西村賢太のレビュー一覧
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中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る北町貫多。一時の交情、関係を築きつつも必ず最後はメチャクチャに破綻してしまう彼の孤独な姿はそのまま自分自身の裡にあるのではないかと思い、彼の作品を読んでます。
ここには短編集がいくつか納められていて、そのうち、『悪夢―或いは「閉鎖されたレストランの話」』以外はすべて自分自身の体験から生まれた私小説です。『人もいない春』では印刷会社の職工に些細なことで絡んで悪態をつき、雇用の契約が延長されずに解雇され、タクシーの運転手にまで当り散らし、『二十三夜』では男女のことでトラブルを起こし、大喧嘩の末に店を追い出されたり、『乞食の糧途』では同棲する秋恵との危うい -
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ネタバレ新鮮な喜びに満ちた甘く温かい同棲生活が、いつの間にか他愛もない言い合いから思わず手をあげるような大喧嘩に転変。本作では肋骨が折れ救急車さえ呼ばなければならない緊急事態にまで陥っている。それでも藤澤清造の開眼式を第一とし、警察への連行を恐れ、骨のヒビは直に治るだとかロキソニンを服用すれば大丈夫だとか・・・。女の身より自分の保身を最優先とする身勝手を恥ずかしくもなくありのままそのままを語っている。惨めな性欲、女への見苦しい未練。ここまで書くか。人目憚らず見事に書き上げている。モチーフはいつものワンパターン。読ませられるのは私小説ならではの力か。西村氏のあとがきには「小説に関しては、ただ才にまかせた
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ネタバレ今回は前向きな短編が多かったように思う。恋人を作ろうと躍起になっている話よりも、貫多と秋恵が同棲している話が印象的だった。恋人がいても、その性格故に様々なトラブルを起こしてしまうところなど、まさに貫多らしい。
気に入った作品は、『二十三夜』、『悪夢』、『赤い脳漿』だ。特に『悪夢』は作者には珍しく私小説ではない作品だったために新鮮だった。西村賢太の私小説以外の作品は初めて読んだと思う。鼠の身に降り注ぐ不幸が、どう足掻いても止むことはない。あのレストランに勤めていた人間もそうだが、動物も動物で大変だと思う。最後は真っ暗闇の中に光がやっと射し込んだと思ったら、一気に暗転してしまった。 -
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待ちに待った西村賢太最新作。
この作家は、もっと評価されていいはずと、本気で思う。古い純文学の体をなしながら、これほど素晴らしいパロディーを描ける方が他にいるだろうか?
物語展開の巧さ・会話の妙・そしてなにより、文語体を笑いに昇華させる文章力!
とにかく頭のいい作家さんだなと感心します。
物語は、貫太と秋恵のちょっと悲しくてほろ苦い、終わりのない男女の戦いを描く。
男女二人の密室劇といってもいい設定だが、このふたりの日常の密度の濃さは異空間ともいえる。
21世紀の小津安二郎か!
デフレ時代には彼のような作品こそが求められるのではないかと思いました。
今・これからの小説のトレンドになる西村賢太 -
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いつも通りの短編集。芥川賞受賞後初の短編集らしいが、受賞前と何が違うのか、あるいは何かが違っているのかは知らない。
個人的にもっとも面白かったのは「腐泥の果実」。木枯しの吹く寒い日、主人公北町貫多は文具店で以前交際していた女性が誕生日にプレゼントしてくれたものと同じペン皿が売られているのを見つける。自身が犯した過ちを悔いるとともに思い出の世界に没入するが・・・そんな話。
秋恵に未練は無いと前半で言っておきながら終盤で「今もただ一人の女性」と認めてしまうところは安定の面白さ。しかもどうしょもないオチまで付いている。
ただ、大切な恋人を失ったと言うより、心の寂しさを埋めてくれるピース