西村賢太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
◼︎総括
・主人公の行動と発言を丹念に追うことで、人間が抱える怠惰性や僻み、自己特別視といった感情を浮かび上がらせる一冊。
・物語としての起伏は小さく、内面描写そのものを読む対象として据えた作品。
◼︎良かった点
1. 人間の負の側面を精緻に描出する
・怠惰さ、他者への僻み、自分は特別だという思い込みといった感情が、行動と発言の積み重ねによって具体化されている。
・説明ではなく描写によって提示されるため、読者が自ら感じ取る構造になっている。
◼︎気になった点
1. 物語的な起伏の乏しさ
・良かった点の反面、展開の大きな転換や劇的な場面は用意されていない。
・ストーリーの推進力を期待して読むと、単調に映る可能性あり。
◼︎向いている読者
・人間の内面、とりわけ負の感情の描写を読み込みたい人。
・筋書きの面白さよりも、人物造形の解像度を重視する人。 -
Posted by ブクログ
夜に眠れなくて、読み始めて、結局最後まで読んだ。どんな話だろうと楽しみだった。人に好かれない言動が多いけど、どこか冷静で素直な印象を受ける。物語の最初から自分の生い立ちを説明しているし、なぜこのようなひどい現状にあるかについて淡々と理由を書いて説明してくれている。仲良くなったものへの甘さ、現状への甘さ、貧困などを背負ってひどい言動を言おうとしていることの甘さ、など主人公がいかにダメかということを素直に書いている。激しい表現、私小説なのにこんな内面を書いていいのかなというおどろおどろしさがある。私小説って難しそう。注目されればもっと難易度があがる。もしかすると先達から学んだかもしれないし、この小説のままの本人なら現状に甘んじてそのままだったかもしれないし。
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Posted by ブクログ
ネタバレ初清造。これは一体誰が主人公なんだ?最初は"私"かと思っていたが、途中から雲行きが怪しくなってきたぞと。そしてある人物がまるで自分を見ているようで、辛いと同時に嫌気(恐らくというか、間違いなく同族嫌悪だと思われる)が差す…。"私"もそして《自殺》した岡田も、どちらも本当にどうしようもない男で、西村氏が著者を心酔してしまう気持ちが痛いほどよくわかる。
出だしはあまり面白くなかったものの、ある事件が起きてからは面白く読めた。どうしようもない人間の「弱さ」を描ききった私小説。星三つ半。
貧困は人間を殺す。それは昔も今も変わらない…。 -
Posted by ブクログ
著者の西村賢太の自伝的な私小説。
ストーリーに劇的な展開はないですが、描写が生々しく特に罵詈雑言に満ちた文体は印象的でした。
父親が性犯罪を犯し、それが原因で家庭は崩壊し人目を避けながら暮らさざるを得なくなり、この体験によって大きなコンプレックスを抱えることとなってしまった青年の物語。
日雇い労働で稼いだ金もその日のうちに酒や風俗で使い込んでしまう事も多く、家賃は当然のように滞納し、強制退去を命じられる、など破天荒で荒れた生活が罵詈雑言に満ちた独特の文体で描かれる。
「小説の出来事は9割以上が本当」らしく、主人公の泥臭い内面と破天荒な生活に圧倒される。
劇的な展開はほとんどないが、その生々しさとリアリティが胸に刺さる。
この生い立ちから芥川賞作家にまでなれたことには驚くばかり。 -
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ネタバレ結句、合本文庫を購ってしまう。
私小説家の日常を覗き見るってなんだか不思議な感覚でした。
西村賢太と北町貫多の共通点や相違点を感じながら読んでいました。
(探しながらではなく、あくまでも感じながら)
西村賢太氏はタクシー乗車中に急逝してしまいますが、たしかに最後の年は「ひどく疲れたのでタクシーで帰宅」との記述が多くなっていましたよね。
叶わない事だけど、そのあと奇跡的に蘇生していれば、
金曜日のビバリー昼ズに出演していただいて、
高田センセイ、
松村邦洋さん
西村賢太さんの3人で
「私のハートはストップモーション」のネタで盛り上がってほしかった。 -
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第144回芥川賞受賞作。表題作と短編の二編を収めた作品集。
いずれも作者自身を色濃く反映した私小説であり、貧困や孤独といった現実の中で生きる人物の内面が赤裸々に描かれている。そこにあるのは美化された苦労ではなく、妬みや僻みといった感情を隠すことなくさらけ出す姿であり、その率直さが強く印象に残る。
一見すると閉塞的で救いのない状況にも思えるが、その中で描かれるのは、何も持たないがゆえの自由や、社会に縛られない生き方の一側面でもある。決して前向きとは言えないが、どこか突き抜けたような軽さも感じられた。
また、『芥川賞選考委員の乞食根性の老人』といった表現に象徴されるように、言いにくいことをあえて言ってしまう姿勢には、破天荒さと同時に一種の覚悟のようなものも感じられる。その危うさも含めて、この作品の魅力の一つだろう。
粗削りでありながらも強烈な個性を放つ作品であり、好き嫌いは分かれるが、一度読めば印象に残る一冊だった。今となっては、もう少し長くこの作家の作品を読みたかったと思わせる存在でもある。 -
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はじめての西村賢太作品。私小説。
はじめてと記録しておきたくなる。
独特な言葉と漢字遣い。卑怯さや報われなさ、暴力性は随所に感じるのだが、真逆の魅力も見える。人としての幅が広い、悪い方よりに。
余裕がないことが運命のような強さ。そしてこんな人が小説を書いてくれる有り難さ。面白いに決まってる。
タイトルにもなっている、瓦礫の死角
"いつかはこの母親のことを、いろいろと助けてやれる日が来るかもしれない。でも今は、結句は何もしてやれぬ。自分が逃げるだけで精一杯である。何がなし、克子の心労に眇めた目の奥に、会心めいた光りが宿っているようにも見受けられた。"