何より寝たら忘れているイージーな自分には考えること自体、無意味かもしれない。12時過ぎたしもう寝よう、明日も仕事だ。