西村賢太のレビュー一覧
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西村賢太お得意の私小説、北町貫多シリーズ。3作品が収録されている。
気が弱いくせに相変わらずの愚行を繰り返し、着実に破滅に向かう寛多の生き様は、寛多ファンにとっては清々しい。心の底では平穏を望んでいるのに、どうやっても破滅に向かってしまう寛多の運命を傍観するのが、ファン心理だ。悪代官が水戸黄門の印籠にひれ伏すのを待つようなものだ。
そんな主人公の破滅への道は3作品それぞれ。新たな職場の初日の歓迎会で飲みつぶれ、翌日から無断欠勤。恋人を殴りつけて、その父親に土下座謝り。店主の態度が気に入らず、出されたラーメンにゴミを打ち込んで店から逃走。これぞ、北町貫多で、何者でもなかった若き著者。
と、 -
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相変わらずの西村節、ほんとに楽しい。どうせいつかしょうもないことをやらかすんだろうなーいつそれが来るのかなー辛いなーと負のドキドキ感があるのがたまらなくいい。
著者の作品では珍しい長編だけど、溜まって溜まってカタルシスが来るのがほんとにたまらなくスカッとする。負のスカッとだが。
やっぱり女性に対する期待が毎回裏切られるが故のミソジニー的な記述が一番面白い。昔付き合った女の口が臭かっただとか、バイトの女子大生が臭そうな気がするだとか、新しく入ったバイトの女の子のキュロットを臭ったら卒倒しそうなほど臭かったとか、著者の中では女とにおいというものが不可分に結びついている感じがする、 -
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ジャンルは私小説なのだが、この「貫多」シリーズは水戸黄門やサザエさんとジャンルを同じくする「すばらしきマンネリもの」だ。目指すゴールは主人公、貫多の爆発。
中卒、職なし、家賃滞納中である貫多がまず行動するのは職探し。この設定は本シリーズのお約束。ベストセラー「苦役列車」では倉庫管理に就いた貫多だが、今回の仕事は洋食店で弁当配達と調理場の片付け。
この設定だけでただものならぬ不穏な空気が漂うのが本シリーズの特徴。その空気をさらにどす黒く染めるように、店主の奥さん、バイト仲間の女子大生が登場。その上、よせばいいのに、店主は店の屋根裏部屋を貫多に提供するという暴挙。
これで燃料は揃い、後は貫多 -
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よくわかるなー。
作家研究とコレクション精神というのは紙一重で、集められるものは集めなければ気が済まないし、生活の優先順位を狂わせる。
それが自分の人生の矜持になれば、なおさらのこと。
それが安易なヒロイズムであることも薄々感づいている。
師をもつとは、しかしこういうことか。
さらにいえば、編集活動→女といさかい→女と仲直り、というパターンがある。
このパターンは想像するだに、他の作品でも同じなのでは……?
そしてまた、女と暮らすことの難しさ。
過去と未来の思い出と展望はいかにもきらきらと素晴らしいのに、現実に長く寄り添う女と対峙すると、どうしてあんなにむかむかとマグマみ -
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4つの短編からなる秋恵との日記。表題の「寒灯」は、初めて一緒に過ごす正月に秋恵が貫多に断りも無しに単独帰郷を決めていた事に対する憤りの話。男が嫌いな、女性のこうした無神経さを短編に上手く纏めてあり共感。巻末の「腐泥の果実」は秋恵と別れてから八年後に、当時を想起させる品と出会い、その心情を語る一編。
巻頭の「陰雲晴れぬ」で始まる同棲の開始から巻末の一編までで、短いながらも充実していた初の素人女性との同棲生活が生々しく語られ、当初活き活きしていた二人が次第に淡泊な惰性の日々の果て別れてしまう様には、良く有る話とは言え、やはり刹那さを覚える。 -
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父親の犯罪から歪んでしまった主人公・貫多が中学卒業後、肉体労働を経て日々を過ごしていく。
この小説は私小説、つまり西村さんの人生なわけだが、鬱屈とした性格?やグレていた頃、肉体労働の経験、自己責任とはいえ人生がどうにも崩壊していってしまう模様、そのどれもが私のことではないかと思い、読んでいるのが辛くなってしまった。
とはいえ、西村さんもとい貫多は実家がもともと裕福で金を無心しがちなクズである一面もあり、そこは腹が立った。私も中退して肉体労働をしていたので、この人生が『苦役列車』なんて言うなら、私はさらに悲惨であろう。
このことについては石原慎太郎も解説で触れていたが "どんな人