西村賢太のレビュー一覧
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「芝公園六角堂跡」
ミュージシャン J・I のライブに招待されて
舞い上がってしまう北町貫多
ところがそのライブ会場が
藤澤清造の死去地に近かったもので
虚栄に浮かれ、初心を見失った自分自身を
まじめに見つめなおすきっかけにもなった
その機会を与えてくれた J・I には心のなかで感謝せざるをえない
自虐に満ち満ちたようでいて
かなり自己愛的な筆者の考え方が現れている
「終われなかった夜の彼方で」
前の作品では、J・I さんに気を使う面もあって
なんかいい話っぽくまとめてしまったが
本当はぜんぜんいい話なんかじゃない
藤澤清造の没後弟子を名乗っておきながら
自分もいい歳になるというのに
全集 -
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ネタバレ追悼の思いで、最新作を読もうと思ったら文庫化されたのが最近で、単行本としてはずいぶん前に出ていた。新作としては他にあった。しかも、内容は自分の原点を見つめ返してモチベーションを上げて決意を新たに再起を図るというもので、お亡くなりになった直後に読むにはあまりに切なくてズシンとくる。
ストーリー性があまりなくて、主人公が悶々と考え続けている。主人公が暴言を吐いたり暴れたりするのを期待していたので痛快さに欠ける。
しかも初めて西村さんの本を読むとしたらちんぷんかんぷんだろうから、他の本を4~5冊読んでから読んだ方がいい。なじみの人向けと言える。
初期作品しか読んでいなかったのだけど、も -
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面白い。
完全な私小説。私小説というより現実を克明に記すという姿勢で書かれたという意味で、夏休みの宿題で書いた作文を小学生ばりの真面目さで描かれている。
ただし、内面の描写が鋭く、えげつないが、読んでる僕らも心当たりがあるだけに目を背けたくなる居心地の悪さが全くない。寧ろゲラゲラわろてまう。
たぶん、えげつなすぎるという隙与えているという作者の優しさがあるからやと思う。
面白い、そして女性にはけして薦めれない。
2022/05/31 再読
もう西村賢太のやり口は充分にわかっている。
だから二度目は気の抜けたコーラがパーティ感を一気に無くしてるように、ウキウキ感はない。
しかし、無様さの -
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「墓前生活」
藤澤清造の墓参りをする話。筋金入りのマニアで東京から能登の寺へ通い詰めて自費で法要まで行ってしまう。古くなった墓標を譲ってもらう場面は笑った。西村さんの氏への執念が伝わってきてとてもよかった。星5
「どうで死ぬ身の一踊り」
前半は藤澤清造に関わる話で良かったけど、後半はDV話で微妙だった。近代文学の蒐集者で研究家である一方で、同棲する女の気まぐれにはどうにも我慢がならない主人公。その対比が面白いところなのかもしれないが、DVということもあって少し冷めて読んでしまう。星3
「一夜」
これは短すぎるし、ただのDⅤ小説に成り下がっているのが残念。キレっぷりは凄いが、DVの話はやっぱ -
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ショートパンツを穿いてサンダル履き、シャーツの前をはだけて、腹を丸出しにして、裾を風にはためかせている奴の姿を見ると、破滅の予感が沸いてくる。Tシャーツに印刷された絵や文字は、どうにも珍妙で道理に反している。自分の内在している思想や感情を表現しているように見えてしまうことが卑怯すぎる。見えてしまうことによって、人は破滅に向かう。Tシャーツ1枚で偉そうに思想を語った気になる。自分の弱いモチーフを服によって増幅させる。これは刺青をちらつかせて人を威圧するのと変わらない。相応の覚悟もないまま雰囲気だけまとって、さも中身があるかのように取り繕う人間には破滅の道があるだけ。破滅が恐ろしくてTシャーツが着
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以前は、「はずれ」が多かった買淫については本書においては、ほぼ「当り」となっている。生活レベルは随分上がっているようだ。他方、映画とかテレビといった華やいだ話柄はすっかり萎んでいる。ありふれた日常の中にも変化があり、衰微の影も仄見える。
「当り」「はずれ」といったぶっきらぼうな買淫の記述が随分言葉が接がれるようになってきているのも変化の表れ。頻度もかなり間遠になっており、インターバルなどという言辞も見える。傾向としては好日的といって良いか。
「買淫したいが、首の痛みが鬱陶しく、やむなく手淫。これはこれで気持ちよし。」「夜、買淫にゆきかけるも、ここのところ仕事せず、懐中が乏しいところから手淫で我 -
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相変わらずの素晴らしきマンネリ、北町貫多&秋恵シリーズ。2人のかみ合わない同居生活の中、寛多が自分勝手に憤怒して幕を引く短編集。内1作は小説家として成功した寛多、つまり現在の著者の身辺報告。
寛多の爆発を誘発する起爆剤としては、金魚の飼育、古本店主との会話、居酒屋での外食などなど。毎回、これだけのネタを用意できる作者に感心。
で、これらをきっかけに発生する理不尽な怒りを秋恵へのDVで発散させる寛多。フェミニストが読んだら卒倒しそうな展開ばかり。特にタイトル名の短編は非道すぎるが、それらを笑えるかが西村賢太作品を読み続けることができるかの登竜門だ。 -
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ネタバレざっくりと言えば、17歳の貫太が洋食屋でアルバイトを始め、住み込みになり希望を抱くが、辞める、というだけの話。
終盤に至って気づくが、そういえば彼はまだ文学に開眼していないのだ。
探偵小説などを読んではいるが、田中英光の名前が出てこないあたり、そうらしい。
著者には「小説にすがりつきたい夜もある」という芯を食ったエッセイ集があるが、
少年貫太は「すがりつきたい気持ち」だけがあって「何にすがりつけばいいのか」がわかっていないのだ。まだ。
すがりつきたいものがわかっているだけ幸せともいえる。
それにしても書いているものは同じ。
とはいえ長いぶん、溜まりに溜まった鬱憤を晴らそうとする終盤の畳みかけ