西村賢太のレビュー一覧

  • 小銭をかぞえる

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    『苦役列車』が面白かったのでこちらも。「焼却炉行き赤ん坊」のスピード感がたまらない。爆笑に次ぐ爆笑。文章のグルーヴがとんでもないことになっている。そして読後にはわずかな寂寥感が取り残される。なんなんだコレは。他の文庫も全部揃えたくなった。
    「心の底から反省して、二度とこんな陋劣な真似はしませんから、今度だけは許してよ」
    こんな情けない男は見たことがない。

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    2023年01月29日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    いいよ、貫多。最高のローンウルフだよ。
    あの北町貫多がこんなにも愛おしいとはね。

    「苦役列車」と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の間のエピソードを読みたいと思った矢先、たまたま手に取ったのが、ちょうど「苦役列車」の後続の話だったとは!!
    「落ちぶれて……」の作中作と同じタイトルだったから何かしら繋がりがとは思ったけど良かったわ。

    ああ、最高だったなぁ。。。
    高邁な理想と裏腹に、滑稽さと見苦しさが滲み出てしまう様子は筆舌に尽くしがたいですね。
    極端さはさておき、誰しも体験する普遍性を持つ様で、それに苦悩する貫多が実に愛らしい。

    そして田中光英との出会い。
    思わず夜中に家を飛び出し歩き回りた

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    2023年01月09日
  • 一私小説書きの日乗 野性の章

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    エッセイとかではなくただの日記である。
    他人の日記を読むと言うことは人の生活を覗き見していかのような若干の後ろめたさと、少しの高揚があるとはおもうが、彼に関しては奔放すぎてそんなことはどうでもよい。ただ、喧嘩を売って、文句を垂れ、手製のなにかを作り、宝を呑んで、小説を書く。それだけだ。それを淡々と書いているだけだ。なぜだ、なぜこんなものを最初から最後まで楽しんで読んでしまうのだ。不思議だ。

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    2022年07月30日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

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    ネタバレ

     中卒、免許なし、北町貫多の20歳過ぎから50歳位までの人生、アルバイトでの飲酒での失敗、彼女との別れ、食事の際の性癖を描いた連作3話です。寿司乞食、夜更けの川に落葉は流れ、青痰麺。西村賢太「夜更けの川に落葉は流れ」、2018.1発行。食事中、我慢できないことの性癖を鮮やかに?描ききった第3話、青痰麺に大拍手です!

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    2022年07月20日
  • 小銭をかぞえる

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    いやーおもしろい。隠さずにすべてを晒すことができるのが私小説の良さなのか。

    クソみたいな人間に辟易するがなにか愛らしい。
    「こんな人間にはなりたくない」「こんな部分が自分にもあるのかも」「自分も角度を変えるとクソなんじゃないか」
    よくわからんが、いろんな感情に揺さぶられる。

    しかしどんな想いも包み込む文学の懐の深さに何か安心もする。

    この人の作品をもっと読みたい。

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    2022年06月28日
  • 小銭をかぞえる

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    ネタバレ

     みみっちくてみっともないのだけど恥や外聞がないわけではなく、こだわるところは強くこだわる。彼女に借りたお金で、一人でステーキを食べようとする。すごく面白い。

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    2022年06月18日
  • 随筆集 一私小説書きの独語

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    西村賢太を偲び読む。
    西村賢太と貫太との違いが種明かしされる部分もあり、西村作品愛読家には嬉しい。けれど、未読の人にとってもエッセイとして楽しめる内容になっていると思う。

    『夏の風物詩』という2ページのJTの広告が素晴らしく、会う人会う人に読ませていたら、そのうちの何人かはこの本を買って一冊まるごと読んだという。それほど短くも引力のある文章だった。

    このような細々とした仕事まで収められていることは遅れてファンとなった身には嬉しい。西村賢太が藤澤清蔵関連の資料を集めて喜んでいたのと同じように、私も文庫にまとめてもらったさまざまの資料に喜び、小説と照らし合わせてウンウン言ったりしてひとしきり楽

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    2022年05月02日
  • 無銭横町

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    この主人公は
    ちゅうちょうてきいえばくず
    しかし
    小説家をめざし自分を客観視している。多くの小説家名が出て来る
    小説が好きという一本の芯があるのみである
    しかしどこか憎めないところがある

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    2021年12月16日
  • 人もいない春

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    毎回主人公がクズすぎて安心して読める。
    バイトの大学生にでかい顔をしすぎて分断工作を受けて反旗を翻されるような矮小さは自分の中にもあるので、自分の恥部を見させられているようなマゾヒスティックな爽快さがある。
    古めかしい文体と今の言葉のギャップを「ここで笑え」といわんばかりに埋め込んでくるがそれがおもしろくて律儀に笑わされてしまう。「これがいわゆる痛気持ちいいというやつだね」とか最高。
    秋江があなたを殺せるわよというところがすごくドラマティックで、やっぱ秋江ものが好きだなー。

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    2019年12月24日
  • 無銭横町

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    根が○○○○

    北町貫多シリーズものです。
    今回も「根がスタイリスト」「根がコレクター気質」
    お馴染みのフレーズに、しかも秋絵ものまで収録されています。おすすめです。

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    2019年11月21日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    破天荒では片付けられない

    17歳の貫多の生き様、生活力そして将来の芥川賞作家としての素養がどうやって作られたかが理解できます。各登場人物のキャラクター作りは相変わらず上手いですね。

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    2019年11月20日
  • 一私小説書きの日乗 野性の章

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    私小説家の日常

    この時期の西村賢太は、このような日常の中であの小説を書いていたんだ。
    エディターとのやり取りも含め、賢太の我儘ぶりが微笑ましい。
    私小説家って、結句寂しがり屋かも。

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    2019年11月14日
  • 一私小説書きの日乗 不屈の章

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    私小説家の日常

    芥川賞作家の西村賢太氏の、私小説家的日記です。
    何を食べたとかどうでもいいような内容の中に、どうしても伝えておきたい話が散りばめられていて、本編を読んだ時に理解が深まります。

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    2019年11月14日
  • 二度はゆけぬ町の地図

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    西村賢太の作品は、『苦役列車』に続いて2作目だが、本当に面白い。貫多の酷さは『苦役列車』を上回っている。せっかく雇ってくれた酒屋の店主を裏切るわ、好意的に接してくれた家主の老夫婦をナメて家賃を滞納し、挙げ句催促されると逆恨みして、孫娘を犯すと呪詛の言葉を吐くわと、きりがない。本当にどうしようもないやつで、下品極まりない表現ばかりだがそれが最高に笑える。やっぱり西村賢太の小説は面白い。

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    2019年07月08日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    馬鹿と天才は紙一重というか、もはやクズとかろくでなしとかを飛び越え、貫多こそ真のエンターテイナーなのではないかと疑ってしまうほど。
    やっていることがもはやコントの域。下手な芸人より面白い。本人は切実なのだろうけれど。

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    2019年03月07日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

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    西村賢太お得意の私小説、北町貫多シリーズ。3作品が収録されている。

    気が弱いくせに相変わらずの愚行を繰り返し、着実に破滅に向かう寛多の生き様は、寛多ファンにとっては清々しい。心の底では平穏を望んでいるのに、どうやっても破滅に向かってしまう寛多の運命を傍観するのが、ファン心理だ。悪代官が水戸黄門の印籠にひれ伏すのを待つようなものだ。

    そんな主人公の破滅への道は3作品それぞれ。新たな職場の初日の歓迎会で飲みつぶれ、翌日から無断欠勤。恋人を殴りつけて、その父親に土下座謝り。店主の態度が気に入らず、出されたラーメンにゴミを打ち込んで店から逃走。これぞ、北町貫多で、何者でもなかった若き著者。

    と、

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    2018年06月16日
  • 二度はゆけぬ町の地図

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    ネタバレ

    買淫のことを公衆便所的な薄汚さと形容してた。

    小心者で逆恨み甚だしく、人を人として見ないサイコパスのような側面も、その後後悔してシュンとなる側面も全てがこの上なく「人間らしい」。

    これだけ自分のことを客観的に理解しているのにそれでも一般的に良いとはされていない行為を取るのは自分のダメ人間ぶりを責めてラクになりたいからだろうか。

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    2018年03月24日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    相変わらずの西村節、ほんとに楽しい。どうせいつかしょうもないことをやらかすんだろうなーいつそれが来るのかなー辛いなーと負のドキドキ感があるのがたまらなくいい。
    著者の作品では珍しい長編だけど、溜まって溜まってカタルシスが来るのがほんとにたまらなくスカッとする。負のスカッとだが。
    やっぱり女性に対する期待が毎回裏切られるが故のミソジニー的な記述が一番面白い。昔付き合った女の口が臭かっただとか、バイトの女子大生が臭そうな気がするだとか、新しく入ったバイトの女の子のキュロットを臭ったら卒倒しそうなほど臭かったとか、著者の中では女とにおいというものが不可分に結びついている感じがする、

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    2017年09月03日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    行状の身勝手さや浅ましさが突き抜け過ぎてて爆笑すら催す大傑作。清々しいまでのクズで嫌悪感すらない。あー俺もこう言う気持ちわかるよ、と思いながらも、ここまで酷くはないけどな!と読者を慰めてもくれる。

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    2017年05月28日
  • 痴者の食卓

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    西村氏の貫多シリーズは、秋恵との同棲以前以降とでその味わいが分かれるという私見。以前以降であれ、主人公の貫多の癇癪と自責の念の揺れ具合がなんとも味わい深いところではあるのだけど、伴侶的な存在の秋恵の存在により、それが絶妙に描かれる。その意味で秋恵が全編出てくる本作は当然五つ星。

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    2017年05月05日