西村賢太のレビュー一覧

  • 人もいない春

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    「人もいない春」
    まだ10代の頃(17歳くらい?)の
    職場での失敗談から始まり
    生活を立て直そうとする物語。

    「二十三夜」
    失恋の失敗談の話し。

    「悪夢」
    珍しく、おそらく夢で見たものを書き起こした実験的な物語。

    「乞食の糧途」「赤い脳漿」「昼寝る」
    秋恵シリーズ。


    記憶のメモがわりにそれぞれの話しを記載しましたが、やっぱりこの時期の西村賢太は勢いと無駄の無い表現でとにかく面白い。

    表題作も良いけど、
    秋恵シリーズは自制の効かない自らの暴力性と
    自己反省との繰り返しの中で、常識的な秋恵と、異常な貫多の対比が浮き彫りになって面白い。



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    2024年03月13日
  • 一私小説書きの日乗 憤怒の章

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    「夜、買淫。帰路、喜多方ラーメンの大盛り」の描写がやけに少ないと訝しんでいたが、どうやら掲載媒体の検閲があった模様。「夜、連続手淫。たまには良し」は笑った。

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    2024年03月10日
  • 芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影

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    本人は「別格の作」と評しているということだが、その意味は、誰に読ませるでもなく自分のために、自分が清造の歿後弟子として恥ずかしくない人間であるために書いたという点で「別格」ということらしい。
    冒頭、稲垣潤一のコンサートのくだりが異常に長く、なんだこれはと思っていたところからグッと暗い調子になり、反省して、かなり自省的な調子で最後まで行く。読み終えてみればなるほど冒頭でコンサートの華やかさをしつこく描いておくことで後半との落差をつけているのだなとわかる。誰に読ませるためでもないと言いつつも、そういう意味ではちゃんとおもしろくしようとしているところがやはりかわいいと思う。

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    2024年02月14日
  • 小銭をかぞえる

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    安定の貫太シリーズ。名前は出てこないですが、秋恵との蜜月の日々を描く本作。二短編は共に貫太の癇癪で破綻に走る事毎度の結末ですが、どうしてこうも西村処作は分かっていても面白い読後感を味わえるのでしょうか。
    それは巻末に町田康氏が解説してるように、純文学定形の「苦悩する青年像」と全く異なる方法で物語が描かれ、それも見事な文章と描写を持って成されているからなのでしょう。町田氏の「酢を飲んだような悲しみと同時に愉快に感じる」読後感を西村さんの本作からも変わらず味わえるのです。

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    2024年02月11日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    藤澤清造愛に溢れている私小説。読んでいてあまりいい気分はしないDVの場面はあるけれども、なぜか読み進めてしまいたくなるほど不思議な小説だ。それを解説がわかりやすく書いてくれていた。
    『藤澤清造に少しでも近づけることを求めながら、自らは小説家になることを目指していなかった西村賢太の私小説にその種(作家になることを目指し私小説というジャンルを選び、自分を美化して描くこと)の美化はない。なるほど彼の小説に登場する「私」は常に愚者である。すれはすがすがしくも本当の愚者である。だから西村賢太の小説は不思議にあと味が悪くない。』

    それにしても、「根は◯◯なので~」が好きだ。
    この小説内では彼の根はわがま

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    2024年02月02日
  • 人もいない春

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    『やまいだれの歌』とかに比べるとちょっと弱い感じ。一編だけ寓話みたいな創作小説が収録されてて驚いた。私小説意外もあったんだ。

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    2023年10月25日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    まず冒頭申し上げたいのは、西村賢太作品を相部屋の病室で読んではいけないということです。
    思わず吹き出して、同室の患者に眉を顰められること必定。
    笑いを堪えようとして咽たり咳込んだりし、事態が悪化することもしばしばです。
    今回、大腸ポリープの摘出手術を受けるため1週間入院していますが、西村作品を持ち込んだことを軽く後悔しております。
    それはさておき、本作は言わずと知れた「北町貫多」シリーズ。
    貫多17歳、洋食屋でアルバイトをする青春の日々を描いています。
    「青春」と書きましたが、貫多の青春は、一般にイメージされているものとは真逆のものです。
    貫多は、小学5年のころに父が性犯罪で捕まり、母と姉と共

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    2023年09月03日
  • 小銭をかぞえる

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    いわば人間の屑とでもいうのだろうか。
    働きもせず金を無心し、すぐ激昂し、女に手を挙げ、の繰り返し。それも私小説とは。。
    現代の話をかようにまでも大正昭和の人が書いたような文体、計算ずくの内心描写を筆致に描き上げる力量は解説者をして天才と言わしめるだけのことがある。
    早逝が惜しまれる。

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    2023年09月02日
  • 蝙蝠か燕か

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    発売日に買ったものの読まずにしてた。
    これが最後か。
    手元にあってまだ読んでないのが雨滴は続くと、どうで死ぬ身のひと踊り

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    2023年08月23日
  • 根津権現前より 藤澤清造随筆集

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    藤澤清造の随筆。
    書評、劇評など。
    文体が古く読みづらいけど慣れてくると藤澤清造が持ってる面白さが見えてくる。
    自身の小説に対しての批評に対して反論してるの面白い。過去の小説また読みたくなった。

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    2023年08月03日
  • 蝙蝠か燕か

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    師たる藤澤清造の全集および書作文庫での復刊へ奔走する西村賢太氏の日々。自身も「何故それ迄に」と疑念を持つ程の執着。
    ですが作中の「だが彼我も、当人には当人なりの事情と目的があって、互いにそれを自信をもって行なっているのだ。」と言う氏としては珍しい他者共感の一文が一ファンとしても面映ゆかった。

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    2023年07月29日
  • 一私小説書きの日乗

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    ネタバレ

    日記の面白さに気づく一冊だった。
    書いてあることといえば、主に朝から晩までの行動についてだけ。何時に起床、入浴し、一日こういう仕事を行い、食べた物の記録があり、明け方に酒を呑み一日を終える。時々、尊敬する人物への熱い思いが綴ってあり、編集者との喧嘩や愚痴も書いてある。
    でも日記として気楽に楽しめる範囲の事しか書かれていない。3.11の時は平静でいられない日々が続いたと思うが、それについての記述がほぼ無いことから、何を書いて何を書かないかというのが徹底しているように感じた。この日記を読んでいて不思議と癒しを覚えるのは、その取捨選択が絶妙だからなのかもしれない。
    まだ『苦役列車』しか読んだことがな

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    2023年07月28日
  • 蝙蝠か燕か

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    ネタバレ

    逝去からちょうど一年後に発売された本。P148(まあ、あれだ。人それぞれってことだよな……)がとても良かった。著者は孤独の中で自分の支えを見つけ、人生を捧げている人だからこそ、そこに関わる他人の所作には非常に厳しい。皆同じ価値観ではないのに……。「これしかない!」と人生を棒に振り、お金も人間関係も自分都合で巻き込みながら突き進むのは破滅的だと思い読んでいたけれど、命懸けで真剣で純粋だからこそ、危険な生き方になってしまったのかもしれない。そう思った時の(まあ、あれだ。人それぞれってことだよな……)が良かった。

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    2023年05月11日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    昨年から夢中になって読んでいる西村賢太の作品。
    長編は初めて読みました。
    主人公は、ご存知、北町貫太。
    中卒で、日雇い仕事をしています。
    十代も終わりに近づいたある日、貫太は一大決心をします。
    長年、住んでいた東京都内を離れ、横浜桜木町に居を移すのです。
    日雇い仕事も辞め、造園会社に就職します。
    そこへ、事務のアルバイトとして、貫太と同い年の女の子がやってきて物語が展開します。
    彼女に恋焦がれる貫太。
    一方通行の恋は、痛々しくも滑稽で、貫太には申し訳ないですが、何度も吹き出しました。
    ただ、既視感もあるのです。
    私もモテないという点においては、貫太に引けを取らなかったわけですから。
    彼女の一挙

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    2023年05月04日
  • 人もいない春

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    秋恵もの多め。同棲生活に忿懣を募らせながらも寸前でDVを思い止まる「乞食の糧途」や風邪をひいた秋恵を貫多が意気揚々と看病する「昼寝る」など貫多が時折見せる思いやりにはっとさせられる作品も。もうこの時点で読者も彼の術中にハマっているわけですね笑
    不器用なやり方で彼女を思いやる貫多の姿は微笑ましくもあるが、破局という結末を知っているだけになんとも心苦しい。

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    2023年04月06日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    『苦役列車』『小銭を数える』に続いて。北町貫太セブンティーン、洋食屋での奮闘の日々。今回は長編ということもあり序盤はいささかかったるくもあった。読者としてはやはり貫太が暴虐の限りを尽くすのがオモロイわけで。洋食屋の仕事に慣れるにつれ、彼の本性が顕になり小狡いちょろまかしや淫行を重ねていくのはなんとも生々しい嫌らしさがある。バイトの小娘のスカートの匂いをこっそり嗅いで悪態を吐きまくる場面は大いに笑わせてもらった。

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    2023年03月18日
  • 狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集

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    ・一夜
    ・けた違いの事
    ・秋風往来
    ・狼の吐息
    ・刈入れ時
    ・母を殺す
    ・愛憎一念
    ・予定の狼狽
    ・赤恥を買う
    ・雪空
    ・此処にも皮肉がある 或は「魂冷ゆる談話」
    ・土産物の九官鳥
    ・乳首を見る
    ・嘘
    ・愚劣な挿絵
    ・生地獄図抄
    ・われ地獄路をめぐる
    ・焦熱地獄を巡る
    ・めしいたる浅草

    めーちゃくちゃ良かった。
    確かに言い回しなとが難しいが藤澤清造作品は回数を重ねると慣れてきてその面白さが見えてくる。

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    2023年04月13日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    中卒タフ・ガイ、自意識過剰な北町貫多は人生蒔き直しを試みて横浜へ。造園会社へ勤務しますが暴走して自爆。心の支えは田中英光の私小説。読んでいると憂さを忘れるという感覚には恥を逆手に取るというある種の技の示唆を得る効能が含まれているといいます。

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    2023年02月18日
  • 藤澤清造短篇集 一夜/刈入れ時/母を殺す 他

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    一夜
    ウィスキーの味
    刈入れ時
    女地獄
    母を殺す
    犬の出産
    殖える癌腫
    ペンキの塗立
    豚の悲鳴
    槍とピストル
    敵の取れるまで

    (戯曲)



    なかなか入り込めないものもあったけど藤澤清造の世界は味わい深かった
    そして戯曲はかなり楽しめた

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    2022年12月15日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    どうしても生きにくい人間っている。
    私もかなり生きにくい人間だけど
    北町貫多(というか西村賢太さん)は、私とはまた違う、かなりの生きにくさ、厄介さを抱えて生まれ育ち、不器用にしか生きられず、その業ゆえに早死にしたと感じた。
    男尊女卑的価値観が強くて悪口も多くて今出したら時代錯誤と非難されるに違いなく、汚いと感じるシーンも多いし、誰にでも愛されてヒットする作風でもないから、正直このような小説を一生書き続けるのはかなり大変だったはず。現代ではデビューもできるかどうか。
    しかし、生きにくい人間にしかわからない、書きえない苦しみややるせなさ、つらい体験、そこからふと芽生える生きがいやかすかな希望など、

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    2022年12月04日