西村賢太のレビュー一覧

  • どうで死ぬ身の一踊り

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    「どうで死ぬ身の一踊り。これで最後の一踊り。それでもダメとなれば、その時はそう深刻ぶるがものはない。脳をマヒさせた上でこの人を追い、芝公園に行けばいいだけのことではないか、と考えたら急に心が楽になった。」

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    2020年08月02日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    貫多、十七歳。
    「自分の駄目の上にも駄目を塗り重ねてきた人生」。
    頑張って、欲望を我慢して週払いの食堂の仕事に就いたものの、貯められず、家賃滞納。食堂の上に転がり込んで寝泊まりするも、ビール飲んだり翌日のお店の食事食べたり、募金箱からお金取ったり。自意識も過剰で、人とやっていくのもむずかしい。足掻いてるけど、つらいー。

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    2020年06月10日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    ショートパンツを穿いてサンダル履き、シャーツの前をはだけて、腹を丸出しにして、裾を風にはためかせている奴の姿を見ると、破滅の予感が沸いてくる。Tシャーツに印刷された絵や文字は、どうにも珍妙で道理に反している。自分の内在している思想や感情を表現しているように見えてしまうことが卑怯すぎる。見えてしまうことによって、人は破滅に向かう。Tシャーツ1枚で偉そうに思想を語った気になる。自分の弱いモチーフを服によって増幅させる。これは刺青をちらつかせて人を威圧するのと変わらない。相応の覚悟もないまま雰囲気だけまとって、さも中身があるかのように取り繕う人間には破滅の道があるだけ。破滅が恐ろしくてTシャーツが着

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    2020年01月18日
  • 藤澤清造追影

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    前半は藤澤清造に関する各種の文章を集めたもの。こちらは初めて読む。後半は「東京者がたり」の文庫化で、こちらは再読。

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    2019年05月19日
  • 小銭をかぞえる

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    クズ男視点の生活の話。
    やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
    朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。

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    2019年04月14日
  • 一私小説書きの日乗 新起の章

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    以前は、「はずれ」が多かった買淫については本書においては、ほぼ「当り」となっている。生活レベルは随分上がっているようだ。他方、映画とかテレビといった華やいだ話柄はすっかり萎んでいる。ありふれた日常の中にも変化があり、衰微の影も仄見える。
    「当り」「はずれ」といったぶっきらぼうな買淫の記述が随分言葉が接がれるようになってきているのも変化の表れ。頻度もかなり間遠になっており、インターバルなどという言辞も見える。傾向としては好日的といって良いか。
    「買淫したいが、首の痛みが鬱陶しく、やむなく手淫。これはこれで気持ちよし。」「夜、買淫にゆきかけるも、ここのところ仕事せず、懐中が乏しいところから手淫で我

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    2019年03月30日
  • 痴者の食卓

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    相変わらずの素晴らしきマンネリ、北町貫多&秋恵シリーズ。2人のかみ合わない同居生活の中、寛多が自分勝手に憤怒して幕を引く短編集。内1作は小説家として成功した寛多、つまり現在の著者の身辺報告。

    寛多の爆発を誘発する起爆剤としては、金魚の飼育、古本店主との会話、居酒屋での外食などなど。毎回、これだけのネタを用意できる作者に感心。

    で、これらをきっかけに発生する理不尽な怒りを秋恵へのDVで発散させる寛多。フェミニストが読んだら卒倒しそうな展開ばかり。特にタイトル名の短編は非道すぎるが、それらを笑えるかが西村賢太作品を読み続けることができるかの登竜門だ。

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    2019年03月21日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    ネタバレ

    ざっくりと言えば、17歳の貫太が洋食屋でアルバイトを始め、住み込みになり希望を抱くが、辞める、というだけの話。
    終盤に至って気づくが、そういえば彼はまだ文学に開眼していないのだ。
    探偵小説などを読んではいるが、田中英光の名前が出てこないあたり、そうらしい。
    著者には「小説にすがりつきたい夜もある」という芯を食ったエッセイ集があるが、
    少年貫太は「すがりつきたい気持ち」だけがあって「何にすがりつけばいいのか」がわかっていないのだ。まだ。
    すがりつきたいものがわかっているだけ幸せともいえる。

    それにしても書いているものは同じ。
    とはいえ長いぶん、溜まりに溜まった鬱憤を晴らそうとする終盤の畳みかけ

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    2019年03月03日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    こんな青春も、存在する―。17歳。中卒。日雇い。人品、性格に難あり。しかし北町貫多は今日も生きる―。無気力、無目的に流浪の日々を送っていた貫多は、下町の洋食屋に住み込みで働き始めた。案外の居心地の良さに、このまま料理人の道を目指す思いも芽生えるが、やがて持ち前の無軌道な性格から、自らその希望を潰す行為に奔りだす―。善だの悪だのを超越した、負の青春の肖像。渾身の長篇私小説!

    痛い、痛すぎる。でも読んでしまう。

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    2019年01月26日
  • 小銭をかぞえる

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    どうしようもない屑男のどうしようもない話なのに、絶妙な可笑しさがある。屑男の思考の流れの中に、ごくごくたまに愛おしさを見出だしてしまうのも、なんだか癪だけど認めざるを得ない。

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    2021年01月10日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    彼の著書を買ったのは、これが初めてだったか。
    著者と大正時代の私小説家の藤澤清造を重ねあわせて、無頼ぶりを発揮する結局が弱い男なんだが、なんだか気になるんだな。

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    2018年08月25日
  • 一私小説書きの日乗

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    まあ、普通の…淡々とした日記ですねぇ…西村氏、毎日かなりの量のお酒を飲んでおられますな! 自分からしたらあまりにも多い…そんなに焼酎たくさん飲んだら自分だったらきっと意識朦朧としてその場で寝ていますよ…西村氏、酒強いんですなぁ…。

    などといったことを思いましたかね。他には特には…この日記、シリーズ化しているんですねぇ!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    それには本当に驚きました。だって本当に箇条書きっつか、淡々とした、備忘録みたいなものなんですもの…。

    一作目である今回は東日本大震災が起こった辺りからのスタートになります。ま、そんな地震が起きても西村氏は殊更に騒ぎ立てたりせずに淡々としているんで

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    2018年08月23日
  • 二度はゆけぬ町の地図

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    貧窶ひんる 吐瀉物 鶯谷のラブホテル街 港湾人足 鬼子母神前 椎名町 関所せきしょ 巨大な黄金色のオブジェが横たわっていなかった頃の 吾妻橋 懇々と諭した 江戸川区の殆ど浦安よりな排他的な目を向けられている 早晩クビを言い渡されるに違いない不安に 逢瀬で肌を重ねた際 暫時専有してみたい慾に憑かれていた 練習台 俄かに名案のように感ぜられてきた 馬鈴薯めいた顔の造作 ガチャ切り 公務執行妨害 万引きと殺人くらいの差 そうさい相殺され 綴じている金具 満開の桜 青いバスの乗客 唇辺くちもと 薄っすらと黴めいた匂いも鼻につく 椋鳥むくどり 窮鼠却って何とやら 一斤いっきん俄かに 蒙った大損 冷凍烏

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    2018年08月28日
  • 夢魔去りぬ

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    同居女性にDVを繰り返す小心な男の日常。日本の近代文学のお家芸である私小説にあたるらしいのけど、じめっと陰湿な感じ。著者の日常が反映されているんだろうけど、ここまで心象を描いていながら、それでもDVやめられませんか、って思った。
    同居女性の言動にムカついて暴力や怒号に走るんだけど、その発火点になる言動や男の心象がけっこう子細に書かれていて、なるほど、女性にそう言われたり、そうされると腹も立つよなあ、とは思う。でもだからって暴力に訴えちゃやっぱいかんよね。

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    2018年06月24日
  • 夢魔去りぬ

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    単行本「痴者の食卓」を改題。
    おおいにいつもの調子。
    まさかの「タクシードライバー」的場面!

    ■人工降雨 @秋恵との頃。
    ■下水に流した感情 @秋恵との頃。
    ■夢魔去りぬ @執筆現在。
    ■痴者の食卓 @秋恵との頃。
    ■畜生の反省 @秋恵との頃。
    ■微笑崩壊 @秋恵との頃。

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    2018年01月29日
  • 無銭横町

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    ネタバレ

    ■菰を被りて夏を待つ @青春期。20歳目前。
    ■邪煙の充ちゆく @秋恵との蜜月の時期。
    ■朧夜 @現在。
    ■酒と酒の合間に @現在。
    ■貫太、激怒す――または「或る中年男の独語」 @現在。を、メタ視点から? 珍しく語り手は「私」。
    ■無銭横町 @青春期。20歳。
    ■一日 @現在、とはいえ芥川賞選考会一週間前。

    まあ、いつもの。
    というか回想や身辺雑記や日誌や日記やが自動的に作品になっていく、というスタイルは、もはや発明。
    珍しく暴力がない。

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    2018年01月14日
  • 随筆集 一私小説書きの独語

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    色々なところに書いた文章を寄せ集めたもの。寄せ集めにも程があって、別に一々改めて活字にして出版しなくてもよいような類の広告文なんかも入っていて、そういうのに当たると少々やりすぎじゃないかと思う。
    ただ、著者の文体は本当に面白くて、なんとなく文体だけでつらつらっと読まされてしまう。
    ただ、ほんとにどうでもいい話ばかりなので、読み終えて特に何も残らない。ただ楽しかったというだけ。

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    2017年08月30日
  • 下手(したて)に居丈高

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    ほんとにやべえやつだなこの人。。。絶対にテレビやラジオに出してはいけない人だと思う。いつだったかテレビで観た時、ガード下の一角を指して「ここが吐き場です」と行っていた。あの時でさえ、テレビ用に善人のような表情を作っていたのだろうな。
    しかしやはり日々の生活や徒然の話なので、小説に比べたら地味。女性関係の話も出てこないし。あまりに孤独な生活を送っているので、起伏もないし。
    カップルを羨んだり他の作家を恨んだりしているのはとても面白い。編集者を憎んだり。もっとそういった負の感情をたくさん書いてほしい。読みたい。
    石原慎太郎をほんのりと好きそうなところだけはやだなー。彼の小説は確かに悪くない部分もあ

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    2017年08月05日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    結末は分かっているのが、いつになく長い長い平穏に親心のような安堵がすっと胸に流れる。最後までこの調子でいってもらいたいと祈るように行を追うが、終盤に進むにつれ、少しずつ道を外れていく。あっと思った瞬間にはいつもの展開。だけれどもなぜか不思議に明るい希望がある。人生のレールを大きく踏み外しながらも向かうところがあるし、目指すものがある。人としてのあるべき姿をその生き様に垣間見る。

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    2016年10月10日
  • 東京者がたり

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    なるほど、北町貫多の影が見え隠れするエッセイ。
    僕にとっての東京ならば、取り上げるのは、田無、三鷹、吉祥寺、新宿、早稲田、池袋、町田、銀座、御徒町、渋谷、浅草あたり。でも、多摩地区に関しては、『そこを東京扱いするな。カッペめ』と面罵されそう。
    あとがきの対談で、田無や保谷を西東京市と名乗るのはいかがなものかというくだりがあったのだが、これに関しては同意。田舎から出てきた当時の僕にとっては、東京都下という私鉄沿線のゆるさが住み心地良かったのだ。

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    2016年06月03日