【感想・ネタバレ】二度はゆけぬ町の地図のレビュー

あらすじ

中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび……。(「貧窶の沼」より)夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。

カバーイラスト/杉本一文

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西村賢太の作品は、『苦役列車』に続いて2作目だが、本当に面白い。貫多の酷さは『苦役列車』を上回っている。せっかく雇ってくれた酒屋の店主を裏切るわ、好意的に接してくれた家主の老夫婦をナメて家賃を滞納し、挙げ句催促されると逆恨みして、孫娘を犯すと呪詛の言葉を吐くわと、きりがない。本当にどうしようもないやつで、下品極まりない表現ばかりだがそれが最高に笑える。やっぱり西村賢太の小説は面白い。

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2019年07月08日

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ネタバレ

買淫のことを公衆便所的な薄汚さと形容してた。

小心者で逆恨み甚だしく、人を人として見ないサイコパスのような側面も、その後後悔してシュンとなる側面も全てがこの上なく「人間らしい」。

これだけ自分のことを客観的に理解しているのにそれでも一般的に良いとはされていない行為を取るのは自分のダメ人間ぶりを責めてラクになりたいからだろうか。

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2018年03月24日

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かなり笑った。北町貫太シリーズ。「春は青いバスに乗って」はちょっと読んで内容が見えてきた頃に大笑いしてしまった。徹底してみじめでからっとしてるのがいいなぁ。よくある普通の仕事ができなかったり馴染めないから小説書きましたみたいななまっちょろい似非社会不適応者の書いたものほどはなについた下らないもんはないからな。

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2012年07月30日

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主人公が「私」である時と「北町貫太」である時の違いは何だろう?

性欲が強くて、器が本当に小さく、すぐにキレる人の物語。「自分のことを棚にあげる」主人公が、「自分のことを棚に上げる他人」を口汚く罵るシーンに期待してしまう。

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2012年07月16日

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ネタバレ

下品極まりない醜悪な痴態が次から次へと繰り出される。目をそむけたくなるようなエログロテスクもあったが、一行一行に目線は釘付け。離すことができなかった。著者の卑しさ、情欲、未練、みっともなさにも同穴の親近感を覚える。読めば読むほど自分が透けて見えてくる。著者は短気に任せて馬鹿をやっていつも後悔しているが、寧ろその無様に自分の世間への阿諛迎合に言い知れぬ羞恥を感じる。4つの短編はいずれも強烈。興味をそそられる内実に溢れている。センテンスも稠密で美しい。極上の文芸だ。女性に推薦できないのがまことに残念。

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2012年06月30日

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ネタバレ

西村さん初期の作品集。数年前に買いためた積読で、ときどき読みたくなってくる。17歳前後、アルバイトや日雇いで生き延びながら家賃滞納・強制退去を繰り返し転居していた頃の私小説として貫多という若者の四方山話が中心で、下卑た内容に好みは分かれると思うけど、底辺チックな自己体験を小説世界で読むとすごく味わいがあって文学臭が漂ってくる。とはいっても昭和の良い時代の話で、当時を生きたわれわれのある意味懐かしさに対し、今を生きる若者たちがこの小説をどう読むのか、大変興味があったりする。

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2025年10月08日

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ネタバレ

貧窶の沼 60
北町貫多は17歳。初めての素人彼女ができて、酒屋配達のアルバイトとなり貧窶の沼から脱しようとするが。。。
気風のいい悪態付きが面白い

春は青いバスに乗って 60
アルバイト先の社員を殴って留置所へ。北町貫多版の「塀の中の懲りない面々」みたい。

潰走 50
北町貫多は16歳。家賃滞納常習犯 VS 取り立て屋老家主
小説としてはちょっと物足りない。

腋臭風呂 70
時を超えてよみがえる腋臭の思い出。なんちゅう設定やねん!
汚下ネタで書き上げる胆力に笑ってしまう。

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2024年11月09日

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普通にしてればかなり親切にしてくれそうな人たちに出会ってるのに自分でぜんぶ台無しにしてしまう。どれも面白いが『腋臭風呂』は後半下ネタだけど文章がうまくて笑える。

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2024年09月18日

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短編4部作。この本もやっぱり面白い。
主人公の貫多イコール西村賢太さん。
きっと自身の経験を踏まえつつは作品に落とし込んだのだろう。
全作とも大変面白い!

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2022年11月08日

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苦役列車を読んで二作目。
私小説なので主人公は変わらず、過去の出来事が物語になっている。
彼の考え方や物事の捉え方自体がコンテンツであり、なるほど彼のような「怠惰」な人格が出来上がる過程や行動の理由がよくわかるのが、西村さんの私小説の良さだと思う。
苦役列車に比べ⭐︎一つ減らしたのは、苦役列車に出てくる短大生と彼の対比がとても素晴らしく、彼のキャラクターや生き様を際立たせていたのでむしろ向こうに感動したことが大きな理由です。
なので、この小説もとても面白かったし、定期的にいろんな作品を読んで彼の言葉や思考に触れたいと思ってしまう不思議な魅力があると思う。

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2022年08月09日

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西村賢太にどハマりしています。
3月から「人もいない春」「小銭を数える」と立て続けに読み、本作が3冊目。
手に入れられる著作は全て集め、年内には読破したいところです。
ただ、西村さんの著作は絶版になっているものも多く、それが心配。
再出版してほしいものです。
さて、本作も西村賢太の分身である「北町貫多」が主人公。
西村さんは、「貫多」シリーズを50作以上書いています。
短編4編を収めた本作は、貫多が16~25歳の話です。
なぜ、年齢がそんなに正確に分かるのかというと、「本の雑誌」(6月号)が西村賢太特集を組み、その中に「北町貫多クロニクル」と題して、貫多の年表が収録されているのです。
これはファンにはたまらないでしょう。
なかなか本題に入れません。
本作で貫多は、中卒の日雇い人夫として相変わらず明日の見えない生活を送っています。
「貧窶の沼」は、そんな17歳の貫多が上野赤札堂前でナンパした佐久間悠美江と付き合い、やっと見つけた居酒屋でアルバイトする日々を描きます。
4度目の逢瀬で悠美江と肌を重ねることになりますが、あることが原因で貫多は悠美江に幻滅します。
卑猥過ぎて、ここにその原因は書けませんが、あくまで身勝手な貫多は、こう考えて悠美江と付き合い続けます。
「これから自分には、心底から本当に愛しく思える、可愛い恋人といくらでも出会えるチャンスもあるだろうから、その日まではこの小汚い悠美江を一種の『練習台』として、いろんなことを試してやろう、とも考えたのであった」
「春は青いバスに乗って」は、25歳の貫多がバイト先の先輩をカッとなって暴行し、警察に捕まって留置所で過ごす日々を描いたもの。
「潰走」は、16歳の貫多が高齢の大家を相手に家賃を踏み倒す話です。
「腋臭風呂」は、18歳の貫多が空いている銭湯を見つけてくつろいで入浴していたら、腋臭の男が入ってきたという話(しょーもない笑)。
その後、月日を経てて39歳の貫多がホテルに呼び出したデリヘル嬢が腋臭だったため往生し、銭湯の一件を懐旧するという展開となっています。
常識って何だろう、普通って何だろう。
西村さんの小説を読みながら、48歳のぼくはいつも考えています。
それから、「金輪際、きれいごとは口にすまい」と心に誓うのであります。

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2022年05月23日

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これまで読んだ西村賢太作品の中で、1番面白かった。留置所の話を始めとして動きが比較的多いからか、あっという間に読み終えました。

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2020年10月10日

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この前に読んだ『人もいない春』の方が若干すき。

『春は青いバスに乗って』がよかった。
警察に捕まって拘留された話で、いままで読んだことない分野でおもしろい。
『腋臭風呂』の「洗面器とタイルがぶつかりあう、聞き覚えのある音」っていうので、あのポンッて音が聞こえた気がして、銭湯行きたくなった。

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2020年05月23日

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中卒で社会に出て日雇い労働で生きる主人公が、酒を飲んだり女を買ったり暴力を振るって刑務所に入ったりする短編集。これは私小説なので作家の経験に基づいているのかなあと思うと、よくこんなふうに生きながら本を出したな、と思う。女を求める男の欲望と虚しさや、イキがる自分とそれを省みる自分とのギャップには、等身大の人の姿があって、作家の人生を覗き見た気持ちになった。

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2020年04月19日

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西村賢太の自伝小説。

読むのは3冊目くらい?


この魅力は独特で相変わらず面白い。


普通では体験できない最低最悪な人生模様を、

垣間見れるから、まぁ他人事で面白いんだろう。


日雇いの人足仕事で口に糊する日々、

少したまった金は酒と女に使いきる。


どうもうまく行かない人間関係

囲の好意を裏切り続けるだらしなさ。


酒に酔っては喧嘩して、時には警察のお世話になり、

または転がり込んだ家の家賃が払えず大家と揉める


中卒で社会に飛び出して底辺を這いずり回る主人公の人生。普通は絶対関わりたくない人間だけど、何というかホントはうまくやりたいのに、うまくできない主人公の気持ちもちょっと解ってしまう。


このシリーズは定期的に読んでいきたい。

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2020年01月27日

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酒屋勤務と女子高生。
雑居房。
大家の爺さん。
銭湯でであった腋臭臭い男を、デリヘル嬢から思い出す。

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2016年07月14日

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面白い。兎に角、貫多のクズっぷりが素晴らしい。著者の卓越した文章力と類まれな用語センスが相まり、どうしようもない人間の底辺も底辺な負の感情を、嫌悪感を超越した、大正や昭和初期のような雰囲気を持つ回顧主義的作品に仕上げている。赤塚不二夫作品のような、古めかしくもナンセンスでエキセントリックな、日常を描いているが非現実的物語といえばよいか。「どうで死ぬ身の一踊り」と比べると文学性はやや劣るが、漫画的な私小説の面白さがある。

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2015年06月06日

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4つの話をまとめた短編集だが、主人公は皆同じ北町貫多という人物によって作られている、決して連作という構造にもなっていないが、私小説である。
一貫して明治や大正時代の文学作品なんかで使われる古風な言い回しを軽快に描く本作は独特な魅力で溢れている。普段は目にしない難読な漢字が出てきたりもする。自堕落で単純で気まぐれに出来ている主人公と端正な文章との対比をしても面白い。大概どの物語も主人公である貫多が何らかの形で問題を起こし、それを意外な形で結末を迎える独特な面白さがあった。

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2015年05月24日

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この作者の小説は基本的に面白いと思うが、続けて数冊読むと主人公のだめさ加減に辟易とするため、間を開けて読む事をお勧めする。

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2013年09月28日

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相変わらず、自分のことを明け透けに、読者を笑わせてくれる気前の良さ?を感じました。浮世とは、他人の堪えがたきものを耐えての、果てなき行路 という言葉(作者によるものではない)が印象に残りました。

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2013年01月03日

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主人公はおそらく作者自身のことなのだろうが、こんなロクでもないやつがいるのか、というくらいロクでもない(笑)読んでいて、なんかはらはらさせられ、案の定、アチャーという気持ちにさせられる。
でも、ここまで赤裸々に書かれると、かえってすがすがしいような気もするから不思議。

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2012年12月29日

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自分を棚に上げまくってる主人公のクズっぷりがいいですね。
文体と中身のミスマッチ感も面白い。
ワキガの客との銭湯での話が個人的に一番面白かったです。
このスケールの小ささは見習わなければ、と。

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2012年06月16日

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10代若かりし頃の私小説集。
もっともっと読みたくなる虜になってしまう人間性は何故なのだろう。人間の本質が描かれているのだろうか?

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2025年11月22日

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「また君か。今度は何?」
と、口に出しそうになりそうになる。余計なお世話だと気が付いた。

厳しい文体とは裏腹に、しょうもない事が書かれいる。しかし時折見せる、腐った患部を見せつけられるような、顔を背けたくなるような描写があり、そこに美化しきれないヒトの生態がある。

下手なホラー小説より、ずっと怖いと思いました。

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2022年10月08日

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貧窶ひんる 吐瀉物 鶯谷のラブホテル街 港湾人足 鬼子母神前 椎名町 関所せきしょ 巨大な黄金色のオブジェが横たわっていなかった頃の 吾妻橋 懇々と諭した 江戸川区の殆ど浦安よりな排他的な目を向けられている 早晩クビを言い渡されるに違いない不安に 逢瀬で肌を重ねた際 暫時専有してみたい慾に憑かれていた 練習台 俄かに名案のように感ぜられてきた 馬鈴薯めいた顔の造作 ガチャ切り 公務執行妨害 万引きと殺人くらいの差 そうさい相殺され 綴じている金具 満開の桜 青いバスの乗客 唇辺くちもと 薄っすらと黴めいた匂いも鼻につく 椋鳥むくどり 窮鼠却って何とやら 一斤いっきん俄かに 蒙った大損 冷凍烏賊の溶け方も存外に早く 悪臭の二度染めじみた塩梅と変わり果てる 厚生年金病院の裏手辺りのアパートに棲み 大久保通り沿いの湯屋 いぶか訝り ぎょうこう僥倖 爾来じらい 宗旨替えの趣きに傾きつつあるようではあった 蓬髪ほうはつ 平生へいぜい えきしゅう腋臭男 陰金に罹り 淋疾を病んだときも 市谷柳町 本能的な希求 雄の精気に意気軒昂けんこう 顔写真なぞ付載 公衆便所的な薄汚さ アポクリン汗腺の異常を秘部にも内包しているらしく マンが臭 感懐かんかい ぎょうろ行路 直情径行DV野郎 インチメート=親密な インフォリティーコンプレックス=劣等感 せんだん栴檀は双葉より芳し 潰走かいそう 買淫かいいん 車屋長吉 豊崎由美

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2018年08月28日

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2chでスレ立てするレベルの内容

笑えるところもあるし、実体験に基づくのかリアリティがある部分もあるんだけど、なぜか全体通して読むとあまり好きになれない

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2013年07月27日

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ネタバレ

「二度はゆけぬ町の地図」西村賢太
読み終わりました

二度はゆけぬ町の地図という一つの物語ではなくて、短編4つの構成になっていた。
西村賢太といえば、テレビやネットで見た印象では、あまり清潔な作風ではないのかなという感じを受けたのだが、例に漏れず本題や短編のタイトルどおり、どこか気味の悪い作品だった
だからといって作品が面白くないわけではなく、薄気味悪さ、不気味さなどがある中でも、所々に笑える部分があったりなど、サクサク読み進めることができた。

内容は、ふしだらな生活を続ける男の生活を描いたものである(西村賢太自身を投影している?)
典型的なダメ人間である主人公が日雇いで稼いだお金をその日で使い切り、家賃を払わなかった(払えなかった)り、バイト先の先輩を殴って留置所いきになったなどクズさがいかんなく表現されているこの作品はなんとなく本質的な部分で真面目系クズである自分に似ているなと思った、もっともこの作品の主人公はクズ系クズと表現するのが妥当であると思う。

なかなか面白かった、西村賢太の違う作品も読んでみることにする。

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2013年03月30日

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「苦役列車」の世界につながる私小説集。
「春は青いバスに乗って」のタイトルと内容のギャップがよい。

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2013年03月09日

Posted by ブクログ

人は歳を重ねるたびに,いくつもの荒波を切り抜け,多くの人と交わるうちに常識を身につけ,60歳,70歳になるころには精神的な余裕をもっていくものだと思っていましたが,そうではないようです。ここ数年,怒る老人を幾人も見てきました。キレる老人ともいわれます。
貫多の大家もまさにそれです。元中学の校長という肩書きに近所の人たちは立派な人と思い込み,その人のなすことに間違いはないと思い込んでいますが,実は僅かなお金のために人を侮辱する人でした。
あいかわらず貫多の自堕落な生活にはあきれますが,キレる老人には幻滅します。

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2013年03月19日

Posted by ブクログ

北町貫太17歳。青春時代の生き様です。
「春は青いバスに乗って」題名はさわやかなのにという点、いつもと違う場面ということもあり、おもしろかったです。

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2012年07月02日

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