宮本輝のレビュー一覧
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今年の2月から3月にかけて、第1部から第9部まで読み返しました。これで3度目になりましたが、読めば読むほど味わい深く、新たな発見に心が波立ち、夢中になって読みました。
熊吾を巡り、本当にたくさんの人々が登場しますが、「流転の海読本」(堀井憲一郎著)を傍らに置いて各巻の人物相関図を確認しながら読むと、複雑な人間模様が頭に入って読み進めることができました。
「出会いとは決して偶然ではないのだ。でなければ、どうして、出会いが、ひとりの人間の転機と成り得よう」と宮本輝さんが「命の器」に書かれているように、流転の海でも、登場人物たちが何か不思議な繋がりを持っているように感じます。
今回の再読で一番心に残 -
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ネタバレ著者が初めて取り組んだ歴史小説。約10年をかけて執筆、全4巻からなる大力作だ。
幕末の動乱期を薩摩藩を担当する越中富山の薬売りの目を通して描いている。
第1巻は黒船来航、尊王攘夷ののろし、篤姫の将軍家定へのお輿入れなど安政の大獄前夜までの時代風景を描写する。
物語は主人公・川上弥一の語りの形式をとって進められる。
弥一は越中八尾の紙問屋に長男として生まれるが、薬種問屋「高麗屋」に奉公にあがり、特任で薩摩組の売薬商人となる。
富山の薬売りは薬種取引に隠れて、清国が望む蝦夷地の干し昆布を北前船で薩摩へ運び、代償として入手しがたい唐薬種を大量に得ていた。
薩摩組と呼ばれる薩摩担当の薬売りは廻船問屋と -
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小説の主人公は62歳。
亡くなった奥さんが残した謎を解くために、灯台めぐりをすることになる。年代が近いと、どうしても感情移入するなあ。
ただ主旨とは無関係な描写が多く、ストーリーの進み方がめちゃくちゃ遅い。最近の小説のジェットコースター的な展開に慣れた人には、ちょっともどかしいかも。だが、これが宮本輝の文章特徴なのかもしれない。
主人公が自分の生き方をこんな風に整理して、親友に話すシーンがある。
『威風堂々と生きたい。焦っても怖がっても逃げても、悩みは解決しない。コツコツと一つ一つ、焦らず怯えず難問を解決していく。そういう人間になるために努力をするんだ。』
何気ない言葉であり、誰もが一 -
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いいなあ。牧野康平さん。いい人生だなあ。
主人公の牧野康平は東京の旧板橋宿商店街の中華そば屋の店主であったが、二年前に奥さんの蘭子さんが亡くなったのをきっかけに休業したままになっていた。
ある時、店の二階の自分の蔵書棚の前に寝転がり、長年の積読であった「神の歴史 ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史」という本を読んでいるとパラリと一枚の葉書が落ちてきた。それは、二十年以上前に妻に小坂真砂雄という男性から届いた葉書だった。それには
「大学生活最後の夏休みに灯台巡りをしました。見たかった灯台すべて見て満足しています…」という文章とどこかの岬らしいジグザグの線が書かれていて、妻の蘭子は「小坂真 -
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やっぱり、宮本輝だなあ。語り口といい、物語の展開といい、昔馴染みと久しぶりにあって話し終えた気分だ。
金井家の徳子おばあちゃんの晩餐会の話は、思い出話にその息子や孫たちの枝葉が茂り、それはそれで味わい深いのだけど、
残りの十分の一くらいから綾乃の住む四合院造りのオーナーとその息子の話が、唐突にされているのだが、何というかな、自分にももう30になる一人息子がいて、この話の親子ほど断絶しているわけではなく、一緒にも住んでいるのだが、まぁ、取り扱いが難しいなと常々思っているからか、妙に親父さんの心情がよくわかるし、意地の張り方も俺と同じだなと、むしろこちらの話ももっと読みたかったな。
最後の三十数ペ