西村賢太のレビュー一覧
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ネタバレ西村賢太作の私小説。芥川賞受賞作。
屈折した作家がその内面を自らの筆致で曝け出す私小説がとても好き。その人が本当に思っていることが体面を抜きに伝わる形式の娯楽は、人の言葉から不要な意味を受け取ってしまうことが多い自分にとってはとても安心して享受することができる。
自分がラジオやエッセイが好きなのもこの理由によると思う。
『苦役列車』の貫多はとにかく情けなく、コンプレックスに押し潰されて性欲を持て余す19歳の青年。p.98で日下部の彼女がブスだという描写に半ページくらい費やしているところが好き。執拗すぎる。居酒屋での会話から日下部はすでに彼女を顔ではなく内面で選ぶことができているのがわかるが、貫 -
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中学しか出てない西村賢太の文章のかっこよさと面白さって自主的な読書で得たものだから、ほんと才能を磨くのに学校教育は関係ないんだろうなと思う。
西村賢太は父親が性犯罪者だからそうなりたくないからその父親が好きだったものの逆を趣味にしてたらしい。
西村 賢太(にしむら けんた)
一九六七年七月一二日、東京都江戸川区生まれ。中卒。二〇〇七年、『暗渠の宿』で第二九回野間文芸新人賞を、二〇一一年、「苦役列車」で第一四四回芥川龍之介賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度は行けぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『廃疾かかえて』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』 -
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安定の北町貫多シリーズ。相変わらず職と寝床を転々としていたが、本作では心機一転横浜桜木町へと住まいを移し、新たなスタートを切るが、いつもの癇癪で破綻のカタルシスを読者は味わうこととなる。
ただ一つ重要な点は、藤澤清造同様、師と仰ぐ田中英光の私小説との出会いがあり、人生の支えを得る点。
貫多は作中「これはどこまでも、その後に続く流れに、ただ身を委ねているより他はないのだ。(中略)陳腐な例えだが、流れているうちにはいつか掴まる枝もあろうし、浮かぶ瀬だってあるだろう、と云うやつだ。で、その時になって、実こそ自身の立て直し、新規蒔き直しのきっかけが何によっていたのかが、初めて判るものなのであろう。」と -
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西村賢太さんの小説ってなんでこんなに面白いんでしょう
ド屑を主人公とした私小説、読んでいてヒリヒリしてくるようなやりとり、なのにどこかユーモラスな滑稽さも感じてしまいます
たぶんこれは、主人公を屑として描き、それに対して弁明めいた描写が一切ないからという、そのバランス感覚が上手いんじゃないかなぁなんて思うのです
主人公の内面描写をしっかりと書き、とことんまで自己中心的な思考回路で悪いのはあくまで相手、そんな考え方が徹底されています
でも、主人公の一人称視点という点から見れば自己弁護に徹底しているのだけど、他者が絡んだ時にその屑っぷりを容認するような甘い文章は一切出てこないんですよね
本 -
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「告白(町田康)」の熊太郎、トリプルファイアーの吉田靖直、そして北町貫多。どうしようもない人たちにしか出せない魅力がある。
小心者なのにも関わらずプライドだけは人一倍高く、世間とモノの見方が若干ズレている。普段鬱憤を溜め込んでいる故に、お酒が入ると悉く失態を晒してしまう。
なんでこんなにもダメな人(自分はどうなのかは棚に上げて)に惹かれるんだろう……
一つの理由は、やはり怖いもの見たさだと思う。
上で挙げていた人たちの動向を追っていると、ほぼほぼ「あぁダメだよ〜」と思う方向に行ってしまう。普段私はそんな状況は全力で避けているので、逆にそっちの方向にレールが行ってしまったらどうなるんだろうと