西村賢太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
待ちに待った西村賢太最新作。
この作家は、もっと評価されていいはずと、本気で思う。古い純文学の体をなしながら、これほど素晴らしいパロディーを描ける方が他にいるだろうか?
物語展開の巧さ・会話の妙・そしてなにより、文語体を笑いに昇華させる文章力!
とにかく頭のいい作家さんだなと感心します。
物語は、貫太と秋恵のちょっと悲しくてほろ苦い、終わりのない男女の戦いを描く。
男女二人の密室劇といってもいい設定だが、このふたりの日常の密度の濃さは異空間ともいえる。
21世紀の小津安二郎か!
デフレ時代には彼のような作品こそが求められるのではないかと思いました。
今・これからの小説のトレンドになる西村賢太 -
Posted by ブクログ
いつも通りの短編集。芥川賞受賞後初の短編集らしいが、受賞前と何が違うのか、あるいは何かが違っているのかは知らない。
個人的にもっとも面白かったのは「腐泥の果実」。木枯しの吹く寒い日、主人公北町貫多は文具店で以前交際していた女性が誕生日にプレゼントしてくれたものと同じペン皿が売られているのを見つける。自身が犯した過ちを悔いるとともに思い出の世界に没入するが・・・そんな話。
秋恵に未練は無いと前半で言っておきながら終盤で「今もただ一人の女性」と認めてしまうところは安定の面白さ。しかもどうしょもないオチまで付いている。
ただ、大切な恋人を失ったと言うより、心の寂しさを埋めてくれるピース -
Posted by ブクログ
西村賢太氏の最新単行本。
おなじみ北町貫多が、恋人秋恵と同棲し、やがて去られてしまうまでの物語。数篇の短編小説が連作の形で収録されている。
秋恵のことを書いた小説は、秋恵シリーズというらしい。今回の小説の中で、同じテーマ(秋恵)ばかり書いているようなことを貫多が言っている。秋恵は西村氏にとって永遠のテーマのひとつであるようだ。
あいかわらず筆が冴え、これ以上ない自虐的なエピソードにしばしばうんざりする思いになりながらも、やっぱりクスクス笑ってしまう。自分を落としこんでユーモアをもたせる腕が達者である。
秋恵は実在するのだと思うが、こんなにあからさまに書かれてしまうと、本人としてはたまったもので -
Posted by ブクログ
「陋劣夜曲」
連休のつなぎにありついたバイトはまったく勝手が分からずあげく労災に遭う、家賃を溜め込んでる大家とは気まずいところでやたらと会う。あげく酔っ払いのヤジに荒く返したら相手がキレてくる。
いくら貫太とはいえ、あまりに巡りが悪すぎてちょっと一緒にため息をついてやりたくなる作。
「羅針盤は壊れても」
貫太が港湾人足にうんざりした一時の「転職」で味噌の押し売りをやる話。
その味噌会社の面々がなんとも濃く、貫太は傍観者気味なのが新鮮だ。
「廃疾抱えて」
再読。冷酒を飲んで暴力に向けてギラつくラストはやはりいいな
「廃疾旅行」
再読。やはり地味な作。