あらすじ
雑事と雑音の中で研ぎ澄まされる言葉。半自叙伝「一私小説書きの独語」(未完)を始め、2012年2月から2013年1月までに各誌紙へ寄稿の随筆を網羅した、平成の無頼作家の第3エッセイ集。
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Posted by ブクログ
西村賢太を偲び読む。
西村賢太と貫太との違いが種明かしされる部分もあり、西村作品愛読家には嬉しい。けれど、未読の人にとってもエッセイとして楽しめる内容になっていると思う。
『夏の風物詩』という2ページのJTの広告が素晴らしく、会う人会う人に読ませていたら、そのうちの何人かはこの本を買って一冊まるごと読んだという。それほど短くも引力のある文章だった。
このような細々とした仕事まで収められていることは遅れてファンとなった身には嬉しい。西村賢太が藤澤清蔵関連の資料を集めて喜んでいたのと同じように、私も文庫にまとめてもらったさまざまの資料に喜び、小説と照らし合わせてウンウン言ったりしてひとしきり楽しんだ。
それにしても、細々とした仕事にうつくしいものの多いこと。街やひろげた雑誌・新聞の中に、これからはもう西村氏の新しい記事が出ていてハッとすることがないと思うと、さみしい。
藤澤清蔵とちかしいのははもちろんのこと、『本のソムリエ』で川崎長太郎の作品を推しその推薦文として書かれている「自虐を描いているようで実は全くその逆だと云う、至極したたかな側面を持っている」は、西村作品にも一部共通しているように思う。
うじうじしていて冴えなくて、ピカピカの主人公になぞなれないと思いながら、それでも自意識だけは強くて苦しくて…そんな苦しみを率直に言葉にしてくれたのは西村賢太だったなと改めて思った。
Posted by ブクログ
表題の『一私小説の独語』は私小説作品と重複した内容ともいえるが、北町貫多の話ではなく、西村賢太の話としてまた違った視点、文体で改めて読める面白さがある。それにしてもこの人の文章は内容に関わらず読んでいて楽しい。