西村賢太のレビュー一覧
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ネタバレ人もいない春 60
製本所での短期アルバイトを追われるように辞めて、夜の街を彷徨う。タクシーを乗り捨てるあたりから郷愁漂う。
二十三夜 60
まるで非モテ男の濃縮。叶わぬ恋と分かっていながらどう決着するのか興味が湧く。秋恵前夜としたら興味深い。
悪夢─或いは「閉鎖されたレストランの話」55
私小説ではない(創作)小説。ネズミ目線は特に面白くはないが、オチが西村賢太っぽくておもしろい。
乞食の糧途 40
運送会社のアルバイト先に嫌なヤツがいた。
貫多はヒモ選手権があるとしたら、ランキングは最下位だと思う。
赤い脳漿 65
逆恨みもいいところ。それもかなり歪んだ逆恨みです。私小説でなければ -
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ネタバレ⚫︎感想
私小説らしきものはあまり読んだことが無かったため、身に迫るものがあった。貫多の父は連続強姦犯として、彼が小学生のときに捕まった。可能性として誰もが被害者、加害者、またそれぞれの家族になり得る。そんな危うさをしみじみと考えるきっかけとなった一冊。
⚫︎あらすじ
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかか -
Posted by ブクログ
面白かった。でも何でこんな小説がこれほどまでに面白く感じられるのか、自分でも理由が能く分からない。
はっきり言って何にも善いことは書かれていない。自堕落で自己中心的な男が周囲の全ての他人様に迷惑をかけながら生活する様が延々綴られるのみ。
思い通りに行かないと直ぐに怒るし、時には手も出るようだ。真面目に労働に従事している様子は無く、性慾を制御出来ず、生活資金は女性に依存している。
形が大きいだけの丸っきり子供大人である。唯一志と呼べそうな活動は私淑する作家の全集を自費出版しようとしていることくらいか。
こんな正論を書いても仕方が無いが、志を持つのは結構なことではあるものの、それ -
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ネタバレ「ああ、何時までこうした生活を続けねばならないのか。」
これは、主人公が知人宅に着物を借りに行くも叶わず、帰りしな閉店間際の鮨屋に少し詰めてもらい食べながら吐露した言葉だ。とても他人事とは思えず身に沁みた。
貧苦に加えて病苦にも囚われ抜け出せない主人公の不平不満、カネの渇望、富める者や健やかな者への羨望と嫉妬、貧乏や愚鈍への嫌悪と怨嗟、そして友人の自殺。陰鬱な繰り言・恨み言や出来事が落語か講談のような明るさと軽やかさのある文体で綴られている。持病に苦しみ、その日の食事どころか嗜好品の煙草1本すら儘ならぬ主人公の生活苦の生々しさに慄き、また本気で脱却改善を望んでいるのか判らぬ彼の中途