【感想・ネタバレ】二度はゆけぬ町の地図のレビュー

あらすじ

中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび……。(「貧窶の沼」より)夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。

カバーイラスト/杉本一文

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Posted by ブクログ

ネタバレ

買淫のことを公衆便所的な薄汚さと形容してた。

小心者で逆恨み甚だしく、人を人として見ないサイコパスのような側面も、その後後悔してシュンとなる側面も全てがこの上なく「人間らしい」。

これだけ自分のことを客観的に理解しているのにそれでも一般的に良いとはされていない行為を取るのは自分のダメ人間ぶりを責めてラクになりたいからだろうか。

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2018年03月24日

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ネタバレ

下品極まりない醜悪な痴態が次から次へと繰り出される。目をそむけたくなるようなエログロテスクもあったが、一行一行に目線は釘付け。離すことができなかった。著者の卑しさ、情欲、未練、みっともなさにも同穴の親近感を覚える。読めば読むほど自分が透けて見えてくる。著者は短気に任せて馬鹿をやっていつも後悔しているが、寧ろその無様に自分の世間への阿諛迎合に言い知れぬ羞恥を感じる。4つの短編はいずれも強烈。興味をそそられる内実に溢れている。センテンスも稠密で美しい。極上の文芸だ。女性に推薦できないのがまことに残念。

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2012年06月30日

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ネタバレ

西村さん初期の作品集。数年前に買いためた積読で、ときどき読みたくなってくる。17歳前後、アルバイトや日雇いで生き延びながら家賃滞納・強制退去を繰り返し転居していた頃の私小説として貫多という若者の四方山話が中心で、下卑た内容に好みは分かれると思うけど、底辺チックな自己体験を小説世界で読むとすごく味わいがあって文学臭が漂ってくる。とはいっても昭和の良い時代の話で、当時を生きたわれわれのある意味懐かしさに対し、今を生きる若者たちがこの小説をどう読むのか、大変興味があったりする。

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2025年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

貧窶の沼 60
北町貫多は17歳。初めての素人彼女ができて、酒屋配達のアルバイトとなり貧窶の沼から脱しようとするが。。。
気風のいい悪態付きが面白い

春は青いバスに乗って 60
アルバイト先の社員を殴って留置所へ。北町貫多版の「塀の中の懲りない面々」みたい。

潰走 50
北町貫多は16歳。家賃滞納常習犯 VS 取り立て屋老家主
小説としてはちょっと物足りない。

腋臭風呂 70
時を超えてよみがえる腋臭の思い出。なんちゅう設定やねん!
汚下ネタで書き上げる胆力に笑ってしまう。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「二度はゆけぬ町の地図」西村賢太
読み終わりました

二度はゆけぬ町の地図という一つの物語ではなくて、短編4つの構成になっていた。
西村賢太といえば、テレビやネットで見た印象では、あまり清潔な作風ではないのかなという感じを受けたのだが、例に漏れず本題や短編のタイトルどおり、どこか気味の悪い作品だった
だからといって作品が面白くないわけではなく、薄気味悪さ、不気味さなどがある中でも、所々に笑える部分があったりなど、サクサク読み進めることができた。

内容は、ふしだらな生活を続ける男の生活を描いたものである(西村賢太自身を投影している?)
典型的なダメ人間である主人公が日雇いで稼いだお金をその日で使い切り、家賃を払わなかった(払えなかった)り、バイト先の先輩を殴って留置所いきになったなどクズさがいかんなく表現されているこの作品はなんとなく本質的な部分で真面目系クズである自分に似ているなと思った、もっともこの作品の主人公はクズ系クズと表現するのが妥当であると思う。

なかなか面白かった、西村賢太の違う作品も読んでみることにする。

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2013年03月30日

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