【感想・ネタバレ】雨滴は続くのレビュー

あらすじ

芥川賞受賞“前夜”の知られざる姿を描いた遺作
連載中に著者が急逝、刊行時に話題を集めた遺作が、三回忌を前に早くも文庫で登場。

2004年の暮れ、北町貫多は、甚だ得意であった。同人雑誌に発表した小説「けがれなき酒のへど」が〈同人雑誌優秀作〉に選出され、純文学雑誌「文豪界」に転載されたのだ。次いで、「群青」誌の編集者から、貫多は小説を依頼される。純文学雑誌に小説を発表することは、私淑してきた不遇の私小説作家・藤澤清造の“歿後弟子”たる資格を得るために必要なことであった。しかし、年が明けても小説に手を付ける気にはなれなかった。恋人を得たいとの欲求が、それどころではない気持ちにさせるのだ。貫多は派遣型風俗で出会った川本那緒子の連絡先を首尾よく入手し、デートにこぎつける。
有頂天の貫多は子持ちの川本と所帯を持つ妄想をする。ところが貫多は、取材に来た若い新聞記者・葛山久子に一目ぼれをしてしまう。小説家志望の葛山に貫多は自作掲載誌を送るが、その返信はそっけないものだった。手の届く川本と脈のなさそうな葛山、両者への恋情を行きつ戻りつしながらも貫多は「群青」に短篇、匿名コラム、書評を発表していく。そして渾身の中篇「どうで死ぬ身の一踊り」が掲載されたが、その反響は全く感じられなかった。同じころ、葛山からは返信が途絶え、川本にはメールが通じなくなり、前途に俄かに暗雲が立ち込めるのだった。
完成直前で未完となった、著者、最後、最長にして最高の長篇1000枚。巻末にヒロイン”葛山久子”による特別原稿を収録。

※この電子書籍は2022年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

西村賢太という作家の人間そのものが溢れ出た名作です。読んでいて何度も自分にも当てはまるフシがあるなと思い、それを隠すこともなくさらけ出す私小説書きの貫多の心情に共感と賛美しかありません。喫茶店で一人読んでいて、あまりの人間味の強さに吹き出しそうになりました。葛山久子さんからの特別原稿は感動で心が震えます。もう西村賢太さんはいないのだ、という事実に寂寥を覚えます。

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2024年05月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

電車内で笑いをこらえるのがつらかった。
初の1000枚長編は、実にダラダラ、ジワジワとしか進まない。
・シングルマザーのデリヘル嬢おゆう、こと川本那緒子。
・七尾〈清造忌〉の取材に来た新聞記者の葛山久子。
・作家としての成り上がり前夜の時期に、作家であることがプライオリティになるのではとヤキモキ、フラフラ。
・新川の活躍も見所。
・ワンシーンワンシーンというより、一文一文のサービス精神が凄い。

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2024年02月02日

Posted by ブクログ

「根は○○」が見開き2ページごとに出てくるから気になってたんだけど、調べてみたらtwitterでbotも作られてたのか

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

西村さんの名前を鶯谷のルポで知り読み始めた。
私小説家が芥川賞を受賞するまでの物語。自分の才能に悩み、女に逃げ、卑怯な二股を掛ける。まあ酷い主人公なんだけど、そこが真理を抉っていて怖いもの見たさでついつい引き込まれていく。
この本が絶筆となった由。残念

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2024年11月24日

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