西村賢太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
安定の北町貫多シリーズ。相変わらず職と寝床を転々としていたが、本作では心機一転横浜桜木町へと住まいを移し、新たなスタートを切るが、いつもの癇癪で破綻のカタルシスを読者は味わうこととなる。
ただ一つ重要な点は、藤澤清造同様、師と仰ぐ田中英光の私小説との出会いがあり、人生の支えを得る点。
貫多は作中「これはどこまでも、その後に続く流れに、ただ身を委ねているより他はないのだ。(中略)陳腐な例えだが、流れているうちにはいつか掴まる枝もあろうし、浮かぶ瀬だってあるだろう、と云うやつだ。で、その時になって、実こそ自身の立て直し、新規蒔き直しのきっかけが何によっていたのかが、初めて判るものなのであろう。」と語っているが、田中英光とのこの時の出会いこそ正にそれであったのでしょう。 -
Posted by ブクログ
西村賢太さんの小説ってなんでこんなに面白いんでしょう
ド屑を主人公とした私小説、読んでいてヒリヒリしてくるようなやりとり、なのにどこかユーモラスな滑稽さも感じてしまいます
たぶんこれは、主人公を屑として描き、それに対して弁明めいた描写が一切ないからという、そのバランス感覚が上手いんじゃないかなぁなんて思うのです
主人公の内面描写をしっかりと書き、とことんまで自己中心的な思考回路で悪いのはあくまで相手、そんな考え方が徹底されています
でも、主人公の一人称視点という点から見れば自己弁護に徹底しているのだけど、他者が絡んだ時にその屑っぷりを容認するような甘い文章は一切出てこないんですよね
本人の考え方としてはこうだけど、他者から見れば最低な男、と、こういったポイントを第三者的な視点ではきちんと理解して冷静に描いている、そんなところに真顔で演じるコメディのような滑稽さが産まれるのではないかなぁと思うのです
あとは、メディアに出演されていた時のチャーミングなご本人像とか、ちょっとした行動・考え方にどこかあるあるめいた共感を覚えてしまったりとか、私小説とはいえ多少は露悪的に描いているんだろうなとか、なんかもろもろそういった要素とかもあったりはするのだろうけど
……『小銭をかぞえる』の感想というより西村賢太作品の感想文になってしまった(笑 -
Posted by ブクログ
「告白(町田康)」の熊太郎、トリプルファイアーの吉田靖直、そして北町貫多。どうしようもない人たちにしか出せない魅力がある。
小心者なのにも関わらずプライドだけは人一倍高く、世間とモノの見方が若干ズレている。普段鬱憤を溜め込んでいる故に、お酒が入ると悉く失態を晒してしまう。
なんでこんなにもダメな人(自分はどうなのかは棚に上げて)に惹かれるんだろう……
一つの理由は、やはり怖いもの見たさだと思う。
上で挙げていた人たちの動向を追っていると、ほぼほぼ「あぁダメだよ〜」と思う方向に行ってしまう。普段私はそんな状況は全力で避けているので、逆にそっちの方向にレールが行ってしまったらどうなるんだろうとエキサイトしながら読んでしまう。
もう一つは心の中に彼らと共通する部分を見出しているからなのかなと思う。
彼らが物語の中で対峙している(または迎合している)欲や無精さは、みんながそれぞれ持っていてるけど、理性であったり社会通念で無意識に蓋をしているモノなのかなと思う。彼らはそれらが原因で間違いを起こし、葛藤する。私はその葛藤の中にふと、グッと共感する瞬間を見つけることがあった。普段、私が無意識に抑えている感情を明け透けにしている彼らだからこそ、私は心の根っこに近い部分で共通したものを感じるんだと思う。
もっといろんな貫多を見てみたいなと思った。これから貫太シリーズを読み進めてみたいと思う。
めちゃくちゃ良かった! -
Posted by ブクログ
いいよ、貫多。最高のローンウルフだよ。
あの北町貫多がこんなにも愛おしいとはね。
「苦役列車」と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の間のエピソードを読みたいと思った矢先、たまたま手に取ったのが、ちょうど「苦役列車」の後続の話だったとは!!
「落ちぶれて……」の作中作と同じタイトルだったから何かしら繋がりがとは思ったけど良かったわ。
ああ、最高だったなぁ。。。
高邁な理想と裏腹に、滑稽さと見苦しさが滲み出てしまう様子は筆舌に尽くしがたいですね。
極端さはさておき、誰しも体験する普遍性を持つ様で、それに苦悩する貫多が実に愛らしい。
そして田中光英との出会い。
思わず夜中に家を飛び出し歩き回りたくなる衝動の何と素晴らしいことか。
この衝動から私小説家としての道のりはまだ20年あるのかと思うと、この思いがどのように醸成していたったのか気になりますね。