西村賢太のレビュー一覧

  • 苦役列車(新潮文庫)

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    ネタバレ

    西村賢太作の私小説。芥川賞受賞作。
    屈折した作家がその内面を自らの筆致で曝け出す私小説がとても好き。その人が本当に思っていることが体面を抜きに伝わる形式の娯楽は、人の言葉から不要な意味を受け取ってしまうことが多い自分にとってはとても安心して享受することができる。
    自分がラジオやエッセイが好きなのもこの理由によると思う。
    『苦役列車』の貫多はとにかく情けなく、コンプレックスに押し潰されて性欲を持て余す19歳の青年。p.98で日下部の彼女がブスだという描写に半ページくらい費やしているところが好き。執拗すぎる。居酒屋での会話から日下部はすでに彼女を顔ではなく内面で選ぶことができているのがわかるが、貫

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    2024年08月19日
  • 東京者がたり

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    中学しか出てない西村賢太の文章のかっこよさと面白さって自主的な読書で得たものだから、ほんと才能を磨くのに学校教育は関係ないんだろうなと思う。

    西村賢太は父親が性犯罪者だからそうなりたくないからその父親が好きだったものの逆を趣味にしてたらしい。

    西村 賢太(にしむら けんた)
    一九六七年七月一二日、東京都江戸川区生まれ。中卒。二〇〇七年、『暗渠の宿』で第二九回野間文芸新人賞を、二〇一一年、「苦役列車」で第一四四回芥川龍之介賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度は行けぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『廃疾かかえて』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』

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    2024年07月16日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    横浜に移り住んだ貫多のあまりに痛すぎるストーリー。滅茶苦茶面白い、けれどページを捲るのが居た堪れるほどにイタイ、貫多の行状にどこか感情移入する自分がいるのが不思議である。

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    2024年05月21日
  • 雨滴は続く

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    西村賢太という作家の人間そのものが溢れ出た名作です。読んでいて何度も自分にも当てはまるフシがあるなと思い、それを隠すこともなくさらけ出す私小説書きの貫多の心情に共感と賛美しかありません。喫茶店で一人読んでいて、あまりの人間味の強さに吹き出しそうになりました。葛山久子さんからの特別原稿は感動で心が震えます。もう西村賢太さんはいないのだ、という事実に寂寥を覚えます。

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    2024年05月20日
  • 小銭をかぞえる

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    西村賢太の破天荒さにびっくりしました。その中でも昔の文学っぽい文章の書き方によって、なぜか奥かしさが感じられて最後まで嫌にならず読めました。破天荒過ぎてエンターテイメント的な部分もあります。

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    2024年03月18日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    風格ある文体もあいまって、古くマイナーな作家をひとり熱心に研究しているだなんてずいぶんと高尚なと思いきや、急にはさまれる頽廃美などとはほど遠いだらしなさに意表をつかれるとともににやりとしてしまい、当初そういう惨めさとの懸隔を演出するかに思われた文学的な情熱もどんどん(清造の墓が汚ないアパートに持ち運ばれたかのごとく)その最低な暮らしぶりになんじでいって、もうなにもかもがどうしようもない、なのに女が出ていったのちにおのれの醜態を緻密に振りかえるそのいじらしさのようなものになんだか泣きそうになる、ほんとに最低なのだが。

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    2024年03月06日
  • 棺に跨がる

    購入済み

    思わず声が出るくらい笑った
    小説でこんなに笑ったの初めてだ。
    故西村先生の苦い?青春の一コマ
    でも先生、おもしろ過ぎます!

    #笑える #切ない

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    2024年02月21日
  • 雨滴は続く

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    ネタバレ

    電車内で笑いをこらえるのがつらかった。
    初の1000枚長編は、実にダラダラ、ジワジワとしか進まない。
    ・シングルマザーのデリヘル嬢おゆう、こと川本那緒子。
    ・七尾〈清造忌〉の取材に来た新聞記者の葛山久子。
    ・作家としての成り上がり前夜の時期に、作家であることがプライオリティになるのではとヤキモキ、フラフラ。
    ・新川の活躍も見所。
    ・ワンシーンワンシーンというより、一文一文のサービス精神が凄い。

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    2024年02月02日
  • 根津権現前より 藤澤清造随筆集

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    読むの時間かかったなぁ。
    でも良かったよ。

    自分の事棚に上げてとは思うんだけど、岡田の兄よりはずっと友を想ってたなと。

    夏目漱石の『こころ』が好きな人は好きなんじゃ無いかな。

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    2024年01月02日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    安定の北町貫多シリーズ。相変わらず職と寝床を転々としていたが、本作では心機一転横浜桜木町へと住まいを移し、新たなスタートを切るが、いつもの癇癪で破綻のカタルシスを読者は味わうこととなる。
    ただ一つ重要な点は、藤澤清造同様、師と仰ぐ田中英光の私小説との出会いがあり、人生の支えを得る点。
    貫多は作中「これはどこまでも、その後に続く流れに、ただ身を委ねているより他はないのだ。(中略)陳腐な例えだが、流れているうちにはいつか掴まる枝もあろうし、浮かぶ瀬だってあるだろう、と云うやつだ。で、その時になって、実こそ自身の立て直し、新規蒔き直しのきっかけが何によっていたのかが、初めて判るものなのであろう。」と

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    2023年09月17日
  • 人もいない春

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    ネタバレ

     今回もとても面白い。

     後半の2編は秋恵という女性と同居している様子が描かれる。貫多の身勝手な振る舞いに対して非常に寛容で菩薩のような女性だ。そんな彼女に甘えてますます増長する様子がうかがえて、コラと思う。

     特に土下座して謝った時に、笑って許してくれる場面が素敵だ。

     しかし自分のことを振り返ると、妻には散々ひどい扱いをしていたので、貫多ほどではないにしても他人ごとではない。今こうして離婚せずにいられる幸福をかみしめるばかりだ。

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    2023年09月13日
  • 小銭をかぞえる

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    西村賢太さんの小説ってなんでこんなに面白いんでしょう

    ド屑を主人公とした私小説、読んでいてヒリヒリしてくるようなやりとり、なのにどこかユーモラスな滑稽さも感じてしまいます

    たぶんこれは、主人公を屑として描き、それに対して弁明めいた描写が一切ないからという、そのバランス感覚が上手いんじゃないかなぁなんて思うのです

    主人公の内面描写をしっかりと書き、とことんまで自己中心的な思考回路で悪いのはあくまで相手、そんな考え方が徹底されています
    でも、主人公の一人称視点という点から見れば自己弁護に徹底しているのだけど、他者が絡んだ時にその屑っぷりを容認するような甘い文章は一切出てこないんですよね

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    2023年08月27日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    本は好きだけど金も無く、同僚を見下し職場も上手くいかず、一方的な恋愛(風俗は好む)を押し付けるなど、プライドと閉塞感の塊のような貫太は中卒だった事もある自分には舞台が桜木町という事もあり他人とは思えぬ感情が湧き立つ。この卑小さをどう見るかで作品の捉え方が変わる、つまり読者の人生も問われていると言ったら大袈裟か。
    作者の実体験なのかは分からないけど魂を切り売りしている様な文書には妖しい魅力が放たれていると思う。
    解説も故人との悪い思い出が記されており、現代には珍しい破滅型の作家であるような気がしてならない。

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    2023年08月27日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    西村賢太の作品は文庫本にして5〜6冊は読みましたが、この作品が1番勢いがあり、もはや疾走感とも言えるテンポで、悪行と自堕落の果てに破滅に向かって行くいつものストーリー。

    内容はいつも通りの破滅型青春文学ですが
    個人的には最高傑作だと思います。

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    2023年07月08日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    「告白(町田康)」の熊太郎、トリプルファイアーの吉田靖直、そして北町貫多。どうしようもない人たちにしか出せない魅力がある。
    小心者なのにも関わらずプライドだけは人一倍高く、世間とモノの見方が若干ズレている。普段鬱憤を溜め込んでいる故に、お酒が入ると悉く失態を晒してしまう。

    なんでこんなにもダメな人(自分はどうなのかは棚に上げて)に惹かれるんだろう……

    一つの理由は、やはり怖いもの見たさだと思う。
    上で挙げていた人たちの動向を追っていると、ほぼほぼ「あぁダメだよ〜」と思う方向に行ってしまう。普段私はそんな状況は全力で避けているので、逆にそっちの方向にレールが行ってしまったらどうなるんだろうと

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    2023年06月29日
  • 瓦礫の死角

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    西村賢太2冊目。べらぼうにおもしろい。
    なんだろう、本人はいたって深刻なのにどうしようもなく滑稽なモノローグの味がとても好きだ。
    「崩折れるにはまだ早い」はオッ、そういうのもあるのか…と思った。

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    2023年06月07日
  • 小銭をかぞえる

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    激烈におもしろかった。
    女に頭を下げてお父さんから50万借りれることになった直後に実は本当に必要なのは30万で、これはビフテキが食えるぞとなるあたりは笑っちゃう。

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    2023年05月30日
  • 芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影

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    どうしようもないところまで追い詰められた、ギリギリの人に、射し込んだ純文学という一筋の光、蜘蛛の糸。
    そんな切実な救いが胸に沁みる。
    文学好きだけでなく、一度は絶望し堕落した経験がある全ての人に勧めたい。

    いつもの罵倒や暴力、女性差別などは鳴りを顰め、その意味でも幅広い読者に受け入れ得る作品。

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    2023年05月12日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    惨め
     初読み賢太がこの作で好かったなと思へたのは、心底貫多の惨めな境遇に共感したからである。さすがにここまでの人間の屑、下等な片恋や妄想で目茶苦茶に人をこき下ろした事はないが、その心情は過去幾度となく味はった事がある。作中の田中英光の作のやうにどこか突き放した書きぶりで、滑稽さともども自身を丸裸にしてしまふ覚悟。私は正直な人が好きである。本来あるべき貫多に対する不快感もここまで客観的に書かれると面白く、小説の終盤では明かに貫多が原因の騒動でありながら、一緒に仕返ししてやりたい同情心がわいてくる。私もまた屑なのである。

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    2023年05月07日
  • 東京者がたり

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    2023/03/12
    YouTubeで玉袋筋太郎が思い出語ってるの見て涙出た。
    喧嘩の理由が俺のほうがお前のこと好きだとか....
    最後の対談の写真もすごい良い。

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    2023年03月12日