西村賢太のレビュー一覧

  • 痴者の食卓

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    西村氏の貫多シリーズは、秋恵との同棲以前以降とでその味わいが分かれるという私見。以前以降であれ、主人公の貫多の癇癪と自責の念の揺れ具合がなんとも味わい深いところではあるのだけど、伴侶的な存在の秋恵の存在により、それが絶妙に描かれる。その意味で秋恵が全編出てくる本作は当然五つ星。

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    2017年05月05日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    ジャンルは私小説なのだが、この「貫多」シリーズは水戸黄門やサザエさんとジャンルを同じくする「すばらしきマンネリもの」だ。目指すゴールは主人公、貫多の爆発。

    中卒、職なし、家賃滞納中である貫多がまず行動するのは職探し。この設定は本シリーズのお約束。ベストセラー「苦役列車」では倉庫管理に就いた貫多だが、今回の仕事は洋食店で弁当配達と調理場の片付け。

    この設定だけでただものならぬ不穏な空気が漂うのが本シリーズの特徴。その空気をさらにどす黒く染めるように、店主の奥さん、バイト仲間の女子大生が登場。その上、よせばいいのに、店主は店の屋根裏部屋を貫多に提供するという暴挙。

    これで燃料は揃い、後は貫多

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    2016年11月21日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    よくわかるなー。

    作家研究とコレクション精神というのは紙一重で、集められるものは集めなければ気が済まないし、生活の優先順位を狂わせる。
    それが自分の人生の矜持になれば、なおさらのこと。
    それが安易なヒロイズムであることも薄々感づいている。
    師をもつとは、しかしこういうことか。

    さらにいえば、編集活動→女といさかい→女と仲直り、というパターンがある。
    このパターンは想像するだに、他の作品でも同じなのでは……?

    そしてまた、女と暮らすことの難しさ。
    過去と未来の思い出と展望はいかにもきらきらと素晴らしいのに、現実に長く寄り添う女と対峙すると、どうしてあんなにむかむかとマグマみ

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    2016年07月14日
  • 田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら 他

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    ずーっとなんかいまいちっていうか、軽い日記みたいな感じで読んでたけど、量ってやっぱ大事で、量があるがゆえに、軽い日記みたいな感じの文章でも、読み終わった時に読後の満足感がある。最後の数行を読んで、読み終わった後、あぁ、そういうことだったのかと、なんか気づく。

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    2016年01月21日
  • 寒灯

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    著者お得意の「秋恵と貫多」シリーズが4話。空気を読めない秋恵のちょっとした無神経っぷりが空回りし、貫多の怒りは段階を経て沸点に達する。そして、爆発。しかし、すぐに後悔する貫多。そして土下座謝罪。

    基本的にどの短編もこの流れ。安定感のある西村作品の王道だ。マンネリなんだけど、純文学を思わせる芸術性のあるタイトルと中身のギャップ、そして、貫多が沸点にたどり着くプロセスが抜群におもしろい。

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    2013年07月26日
  • 寒灯

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    4つの短編からなる秋恵との日記。表題の「寒灯」は、初めて一緒に過ごす正月に秋恵が貫多に断りも無しに単独帰郷を決めていた事に対する憤りの話。男が嫌いな、女性のこうした無神経さを短編に上手く纏めてあり共感。巻末の「腐泥の果実」は秋恵と別れてから八年後に、当時を想起させる品と出会い、その心情を語る一編。
    巻頭の「陰雲晴れぬ」で始まる同棲の開始から巻末の一編までで、短いながらも充実していた初の素人女性との同棲生活が生々しく語られ、当初活き活きしていた二人が次第に淡泊な惰性の日々の果て別れてしまう様には、良く有る話とは言え、やはり刹那さを覚える。

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    2013年07月06日
  • 二度はゆけぬ町の地図

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    かなり笑った。北町貫太シリーズ。「春は青いバスに乗って」はちょっと読んで内容が見えてきた頃に大笑いしてしまった。徹底してみじめでからっとしてるのがいいなぁ。よくある普通の仕事ができなかったり馴染めないから小説書きましたみたいななまっちょろい似非社会不適応者の書いたものほどはなについた下らないもんはないからな。

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    2012年07月30日
  • 二度はゆけぬ町の地図

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    主人公が「私」である時と「北町貫太」である時の違いは何だろう?

    性欲が強くて、器が本当に小さく、すぐにキレる人の物語。「自分のことを棚にあげる」主人公が、「自分のことを棚に上げる他人」を口汚く罵るシーンに期待してしまう。

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    2012年07月16日
  • 人もいない春

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    ネタバレ

    醜い容姿、短気で酒好き、並はずれの性欲、突如飛び出す暴言・暴力。コンプレックスに苛まれ煩悶懊悩する主人公にいつものように自らを投影していた。他者との衝突にはらはらさせられながらも時折垣間見える相手を思いやる優しい心配りにもぐっと心惹かれた。以前にもまして磨き上げられた文章は陶酔ものであり、ストーリー自体は相変わらずのワンパターンでありながら些かのマンネリを感じさせない。加えて、6編の短編の中の「悪夢」などは、これまでとは全く趣を異にする作品であり、著者の新たな世界への挑戦も感じられ今後にますます期待は膨らんだ。

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    2012年06月30日
  • 寒灯

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    ネタバレ

    とるに足らない痴話喧嘩。ありふれた睦言に由無し言が赤裸に綴られる。いつものように身勝手な爆発が始まり侘びしく哀しい悔恨慙愧に帰結する。4つの短編がいずれもこのワンパターンに終始しているにもかかわらず飽きさせないのは磨き上げられた秀逸な筆力のなせる技。見事というほかない。ただ淡々と流れる何気ない男女の日常風景に夫婦のあり方、他者を思う心を深く見つめ直すこともできた。得体の知れない力に圧倒された。

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    2012年06月30日
  • 瘡瘢旅行

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    っはー、今回もひどい、ひどくて最高。
    女をののしる言葉が、最高にえげつなくていい。
    放送禁止用語レベルなのでここには書けないが、とにかく、筆者でなければ思いつかないレベル。

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    2010年05月27日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    とんでもねえゴミカスだと思ったらまさかの私小説とは…
    描写も細かく、繊細な文体と難しい単語が目立つ。
    それであって喋りとのギャップがまた面白い。
    あまりにも底の底すぎるが、
    自分もまたこうなる可能性があったと思うと、
    戦後日本の平和を享受できるのも、
    限られた人間にのみ許されたもので、
    全ての人間がそうではないんだと思わされたり。

    性格があまりにも自分の暗い部分に似ていた。
    こういう側面って誰にでもあって、
    環境によってそれが主になってしまう、
    ということもあるのだと思う。

    しかしあっこから小説家になるとは…
    いやはや何が起こるか人生とは分かったもんじゃあないな。

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    2026年02月16日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    私小説。正直にいうと私小説というものがわからない。最初に随筆のように読んでしまって、違うなと気づいた。自身の体験や感情をもとに書いているのだろうけど、客観視してるというか分裂してる視線を感じる。
    主人公のように、劣等感に振り回され感情にまかせその時のみを生きているだけなら、この文章は書けないんだろう。シニカルなユーモアや主人公の愛嬌を巧みにふりかけていて、上手いなぁと思う。
    ご本人はどんな人だったんだろうか。興味がでて、会ってみたかったと思った。

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    2026年02月15日
  • 一私小説書きの日乗 憤怒の章

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    他人の私生活を覗き見た感覚。

    連夜の暴飲暴食(カルピスサワーは意外)。
    描けぬ原稿。
    仲違いと仲直りを繰り返す編集者。
    思わぬ出会い。

    そんな「日常」が淡々と綴られているだけなのに面白い

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    2026年02月09日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    退廃した自分を書いた私小説。これだけの文章が書けるのだから、元々頭の良い人で子供のころの環境が悪かったから、自堕落になってしまったのだろうな。

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    2026年02月07日
  • 小銭をかぞえる

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    ネタバレ

    女性のことをずっと女って言ってて良かった。
    主役が性格悪くて不細工な時点で面白くないわけないと思う。多分。

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    2026年02月05日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    ネタバレ

    西村氏の私小説的作品。貫多が自己投影のキャラクターであるからか、語り部が一人称的にも三人称的にも映る。それ故に、貫多のクズっぷりを内省的にフォローする形で話が進むので助かる。
    途中で出会う同い年の専門学生、日下部と親しくなるものの、徐々に貫多と"普通"の同級生とのズレが顕著に表れて虚しい。家庭環境から翻って日常生活、人や金の豊かさ、それ故の距離感や怜悧さの違いがもたらす羨望が卑屈さに変わり、相手を侮蔑することでプライドを保つ虚しさと成長の無さは共感性羞恥をもたらす。ただ、厭世的な雰囲気はあるものの、悲愴感こそ感じさせない主人公である貫多のメンタルもあって、読むのが苦痛になる

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    2026年01月06日
  • 小銭をかぞえる

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    西村賢太13冊目?

    安定の面白さ
    今回は読者のメンタルを抉ってくる度合いは高め

    西村賢太ファンにはお馴染みのヒロイン
    裏切り?の末に貫多の元から去るという未来を幾度となく提示し、その下で思う存分にドクズ男を描写している

    どちらのタイトルも効いている

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    2026年01月05日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    私小説とは自身をピエロに仕立て小説として売るものだろう。そこに虚飾があってもよいが、コンプレックスも何もかも丸出しにして人間の底の底が描けていなければ、丸裸の人間がここにいると思われなければ、読者の共感は得られない。よく「どんな人にも一冊は小説が書ける」と言われるが、それはそれで厳しい話だ。
    ほぼ実録私小説のように読める本書は、まず父親の犯した性犯罪が学歴や怠惰な性格といった主人公(著者)の劣等感の根本的出どころとして描かれる。これは本人には責任がなく世の中の不条理ではあるのだが、そこに反発はあるにせよ概ね世間目線を受け入れる代わりに、怠惰で無軌道な自己を社会に当てつけているフシがある。これが

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    2026年01月04日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    物語の主人公である北町貫多は、自分よがりで、見栄っ張りと決して褒められるよう人ではない。
    物語を読み進める中で、貫多までは思わないまでも、すごく気持ちがわかる。それは人間という生物が必然的に思うことなのだと思う。
    誰だってみにくい感情はある。それを表に出さない、出せないだけで。この小説は、作者が心情に正直に書いているおかげで、透明感が半端じゃない。
    人には言えないようなみじめな感情に対して、みんな思うことなんだよと言ってくれる。それだけで救われるものだと強く感じた。
    ダメなところもある自分のままで、堂々と生きようと思えた作品だった。

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    2026年01月03日