西村賢太のレビュー一覧

  • 一私小説書きの日乗 憤怒の章

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    ネタバレ

    日記シリーズ第2弾を、はじめて読んでみた。
    なかなか面白い。
    テレビに引っ張りだこになった時期なんだろう。
    忙しい合間を縫って着実に執筆を続けているのは、さすが作家。
    そして編集者に対して、怒る、怒る、怒る。
    そして手打ちの飲み会も。
    厄介で可愛げのある困った人だ。

    思うところあって買淫を控えており、「苦役列車」映画を一緒に見に行った知人がスカートを履いているとか、嬉しいことあり、とか、恋人がいそうな雰囲気を邪推してしまう。
    そして買淫がしたい、という箇所に、会えなくて寂しいという誌上当てつけを読んでしまうのは、深読みしすぎだろうか。

    もはや文体芸の一部になっていると思ったのは、飲み食いの

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    2022年05月30日
  • 瓦礫の死角

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    ネタバレ

    2022年2月5日、西村賢太死去。享年54。
    文庫派の不肖な読者だが、残された仕事を、今後も読み続けていきたい。

    ■瓦礫の死角
    「魔太郎じみた性質」!
    ■病院裏に埋める
    「坊ちゃん坊ちゃんした至極誠実で真面目そうな見た目」!
    ■四冊目の「根津権現裏」
    落日堂新川さんの過去ワロタ。盟友なんだか被害者なんだか。
    ■崩折れるにはまだ早い
    !!!!! 西村賢太を読んで久々に驚いたわ。
    ◆あとがき

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    2022年05月24日
  • 瓦礫の死角

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    性犯罪による父親の逮捕を機に瓦解した家族。出所後の復讐に怯える母親。家出し、消息不明の姉。罪なき罰を背負わされた北町貫多は17歳、無職。犯罪加害者家族が一度解体し、瓦礫の中から再出発を始めていたとき、入所から7年の歳月を経てその罪の張本人である父親が刑期を終えようとしていた。──表題作と“不”連作の私小説「病院裏に埋める」、〈芝公園六角堂跡シリーズ〉の一篇「四冊目の『根津権現裏』」、“変化球的私小説”である「崩折れるにはまだ早い」の全四篇を収録。

    没後、初めて読む作品。変化球がよかった。

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    2022年05月15日
  • 痴者の食卓

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    西村賢太の私小説作品には秋恵の存在がとても重要である。彼の作品の大半に登場する彼女。罵詈雑言、常に殴られ蹴られて、貫多の凶暴性の引き立て役にある。悲しいけど。
    極論、秋恵無しでは多くの物語も生まれなかっただろうし、もしかしたら彼がこれ程まで世に知れ渡る作家になることもなかったかもしれない。秋恵に感謝せい!

    そして先日、作者である西村賢太氏が急逝した。とても残念でならない。ご冥福をお祈りする。秋恵はきっと清々しているだろうけど。

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    2022年05月06日
  • 藤澤清造短篇集 一夜/刈入れ時/母を殺す 他

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    東京にはどこに行ってもなかった西村賢太ものが神戸ジュンク堂にはありました。

    田中栄光と並び西村賢太さんが敬愛してやまなかった「藤澤清造」氏の短編集を思わず購めました。

    内容としてはどちらかというと私小説ではなかったので少し、肩透かしな感じがしたけれども、苛烈にどこまでも「貧困」にこだわり、突き詰めた結句、またしも貧さの砂に埋もれてゆく、そんな姿が浮き立つような作品が多く、西村賢太に通底するものがあると感じた。

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    2022年04月29日
  • 人もいない春

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    主に秋恵以外の作品。「23夜」はなかなかにゲス度が高く満足。純情なブスへの仕打ちが笑える。だが、本作品集での注目は初めてのフィクションとなる「悪夢」。良い出来栄え。不遇な境遇のものが主人公であるのはフィクションも変わらないが、不思議なことにネズミ同志の会話などはフランス文学のような趣がある。心理を描くことを極力控え、圧縮された悲劇となっている。秋恵シリーズは物足りない。「赤い脳漿」がまあまあ。

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    2022年03月19日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    12人の作家による秋冬の歳時記にあわせた短編集。はじめましての作家も数人。好みはそれぞれあるけれど、こんな編集でなければ出会わなかったと思う。
    春夏編が先だったと知る。

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    2022年03月06日
  • 芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影

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    「芝公園六角堂跡」
    ミュージシャン J・I のライブに招待されて
    舞い上がってしまう北町貫多
    ところがそのライブ会場が
    藤澤清造の死去地に近かったもので
    虚栄に浮かれ、初心を見失った自分自身を
    まじめに見つめなおすきっかけにもなった
    その機会を与えてくれた J・I には心のなかで感謝せざるをえない
    自虐に満ち満ちたようでいて
    かなり自己愛的な筆者の考え方が現れている

    「終われなかった夜の彼方で」
    前の作品では、J・I さんに気を使う面もあって
    なんかいい話っぽくまとめてしまったが
    本当はぜんぜんいい話なんかじゃない
    藤澤清造の没後弟子を名乗っておきながら
    自分もいい歳になるというのに
    全集

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    2022年03月01日
  • 田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら 他

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    西村賢太さんが好きだという作家なので読んでみました。
    率直に面白いです。
    そして、かなり西村賢太さんが影響を受けたことがわかりました。
    太宰治の描写がとても興味深い

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    2022年02月24日
  • 芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影

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    ネタバレ

     追悼の思いで、最新作を読もうと思ったら文庫化されたのが最近で、単行本としてはずいぶん前に出ていた。新作としては他にあった。しかも、内容は自分の原点を見つめ返してモチベーションを上げて決意を新たに再起を図るというもので、お亡くなりになった直後に読むにはあまりに切なくてズシンとくる。

     ストーリー性があまりなくて、主人公が悶々と考え続けている。主人公が暴言を吐いたり暴れたりするのを期待していたので痛快さに欠ける。

     しかも初めて西村さんの本を読むとしたらちんぷんかんぷんだろうから、他の本を4~5冊読んでから読んだ方がいい。なじみの人向けと言える。

     初期作品しか読んでいなかったのだけど、も

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    2022年02月18日
  • 小銭をかぞえる

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    面白い。

    完全な私小説。私小説というより現実を克明に記すという姿勢で書かれたという意味で、夏休みの宿題で書いた作文を小学生ばりの真面目さで描かれている。
    ただし、内面の描写が鋭く、えげつないが、読んでる僕らも心当たりがあるだけに目を背けたくなる居心地の悪さが全くない。寧ろゲラゲラわろてまう。
    たぶん、えげつなすぎるという隙与えているという作者の優しさがあるからやと思う。

    面白い、そして女性にはけして薦めれない。

    2022/05/31 再読

    もう西村賢太のやり口は充分にわかっている。
    だから二度目は気の抜けたコーラがパーティ感を一気に無くしてるように、ウキウキ感はない。
    しかし、無様さの

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    2021年01月31日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    自分がいい奴でも悪い奴でも
    自分からは逃げられない。

    日記が続かない理由は、破くから。
    嫌な思い出は全部破って捨てる。
    記憶に重石を置いて、忘れるまで置いておく。
    腐った記憶がドロドロになってやっと燃やせる。

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    2020年12月19日
  • 小銭をかぞえる

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    久しぶりに西村賢太作品を読んだ。読んでて辟易とするくらいのダメ人間なのに、何故かまた読んでしまった。。
    周りを異様に気にするカッコつけの小心な男がここまで赤裸々な私小説を書く、という矛盾に満ちた感じが不思議です。
    健気な彼女さんのモデルが現在どうされてるのか気になりました。

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    2020年09月27日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    「墓前生活」
    藤澤清造の墓参りをする話。筋金入りのマニアで東京から能登の寺へ通い詰めて自費で法要まで行ってしまう。古くなった墓標を譲ってもらう場面は笑った。西村さんの氏への執念が伝わってきてとてもよかった。星5

    「どうで死ぬ身の一踊り」
    前半は藤澤清造に関わる話で良かったけど、後半はDV話で微妙だった。近代文学の蒐集者で研究家である一方で、同棲する女の気まぐれにはどうにも我慢がならない主人公。その対比が面白いところなのかもしれないが、DVということもあって少し冷めて読んでしまう。星3

    「一夜」
    これは短すぎるし、ただのDⅤ小説に成り下がっているのが残念。キレっぷりは凄いが、DVの話はやっぱ

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    2020年08月06日
  • どうで死ぬ身の一踊り

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    「どうで死ぬ身の一踊り。これで最後の一踊り。それでもダメとなれば、その時はそう深刻ぶるがものはない。脳をマヒさせた上でこの人を追い、芝公園に行けばいいだけのことではないか、と考えたら急に心が楽になった。」

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    2020年08月02日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    貫多、十七歳。
    「自分の駄目の上にも駄目を塗り重ねてきた人生」。
    頑張って、欲望を我慢して週払いの食堂の仕事に就いたものの、貯められず、家賃滞納。食堂の上に転がり込んで寝泊まりするも、ビール飲んだり翌日のお店の食事食べたり、募金箱からお金取ったり。自意識も過剰で、人とやっていくのもむずかしい。足掻いてるけど、つらいー。

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    2020年06月10日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    ショートパンツを穿いてサンダル履き、シャーツの前をはだけて、腹を丸出しにして、裾を風にはためかせている奴の姿を見ると、破滅の予感が沸いてくる。Tシャーツに印刷された絵や文字は、どうにも珍妙で道理に反している。自分の内在している思想や感情を表現しているように見えてしまうことが卑怯すぎる。見えてしまうことによって、人は破滅に向かう。Tシャーツ1枚で偉そうに思想を語った気になる。自分の弱いモチーフを服によって増幅させる。これは刺青をちらつかせて人を威圧するのと変わらない。相応の覚悟もないまま雰囲気だけまとって、さも中身があるかのように取り繕う人間には破滅の道があるだけ。破滅が恐ろしくてTシャーツが着

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    2020年01月18日
  • 藤澤清造追影

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    前半は藤澤清造に関する各種の文章を集めたもの。こちらは初めて読む。後半は「東京者がたり」の文庫化で、こちらは再読。

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    2019年05月19日
  • 小銭をかぞえる

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    クズ男視点の生活の話。
    やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
    朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。

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    2019年04月14日
  • 一私小説書きの日乗 新起の章

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    以前は、「はずれ」が多かった買淫については本書においては、ほぼ「当り」となっている。生活レベルは随分上がっているようだ。他方、映画とかテレビといった華やいだ話柄はすっかり萎んでいる。ありふれた日常の中にも変化があり、衰微の影も仄見える。
    「当り」「はずれ」といったぶっきらぼうな買淫の記述が随分言葉が接がれるようになってきているのも変化の表れ。頻度もかなり間遠になっており、インターバルなどという言辞も見える。傾向としては好日的といって良いか。
    「買淫したいが、首の痛みが鬱陶しく、やむなく手淫。これはこれで気持ちよし。」「夜、買淫にゆきかけるも、ここのところ仕事せず、懐中が乏しいところから手淫で我

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    2019年03月30日