宮本輝のレビュー一覧

  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)

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    今年の2月から3月にかけて、第1部から第9部まで読み返しました。これで3度目になりましたが、読めば読むほど味わい深く、新たな発見に心が波立ち、夢中になって読みました。
    熊吾を巡り、本当にたくさんの人々が登場しますが、「流転の海読本」(堀井憲一郎著)を傍らに置いて各巻の人物相関図を確認しながら読むと、複雑な人間模様が頭に入って読み進めることができました。
    「出会いとは決して偶然ではないのだ。でなければ、どうして、出会いが、ひとりの人間の転機と成り得よう」と宮本輝さんが「命の器」に書かれているように、流転の海でも、登場人物たちが何か不思議な繋がりを持っているように感じます。
    今回の再読で一番心に残

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    2025年05月31日
  • 潮音 第一巻

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    ネタバレ

    著者が初めて取り組んだ歴史小説。約10年をかけて執筆、全4巻からなる大力作だ。
    幕末の動乱期を薩摩藩を担当する越中富山の薬売りの目を通して描いている。
    第1巻は黒船来航、尊王攘夷ののろし、篤姫の将軍家定へのお輿入れなど安政の大獄前夜までの時代風景を描写する。
    物語は主人公・川上弥一の語りの形式をとって進められる。
    弥一は越中八尾の紙問屋に長男として生まれるが、薬種問屋「高麗屋」に奉公にあがり、特任で薩摩組の売薬商人となる。
    富山の薬売りは薬種取引に隠れて、清国が望む蝦夷地の干し昆布を北前船で薩摩へ運び、代償として入手しがたい唐薬種を大量に得ていた。
    薩摩組と呼ばれる薩摩担当の薬売りは廻船問屋と

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    2025年05月04日
  • 潮音 第二巻

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    第二巻は安政の大獄から禁門の変までが描かれる。京に拠点を移した弥一たちは薩摩と協力し長州の動向を探る中、禁門の変の動乱に際会する。そして物語はいよいよ幕府倒壊へ。

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    2025年04月13日
  • 私たちが好きだったこと

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    昔、短い間だったけど
    強烈に同じ時間を過ごした人達を思い出した
    そういう出会いが
    今の自分を作ってるんだって思い出した

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    2025年04月08日
  • 潮音 第一巻

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    越中売薬商人の川上弥一を主人公に日本の幕末維新の動乱期を描く大河小説。第1巻は、井伊直弼が大老に就任し、安政の大獄が始まるまでが描かれる。

    越中富山の薬販売商圏は広い。蝦夷地の干し昆布が北前船を通じて薩摩まで運ばれ、薩摩はそれを清国へ輸出し、同時に清国から輸入する薬種は富山の製薬に使われる。そのため富山と薩摩は密約を結び、その密貿易に携わる。富山の売薬商人はモノの売買だけではなく、様々な情報をその広い商圏のなかで得ていき、やがて「世界」へと目を向け始める。

    第2巻以降の展開が楽しみ。

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    2025年03月29日
  • 青が散る(下)

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    初めてこんな長い内容の本を読む事が出来た。
    大学卒業から約5年が経つが、懐かしい気持ちを感じた。
    それぞれの登場人物に個性があり、
    そういう友達もいるよなと思った。
    最後夏子と付き合うのではと思いながら読んでいたが、祐子の件があり付き合う事はないんだなと思った。祐子も悪い女だと思った

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    2025年03月27日
  • 青が散る(上)

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    氏の作品の中でも『青が散る』は、ドラマ化されてファンも多く、僕の青春の思い出のひとつでもある。舞台は新設大学のテニス部。(小説では関西だが、ドラマは関東の大学)主題歌は松田聖子の名曲『蒼いフォトグラフ』で、挿入歌の大塚ガリバーの『人間の駱駝』もドラマ内でもガリバーが歌っていたなあ。
    石黒賢、佐藤浩一、遠藤憲一、村田雄浩、利重剛、二谷友里恵、川上麻衣子…そうそうたるメンバーのキャスティング。全話DVDで保管しているのだ(笑)

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    2025年03月07日
  • 灯台からの響き

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    小説の主人公は62歳。
    亡くなった奥さんが残した謎を解くために、灯台めぐりをすることになる。年代が近いと、どうしても感情移入するなあ。

    ただ主旨とは無関係な描写が多く、ストーリーの進み方がめちゃくちゃ遅い。最近の小説のジェットコースター的な展開に慣れた人には、ちょっともどかしいかも。だが、これが宮本輝の文章特徴なのかもしれない。

    主人公が自分の生き方をこんな風に整理して、親友に話すシーンがある。

    『威風堂々と生きたい。焦っても怖がっても逃げても、悩みは解決しない。コツコツと一つ一つ、焦らず怯えず難問を解決していく。そういう人間になるために努力をするんだ。』

    何気ない言葉であり、誰もが一

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    2025年02月28日
  • 春の夢

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    ネタバレ

    清濁併せ呑みながら辛うじて生きていく人間の実相。半歩ずつ、にじり出しながら歩んでいく生きる姿を垣間見た。折に触れて読み返したいような、思い出として、大切に心にしまっておきたいような読書体験だった。

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    2025年02月17日
  • 螢川・泥の河

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    戦後の哀しい時代の空気が、文章を通して、強烈なイメージとして蘇る小説だった。

    「泥の河」は、ずっと記憶に残りそう。素晴らしい小説だった。

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    2025年01月28日
  • 螢川・泥の河

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    宮本輝をこの本から入った。
    泥の河、とにかく泣ける、美しく哀しい。
    昔の日本はこんな貧乏だったのかなぁと想像しながら読んだ。
    映画もぜひ見たい

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    2025年01月17日
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)

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    37年間を21日で通り過ぎてしまった
    宮本輝という作家の素晴らしさをあらためて心に刻むことができた
    人生とは
    作家宮本輝がずっと我々に問いかけ続けたのであろう
    熊吾ほど多くの人に愛され、信頼された人間は数少ないと思う
    それとともにこれ程人に裏切られた人間も少ないだろう
    我々の人生も色々なことが起きる
    残りの人生、どう向き合うか
    流転の海は私に考える場を与えてくれた

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    2025年01月17日
  • 森のなかの海(下)

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    素晴らしい世界だった。阪神淡路大震災で家が倒壊、夫の不倫が発覚し子供を連れて離婚。

    そんな所から始まった希美子の新しい森での暮らしは、思いがけない方向に拓けていく。

    決して自暴自棄にはならず、かといって肩に力を入れすぎることもせず、自分のことも周りのことも大事にして前に進んでいく姿勢に引き込まれた。静かな語り口で毎日が過ぎていく中で、数奇な運命に翻弄された陶芸家とも人生が交錯し、壮大なドラマを楽しめた。

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    2024年12月18日
  • 灯台からの響き

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    三十光年の星たちで久しぶりの宮本作品に触れた
    宮本作品への想いが深まりこの作品を手に取った
    やはり宮本作品は素晴らしい
    この作品をを読んで、宮本輝という作家の読書量もすごいということがわかった
    ミステリー、ブームの中華蕎麦の話題
    読書量による知識の凄さも感じた作品だ
    灯台、いくつか行ったことのある灯台が出てきた
    また、行きたくなった
    森鴎外の渋江抽斎も読んでみたい

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    2024年11月19日
  • 灯台からの響き

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     いいなあ。牧野康平さん。いい人生だなあ。
     主人公の牧野康平は東京の旧板橋宿商店街の中華そば屋の店主であったが、二年前に奥さんの蘭子さんが亡くなったのをきっかけに休業したままになっていた。
     ある時、店の二階の自分の蔵書棚の前に寝転がり、長年の積読であった「神の歴史 ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史」という本を読んでいるとパラリと一枚の葉書が落ちてきた。それは、二十年以上前に妻に小坂真砂雄という男性から届いた葉書だった。それには
     「大学生活最後の夏休みに灯台巡りをしました。見たかった灯台すべて見て満足しています…」という文章とどこかの岬らしいジグザグの線が書かれていて、妻の蘭子は「小坂真

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    2024年10月30日
  • 灯台からの響き

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    宮本輝は『明日は今日よりもきっと良い日になる』というのが根底にある。前向きな温かさをどの作品にも感じる。

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    2024年10月17日
  • 青が散る(下)

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    ネタバレ

    面白かった。純情すぎて、それがプライドとなってそのせいで肝心なところに足を踏み出せない感じが良かった。主軸がずっと友達なのがめっちゃ良い

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    2024年10月09日
  • 灯台からの響き

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    まきのの中華そば食べたくなったし、新ちゃんみたいな息子欲しくなった。
    主人公の独り言の多さで説明を全方位カバー。
    登場人物みんな素敵だなぁ。そして蘭子さんは愛され過ぎでしょ。旦那2年も腑抜けにさせちゃって。
    どんな歳になっても初体験はあり得るし、ドキドキもする。過去ではなく未来に続いていくための毎日。出雲に行って灯台見たくなった。まずは近場の房総からかな。

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    2024年10月07日
  • 螢川・泥の河

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    文章が美しく、情感に溢れている。泥の河が特に刺さった。
    泥の河:悲しくも美しい戦後の風景。人々は逞しく生きるも、残酷な人生。
    螢川:4年間住んだ富山の方言が懐かしい。

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    2024年10月06日
  • よき時を思う

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    やっぱり、宮本輝だなあ。語り口といい、物語の展開といい、昔馴染みと久しぶりにあって話し終えた気分だ。
    金井家の徳子おばあちゃんの晩餐会の話は、思い出話にその息子や孫たちの枝葉が茂り、それはそれで味わい深いのだけど、
    残りの十分の一くらいから綾乃の住む四合院造りのオーナーとその息子の話が、唐突にされているのだが、何というかな、自分にももう30になる一人息子がいて、この話の親子ほど断絶しているわけではなく、一緒にも住んでいるのだが、まぁ、取り扱いが難しいなと常々思っているからか、妙に親父さんの心情がよくわかるし、意地の張り方も俺と同じだなと、むしろこちらの話ももっと読みたかったな。
    最後の三十数ペ

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    2024年10月05日