西村賢太のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
西村賢太氏の最新単行本。
おなじみ北町貫多が、恋人秋恵と同棲し、やがて去られてしまうまでの物語。数篇の短編小説が連作の形で収録されている。
秋恵のことを書いた小説は、秋恵シリーズというらしい。今回の小説の中で、同じテーマ(秋恵)ばかり書いているようなことを貫多が言っている。秋恵は西村氏にとって永遠のテーマのひとつであるようだ。
あいかわらず筆が冴え、これ以上ない自虐的なエピソードにしばしばうんざりする思いになりながらも、やっぱりクスクス笑ってしまう。自分を落としこんでユーモアをもたせる腕が達者である。
秋恵は実在するのだと思うが、こんなにあからさまに書かれてしまうと、本人としてはたまったもので -
Posted by ブクログ
著者の西村賢太の自伝的な私小説。
ストーリーに劇的な展開はないですが、描写が生々しく特に罵詈雑言に満ちた文体は印象的でした。
父親が性犯罪を犯し、それが原因で家庭は崩壊し人目を避けながら暮らさざるを得なくなり、この体験によって大きなコンプレックスを抱えることとなってしまった青年の物語。
日雇い労働で稼いだ金もその日のうちに酒や風俗で使い込んでしまう事も多く、家賃は当然のように滞納し、強制退去を命じられる、など破天荒で荒れた生活が罵詈雑言に満ちた独特の文体で描かれる。
「小説の出来事は9割以上が本当」らしく、主人公の泥臭い内面と破天荒な生活に圧倒される。
劇的な展開はほとんどないが、その生 -
Posted by ブクログ
ネタバレ結句、合本文庫を購ってしまう。
私小説家の日常を覗き見るってなんだか不思議な感覚でした。
西村賢太と北町貫多の共通点や相違点を感じながら読んでいました。
(探しながらではなく、あくまでも感じながら)
西村賢太氏はタクシー乗車中に急逝してしまいますが、たしかに最後の年は「ひどく疲れたのでタクシーで帰宅」との記述が多くなっていましたよね。
叶わない事だけど、そのあと奇跡的に蘇生していれば、
金曜日のビバリー昼ズに出演していただいて、
高田センセイ、
松村邦洋さん
西村賢太さんの3人で
「私のハートはストップモーション」のネタで盛り上がってほしかった。 -
Posted by ブクログ
第144回芥川賞受賞作。表題作と短編の二編を収めた作品集。
いずれも作者自身を色濃く反映した私小説であり、貧困や孤独といった現実の中で生きる人物の内面が赤裸々に描かれている。そこにあるのは美化された苦労ではなく、妬みや僻みといった感情を隠すことなくさらけ出す姿であり、その率直さが強く印象に残る。
一見すると閉塞的で救いのない状況にも思えるが、その中で描かれるのは、何も持たないがゆえの自由や、社会に縛られない生き方の一側面でもある。決して前向きとは言えないが、どこか突き抜けたような軽さも感じられた。
また、『芥川賞選考委員の乞食根性の老人』といった表現に象徴されるように、言いにくいことをあ -
Posted by ブクログ
はじめての西村賢太作品。私小説。
はじめてと記録しておきたくなる。
独特な言葉と漢字遣い。卑怯さや報われなさ、暴力性は随所に感じるのだが、真逆の魅力も見える。人としての幅が広い、悪い方よりに。
余裕がないことが運命のような強さ。そしてこんな人が小説を書いてくれる有り難さ。面白いに決まってる。
タイトルにもなっている、瓦礫の死角
"いつかはこの母親のことを、いろいろと助けてやれる日が来るかもしれない。でも今は、結句は何もしてやれぬ。自分が逃げるだけで精一杯である。何がなし、克子の心労に眇めた目の奥に、会心めいた光りが宿っているようにも見受けられた。" -
Posted by ブクログ
一私小説書きの日乗シリーズ1作目(無印) 未読
シリーズ2作目(憤怒) 既読
シリーズ3~5作目(野性、遥道、不屈) 先日読んだ、本作の姉妹本
シリーズ6~8作目(新起、堅忍、這進) 本書
で、wikipediaには、
「一私小説書きの日乗 這進の章(『本の雑誌』2020年9月号 - 2022年3月号 作者逝去により全19回で未完)」
とある。
このファットな姉妹本を出してくだすった、角川文庫のご担当者様に感謝を捧げつつ、
この日乗に限らず、途絶した文筆の、のたうちまわり加減を、残してくださすった作者様に、最大限の敬意と哀悼を。
ご本人の寂しさや、苦しみや、無念、志半ば、不慮等々、重々思いは及